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悪魔は託す

気になるのは悪魔教幹部の、"セカンド"という文字だ。


・・・確か、トリズデンで悪魔教信者の貴族ロベルドが通信魔法の入った魔石で話していた相手はサードだったっけか。

セカンド、サードと来たらファーストがいるかな?

いるとしたら、ファーストが最高指導者のことだろうか?



3人にオーランド王子が悪魔教幹部であることを告げると3人とも信じられない!?と驚いていた。


そして今は、そもそもなぜ俺が怪しんだかという話になっている。


「あの王子が初対面で協力してくれと言ってきたときに、一瞬意識が飛んだほどの目眩がしたのです。しかし皆さんはそんな様子がなかったので、なんだろうと思っていたら、急に皆さんが王子に協力的になったのでおかしいなと思いました。その時王子のステータスを見ると、隠蔽魔法がかかって見れませんでした。」

「え?でもさっき、ステータスを見たって言ってたわよね?」

「そうです。鑑定魔法の級を上げることができまして、ステータスに隠蔽魔法がかかっていても見れるようについ最近なったんです。じいさんのステータスも見れますよ。」

最上級のことは説明が面倒なんで割愛した。

3人は鑑定魔法のことはよくわかってないので、中級か上級かになってそんなことができるようになったのだろうくらいに思ってくれたようだ。


「でもなんでユウジンには使役魔法が効かなかったのかしら?」

「それは多分、これのおかげかと思います。」

俺はそう言って両手の人差し指にそれぞれはめている指輪を見せた。

「これは『回復の指輪』でHP・MPの回復速度上昇と疲労軽減・疲労回復の速度上昇、状態異常の軽減をしてくれるもので、こっちのは『倍加の指輪』で装備しているものの効果を倍にするものです。この2つが合わさって、状態異常が倍軽減されて一瞬かかっただけですんだのでしょう。」

「へえっ!すげえもん装備してるんだな。」

マスティフはまた感心したように言ってきた。


「それで使役魔法(人間)があった話に戻りますが、恐らく王子は人間を使役しながら、誰にもバレないようにステータスに隠蔽魔法をかけていたのでしょう。」

「オーランド王子の周りの人は皆かかってるのかしら?」

「かかっていますね。王子は使役状態とステータスに表示されないように隠蔽魔法で隠蔽していたので、級を上げるまでわかりませんでした。」

これは最上級鑑定魔法を取れてから改めてカルディルらを鑑定してみてわかったことだ。

「オーランド王子は色んな人を使役して、使役魔法が使えないと思い込ませたんでしょう。そして正義感が熱くて人望がある庶民が思う理想的な王子に思わせて自身もそれっぽい行動を取った。そして色んな人の支持を集めて反旗を翻したということではないかと思います。」

バージストや騎士兵士たちが王子の説得で次々とこちらに寝返ったり、情報をスラスラ言い出したのは恐らく、使役魔法を使ったからだろう。


「でも、だったらなぜ反旗を翻したのかしら?父親を使役できるんだから、使役したら実質自分が王になったようなものになってるはずよね?」

「そこはまだわかりません。その手懸かりがあるかと思って、アウルサの実験場に行こうと思ったのです。」

「アウルサの実験場に?」

3人とも首を傾げたが、俺の予想が正しければ・・・王子は実験に関係している。

なんせ魔物(・・)()を掛け合わせる実験、だものな。


「俺とマスティフがアウルサに行くので、その間同行するアシュアとレフィには王子とじいさんの動向を見守ってほしいんです。それもあって、あなた方に万能薬を飲ませたんです。」

「動向を見守る?」

「もしかしたら西側で大規模な戦いがあるかもしれません。」


そして俺の予想を話した。


「・・・なるほど、わかったわ。」

「それで、様子を見てじいさんに万能薬を飲ませて王子が使役魔法を持っていることや悪魔教幹部であることを話してほしいんです。」

「マリルクロウ様にね。確かに今は・・・無理そうだものねえ。」

アシュアは苦笑して、マスティフとレフィはうんうんと頷いた。


じいさんはキュベレの町に着いた辺りから、王子の側にずっとつくようになった。

これは恐らくじいさんという強力な戦力を手元に置いておきたい王子の考えで、じいさんを側にいるように使役魔法を使っているんだろう。

じいさんはそれによって王子の側にいることは当たり前のことだと思い込んでいるし、周りも当たり前のこととしている。

そのためじいさんに万能薬を飲ませて話したいが、王子がいるのでできないのだ。


「わかったわ。様子見てマリルクロウ様に飲ませるわ。」

アシュアはそう言ってくれたのでアイテムから万能薬を出して渡した。

「お願いします。」





それから4日ほどして、王子とじいさん、アシュアとレフィと王子の部下たち3人の元兵士が西のテレファの町に向けて出発した。


そして王子たちが出発して数日後に、俺とマスティフとカルディルと、カルディルの部下の冒険者3人はアウルサの町に向けて出発した。


因みにヘンリスは捕虜のバージストがいることもあり、キュベレの町に残ることとなった。






*********





ある国のあるところ。





眩しいくらいにきらびやかな部屋の中。

巨大なベッドに腰かけて一息ついた中年の男がいる部屋に、ノックの音が響き、壮年の男が入ってきた。

壮年の男は部屋に漂う甘い香の匂いにうっと眉間にシワを寄せた。


「・・・ファースト、相変わらずの悪趣味ですね。」

ファーストと呼ばれた中年の男は、ニヤリと笑った。

「なんだサード。羨ましいか?」

「いいえまったく。その死体(・・・・)を捨てる苦労も、ちょっとは考えて頂きたいですね。」

中年の男の後ろのベッドの中では事切れた全裸の女が転がっていた。

女は苦悶の表情をしていて、体は汚れ、殴られた痕や手足はあらぬ方向に曲がっていた。


「どこの女ですか?貴族なら後始末がややこしくなるから連れ込まないで下さいと言いましたが?」

「お前がやいやい言うからメイドで我慢してやっているんだ。メイドくらいどうにでもなるだろう?」

サードが見回すと、ベッドの下には破かれたメイド服や下着が散乱していた。

「メイドならまあ、いいでしょう。悪魔教信者からいくらでも代わりがいますから。」

やれやれとサードはため息をついた。


「ルナメイアを拐ってこれなかったのは本当に残念だ。あの美貌を汚してみたかったんだがなあ。」

ファーストはくっくっと狂気に笑うのをサードは侮蔑の目で見ていた。

「最高指導者様の名で信者に女を拐うように指示するなんて、もう何回目です?さすがに最高指導者様の耳に届く可能性がありますから、これ以上は止めてください。」

「うん?・・・最高指導者様には届かないと思うがなあ?」

ファーストはなにか思うところがあるのか、明後日の方向を見ながら呟いた。



「・・・ところでサード。用があって来たんじゃないのか?」

「やっと気付いてくれましたか。・・・セカンドから連絡がありました。」

ファーストはその言葉に眉をひそめた。

「セカンドから?あいつは今、反旗を翻して忙しいんじゃないのか?」

「ええ、我々の計画通り(・・・・)にグラエム王に反旗を翻してます。面白い収穫があったそうですよ。」

「面白い収穫?」

「たまたま・・・かどうかはわかりませんが、マリルクロウ・ブラックがヴェネリーグ国内にいたそうで、使役に成功したそうです。」

「な、なに!?」

ファーストは目を見開いて思わず立ち上がった。

「でかしたセカンド!あのクソジジイを使役したか!くはははっ!」

「セカンドはこのままグラエム王を攻めて殺すつもりですが、マリルクロウもその時に一緒に殺そうと考えているようです。それまで散々利用してやるつもりだと言っていました。」

「はははっ!いいぞ!あのクソジジイのせいで我々の仲間の多くが死んだ。悪魔教をここまで衰退させやがった、言わば悪魔教の天敵だ。悪魔教のために利用して殺してやるなんて最高じゃねえか!」

ファーストは腹を抱えて大笑いして言った。


「素晴らしいぞ!セカンド。ただの金ヅルで幹部にしてやったのに、こんな働きをするなんてなあ。」

「本当です。人を使役する魔法と金しか取り柄がない男でしたのに。」

「ははっ、いい知らせに気分がいい。今日はバカ貴族どもを招いてパーティーでもするか?」

ファーストのその言葉にサードはえっという苦い顔をした。

「一昨日もやったばかりではないですか?資金もそこまでないのですが、考えますか?」

「なに、セカンドがヴェネリーグ国王になったら金を出させたら問題ないだろう?」

あっけらかんと言うファーストに、サードはそれはそうですね、と思い直した。

「では、セカンドがヴェネリーグ国王になったらお布施は今までの5倍にしましょう。なに、悪魔様のためと言えば国庫でも税からでも出すでしょう。それでヴェネリーグ王国の財政が逼迫(ひっぱく)しようが我々には関係ありませんからね。」



ファーストがニヤリと笑うと、サードも口元だけ笑った。




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