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悪魔はいない4

これでアシュア視点は終わりです。

私はこう見えても姫なのよ。


だから、殺人なんて無縁だったし人の死体を見るなんてこともなかった。


姫というしがらみが嫌で、自由に生きてるように見えた冒険者になりたいと思って、父に頼んで暴れて冒険者になった時。

レフィと初めて討伐に行って魔物を倒したときは平気だったのに、その帰りに魔物に殺されたと思われる人の死体を見た途端、ものすごい吐いてしまった。

魔物とかは体の見た目や構造が違うから?自分とは違うもの、とか思うんだけど、同じ人間のはどうしても気持ち悪く見えちゃう。

怪我や手足の切れた人を見ても痛そうだなとしか思わないのに、死体になった途端、その死体が外傷のない状態じゃない限り見たら気持ち悪くなっちゃうのよね。

レフィが心配してくれたこともあって、私は極力見ないようにすることにして、今まで来たんだけど・・・。




ま、まさか・・・自分から戦場に行くなんて・・・!!




戦場は本当に、死体がそこら辺に転がっていた。


「うっ・・・、うげぇええっっ!」

私は塀の外に出てすぐに吐くこととなった。

戦場はまだ先なのに、なんでこんなところに死体が転がってるのよ!?

うぅっ、気持ち悪い!


私は我慢して、戦場へ向けて歩き出した。

一応防衛のために剣を抜いて構えて、目を伏せてなるべく死体を見ないようにして。

死体に躓いたりしたけど、見ないままで、ごめんなさいと言いながら蹴り飛ばしたりして進み、ある程度進んだら薄目で周りを見てなんとなく戦闘音の激しいところに向かって歩みを進めた。


「おらああぁっっ!」ガキィィィンッ

「ぎゃああぁぁぁっ!!」ザシュッザシュッ

「誰か・・・助けて・・・」グチャッグチャッ

「死ね死ねっ!うらあっ!」ドゴォォォン

色んな音に声が耳に入ってきたけど、全部無視して進んだ。

途中で相手の兵士が切りかかってきたけど必死で避けて、他の兵士の後ろに隠れたりして撒いたりした。

味方の騎士兵士にマリルクロウ様の居場所を聞きたかったけど、しゃべったら吐きそうだったので口を押さえて敵の攻撃を避けながら進んだ。


そうしたら「ひいいっ!?マリルクロウ・ブラックだぁぁっ!」と腰を抜かしている敵の兵士がいて、その兵士が見つめる先に進んでみると人垣の向こうにマリルクロウ様がチラッと見えた。

マリルクロウ様は相手の騎士兵士に囲まれていて、その中で派手に大立ち回りをしているようだった。


「邪魔じゃのう。ほいっ。」

マリルクロウ様が剣に魔力を乗せて1回転するように振ると、人垣はバラバラになりながら吹っ飛んでいった。

私のところにもなにかの部位が吹っ飛んできたので吐きそうになりながらも避けて、マリルクロウ様に向かって駆け出した。



「ま、マリルクロウ様っ!うえっっ!!」

駆け寄りながら叫んだらちょっと吐いちゃった。

「!?アシュア!?大丈夫かのう?」

マリルクロウ様はいるはずのない私の姿とちょっと吐いたのにびっくりしつつも心配してくれた。

「だ、大丈夫じゃない・・・。」

気持ち悪さで顔色の悪い私の背中をさすってくれた。


「マリルクロウ様に、渡したいものがあって・・・。」

さすってもらってちょっと落ち着いた私は、ポケットから小瓶を出してマリルクロウ様に差し出した。

「うん?これは?」

「王子が飲んでほしいっ言ってて、私が預かってきたの。」

これはこの時のためにレフィと考えた嘘だ。

これは万能薬で・・・とか言っても飲んでもらえるか疑問になった私たちは、王子の指示だと言ったらいうこと聞くんじゃないかという考えにいたって、こういう嘘をいうことにしたのだ。


「王子が?・・・うむ、わかった。」

マリルクロウ様は首を傾げつつ、小瓶を開けて一気に飲んだ。

やった!


「・・・うん?なんじゃ?頭がすっきりするのう?これは・・・万能薬か?」

「さすがマリルクロウ様!それ、万能薬よ!ねえ、王子のこと、どう思ってる?」

「王子のこと?・・・うん?おかしいのう?何でわしらは内紛に参加しとるんじゃ?」

私たちが使役状態から戻った時と同じこと言ってる!

マリルクロウ様、治ったんだ!!

「やったー!マリルクロウ様、正気になったのね!よかったーー!!」

私は思わずバンザイしたらマリルクロウ様がは?という顔をした。

「正気?どういうことじゃ?アシュア。説明してくれんか?」

「マリルクロウ様はあの王子と会ったときからずっと使役されていたの。」


私はオーランド王子が使役魔法(人間)使えること、その魔法で皆を使役していたこと、そして悪魔教幹部であることを話した。

マリルクロウ様はものすごく驚いていた。


「なんと!?な、なぜ、それがわかったんじゃ?」

「ユウジンにかかった使役魔法が一瞬で解けたらしいの。それでユウジンが不審に思ってオーランド王子のステータスを鑑定魔法で見たらしいわ。」

ユウジンが着けていた指輪のおかげで一瞬で解けたこと、隠蔽魔法でステータスを隠していたみたいだけど、最近鑑定魔法の級を上げたらステータスが見えるようになってそれでわかったことを話した。

「隠蔽魔法で隠したステータスも見れるようになった?おかしいのう。隠蔽魔法で隠したものは上級にしたとしても見れないはずじゃが・・・。」

マリルクロウ様はなんかブツブツ言ってたけど、なんのことかよくわかんなかった。

「それで私とレフィ、マスティフに万能薬を飲ませて正気にしてくれたんだけど、ユウジンはマリルクロウ様にも飲ませたかったけど、マリルクロウ様はずっと王子と一緒にいたから飲ますタイミングもこうやって話すタイミングもなかったから、私に万能薬を預けてくれたの。何らかのタイミングがあったら飲ませてほしいって。」

「なるほど。それで王子からと言ってわしに飲ませたと。そうかそうか。すまんのう、アシュア。」

マリルクロウ様はそう言って頭を撫でてくれた。


「となれば、この戦いが終わった後、じっくり王子と話すこととするかのう?」

「あ、駄目よ。マリルクロウ様、ユウジンが使役魔法にかかってるフリしたほうがいいって言ってた。」

これはユウジンに言われたことだ。

「うん?それはなぜじゃ?」

「まだオーランド王子の狙いがわからないから。オーランド王子が使役したら、自分の父親だって使役できるでしょ?そうなったらもうとっくにオーランド王子が国王になったも同然なのに、なんでわざわざ反旗を翻したのかがわからないじゃない?それを調べるためってとこもあって、ユウジンがマスティフとアウルサに行ってるらしいの。」

「なるほどのう。・・・では、ことがハッキリとするまでは、今まで通りずっと近くにいて使役されてるフリをするわけじゃな?」

「そうそう。」

「うむ・・・、悪魔教に従っているというのが、とても気に食わんが・・・しょうがないのう。」

マリルクロウ様はとても苦い顔をしていたけど納得してくれた。

それはそうよね。

自分が壊滅させた悪い悪魔教に、従ってるフリして協力しなきゃいけないってなんとも言えない、屈辱的というか。


「マリルクロウ様の気持ちもわかるわ。でも、これ以上悪魔教をのさばらせないためにも、我慢しましょう。」

「ううむ。お嬢ちゃんになだめられるとはのう。」

「お嬢ちゃん!?私は立派な大人よ!お嬢ちゃんじゃないわよ!!」

「ほっほっほっ。なにはともあれ、あいわかった。万能薬をここまで持ってきて、ありがとうのう。ほれ、アシュアにはここは辛いじゃろう?塀の中に戻るとええ。」

「うん、そうする。これ以上いたら・・・気絶しそうだし。」

「そろそろ奇襲部隊が仕掛ける頃合いじゃ。そうしたらあんまりせんうちに終わるじゃろうから、それまで救護所で頑張るんじゃぞ。」

「うん!マリルクロウ様も、頑張って!」

私は手を振って、マリルクロウ様から離れた。

そして塀に向かって迫り来る兵士を避けながら撒きながら、口を押さえて戻った。


「ううっ・・・。もう戦場には行きたくないわ・・・!」




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