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(旧)ブルーナイト・ストーリーズ  作者: 大根入道
第一章 白の巨人
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『あなたは資格が無い』

 あの時、母さんから渡された緑の鍵でとびらを開きました。

 次の瞬間、眩い光に包まれたのを覚えています。


 とっさに目を閉じて、けれどすぐに眩しさは収まったので、恐る恐る目を開けました。


 そうしたら開けたはずの扉は閉まっていて、僕の手の中にあった緑の鍵は、砂の様にサラサラと崩れ落ちていったんです。


 母さんは何があったのかを聞いてきて、僕は何も覚えていないと答えたんです。

 一瞬だと感じたのは僕だけで、まる一日が過ぎていたと父さんは言いました。


 母さんは本当に何も覚えていないのかと、何度も僕に尋ねてきました。

 その度に僕は覚えていないと、何度も答えました。


 そして母は ―― 初めて見る表情を浮かべて ―― 口を閉ざしました。


 それからいつも通りに、父さんから剣を学び、母さんから魔法を学ぶ日々が続きました。


 多分、その頃からだったと思います。


 父さんと母さんの期待が、僕よりもペローネの方を向くようになったのが。


『あなたは資格が無い』


 あの扉を開けた瞬間に、光の中で聞こえた誰かの声。


 少し後になってから思い出して、けれども、父さんと母さんには言えませんでした。


 伝えたとしても、だから結局それがどうした、という話なんです。


 だから僕も忘れて、いえ、忙しさの中で忘れようとしました。

 父さんと母さんが、もう一度僕を期待してくれるのを願いながら努力を重ねました。


 その結果、僕は天才と呼ばれるようになり、またあの日の前の、普通の日々を取り戻したんです。


『あなたは資格が無い』


 でも心に影が差す時、ふとあの光景が頭を過ることがあります。

 けれどもそれはあの時の父さんと母さんの表情であり。


『あなたは資格が無い』


 僕を拒絶する言葉を並べていたのに、何故かとても嬉しそうだったその声を。

 僕をまるで祝福するように照らしたあの光を。


 強い恐れを抱いても


 僕は。

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