悪魔は王子と会う
ちょっと短めです。
首都シェブーストから南に1週間、馬車を走らせて俺たちはサビザの町にやって来た。
道中はやはり魔物や盗賊がちょこちょこ馬車を襲ってきたが、すっかり慣れてしまった俺たちは雑談しながら倒すほどになっていた。
じいさんなんてつまらなすぎると盗賊に説教していたくらいで、盗賊がぽかんとしていた。
んまあ、秒殺されてたから説教の意味があったのか・・・。
魔物は皆に瞬殺された死体の中からお金になりそうな魔物の死体を売ろうとアイテムに入れていった。
サビザの町は首都より暗い雰囲気で、行き交う人も足早に周りに注意しながら歩いている感じだ。
どうやら内紛の影響はここにはあったようで、戦闘があったような血や焦げたようなの跡が家の壁や地面に普通にあって、通りでは焼け落ちた家がいくつもあった。
どうやら王子の支持者と兵士の間でいざこざがあって家に飛び火して燃えてしまったようだ。
俺たちはそんな町中を進んで、グロスから「サビザの町に行ったらこの宿屋に泊まって下さい。」と言われた宿屋に向かい、ほどなくその宿屋を見つけることができた。
宿屋はごく普通の木造の宿屋で、密かに王子の支持をしている店主がやっている宿屋だそうだ。
その店主から王子側に知らせが行って、翌日以降に俺たちを迎えに来る使者が来るという手はずになっている。
ここの町の領主はグラエム王派だそうで、町中にも兵士がいたりするので見つからないようにするためにこういった慎重な接触になるようだ。
俺たちはそれぞれ自由に過ごし、アシュアとレフィはさすがに出歩くのは危ないかもしれないと部屋で過ごして、じいさんとマスティフは相変わらず特訓ということでどこかに行ってしまった。
俺も半ば無理矢理誘われたが、隠蔽魔法で逃げてそのまま町を散策して冒険者ギルド裏の剥ぎ取り小屋でアイテムにしまっていた魔物の死体を売ったり、スラムを見つけて行ってみて、道端でうあうあ言ってる絶望し過ぎて気が狂った浮浪者にわざと声をかけたりしておちょくって遊んで、夜には宿屋に帰った。
そして翌日の昼過ぎ、宿屋に使者が来た。
レザーアーマーを着た冒険者風の若い女性で、「これから王子の元へご案内します。」とにこやかな笑顔で言ってきた。
「兵士に見られてはいけませんので、素早く行動をお願いすることもあると思います。」
「ではわしは帽子でも被っておくとしようかのう。」
じいさんはそう言っていつの間にか買っていたフードに形が似た茶色の帽子を被った。
こういうときは隠蔽魔法で顔か存在を隠せばいいのだが、王子側の人間がいるのでやらないことにしたのだろう。
おそらく、王子側が万が一ろくでもない連中だった場合、隠蔽魔法を悪用される可能性が出てきて面倒なことになるのを避けるためってとこかな。
こちらの手の内を隠しておくという意味もあるんだろう。
女性について宿屋を出ると、女性は商店の立ち並ぶ通りに出て、人混みに紛れるように素早く裏路地に入った。
俺たちも素早く続き、裏路地を奥へ奥へと進んで別の通りに出て、しばらく人混みに紛れてまた違う裏路地に入った。
そして裏路地にひっそりと建つ1件の酒場に着いた。
酒の看板だけ出している、小ぢんまりした建物で女性が中に入ったので続けて入ると、店内は薄暗くて客もまばらだった。
「マスター、いつものあるかしら?」
女性がカウンターで酒瓶を片付けていたチョビヒゲのマスターに話しかけると、マスターはこちらを見てニヤリりと笑った。
「いつものあるよ。奥にあるから取ってきてくれ。」
マスターはそう言って店の奥を指差した。
「じゃあ、お邪魔するわ。」
そう女性はにこやかに言うと奥に進み、俺たちもそれに続いた。
奥はもう一部屋あるようだったが、さらに暗くなっていて光魔法のライトを使おうかと迷うくらいだった。
「こっちです。」
女性は奥の部屋の隅へ行くと、床板を軽々持ち上げた。
そこにはどこかに通じているらしき地下へ伸びる階段があった。
階段を下りるとすぐに部屋があって、光魔法のライトが天井近くに浮いていて明るくて、20畳ほどの広い空間が広がっていた。
その奥に大きなテーブルがあり、そこに3人の男たちがいた。
「王子、マリルクロウ様一行をお連れしました。」
女性がそう声をかけると、3人の男たちの中で1番のキッチリとした服装の若い男性が反応した。
「そうか、ありがとう。マリルクロウ様、ここまで来て頂いてありがとうございます。」
若い男性は笑みをたたえて俺たちを迎えた。
「俺がヴェネリーグ王国第三王子のオーランド・ガレス・ヴェネリーグです。マリルクロウ様にお会いできて光栄です。」
「マリルクロウ・ブラックじゃ。わしもあなたに会えて光栄じゃ。」
帽子を脱いだじいさんもオーランドもニコニコ笑顔でガッチリと握手を交わした。
そして俺たちの紹介もして、オーランドはその度に握手をしていた。
オーランド王子は俺と同い年くらいの20代中盤くらいで赤黒い長めの髪に灰色の目の眉のキリッとしたイケメンで、細身ではあるがガッチリとしている体型に装飾がそこまでないが高そうな貴族のような服を着た姿だ。
まあ、悪い人間には見えない。
それからオーランドは自分の傍らにいた部下2人の紹介をしてくれた。
「俺の友人で側近としてそばにいてくれている、カルディル・ブリトンとヘンリス・ホーリーです。」
カルディルは30代くらいの緑の短髪に緑の目の、マスティフよりごついゴリマッチョ男で、ヘンリスは40代くらいの黒の長髪に青い糸目でヒョロ長の男だ。
カルディルはニカッと笑って勢いよく頭を下げてきて、ヘンリスは無表情で丁寧に頭を下げてきた。
名字があるということは、2人は貴族のようだ。
一応、鑑定魔法しておくか。
俺は王子と側近の2人に密かに鑑定魔法をかけた。
側近は2人ともステータスは見れた。
しかし王子のステータスは見ることができなかった。
名前:###############
種族:###########
年齢:##
レベル:##
HP:####
MP:###
攻撃力:###
防御力:###
智力:###
速力:###
精神力:###
運:##
戦闘スキル:########
魔法スキル:###############
この現象は前にも見たことがある・・・!
王子は隠蔽魔法持ちか!
チッ、ステータスが見れないのか。
だが、なぜステータスを隠蔽しているんだ?なにか隠しているのか?
と、頭の中になにかの声と文字が浮かんできた。
『上級鑑定魔法を一定数使用したことを確認しました。最上級鑑定魔法の取得可能条件をお知らせします。』




