61 政権交代宣言
そりゃね。
あっという間に噂にもなるよね。
二、三箇所回った辺りで黄水晶様が取り巻きを従えてやって来た。王城からそこまで遠くない市街地での討伐、浄化を済ませたところだった。
こんな市街地まで化け物が出る事に驚いたよ。本来なら国民の憩いの場であろう緑豊かな広場だったからね。白国の現状が思ったより逼迫してることを痛感させられるね。
まあ、化け物は小型の魔犬で、白光剣で一撃浄化だったけど……。
「どういうことか説明しろ、雲母。なぜ笛姫様がここに居る」
難しい顔して眉間に皺が寄りまくり。黄水晶様とは一度だけ会った事があるわけだが、私は濃紫の息子っていう設定で少年装束だったからね。姫として会うのは初になるわけだ。
険しい表情の黄水晶様に対して、雲母王子はヘラヘラと笑った。
「助けたお礼に笛を吹いてもらってんだよ」
「……助けた?」
「偶然だったんだけどな。青国の奴らに拉致されて、化け猪に襲われてたのを助けたんだ」
黄水晶様が半信半疑で私を見る。
おっしゃる通りだと頷くと、盛大な溜息。
「どういう状況なのですか……白獅子神様」
『雲母の話した通りだ。白国の現状を憂いた笛姫に頼んで、陰陽を正していただいて居る』
「自国の尻拭いを他国の姫君に手伝わせて居るということですか」
なんか、黄水晶様が苛々してるなぁ。
集まってた国民が不安そうに見てるし——ここは、私も一言くらい補足しとくか。
「……恐れながら黄水晶様。私は雲母殿下に身を救われ、白獅子神様に保護して頂きました。恩には報いなければなりません。進んで手伝わせていただいて居るのです」
困った顔で私を見た黄水晶様が言う。
「笛姫様がご無事でいらしたのは幸いです。噂を聞いて私も貴方の身を案じておりました。我が国の現状を憂いて下さるのも有難いですが……まずは黒国へ安否を知らせるべきではないでしょうか」
白獅子神がフルフルと鬣を震わせ、少し揶揄うような声を出す。
『黒龍神殿には承諾を得ている。姫が雲母と一緒だからと、そうピリピリするものではない』
「……白獅子」
『黄水晶。次代の王として笛姫に接するが良い。我が国に助力を受けておるのだからな』
——ああ。
国民が騒ついてる。
白獅子神から次代の王と明言されたわけで、黄水晶様が王位を継ぐと神が太鼓判を押したようなものだものなぁ。
雲母殿下が嬉しそうに笑って私の手を取った。
「笛姫様、我が兄、次代の白国王を改めて紹介しますよ」
腕を引かれて黄水晶殿下の前に連れてかれる。
うーん。良い感じに演出に使われてるなぁ。
手伝うって言ったんだから、良いんだけどさ。
諦めたように私を見た黄水晶殿下は、少し照れたような表情で膝をついた。
——え、膝つくの?
白国ってそうなの?
「国境沿いで救って頂いたこと、片時も忘れておりません。ずっと再会を望んでおりました。笛姫様、貴女の尽力に国を挙げて感謝の意を表します」
すいっと私の手を取って唇を寄せると、膝をついたまま見上げて微笑む。彼は白獅子神の末で美しい青年なわけだ。名に配されている通りに黄色がかった宝石のような瞳をしてる。イケメンなんだよ。破壊力が凄いなぁ。これ、私じゃなかったらイチコロかもしれん。
「白国へおいでであったのに、私を訪ねて下さらなかったことは残念に思いますが、御身が無事であったことを喜びましょう。貴女様さえ宜しければ、王宮で身柄を保護する用意を致します」
なんか、ちょっと熱っぽい視線だよな。
腰が引けるよ。
私の手を取ったまま立ち上がった黄水晶様に、白獅子神が首を振った。
『それは不要だ。姫は私が保護する。黒龍神殿からの預かりものなのでな。それより黄水晶、お前にはせねばならん事がある』
困惑顔の王太子が私の手をそっと離した。
ホッとするのはなんでかね。
「化け物討伐か?」
『違う』
白獅子神が告げたのは——。
『姫の尽力があれば、三日の後には陰陽の均衡が回復するだろう。三日後、お前に戴冠式を行ってもらう』
ああ——なるほどな、白獅子神は王位の交代が落とし所と踏んでたのか。
『ここに居る者は私の言葉をシッカリと聞け。国が乱れた責任は、私と現王、瑪瑙王が負う。瑪瑙王は退位する。私は全力で新しい王、黄水晶を支援し、白国の安寧を取り戻すと誓おう』
黄水晶様が呆気に取られた顔しているが、お付きの人達には頭の回転が早い者もいるようだ。すぐに伝達の動きが見えた。
「……父上を退位させると?」
白獅子神は威厳の溢れる眼差しで頷く。
『ここまで国が荒れたのは国神である我と、現王である瑪瑙のせいだ。国民には誠に申し訳ないことだった。ことを急いてしまうが、黄水晶、お前が王位を継げ。安穏としている暇はないぞ。三日で準備するのだ。瑪瑙には私から告げる』
ゆっくり歩いて私の隣に立った白獅子神は、雲母王子に目で合図して私を乗せるように促した。
『黒国への伝達はお前に任せよう。かの姫は私が保護していると伝えよ。青国に手出しさせぬ。皇太子殿下を戴冠式に招くが良い。黒国の笛姫は無事でお返しするとな。では、行くぞ、雲母』
雲母王子がヒラッと私の後ろに跨り、兄王子に手を振って笑った。
「仕事が終わったら、ゆっくり話そう。あ、笛姫は諦めろ。嵐龍殿にゾッコンらしい。じゃ、またな!」
——雲母。
最後の言う必要あったのかよ。
今年のアップは最後です。皆様が良い新年を迎えられますように!!
もう少し続きますので、また、来年。
今年一年、お疲れ様でしたー。




