トナの村にて.5
「……な、なんだい、これは?」
見回りの魔物退治から戻ってきたガレットさんは、空き地に見慣れぬ建物が出来ているのでびっくりする。
僕も手伝ったのだが、プラチナの動きが尋常ではなかった。
僕のレベル500より上なんだろうなきっと。天使だし。
魔力で、地面に穴を開け温泉が噴き出して村人を唖然とさせた後、建築スキルのある人と一緒に協力して建てたのでスキルも覚えた。
建築スキルを覚えました!
まあ、いざとなったらそう言う仕事をすればいいか。
ガレットさんはまだ、唖然としている。しかし、我に返ると僕たちの肩を叩く。
「温泉か!これは嬉しいね!そうだ、これを名物にして観光地にすれば村も潤うかもしれないよ!」
「おお、そうじゃな!それならわしは、温泉饅頭を作ろうかのぅ!」
「おじいちゃん、私もハヤテくんと頑張るよ!」
なぜ僕と?て、許嫁とか言ってたおじいちゃんと孫だ!
そろりそろりと逃げようとしたら、服の袖を掴まれる。
「ハヤテくん、どこ行くの?あの女の人のとこでしょ?」
頬を膨らませて来る。これは、弱い。田舎の子供たちと遊んで上げたことを思い出す。
「いやあ、そろそろワイバーン退治に行かないとね」
「そうだね、でも、温泉でさっぱりしてからにしよ?」
「……まあ、いいか」
ワイバーンの巣は山奥。当分は温泉なんて入れないからね。
入り口から中に入ろうとすると、くいくいと袖を引かれた。
見ると、許嫁女の子だ。どうしたのだろう?
「私が、背中流そうか?」
上目遣いで、それは止めなさい。おじいちゃんもうんうん頷いてないで、止めてください。
「カナエに背中を流して貰うといい」
じーさん、止めろよ。
「……!」
そのおじいちゃんを鳥の魔物が急降下して狙って来たので、矢を素早くつがえて放つ!
「グギャアアアアアア!」
落ちて来た鳥は、ジタバタした後絶命した。
「おお!今度はわしの命まで救ってくれるとは……わしの孫をよろしくね」
やかましい……なんて、年輩には言えない。わ
「ふぅ。あぶないな、これは。ほら、二人とも魔物が来ない内に早く!」
「うん!ハヤテお兄ちゃんと一緒に入るね!」
「ちがーう!」
「お兄ちゃん……私のこと……嫌いなの?」
子供なのに、なんてテクニックだ。だけど、入れる訳ないじゃん!
「我慢しようね?いつかきっと、入ってくれるから」
「ほんと?」
瞳をうるうるさせてこちらを見てくる。あの、断りづらいことを言わないでくれる?プラチナめ。
「ふ。それにしてもあたしが銃を構える暇がなかったなんてね」
「ガレットさん。村の守りを何とかしないといけませんね」
「ああ。しかし、敬語はいい。タメ口でね」
「いいんですか?」
「あんた、強いからね。それに、しばらくは村の仲間でいてくれるんだだろう?」
ニヤリと笑うとガレットさんは握手を求めてくるので、握り返す。
「はい……ああ、よろしく」
どうも、タメ口の方が苦手だったりする。
まあ、色んなとこを見て回りたいものの、トナの村を放っては置けないよ。なんか、自分の田舎を見捨てるような気がして。
人間なんて、自分勝手なんだから放って置けばいいなんて周りは言うかもだけどね。
「大した礼は出来ないけれど、魔物を退治したらギルドへ持って来な。報酬に色をつけとくよ」
「ありがとう。それは助かるよ」
「あんた、素直ににこにこ笑うんだね」
「……え?なんか変?」
「いーや。ただ、うちのビッチがあんたに入れ込むのも分かる気がしてね」
手をひらひらさせて見回りを再開するために行ってしまう。
褒められてるのか、けなされているのか。
取り敢えず、ルリさんのことをビッチと呼ぶのは止めようね。
温泉に入り、一息吐いた後は、ギルドへ行き換金やら、解体してもらい素材を手に入れたので、ゲームの知識とかだと合成とか出来るよね。
「ああ、それでしたら案内しますよ」
「いいの、ルリちゃん」
「はい、どーせ暇ですし。そんなことより、ルリって呼んで」
「あ、ああ、うん。そうするね」
そして、そそくさと歩いて行くので、ルリはつまらなさそうについてくる。
「う~ん」
「どうしたの、プラチナ?」
「村の大きさをちょっと見て来ていいかな?」
「あ、うん。気をつけて」
「は~い!あ、ルリちゃん」
「はい?」
「ハヤテくんを、口説かないでよね」
「え~?それは、口説けよって言うフリですか?」
「違うわ!』
あ、プラチナがツッコミを入れるの初めて見た。
なんか、緊張感無いけど、こう言うのは必要だよね。
真面目ばかりじゃ、肩をこるし。
プラチナと別れて歩いていると、トンカントンカン叩く音がきこえてくる。一軒の家の屋根から煙がモクモクと出てくる。
「あそこが、そうですよー』
「おっと!」
魔物がまた空から来たので抜き撃ち。落ちて来た魔物を見てルリはぽかんとしている。
「すごっ!ハヤテくん、すごっ!お願い!早く私のハートを撃ち抜いて!」
「い、意味分かんないんだけど!」
「だって、こんな上玉放って置けないぜ、イヒヒ!」
(あなたのおかげで、みんなが助かるんですよ!)
「……本音と建前が逆じゃないですかね?」
「てへぺろ」
「笑ってごまかさないで下さいよ」
はあ。こんなに女性にモテたことないから嬉しいけど、性格からか、女遊びが出来ない損な性格だな。思わず苦笑してしまう。
つづく
ルリは、冗談ぽく言ってるけど、結構本気だよ。
カナエちゃんとの取り合いだ~!