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悪魔は闇に潜む

最初隊長視点で途中から三人称視点になります。

首都シェブーストから南に馬車で1週間。

我々、オーランド王子捜索・保護隊はサビザの町に着いた。




捜索・保護隊は騎士1000人兵士5000人。

騎士は馬車に乗って、兵士は徒歩での移動だ。

1週間の移動の疲れもあっただろうからサビザの町で2日滞在することとなったのだが、全員を受け入れられるほどの大きい町ではないので兵士5000人は町の側にテントを立てて寝泊まりすることとなり、騎士1000人は町の宿屋十数件を貸しきりにして泊まることとなった。



「こんな狭く質素なところで申し訳ございません。」

サビザの領主は冷や汗をかきながら私にペコペコ頭を下げてきた。

50代の頭頂部はハゲている小太りの男だ。

私は醜いその姿を無視して部屋を見回した。

「領主の屋敷とはこんなに小さなものとは知りませんでした。でもまあ、ここしかないのでしたらしょうがないですね、我慢します。」

この町には高級宿屋はないということで、仕方なく私は領主の屋敷に泊まってやることにしたのだ。

「ありがとうございます。」

領主はペコペコ頭を下げながらそそくさと出ていった。

部屋には金の彩飾の施されたソファや調度品はあるにはあるが、全部100万イン程度のものばかり。

こんな質素な部屋に2日間滞在など私でなかったら領主は不敬罪で処刑されていたかもしれないが、可哀想だから我慢してやろう。

私は心優しいからな。



私は1ヶ月前に外務大臣となったバージスト・ベンヘラー。

オーランド王子捜索・保護隊をグラエム王から任された隊長だ。

公爵家に生まれ長男として素晴らしい教育を受け、元々の才能もあって40歳にして父から公爵を引き継いで当主となり、ほどなくして外務大臣になった。

前外務大臣はグラエム王の政策に反対して処分されたバカだ。

そのバカの息子は次期外務大臣としての才能があったようで、私が大臣に就任しても「ヘンリス様がよかった・・・」とぼやく部下が多かったので、見せしめでヘンリスを殺そうとしたが邪魔が入ってヘンリスは行方をくらまし、今も見つかってはいない。

噂ではオーランド王子の元にいると聞いたのでいいタイミングだ。

ヘンリスを見つけたら王子共々殺してやろう。



「スパイからの情報で、我が息子オーランドはキュベレの町に匿われていることがわかった。そこで、オーランド王子捜索・保護隊を編成して至急、キュベレの町へ向かえ。騎士1000、兵士5000でよい。隊長は外務大臣バージスト・ベンヘラー。副隊長は騎士長が決めよ。捜索・保護と名うっているが場合によってはキュベレの町を滅ぼしてもよいし、王子の生死も問わぬ。」


グラエム王はなんでもない顔でそう命令された。

場合によっては、と一応言っているが騎士や兵士の数からいって町を滅ぼし王子を殺してもいいと言っているようなものだ。

自分の子を殺してもいいと言うのだ、なんと恐ろしい王だ・・・。

だがその恐ろしさにのぞくカリスマ性に魅了された者は少なくなく、私もその内の1人だ。


首都出発前に王の秘書がスパイからの情報をまとめた資料をくれた。

キュベレの町にいる王子の部下で戦える者は約5000人。

と言っても冒険者や庶民が占めている、素人集団のようなものだそうだ。

こちらは騎士がいるのだから最低でも相手は1万人はいてやっと互角、というところだろう。


ヘタな作戦は立てなくても正面からぶつかったらどうにでもなる戦力差だ。




「失礼します。」

硬いソファに座って紅茶を飲んでいると、副隊長が部屋に入ってきた。


こいつは騎士長が今回の隊の副隊長に任命した副騎士長のメイヴィス・マクシルンという男だ。

30代の深紫のサラサラ長髪に紫の目の端正な顔の奴だ。

赤い全身鎧が似合うのが気に入らないし、私よりサラサラヘアーなのが気に入らない。

メイヴィスに続いて女騎士も部屋に入ってきた。

この女はメイヴィスの妹で同じく騎士のネル・マクシルンだ。

20代の深紫の短髪に紫の目の美女でこちらも赤い全身鎧が似合うので気に入らない。


メイヴィスは口元だけ緩めて一礼してきた。

「お寛ぎのところ失礼します。バージスト様、騎士が全員宿屋に入りました。明後日の出発のお時間は何時にいたしましょう?」

「出発するといったら朝に決まっているだろう?そんなことも騎士というのはわからないのか?」

俺が皮肉を言うとメイヴィスは表情を変えなかったが後ろの妹ネルは眉をひくつかせた。

「申し訳ありません。」

メイヴィスは頭を下げてきた。

「明後日まで騎士・兵士は自由に過ごすのを許す。多少の問題行動は許してやるが、目に余る行動はするなと言っておけ。ああ、それと食料の確保は怠るなよ。飲食店の1つや2つ、買い占めてもよい。金は国から出るからな。」

「は、わかりました。」

メイヴィスはまた一礼すると妹と退室していった。


ここまで1週間一緒に行動してやったのだが、どうもあの兄妹はいけすかない。

兄はこちらに従順な態度ではあるが取り繕っているのが見え見えで、勝ち気と思われる妹はたまに私を睨んでくるし。

私のことをバカにしているのだろうか?

公爵であり外務大臣であるこの私を?

はっ!バカなのはお前たち兄妹の方だ。

私に気に入られようと思う頭もないならバカも同じ。

せいぜい私の駒の1つとして動くといい。




*********




部屋から出た途端、ネルは部屋の方を睨んでいた。



「兄さん、あいつマジで気に入らないわ。副隊長の任を辞退した方がいいわよ。」

「・・・無理なことを言うな、ネル。いくら気に入らなくても、これは騎士長直々にの命令だ。辞退はできない。」

メイヴィスは睨んでいるネルを促し、歩き出した。

「でもあんなナルシストとまだしばらく一緒だなんて、耐えられそうにないわ。戦いをわかってるように見えないし。」

「まあ・・・今回はキュベレで戦うことは必至だが、戦力差が段違いだ。あの貴族が指揮もろくにとれないとしても、正面から攻めるだけでこちらが勝つのは明らかさ。」

「だったら兄さん、兄さんが王子を討てばいいわ。王子を討ったらあんなナルシストより最大の功労者として兄さんが注目されるわ。」

「あの貴族に勝つのが目的ではないぞ?・・・だが、王子を討つのは俺、というのはいいな。俺が討てば騎士長に昇進できるし、マクシルン家の爵位も上がるだろう。」

メイヴィスが笑顔でそう言うと、ネルもパアッと笑顔になった。

「そうよ兄さん!今は副騎士長だけど、きっと騎士長になれるでしょうし、男爵から上がるかもしれないわ!兄さんは騎士20人を1度に相手できるほど強いのよ。きっと王子を討てるわ。」

「そう言うネルだって、騎士10人を1度に相手できるほど実力があるだろう?ネルにも、今回の戦いは期待しているよ。」

ふふっとネルは照れ笑いをした。



「・・・でも、アレが気にかかるわね。」

兄妹は、兄が副隊長ということで領主から領主の屋敷のバージストとは離れたところに部屋を借りていた。

部屋に戻ると、ネルはテーブルに置いてあったスパイからの情報の資料を手に取った。


バージストは全く気にしてはいなかったが、2人には不安要素があった。


「資料には、王子派に黒の一族元当主のマリルクロウ・ブラックが加わったとあるわ。これは本当かしらね?」

そう、スパイは王子とマリルクロウが一緒に行動していると言ったのだという。

しかもマリルクロウだけでなく、孫や弟子も一緒だという。

「最近この国に来ているらしいという噂が流れていたが、よりによって内紛に加わってくるとはな・・・。これが本当なら、大変な戦力になる。」

「あのナルシストはどう考えてるの?」

「・・・隠居していた老人が加わったところでこの戦力差はどうにもできないだろうと、一蹴したよ。」

ネルは呆れた顔をした。

「あのナルシスト、ホントバカね!マリルクロウ様の伝説を知らないのかしら?20代そこそこの時に騎士100人を1人で相手した人よ?」

「孫というのも弟子も気になるしな。」


メイヴィスはふむ、と少し考えると口を開いた。

「・・・あの貴族はアテにならないのはわかってる。臨機応変に動けないのかと怒るのに、いちいちお伺いをたてないとそれはそれで怒るからな。・・・そうだ、マリルクロウ様を老人扱いするなら、あの貴族にマリルクロウ様の相手をさせよう。その隙に俺たちは王子を探して殺したらいい。」

「!?さすが兄さん!名案ね!」

「マリルクロウ様が現れたらあの貴族をおだてるか、俺たちが頼りないフリをするぞ。そうしたらあの貴族はマリルクロウ様の相手を喜んでするだろう。」

メイヴィスは慌てるバージストの姿を想像して、ニヤリと笑った。

「うんうん、そうね、そうしましょう!」

ネルはニコニコ笑って何度も頷いた。





*********




そして2日、サビザの町で過ごした隊はキュベレに向けて出発した。



盗賊はさすがにこの集団を襲撃してくることはなかったが魔物はちょこちょこ現れて、その度に兵士や騎士が迅速に対応していた。




そして3日目の夜、夜営をしていた中、突然悲鳴があがった。




「ぎゃああああっ!!て、敵襲!敵襲だああっ!!」





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