寄り道.5
おばあちゃんは泥族の長老だった。
その家に案内されて待たされることしばし。
お茶を運んでくる泥族と後から支えられてよろよろと歩いて来るおばあちゃんがいた。
部屋の周りは作られた民族人形や土族のようなハニワや土偶が飾られている。
「どうぞ」
泥族はお茶を差し出す。人間に飲めるやつなのかと思いきや普通にほうじ茶だった。いや。似たような味。
そしてなによりハッとしたのはその泥族の美しい声だった。
見た目とのギャップとは違い驚いてしまった。
ドロタは、おばあちゃんの斜め向かいに座っている。
「すまないね。うちのドロタが無理言って」
「いえ。それより頼みごととは?」
「それがですね。川が干上がってしまったのです」
「え?川?お魚さん大丈夫かなー?」
きょとんとするリアの頭を撫でて上げる。
雨が降らなくて水不足になったのだろうか。
それとも他の要因があるのかな。
「村の上流が塞き止められて川が枯れてしまったんだ」
ドロタが困ったように言う。
「川が干上がりますと困りますね」
「しかし、どうするんだい?自然の力には勝てないよ」
「何が原因か分かってますか?」
僕の質問に躊躇いを見せるおばあちゃん。
ドロタも戸惑いを見せない。なにか知ってるけど信じられないと。
「つーか。なにかしってんなら話せよ。
こっちだって暇じゃねーんだから」
「リオくん、失礼だよ」
「だってよ~、リア。早く王都に行かないといけないさ~」
失礼な発言にハラハラしながら、おばあちゃんに謝る。
「ごめんなさい、うちのリオが」
「いえいえ、気になさらず」
「そうだぞ。ガキは生意気が、一番……」
「ガキって言うな……いてっ!」
ついと言った感じでドロタがぽかりとリオを殴った。ああ、やっちゃった。
気持ちは分かるけどそれは駄目なので話しをしよう。
気持ちは非常に分かるけども。
「なにすんだ~!」
「こら、ドロタ。客人に向かって叩いては行かんぞ?」
「それは違うよ婆ちゃん。例え貴族の子供だって大人に対して敬語とか礼儀を知らないんなら叱らないと駄目だぜ」
「あんた、しっかりしてるねぇ。これは、リオが悪い」
「え~!コハクもそんなこと言うのかよ~!叩くことは、ないじゃんか~!」
「あ~、でも僕が小さい時も大人の人に叱られて叩かれたな」
僕は生意気だった頃の自分を思い出して苦笑する。
「そうだよ、リオくん。あなたのお父様だって厳しくしてくれるでしょ?」
「ミコさんまで。もういいよ!」
怒って飛び出して行ってしまった。
「すみません、うちのリオが」
「いいんじゃよ。ドロタも悪い」
「そうか?俺は悪くないと思うけど。
死んだ父ちゃんと同じように叱っただけだし」
さらりとそんなことを言う。そうか。ドロタも親がいないのか。
「まあ、リオもこれで少しは分かってくれるといいけど」
「取り敢えずおばあちゃん、お話し聞かせて」
プラチナに促されて続きを話す。
「川いっぱいに土竜が寝そべってせき止めてしまったのです」
「……土竜?」
竜の一種だろうか。僕は詳しくない。
コハクを見ると渋い表情をしている。
「あんな化け物が相手かい」
「知ってるのコハク?」
リアが興味津々に聞く。聞かない方がいいのでは……なんて。
「土竜は、この辺りの主様として我々泥族や土族に恩恵を与えてくれているのです」
「土竜は、滅多に姿を現さないんだ。
でも、何故か川をせき止めて嫌がらせをしてるんだ」
もう何人も犠牲になったと話してくれる。
「主さまなんて」
「水竜に似てるね」
「そうですね。それとも世界には全て守り神さまがいるのでしょうか?」
「なんじゃ。最近の若者はそんなことも知らないのか?」
呆れたようにおばあちゃんがそう言う。
炎には火竜。水には水竜。風には風竜。地には土竜。の主さまがいると言われている。
よくゲームでは精霊がいるかんじだけどどうなんだろ?
精霊と主さまはまた違うのかな。ともかくその土竜をどうにかしないと川は干上がったままでお祭りも出来ないのか。
「みんながよければ助けて上げてもいいよね?」
プラチナが明るく言う。みんなもいいようだ。
「困ってる人を助けるのは当然のことです」
「私も土竜を見てみたい」
ミコに続けてリアが言う。
う~ん。動機としてどうかと思うけど反対されるよりはいいか。
まだ、大人に対しては無条件で助けようみたいなことにはならないか。
わだかまりはあるんだろうけど。
それにしてもクエスト発生で行くことになった。
まあ、そうなると思ったけど。
「おお、引き受けて下さるか?なれば、ドロタ。
お主が連れて来たのだ。案内して上げなさい」
「あいよ。俺に任せときな」
自信満々に言うけどひょろひょろなのであまり頼りにならない。
「よ~し!みんなでがんばろう!」
プラチナはいつものように無邪気で元気なのでやる気が出る。
つづく




