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悪魔は親睦を深める

キュベレの町には、サビザの町から南に馬車で1週間かかる。


その間一緒に行動するのだから、当然の流れで俺がアイテム収納魔法持ちと出発したその日にバレた。

まあ、馬車の中が異常に物がないし俺らは手ぶらだからそりゃバレるわなって感じだ。

オーランド王子はものすごい感心した目で見てきて、「さすがマリルクロウ様の弟子だ!」と褒められた。

そういえば俺はじいさんの弟子という紹介だったな。

じいさんの特訓はマスティフにしかしてないから忘れるよ。


そしてなんか知らないが、バレてからは王子ら5人と俺ら5人の10人分の食事を出すことになってしまった。

まあ、食料にものすごい余裕があるし、なにかあったらじいさんがマスティフの特訓しながら食えそうな魔物を狩ってきてくれるのでいいんだけど・・・。

御者兼護衛の女性マドリーンやアシュアやレフィが手伝ってくれるからいいけどさあ。


日中の移動中はやっぱりたくさんの魔物や盗賊が馬車を襲ってきたが、それぞれで馬車を守ることにして王子の馬車は王子以外が守ることにしているようだった。

俺たちはすっかり慣れてしまっていたのでジャンケンで2人選んで対処していた。

俺はあくまでもじいさんのオマケという立ち位置を守るべく罠魔法・剣魔法・多重魔法という目立つものは隠して、ナイフなどで戦うことにした。

皆は「なんでいつもの戦い方じゃないんだ?」と聞いてきたが、適当に誤魔化した。

変に王子に戦力として注目されたくないんだよ。



夜は焚き火をして見張りをたてて交代で見張ることとなった。

じいさんが隠蔽魔法をやろうとしていたが、王子側に手の内を見せるようなことはしたくないと思って皆に頼んで秘密にしてもらった。

皆はなぜ秘密にするのかと首を傾げていたが、俺の頼みを聞いてくれた。


オーランド王子のテントは馬車のどこに入っていたのかと思うほど豪華なもので、テントの布に金の装飾がしてあるわ、ふっかふかの寝袋みたいなので寝てた。

もちろん王子が見張りをするわけなく、4人が1人ずつ交代で見張っていた。

俺たちも1人ずつ見張ることにして、見張りに慣れてないアシュアが1番時間を短めで辛くない時間帯にした。



1週間も一緒に行動しているのだから、お互い自然と仲良くなった。

王子や王子派の4人は当初、有名人のじいさんに緊張していたがそれも段々解けてきて、3日目くらいからは普通に話せるようになっていた。

どうやらいつも笑顔で優しい態度のじいさんに親近感が沸いたのもあったのだろう。

アシュアとマスティフはあの性格だからあっという間に仲良くなって、今では一緒に食料になる魔物を狩ってくるくらいになった。

レフィはあいかわらずの無表情であまりしゃべらないようだが。

俺はまあ、善人そうな見た目から話しやすいと思われたようで早くから話すようになっていた。

クロ助は人懐っこい性格なので初日から皆のアイドルと化した。


「え、カルディルとヘンリスは事故死した大臣たちの子供なの!?」

夜に皆で焚き火を囲んで夕食のカレーを食べていたのだが、何の気なしにアシュアがカルディルとヘンリスが王子の味方にいる訳を聞いたところ、そう答えたのだ。

「ああ。俺の父親は財務大臣、ヘンリスの父親は外務大臣だったが、1ヶ月月ほど前になるか、突然事故で死んだと知らされたんだ。あまりに突然で家族皆混乱したし悲しかった。でも父親の遺体をもう処分したと王からあっさり言われて愕然として、おかしい、王が殺したんじゃないのかと疑念を持ったんだ。俺は父親たちの死の真相を明らかにして王の仕業だと公表するために、オーランド王子に相談して、反旗を翻すことになったんだ。」

カルディルは元々大臣の息子ということで各王子と面識があったそうだ。

それで王と対立しているオーランド王子に相談したということか。


「俺は父親の後を継いで大臣になることを約束されて、父親の元で学んでいたが、突然父親が事故死して、さらには王が仲良くしていた貴族がなぜか新しい外務大臣になったんだ。その新しい外務大臣に邪魔だと殺されかけた。その時助けてくれたのがオーランド王子とカルディルだっだ。」

それからは新しい外務大臣に殺されないためにオーランド王子の味方になった方がいいと判断したようだ。

もちろん、父親の死の真相を知りたいというのもあってのことだそうだ。

「しかし、オーランド王子のお優しい心と正義感に触れて、この方が王になるべきだと思うようになった。今でも死の真相も明らかにしたいが、オーランド王子の盾にも矛にも喜んでなるつもりだ。」

ヘンリスは無表情ながらその顔はなんとなくキリッとしていた。

ヘンリスの言葉を聞いてカルディルもうんうんと頷いていて、御者兼護衛の男女も微笑んでいた。



オーランド王子はいい部下に恵まれているようだ。



「私たちは王に不満があってオーランド王子の人柄に惹かれて集まった冒険者よ。」

「王は元々から短気な性格っていうマイナスイメージもあって国民からそこまで好かれてはなかったんだ。でもオーランド王子は人当たりもいいしお優しいので有名だったんだ。」

御者兼護衛の男女、ノースとマドリーンも自身のことを言ってきた。

ノースは青い髪を真ん中分けした若者で、マドリーンは少し長めの黒髪で後ろで1つの三つ編みにしている若い女性だ。

どうやらオーランド王子の人気の効果で、2人のようにオーランド王子の元には冒険者だけではなく商人や一般市民なども多く集まっているようだ。




俺自身、王子と話すこともちょこちょこあった。





「ミャー」

クロ助は遊んでっという感じで鳴いて王子に飛び付いた。

「わっ、はは。クロスケはお転婆だな。」

オーランド王子はにこやかにクロ助を抱き上げて頭を撫でた。

クロ助はゴロゴロ言って気持ち良さそうにしている。

王子は気心がしれたようで、じいさん以外にはタメ口になっている。

「すいませんオーランド様。クロ助、飛び付くなんて失礼なことしちゃダメだぞ。」

「俺は飛び付いてくれて嬉しいよ。元気があっていいじゃないか。」

「ありがとうございます。」

俺は苦笑しながらグツグツ煮えたぎる鍋の中身をかき混ぜた。


今はある日の昼食を作っているところで、俺は野菜たっぷりトマトスープを作っている。

じいさんを先頭にマスティフ・アシュア・カルディル・ヘンリスが食えそうな魔物を探して近くの森に突撃していって、レフィと護衛2人が馬車の馬の世話や俺のアシスタントをしてくれたりしている。

オーランド王子はこちらとしてもなにかさせるわけにはいかず、手持ち無沙汰で俺の近くに座って料理を眺めていた。


「それにしてもユウジンは器用だね。戦いも御者もできてこうやって料理もできるなんて。」

「いやいや。俺なんてどれも中途半端です。戦いはものすごく強い訳でもないですし、御者は最近覚えたばかりですし、料理も一通りできるだけですし。」

「それでもだよ。できるということがすごいと思うぞ。・・・俺なんて皆に頼らないとなにもできないからなあ。」

王子はそう言って苦笑した。

王子でも自虐は言うのか。

この国の最高権力者の息子なんだからふんぞり返ってると思っていたんだがな。


「それだけ頼りになる方々が周りにいるということですね。俺はそっちの方がすごいと思いますよ。」

俺がそう言って微笑むと王子は照れて笑った。

「そうか・・・。では、皆に感謝しないといけないな。」


「・・・その気持ちが本当なら、あなたは裏切ってないと思いますがね。」

「ん?なにか言ったかい?」

「いいえ?」



それからしばらくして、魔物を狩りにいった面々が帰ってきて、マスティフとカルディルが体長3メートルほどのグリフォンを引きずっていた。


「は!?グ、グリフォン!?」

俺も驚いて声を出してしまったが、王子も驚いていた。

護衛2人もレフィも固まっている。

「へっへーん!すげえだろ!森の洞窟にいてさ、じいさんには見ててもらって、俺たち4人だけで倒したんだぜ!」



え、俺1人で倒したんだけど。

・・・とは思ったけど、もちろん言わない。



「す、すごいですね。皆さん怪我もしてないようですし。」

「ちょっと危ない時もあったけどね!私が最後に攻撃したのがとどめになって、私レベル上がって42になったんだから!」

アシュアはえっへんと胸をはって自慢してきた。

アシュアはレベル30代だったが、一気に上がったなあ。

このグリフォンは鑑定してみると・・・レベル60か。

だったらそれくらい上がるわな。

アシュアのドヤアにレフィは無表情だが「・・・アシュア、すごいです。」と言って拍手をしていた。


「とりあえず血抜きだけして持ってきたんだけどよう。ユウジン、アイテムに入れといてくれるか?夜に捌いて皆で食べようぜ!」

「わかりました。羽や目玉も高価ですからここで捌いて捨てるにはもったいないですからね。」

「そうそう。・・・ってユウジン、よく知ってんだな?」

おっといけない。

「そうですか?気のせいですよ。」




夜が豪勢になるのが決定したので昼食は俺のアイテムの中の軽いものにした。

その夜、王子以外の男たちで捌いて1番いいところと言われているモモ肉をシンプルに塩コショウのステーキで食べることにしたのだが。

脂の甘み、肉の弾力・・・なんて美味さだ。

あまりに美味すぎて皆、震えていた。

生肉であげたクロ助でさえ震えていた。



こうして1週間かけてキュベレの町に着いた。


キュベレの町は完全に王子派なようで、町の門番は敬礼して馬車を迎え、町の中に馬車が入ると町民は皆馬車に向かってにこやかに手を振っていた。

王子は馬車の窓を開けて手を振ってくる町民にえがおで手を振り返していた。

その光景が町の奥の領主の屋敷に着くまで続き、領主の屋敷の前にはたくさんのメイドと執事が出迎えていた。

屋敷の前に馬車を停めると王子は颯爽と降りてきて、執事とにこやかに会話をしていた。

その間にカルディルとヘンリスは王子に続いて降りて、護衛の2人は馬車を仕舞うために屋敷の建物の裏へ移動し始め、こっちの馬車はじいさん・マスティフ・アシュア・レフィが馬車から降りて御者をしていた俺は護衛2人の移動する馬車について裏へ向かった。


裏にいた厩舎担当の人に頼んで屋敷の表に戻ると。



ん?なにやら王子の様子がおかしい?


王子が呆然としていて、皆がどうしたんだろう?という不思議な顔を王子をして見ていた。


「オーランド様、どうされました?」

執事が心配して声をかけると、王子はじいさんの方を向いて口を開いた。




「・・・首都に潜んでいるグロスから通信を受け取ったんですが・・・。このキュベレに向けて兵士たちが来るとのことです。・・・場合によっては、キュベレの町を滅ぼしてもかまわないと、王が言ったそうです。」





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