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悪魔はいない5

オスロ視点です。

私はオスロ・キューシャ。

ヴェネリーグ王国にあるマシリの町の領主で子爵だ。


黒髪茶目で面長の地味な見た目だが、ずっとヴェネリーグ王家に仕えてきた由緒正しい貴族だ。

マシリの領主になって10年、「見た目通り地味な町に地味な統治」と他の貴族や領主には言われ蔭で笑われることもあったが、そんな奴らに見返すこともできずに悔しさを抱えていた。


そこへ来て、マリルクロウ様の噂を耳にした。

なんとこの町に来ていると。

しかも朝から晩までマシリの町周辺の魔物を退治してくれているという。

これはお礼をかねてお近づきになるチャンス!

そうだ!マリルクロウ様がいることをグラエム王に報告してはどうだろう?

きっとグラエム王のこと、王派に引き込んで下さるだろう。

そうすれば、私は王に紹介したということを評価していただけるはずだ!

蔭で笑っている奴らを見返すことができるのではないか!?


「よし!・・・執事、マリルクロウ様を屋敷にお呼びしろ。そしてマリルクロウ様がいて、魔物退治をしていることを城に報告するんだ。」

「かしこまりました。」

執事は通信魔法が使えるからすぐに城に報告して、マリルクロウ様を迎えるために馬車を出した。


そうしてマリルクロウ様を迎えて首都シェブーストへと行かせた。


よしよし、これで後は朗報を待つだけだ。




しかしそれから2週間経った頃、とんでもない噂が流れてきた。

「オーランド王子派にマリルクロウ・ブラックが加わったらしい。」

私は自室でそれを聞いて、持っていた書類を落としたのにも気が付かないほど、驚き固まった。


な、なぜだ!?

グラエム王に会ったはず!?

なぜ、王子派に!?


私は慌ててシェブーストに向かい、王に面会した。

グラエム王は私を見るなり殺人鬼のように鋭い目を向けてきた。

「オスロ・・・。よくもマリルクロウ・ブラックを紹介したな。マリルクロウ・ブラックを誘ってやったのに、断りあろうことか王子派になったそうだぞ。お前がなにか吹き込んだのではないか?」

「い、いえ!そんなこと、するわけこざいません!!」

「ではなぜあちらに加わったのだ!?・・・お前は長年王家に仕えてきた貴族の当主だが、オスロ。考えなければならんな。」

それは当主交代か、爵位の降格ということだ。

私は独身で子供はいないし兄弟もいないから、ヘタをしたらキューシャ家のとり潰しもあり得る。

「そ、そんな!?グラエム王!それだけは!それだけは!」


私はなんとか頼み込んで頭を床に擦り付けて、なんとか思い留まっていただくことになった。


「クスクス・・・クスクス・・・。」

肩を落として王城を出ようと歩いていると、すれ違った貴族たちがこちらを見て嘲笑っていた。


くそっ!くそっ!・・・マリルクロウ・ブラックめ!

私にこんな恥をかかせやがって!!

許さない!許さない!許さない!!




それから2週間ほどして、キュベレ野町に向かった騎士兵士が王子派に敗れたという噂が流れてきた。

「オーランド王子派は敗れた騎士兵士を引き込んだようだが、まだまだ王派とは戦力差がある。そこで・・・西のテレファの町の領主が王子派か王派か決めあぐねているのに目をつけると思われる。なので、テレファを攻めることにする。もしテレファ領主が王派ならば王子を大人しく差し出すが、王子派なら激しい戦いになる。」

グラエム王は王派の貴族を全員集めてそう語った。

「スパイの話では、王子と一緒にマリルクロウ・ブラックもいるという。一層厳しい戦いになるだろうが、王子とマリルクロウ・ブラックを討ち取ったという名誉をほしいものは名乗り出るがいい!」



私は迷わず、手を上げた。



私に恥をかかせやがった恨みを晴らすチャンスだと思ったのだ。

テレファの町は多くの騎士兵士を抱えているのは有名だったから、マシリの町にいる騎士兵士だけでは敗れてしまう。

なのでサビザの町の領主に協力してもらうように頼んで騎士兵士を寄越してもらうようにして、さらに首都からも騎士兵士を出してもらった。

・・・ここまでしてもらって敗れたら、もう目も当てられない。

死んで詫びるどころじゃない。キューシャ家とり潰しは確実だ。

だから絶対に、負けられない。






・・・なのに・・・これはどういうことだ!?



キュベレの町からテレファの町に向かう途中の村に立ち寄る可能性があると思って、密かに高い金を払って暗殺集団を送り込んだのにまったく音沙汰がないし。


さらにこれから戦うという時に、サビザと首都からの応援がいつまでたっても来ないのでイライラしていたら、「道が大規模な土砂崩れかなにかで通れない。今、土魔法が使える者総出で除去作業しているが、1週間はかかるかもしれない。」と通信が来たし。

は!?大規模な土砂崩れ!?

こんな時になんでそんなことが起きる!?


しかし、もうこちらは到着して配置についている。

今さらやめることもできない。

「・・・チッ!もういい!突撃を開始するぞ!!」



少ない戦力で攻めるなんて、今さら後悔しても遅い。

でも、こっちには敗けられない止められない事情があるのだ。

多くの味方の騎士兵士が目の前で殺されていくなか、私も戦場に出た。

私はレベルはそこまで高くないし、戦いは得意な方ではないがなんとか数人殺すことができた。

こんな兵士を殺したくらいじゃ駄目だ。

あの、恥をかかせたジジイを殺さないと。


「皆の者!!マリルクロウ・ブラックを狙え!マリルクロウ・ブラックさえ殺せば後はどうとでもなる!奴を討ち取った者に500万インをやるぞ!」

「「「おおおぉぉぉっっ!!」」」

騎士兵士は雄叫びをあげてマリルクロウ・ブラックに向かっていった。

いいぞいいぞ!

いくらマリルクロウ・ブラックでも、数百人以上を相手に数時間戦ったら疲労が溜まるはず。

そこを私が討ち取れば、この戦いは勝ったも同然だ!




だが、それから2時間ほど経つというのに・・・マリルクロウ・ブラックはまったく疲れてない様子だし、報告では息切れすらしてないらしい。

くそっ!これだから化け物は!!




「ぎゃあぁぁぁっっ!!」



と、なぜか後ろから悲鳴があがった。


驚いて後ろを振り返ると、明らかに味方の騎士兵士ではない冒険者の集団が、後方から現れて控えていた騎士兵士を殺していっていた。

私から100メートルもない距離だ。

後方は鬱蒼と茂る森なのだが・・・もしかして、森の中から現れたのか!?

「!?・・・ま、まさか!マリルクロウ・ブラックは後方から攻撃をするための囮か!?」

「・・・その通りです。」

「!?」

一瞬にして目の前に冒険者の少女が現れた。


銀髪の美少女はすかさずナイフで切りかかってきたが、なんとか反応できて持っていた剣で弾くことができた。

この少女、どこかで見たな・・・?


「!?お、お前は、マリルクロウ様の弟子!?」

そうだ!マリルクロウ様と一緒にいた弟子の1人だ!

「・・・マシリの町の領主オスロですね。お命、頂戴します。」




「これこれレフィ。敵大将は情報を聞き出すために、殺してはならんぞ。」



そんな声が後ろからして、振り返ったらそこにはマリルクロウ・ブラックの姿があった。

返り血などで多少服が汚れていたが、息も切らした様子もなく刀を肩にかけてニコニコ笑っていた。

「マ、マリルクロウ・ブラック!?」

い、い、い、いつの間に後ろに!?

そして気が付くと、私の周りの護衛役の騎士数人はは皆いつの間にか殺されていて地面に転がっていて、執事も死んでいた。

私1人で敵に囲まれていたのだ。

「ひいいいっ!?な、なぜだっ!?」

「オスロ、サビザと首都からの応援がこんらしいのう?もうおぬしの味方もほとんど生きておらん。・・・大人しく捕まってくれんか?」

マリルクロウ様からものすごい強烈な威圧が飛んできた。

体は勝手に震えるし歯もカチカチ鳴ってしまい、動かない・・・!

恐怖に気が狂いそうになるが、両手で必死に剣を握った。


「・・・ふ、ふざけるなっ!!」

「ほう?」

マリルクロウ様は威圧をかけているのに叫んだ私を、少し驚いた顔で見てきた。

口がきけると思ってなかったのかもしれない。

「わ、私がグラエム王に紹介したのに!恥をかかせやがって!許さない!殺してやる!!」

体を無理矢理動かして、私はマリルクロウ様に切りかかった。

「うおおおおぉぉぉっっ!!」

なりふり構わず、剣をめちゃくちゃに振って叫びながらマリルクロウ様に向かったが、マリルクロウ様はなんでもない顔で見てきていた。

そして。

「ほいっと。」


バコォォォンッ


マリルクロウ様は私の攻撃なんて余裕で避けて、腹を一発殴ってきて私は見事に吹っ飛んだ。


くそうっっ、もう終わりだ・・・!

なにもかも、終わりだ・・・!



私は地面に叩きつけられたと同時に意識を失った・・・。





「おや?ちょっと殴っただけじゃが、やり過ぎたかのう?」

「・・・・・・やり過ぎだと思います。」





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