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悪魔は陰で功労してみる

「うらあああっ!!」

「ぎゃああっ!!」



大剣の重さを利用した一振りに、兵士は体を切られて悲鳴をあげて倒れた。

それを見届けることなく周りの兵士に切りかかり兵士は首を切られて倒れるが、まだまだ兵士はいる。

俺は魔力を大剣に乗せて構えると、迫り来るたくさんの兵士に向けて振り回した。


「おらあああっ!『斬月(ザンゲツ)』!」


剣から三日月のような巨大な刃の衝撃波が飛んで兵士10人ほどが真っ二つに裂かれて吹っ飛んだ。

この技は最近じいさんの特訓でできるようになった技の1つだ。

武器がマジックアイテムでないと魔力が剣に乗らないので、今までマジックアイテムの武器を持ったことがなかったためできなかった。


「・・・はぁっ。」

俺は息をついて周りを見回した。

相手の騎士兵士が次々に押し寄せるのをこちらの冒険者や元兵士たちが向かい打ち、そこら中で殺し合いが展開されている。

足元にはどちらともの死体がゴロゴロ転がっていて、地面は血で赤く汚れている。

血やその他の匂いで辺りはひどく匂うのだが、すでに1時間近く戦っているので鼻はイカれている。


戦ってみると、騎士兵士はやはり憔悴しているのを無理矢理奮い立たせて戦っているので思ったよりは力強い攻撃はされるが、1週間前にテントを襲撃したときよりは確実に弱くなっていた。

戦力差ではあちらにまだ分があるが、個人の戦力ではこちらが有利なのでこの調子で戦ってくとそのうちあちらが根をあげて勝てるかもしれない。

やり方はとても気に入らないが、ユウジンのやったことがこうして俺たちを勝ちに導いているのがわかる。



ん?あれ?

こっちの冒険者や元兵士たちがいい感じに押してるように見えるな。

あれ?あの冒険者、さっき脇腹を切られてなかったか?

なんでピンピンした姿で戦ってるんだ?

あれ?あの人も、あの人も・・・。

怪我して下がっていった者たちが、いつの間にか復帰している?



「マスティフ、大丈夫か?」

呼ばれて振り返ると、王子の側近のヘンリスが槍で周りを捌きながら来ていた。

「あれ?ヘンリス、肩切られて下がったんじゃなかったのか?」

ヘンリスは騎士の攻撃を受けて肩を負傷し、たまたま近くにいた俺が助けて下がらせた。

それが10分ほど前のことだ。

ヘンリスは微妙な顔をして答えた。


「結構深く切られていてたんだが、救護所で治してもらったんだ。」

「救護所なんてあったのか。それにしても早くないか?」

今頃救護所はごった返しているはず。

それなのに10分は早すぎると思う。


「それが、ユウジンが回復魔法で皆を治しまくっているんだ。」


その言葉に目を見張った。

そうだ!そういやあ、フラヴィーナの時も治して回っていたっけ。

今回は救護所で治しているのか。

あいつが回復魔法を多重魔法で治しまくっているのだろう。

だったら傷付いた者が早く戦場復帰するのも納得だ。

「ユウジンはさすがマリルクロウ様の弟子だけあるな。回復魔法を多重魔法を使って一気に治していっているぞ。それにアシュアも、怪我人の状況や容態をすぐ判断して重傷者を先にしたりしてユウジンの手伝いをしていた。おかげで救護所はごった返している割には早くさばけているようだ。」

ユウジンだけではなくアシュアも、彼らは彼らなりに戦っているのか。

おかげでこちらの士気も上がって、戦況が段々押してるように見えたのかもしれない。



ザシュッ



ヘンリスと別れてまた戦っているとそんな音が背後から聞こえてきた。

ん?と振り返って見ると、こちらに背後から攻撃しようとしていた兵士の首を、レフィがナイフで突いていた。

「レフィ!?すまん、助かった!」

「・・・いいえ。」

レフィは相変わらずの無表情で事も無げに返事してきた。

「ヘンリスから聞いたが、アシュアはユウジンが救護所で味方に回復魔法をかけまくっているのを手伝ってるってよ。」

「・・・そうですか。アシュアはアシュアで頑張っているようですね。ありがとうございます。」

表情も声も変わらないが、なんとなくやる気が伝わってきたような気がする。



その時、大きな悲鳴が響き渡った。



近くで聞こえたのでその方を見ると、他の騎士よりも豪華な鎧を着た男と騎士の鎧を着た女が次々とこちらの味方を笑顔で切り伏せていた。

男女は俺とレフィに気付くとゆっくりと武器を構えながら近づいてきた。

男は俺と年は変わらないくらいの30代くらいの長い深紫の髪に紫の目の端正な顔立ちのイケメンで他の騎士よりも豪華な赤い全身鎧を着てクレイモアを構えている。

その横の女は20代くらいの短い深紫の髪に紫の目の美女で、他の騎士と同じ赤い全身鎧を着て細剣を構えている。

髪や目の色といい、顔も似ているので兄妹か?


「ふん、お前、なかなか強そうだな。私は捜索・保護隊の副隊長で副騎士長のメイヴィス・マクシルンだ。」

「その妹の騎士ネル・マクシルンよ。」

おっ、副隊長か!

「自己紹介どうも。・・・"黒の一族"マリルクロウ・ブラックの孫のマスティフだ。」

「・・・暗殺者レフィ。」

俺たちもなんとなく自己紹介してみたのだが、俺の自己紹介で兄妹は目を見張った。

「"黒の一族"!?・・・そうか、貴様が噂の孫か。」

じいさんが王子派に入ったのはバレてそうだし、ついでに孫や弟子ということで俺たちのことも情報がいってるとは思っていたが、やっぱりいってたか・・・。

するとネルが訝しい表情をした。

「ん?・・・大剣を持つ男に、暗殺術の女・・・。もしかして、テントを襲撃したのは!?」

「!?・・・ははっ、どうやらバレたか。」

俺がくくっと笑うと兄妹は憎々しい視線を向けてきた。

「くっ!お前らのせいで・・・!この屈辱、お前を殺して晴らさせてもらうぞ。」

メイヴィスは俺に向けて剣を構えた。

「じゃあ、私はあなたを殺してあげるわ。」

ネルはレフィに剣を構えた。

「あー、馬に関しては俺たちの責任じゃないんだが、まあ、しょうがない。レフィ、女の方を頼むぜ。」

「・・・はい。」





メイヴィスは剣を構えたまま、俺に向かってきた。

「やああっ!」

そして剣を振り上げると勢いよく頭めがけて素早く下ろした。

俺はそれを大剣の腹で防ぎ、力で跳ね返した。

「はっ!」

メイヴィスは跳ね返されて少しよろけたので蹴りをいれたが、ギリギリでかわされてしまい続けて切りかかった攻撃も剣で防がれた。

身のこなしでわかるが、今まで戦ってきた騎士兵士とは段違いに強いな。

・・・だが、俺の勘ではレベル50はないな。

それにここまでろくに食べれずに歩いてきた影響で、だいぶ体力が落ちてるのが剣を受け止めた力加減の弱さでわかった。


メイヴィスはまた構えて向かってきた。

今度は剣を振り上げずに突く構えで近づいてきて、俺の腹めがけて突いてきた。

俺は身を翻して避けると、のばされた両手に切りかかった。

メイヴィスはそれをすぐさま察知して素早く腕を引いたが、少し反応が遅かったので腕は少し切れた。

それに動揺してできた隙を俺は見逃さず、メイヴィスの顔に向けて手をのばし、ユウジンの無詠唱を真似てファイアを放った。


ボオッ

「ぐあっ!?」


メイヴィスは突然の炎に顔を手で覆い後ろにのけ反った。

顔が少しやけどをして前髪が焦げた程度だが、大きな隙となった。

俺は大剣を突きの構えにして、魔力を大剣に乗せた。


「はあああっ!『翔突(ショウトツ)』!」


メイヴィスの腹に向けて突くと大剣は腹に刺さり、剣から出た衝撃波が腹を貫通して後ろの方にいた兵士の体を吹っ飛ばした。


「ぐああああっ!!・・・く、くそぅっ!!」

メイヴィスは苦痛に顔を歪めるも自身で奮い立ち、足掻いて剣を振り回して俺に向けてきた。

俺はメイヴィスの腹から大剣を抜くと素早くメイヴィスの剣を防ぎ、腕を切り落とした。


「ごぶっ、ぐぅっっ・・・、こ・・・こんなところで・・・。」

メイヴィスはゴポリと口から血を吐いてゆっくりと前のめりに倒れた。




「・・・ふうっ。」

俺は大剣を地に刺してため息をついた。



その時、なにかがゴロンと転がってきた。

それはネルの首だった。

驚くと同時にドシャッと音がして見ると、ネルの首から下が地面に倒れた音だった。

ネルは全身切り傷が刻まれ、その倒れた体の傍らには何でもない顔でナイフに付いた血をはらっているレフィの姿があった。

「・・・レフィも終わったか。お疲れさん。強かったか?」

「・・・多分万全だったらそれなりに強かったと思います。」

「俺も同意見。」





その時、キュベレの町の領主の声が響いた。



「捜索・保護隊の隊長を捕らえた!騎士兵士は全員攻撃を中止せよ!」




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