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悪魔は探る

「んじゃ、情報交換といくか。」


飲食店に行った俺たちはたまたまその飲食店に個室があるのがわかったので、個室に移動した。

注文した料理が全て来たところで、カルディルがそう口にしたので、俺は密かに隠蔽魔法で個室の外に声が漏れないようにした。

まあ、一応誰が聞いてるかわからないからな。



まず、部下3人がそれぞれ聞き込みをした内容を話し始めた。

彼らは俺が聞いた海域や谷のこと、そして王家の別宅と貴族の屋敷とを聞けたと話した。

続けて俺も同じようなことを聞いたと話して、海域や谷は可能性が低く、王家の別宅か貴族の屋敷ではないかと考えを述べた。


「俺の聞き込んだ飲食店では、グラエム王は数人の護衛とここの領主と来ることが多かったそうだぜ。結構話し込んだりすることもあったらしい。話の内容は店員は基本的に聞かないようにしてるけど、この町の統治のこととか小難しい話が多かったってよ。でもまあ、もしかしたら領主に話を聞いてみる価値はあるかもって感じかな。」

俺に続いてマスティフがそう報告した。

まずまずと言った割にはいい情報ではないのか?

「領主と来ることが多かったということは気になりますね。」

「実験のことを知ってる可能性があるか?だったら明日にでも会ってみるか。ここの領主は知り合いだし。」

カルディルは貴族に知り合い多いな。


「カルディルはどうでしたか?」

「顔見知りの貴族のツテを頼らせてもらって、ここの貴族で1番土地を持ってる貴族に会うことができたぜ。侯爵なんだが、気さくな人でよ。色々教えてもらったんだ。その貴族によると、王家の別宅ってのはアウルサ周辺に3件あるらしい。さらに貴族の屋敷で1件、昔から空き家の屋敷があるらしいんだ。」

「王家の別宅が3件もあるんですか?」

さすが王家、金持ちだなあ。

「1件はアウルサの町から船で沖に行ったところにある小島にあって、「海の館」と言われているらしい。そして山に2件あって、アウルサの町に近い方を「山の館」、山奥にある方を「奥の館」と言われているらしいぞ。そしてこの「奥の館」の隣に、昔からの空き家の屋敷があるらしい。」

これは思いっきり、「奥の館」と隣の空き家が怪しくないか?

「グラエム王がアウルサに来たらどの館に滞在するのかとかはわからないのですか?」

「さすがにそこまではわからないらしい。明日、それも領主に聞いてみてもいいかもな。領主だったら館に出入りしてるだろうし。」

まあ、それはそうか。


「そうだ、因みになんだが。第二王子のヒースティ王子は「山の館」に滞在中らしいぞ。」

「へえ、そうですか。ヒースティ王子に話を聞いてみますか?」

「うん・・・まあ、平和主義だしお優しいからなにか知ってるとは思えないが、一応話を聞いてみてもいいかもしれないな。俺は何回かお会いしたことあるし、領主と話した後に行ってみるか。」

ふむ、ヒースティ王子はフェニックスのこともあるし、会いたいな。

「ヒースティ王子にお会いするときに俺も同席できませんか?」

「え?ユウジン、ヒースティ王子になんで会いたいんだ?」

料理をガツガツ食っていたマスティフが手を止めて聞いてきた。

「ただの興味本意ですよ。王子の使役しているフェニックスも見たことないので見たいですし。」

「まあ、フェニックスは世界に1匹しかいないから見たいということはわかるけど・・・。」

マスティフはなにやらうーんと首を傾げていた。


「ふむ・・・、興味があるのはけっこうだが・・・。ユウジンを連れていくのは難しいな。」

カルディル難しい顔をしてそう言った。

「ヒースティ王子は人見知りでな。知らない人の前ではあんまりしゃべるのは得意ではないらしいんだ。だから人の多い首都ではなくこのアウルサの「山の館」に籠ってるくらいなんだ。」

「そうですか・・・。では、しょうがないですね。」

人見知りならしょうがない。



明日はカルディルが領主とヒースティ王子に話を聞いてみる、ということで俺とマスティフと部下3人は引き続き町で仕入れた以外の情報の聞き込みをするということになって、夕食を食べ終えた俺たちは宿屋に戻った。



次の日、朝食後しばらくしてカルディルは領主の屋敷に向かうため宿屋を出た。

俺は聞き込みをするフリをして、カルディルの後をつけていくことにした。


「・・・おい、ユウジン。」

カルディルの向かう方に行こうとすると、マスティフに呼び止められた。

「お前・・・どこ行こうとしてんだ?そっちは今カルディルが向かった方だよな?・・・もしかして、カルディルをつけてくのか?」

マスティフは訝しげに聞いてきた。

勘が働いたか?それにしてはよく俺がカルディルをつけると思ったな。

「そうですよ。ちょっと、領主が気になりまして。」

「・・・なんか気になる。俺もついていくぞ。」

え、サビザの町に続いてまた?

「今回は面白い魔法も使いませんよ?」

「別にいい。お前がなにをすんのかが気になるから。」

うーん、面倒くさいが・・・まあ、いいか。


俺はサーチでカルディルの現在地を確認しながらカルディルの後をついて町を進んだ。

中心地からだいぶ奥に進んだ貴族の屋敷が並ぶところをさらに奥に進んだところに、領主の屋敷はあった。

キュベレやマシリで見た領主の屋敷と同じような規模の少し豪華な造りで、内紛の影響からか、門の前には多くの門番が立っていた。

カルディルは門番に話しかけて、領主に取り次いでもらっていた。

しかし、アポなしだったので少し時間がかかっているようで、門の前で待たされているようだ。


「ふむ、今のうちにカルディルの真後ろについて、門が開いたら一緒に入ります。」

「んええ?んなことしたら、カルディルに気付かれるし門番に不審者として捕まっちまうぞ?」

俺は自分とクロ助とマスティフに隠蔽魔法をかけた。

「・・・今、俺たちに隠蔽魔法をかけました。存在や音や声を隠蔽したので誰にも俺たちは見えませんし会話しても誰にも聞こえません。でもそのせいで、扉を開けたり物を動かしたりしたらポルターガイスト状態になるんです。余計な騒ぎを起こしたくないのでカルディルについて門や扉が開いたタイミングで一緒に入るんですよ。」

「うええっ!?本当か!?」

半信半疑のマスティフを連れてカルディルのすぐ後ろに並ぶと、領主から許可が出たようで門が開いた。

カルディルの後ろに続いて門をくぐり、玄関が開くと領主と思われる男が立っていた。


「やあ!カルディル。久しぶりですねえ。」

「お久しぶりです、ティーガ様。」

カルディルとティーガと呼ばれた男はお互いにこやかに握手を交わした。


アウルサの領主ティーガは・・・鑑定魔法を使ったらティーガ・クルノスというらしい。

40代くらいで青い髪をオールバックにした青目で片眼鏡をかけた、いかにもインテリっぽい見た目で、ひょろながのスタイルで青い貴族服をきっちりと着こなしていた。

「君がアウルサに来るとは珍しいですねえ。ささ、応接室で話しましょうか。」

ティーガは突然の訪問でも笑顔で迎え入れていた。

玄関ホールからすぐのところに応接室はあった。

広々としていて、自慢の調度品が並んでいた。

それをなんとなく見ていたら、カルディルがティーガにうながされてソファに座ったので、ソファの後ろに立って話を聞くことにした。


「本当にお久しぶりですねえ。確か・・・3年ぐらいぶりではないですか?首都で開催されたパーティーで会ったのが最後と記憶していますが。」

「さすがティーガ様。あの時以来です。本当はすぐにでもアウルサに遊びに来たかったのですが忙しい日々を送っていたらいつの間にか・・・。」

カルディルは頭を掻いていた苦笑した。

「んまあ、そうですねえ。特に最近、あなたは忙しく(・・・)されているようですし?」

ティーガはそう言って意味深にニヤリと笑った。

ふむ、どうやらカルディルがオーランド王子派にいることを知っているのか。

首都でもないのに、王子派の情報を持っているというのは気になるな。

カルディルは自分が王子派として内紛に参加していることをティーガが知っているとは思ってなかったようで、目を見開いて驚いていた。

「な、なぜ・・・それを?」

「いや、たまたま知り合いの貴族から聞いただけですよ。」

あっけらかんとそう言ったのが、なんか怪しい。


メイドが紅茶を持ってきて、ティーガは一口くちに含むと話を切り出した。

「・・・さて、突然の訪問の訳を聞いてもいいですかねえ?」

「!・・・このアウルサに、グラエム王がちょくちょく来られると聞いたのですが、本当ですか?」

「ええ。アウルサの町の発展を応援していただいてまして、色々とアドバイスをくれるんです。それが全部タメになりまして。後は、グラエム王自身の療養をかねてます。やはり政治は難しい場面が多いですから、城にいてはゆっくりできないそうで、アウルサにある別宅3件を利用しているようですよ。」

「3件ともですか。特によく行く別宅はどれです?」

「グラエム王がその時の気分で決めるそうで、特によく行くというのはないのではないですかねえ?強いて言えば、ヒースティ王子のいる「山の館」でしょうか・・・。私はそこでよくお会いしますからねえ。」

なるほど、「山の館」か。

しかし、強いて言えばだから2件も可能性がないわけではないか。


「別宅以外でグラエム王が行くところとかはありますか?」

「別宅以外で?・・・えーと、アウルサの町の行きつけの飲食店が数件くらいではないですかねえ?」

「そうですか・・・。」

やはり別宅が怪しいか?


「そうだ、カルディルが気になっていた貴族のお嬢さんなんですが結婚したそうですよ・・・。」

「えっ!?本当ですか!?」

「ええ。あそこの貴族の嫡男と・・・」

「あ、あそこの貴族は金遣いが荒いので有名な貴族で・・・」

「そうなんです。それで・・・」

ひとしきりグラエム王の話を終えた2人は貴族の噂話を談笑しだしたので、俺は行動を開始することにした。


「マスティフ、丁度いい。人手があった方がいいから、ついてきて下さい。」

「え?あ、おう。」

マスティフは目の前の会話に聞き入っていたが、俺の呼び掛けにハッとして俺についてきた。

部屋の出入り口は幸い開けっぱなしになっていたので部屋から出ると、一旦玄関ホールに出て2階の階段を上がって奥の、領主の書斎へと向かった。

マスティフは戸惑いながら周りをキョロキョロ見回しながらついてきている。

「お、おい!い、いいのか!?勝手に来て・・・。」

「カルディルとティーガが話してる隙が絶好のチャンスです。隠蔽魔法で消してますから誰にも気づかれませんから大丈夫です。」

「絶好のチャンスって、どこに向かってるんだ?」

「ティーガの書斎です。いない間に、書類を物色します。」

「うえっ!?な、なんで書斎がこっちって、わかんだよ?」

「前にちらっと説明したでしょう?探索魔法で俺は最大5キロの範囲内ならわかる他に、町中でやっていると探し物や探し人や、建物の階数なんかもわかると。」

「!?なるほど。それでこの建物の中のどこになんの部屋があるかわかるのか。」

感心して見てきたが、さては忘れてたな?


書斎は2階の奥の方にあり、一応扉を開けるときは周りに気を付けながら開けた。

中は壁の片面すべてが棚になっていて書類でパンパンになっていて、デスクの上にも書類の束、ソファにも書類があるほど、書類まみれというとてもげんなりしそうな光景が広がっていた。

「ふむ・・・、これはさっさと見ていかないといけませんね。人手があって正解でしたか。」

「ち、ちょっと待て!?この書類の量は絶対に無理じゃないか!?」

「無理も何も、目を通さないと実験に繋がる情報がこの中にあるかもしてないじゃないですか。ほら、さっさと見て回りましょう。時間もないですし。」



俺はデスク周りを、マスティフは壁の方の書類を見てみることにした。




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