悪魔はいない2
まだアシュア視点です。
「ようこそ、おいで下さいました。」
テレファの町の領主は女性だった。
30代の眉のつり上がった、性格がキツそうでプライドが高そうな顔をしていて豪華なドレスを着て手には扇子を持ってる。
「ここは代々、わたくしの祖先が守ってきた土地ですの。この土地を汚すような内紛など、関わりたくはありませんわ。」
って言ってたのに、オーランド王子とちょっと話しただけで・・・。
「わたくしの土地を好きに使って下さいまし。王子のために守ってきたようなものですもの。」
と言い出して、テレファの町はあっという間にオーランド王子派になった。
領主の手のひら返しも、明らかに使役魔法を使ったからだと思う。
ホント、恐ろしいわ・・・。
色々話し合いもあって、5日経ってもテレファの町にまだいる。
私とレフィは名目上マリルクロウ様の弟子だし、元はといえばこの国の人間じゃないから王子たちを手伝うことができないので、ひたすらテレファの町を散策したり買い食いしたりとめちゃくちゃ満喫している。
テレファの町は首都の次に大きな町だそうで、首都並みに商店も飲食店も多くて5日経った今でもまだ気になる店全部を回れてないほどだ。
ホント、散策と買い食いしかやることないから冒険者ギルドがここにもあるみたいだから討伐依頼でも受けようか?とレフィと話してるくらいなのよね。
そう思いながらもいつものように買い食いをして、領主がおさえてくれた宿屋に帰ると、王子の部下の女の人が1人いた。
この人は王子や私たちと一緒にキュベレから来た3人のうちの1人だ。
「緊急の報告がありますので、今から領主の屋敷に来てください。」
女の人はとても真剣な顔をしていたので、なにかあったみたい。
また王子に向けて通信魔法でなにか情報が来たとかかしら?
私たちは慌てて女の人と領主の屋敷に向かった。
「マシリの町の領主が攻めてくるみたいだ。」
オーランド王子は屋敷の会議室として使っている部屋に私たちが来たら話し始めた。
会議室には王子、マリルクロウ様、私たち2人、領主と領主の部下2人と王子の部下3人がいる。
やっぱり、王子のところに首都からの通信魔法で情報が来たみたい。
私は王子の言った言葉に驚いた。
「マシリの町の領主が!?な、なんで!?」
「恐らくこの町にスパイがいるようで、俺とマリルクロウ様がいることが王派に知られたみたいだ。首都から攻めるよりマシリの町から攻めた方が近いし、前回のように食料も馬も失ってもすぐマシリに戻ればいいだけのことだからな。それで父はマシリの領主に俺を討つことを命じたそうだ。捜索・保護ではなく。」
王子は苦しそうな表情で言った。
前回のキュベレでの戦いで本格的に対立することがはっきりしてしまったから、王は捜索・保護から討つことに変わったということかしら。
「マシリの町から来る騎士兵士は何人になるでしょう?」
領主が王子に聞いた。
「騎士500人兵士3000人だ。」
それを聞いた領主は微妙な顔をした。
「・・・おかしいわね。」
なにがおかしいのかしら?
「私たちテレファの町には騎士1000人7000人いるわ。明らかにこちらの方が有利な数で、これはマシリの領主も知ってる数字よ。」
た、確かに相手より少ない戦力で攻めてくるなんておかしいわ。
「!?・・・ちょっと、待って。今、新たな通信が来た。」
オーランド王子は頭を抱えるポーズをとって、来た通信に集中しているみたいだ。
「・・・そうか、わかった。」
しばらくしてオーランド王子は抱えるポーズをやめた。
「マシリの領主はサビザの町の領主に応援を頼んだようだ。恐らくマシリとサビザ、両方から一気に攻めてくるということだ。サビザは恐らくだが、騎士500人4000人くらいで来るそうだ。さらに首都から騎士200人兵士2000人が応援で来るようで、今日首都から出発したらしい。一旦サビザに向かって、サビザの応援と合流してこちらに来るそうだ。」
その言葉に皆が驚いた。
「サビザと首都からの騎士兵士を足したら、騎士1200人兵士9000人になるぞ!これは・・・不味いのではないですか!?」
「本格的に攻め落とす気でしょうか・・・。我々も同じヴェネリーグ国民だというのに、国民同士戦うなど・・・。」
領主の部下2人は動揺して、そんなことを漏らしていた。
「同じヴェネリーグ国民だけれども、攻めてくるなら敵と見なさなければいけませんわ。わたくしたちはテレファの庶民を守る役目がありますから、防衛しながらなんとか騎士兵士をしらぞけられる方法を考えないといけませんわね。」
動揺する部下の姿に領主は少し呆れつつ、真剣な顔をしてそんな力強いことを言っていた。
すごく豪華なドレスを着ているから、ぶっちゃけ貴族のお飾り領主かなとか思ってたけど、ちゃんとした領主みたいね。
でも、驚いたわ。
本当にユウジンが言った通りになったから。
万能薬で私たちを正気に戻した時、「大規模な戦いがある」と言って話してくれた内容と合っていた。
あの時・・・・・・
「恐らくあなた方がテレファの町に行って少しして、マシリの領主が王の命令とかで攻めてくると思います。」
「ええっ!?マシリの領主が!?あの、オスロってやたらと王を持ち上げたこと言ってた人よね?」
「オスロはグラエム王にじいさんのことを報告して会わせた人です。ですがじいさんは王子派になってしまった。だから今、王派の中で立場が悪くなっていると思われます。なのでじいさんへの逆恨みと王子の討伐で名誉挽回できるならと、テレファを攻めるとなったときに真っ先に手をあげるでしょうね。」
「そう言われたら、そうね・・・。」
「地図で見たら、マシリからテレファにはわりと近いですから、食料を盗られて馬に逃げられても餓死の心配もないでしょうし。」
「でも、テレファって聞いたら首都の次に大きな町らしいじゃない?そこへマシリの町の騎士兵士だけで攻めるって、無理じゃない?」
「ええ。俺もそう思います。なので、もしかしたら首都か他の町から応援を頼むかもしれません。例えば王子と初めて会ったサビザの町は確かに領主が王派だったはずですし。」
「え、だったら私たちかなりヤバい状況になるじゃない!?そんな戦い、なんとかしなくちゃいけないの!?」
「・・・まあ、じいさんや王子がなんとか知恵を搾ってくれると思いますよ。俺もちょっと手助けするつもりですし。」
「え?手助け?」
「まあ、その時が来たらわかりますよ。とりあえず、アシュアとレフィは王子とじいさんに協力してあげてください。」
「・・・なるほど、わかったわ。」
・・・という会話をしていたの。
ちょっと半信半疑もあったけど、まさか本当にマシリの領主が攻めてきて、応援をサビザと首都に頼んだなんて。
さすがユウジン、性格に難はあるけど頭はいいわ。
「・・・ふうむ。やはりか。」
マリルクロウ様がそんなことを呟いた。
「マリルクロウ様?どうしたんですか?」
私が聞くと、マリルクロウ様は考えるような仕草をしながら口を開いた。
「・・・マシリの領主オスロが攻めてくる可能性は考えておった。」
え?もしかして・・・。
「オスロはわしをグラエム王に会わしたやつじゃ。じゃから、わしが王子派になったことは、オスロの面目丸潰れにするようなことじゃから、それを恨んでいるじゃろう。そんなところに、わしと王子がテレファにいると聞いたら攻めようと王に進言するじゃろうなと思うとった。」
ユウジンの予想と同じようなこと言ってる!
さすがマリルクロウ様も頭いいわあ!
「じゃが・・・ふむ、どうするかのう?王子。」
王子も考え込んでしまった。
ど、どうするのよ!?




