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開始
死を望む言葉を、人生の中で一度は口にした事がないだろうか?
暗く沈んだ気持ちの時に「ああ、死にたい」、と。
思わず口から零れた事に気付いて、もう一度声に出そうとして、できなくて。
或いは幸せの中で「ああ、死んでもいい」、と。
けれどもこれは妄想だ、空想だ、ありえない話だ。
幸せはいつまでも掴んでいたいというのが、絶対の真理ではないだろうか。
少なくとも、私はそうだ。
「ねえ、そうだよね」
飛行戦艦の眼下に町が広がる。
双眼鏡を覗き込めば、生きている人の姿が見える。
仕込みは完璧。
数も問題ない。
鬼が出るか蛇が出るか、な~んてね。
「さあ、君達の地獄の始まりだ」
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