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7、悪魔は陥れる

朝。



今日は朝食にありつけた。


白いご飯と焼き魚に味噌汁に漬け物、卵焼き。


うん、旅館だな、ここ。



近くの席に、同じく宿泊者と見られる金髪エルフが全身鎧を着て和食を食べているのを見て、なんともシュールだなと思いながら食べた。



食べ終わって食堂を出ようとすると、ララに引き留められた。

「あ、あの・・・。」

なにやらちょっと言いづらそうにしている。

「どうしたんですか?」

「あのね、昨日、宿屋にガラのあんまりよくない人が来てね、人探ししてるって言って、特徴聞いたらユウジンと一緒だったから、ユウジンのこと話したの。あの、勝手にしゃべって、ごめんなさい。」

そういえば、昨日あのグループなの1人が宿屋1軒1軒回って、俺がこの宿に泊まってるとわかったと言ってたな。

なるほど、ララに聞いてララが話したのか。


俺は微笑んで申し訳なくうつむいているララの頭を撫でた。

「まったく問題ないですよ。一昨日、冒険者ギルドで絡まれたのを逃げてきたのですが、それがなんか気に入らなかったんでしょうね。」

「えぇ!?じゃあ、私教えないほうがよかったの!?ああ、本当にごめんなさい!」

ララは半泣きで何度も頭を下げてきたので、俺はニコニコ微笑んだまま頭を上げさせた。

「大丈夫ですよ。トラブったわけではないですから。幸い今日は部屋で用事があって外に出ませんから、今日避けてたら飽きるんじゃないですかね?ララは気にしなくて大丈夫ですよ。」

「ほ、本当に・・・?」

「ええ。それに万が一絡まれたとしても、俺はこう見えて強いんですよ。魔法でパパパーンとやっつけちゃいますよ。」

「え、でもギルドで絡まれたときに逃げたんでしょ?」

「うっ!?」

俺が痛いとこつかれた!という反応をするとやっと、ララはふふふと笑った。


「ホント心配だけど・・・、もしなんかあったら町を見回ってる警備兵に言ったらいいわよ。すごく頼りになるから。」

「はい。ありがとうございます。」

警備兵のことまでアドバイスしてもらった。警備兵なんていたか?

昨日町を散策したときは気付かなかったな。

まあ、町中で襲うことはいくらあいつらでもないと思うけどなあ。



ララと別れ、部屋に戻る途中で2階の窓から大通りが見てみると、宿屋の建物の向かいの建物の影になにやら複数の人影が見えた。

朝から見張ってるのか、ご苦労なこった。


でも残念。俺が出掛けるのは夕方近くの予定なんだ。

もちろん、特に用事があって夕方まで出ないのではなく、あくまでもあいつらを焦らすため。

そうした方があいつらがイライラして、注意力散漫になって俺の仕掛けに気付きにくくなると思ったためだ。

さーて、なにしようかな?

あの「世界の歩き方」でも読むか?







「神様監修:世界の歩き方」読破してしまった・・・。


内容についてはまたその都度ということで。


っと、予定していた夕方近くになったな。

そろそろ行動しますかね。


俺は装備を整えると、宿屋を出た。

何気ない足取りで町の南付近の露店をわざと巡って、あいつらが後をつけてきているのか確認した。

ふむ、あのグループ全員ではないな。

あんまり分散されたら困るんだけどなあ。

もうちょっと巡ってグループ全員揃いそうか確認してみるか。


それから30分くらい買い食いしたりしていたら、グループ全員揃っていた。

どうやら俺が動いたのを聞いて慌てて来たって感じだ。

まあ、夕方近くまで俺は外に出なかったから、一旦どっかで待機しとくっていう奴も出てきてもおかしくはないもんな。

ま、全員揃ったなら行きますかね。


俺は何気ない足取りのまま、町の外に出た。

そしてあの森に向かって歩きだし、あのグループもこそこそついてきていた。

因みにグループは火傷男と、同じようなガラの悪そうな屈強そうな奴が3人、卑屈そうな痩せた奴が2人の6人グループで、全員男だ。


森に入って奥に進み、仕掛けをした開けた場所について、そこの奥の方で俺は立ち止まって何かをしている風を装って、グループらに背中を向ける感じでウエストポーチをガサガサやってみた。



するとあからさまのチャンスに、グループは開けた場所に出てきた。


「やっと1人になってくれたなあ、兄ちゃん。」

火傷男はそう言って帯刀していた剣を抜いた。

俺はわざとらしく動揺してみせた。

「な、なんだあんたら!?」

「一昨日のせいで火傷しちまったツケを返してもらおうか。」

「あの火は俺じゃありません。俺が火魔法唱えてなかったのをあなたが1番間近で見ていたはずです。」

「はっ!お前の近くで起こったんだ!おめえに決まってんだ!しらばっくれんじゃねえぞ!?」

男は苛立ってそう叫んだ。

他の男達もゆっくりとだが、武器をそれぞれ構えだしている。

「本当は慰謝料ぶんどってやろうと思ったが、そのとぼけた返事で気が変わった。ここで殺して有り金全部もらっていってやる。」

「元からそのつもりだったでしょう?俺1人を殺すのに6人で来るって、どんだけ弱いグループですか?」

「あ!?てめえ1人のくせに何生意気な口聞いてんだ!?」

「俺たちゃ、ここらで有名な冒険者パーティ"地龍の牙"なんだぞ!?」

「すいません。ここらの人間じゃないんで知らないです。覚えるつもりもないです。」

「くそっ!?このガキ!!」

「やっぱ殺そうぜ!」

「だな、さっさとやっちまおう!」

「殺したいんならさっさとかかってきて下さい。そろそろ夕食の時間なんで。」

俺がそう言って微笑むと、男達は全員ブチギレて、剣や斧を振り上げてこちらに襲いかかろうと、走りよってきた。


ある距離まで来たとき、俺は唱えた。


『全罠魔法、効力停止』


その瞬間、男達の足元に次々と落とし穴が出現した。


「うわああっ!?」

「ぎゃっ!?」

「なああっ!?」

男達はそれぞれ叫び声をあげて穴へ落ちていった。


俺は夕べ、ここに土魔法で無数の落とし穴を掘って罠魔法の隠蔽魔法で蓋をしていたのだ。

穴の上に罠魔法で「この穴を隠蔽して穴は誰にも見えないし落ちないように」と隠蔽魔法をリンクして発動すると、俺が指示しない限り発動し続けるようなのだ。

通常の隠蔽魔法は術者自身にしか使えないので、罠魔法にリンクさせることで術者以外の人や物、場所にもできるというわけだ。



男達が落ちなかった穴は土魔法で埋めていき、3つの落とし穴に3人・2人・1人が入ったようだ。


俺はニコニコ笑顔を浮かべてそれぞれの穴から男達が見える位置へと歩み寄った。

男達はめちゃくちゃ戸惑って壁を叩いたり登ったりしていた。

「わー、いい眺めだねえ。」

俺がそう声をかけるとそれぞれの穴から怒号があがった。


「あんたらホント頭悪いな。あんなあからさまな挑発に乗って考えなしでこのザマ。まだ魔物のほうが頭いいんじゃねえの?」

「て、てめえ!?ここから出せ!」

「こりゃてめえの仕業か!?」

「そうだよー。昨日俺のこと冒険者ギルドで大声で話してたから、わざわざ1人になってあげようと、ここに来たんだよ。」

「あの時の会話聞かれてたのかよ!?」

「うそつけ!?あの時お前はいなかったぞ!?」

「うそかと思おうが、どうでもいいし。勝手にどうぞ。んでさあ、ここから出れそうかなあ?」

「出れるわけないだろ!?5メートルはあるじゃねえか!」

「しかも壁がなんかつるつるして登れねえし!」

そうそう。壁が崩れるようならすぐに出てこられるから、つるつるしてくれた方がいいなと丹念に魔力を注いでみたら、イメージ通りにつるつるになったんだよね。

「つるつるでも頑張って登った方がいいかもな。もう夕食の時間だし、蓋して帰るし。」

「は!?」

「なんだと!?」

そう戸惑う声を無視して罠魔法の隠蔽魔法で蓋していった。

今度は誰にも見えず落ちず、中の音も匂いも外に出さないようにした。

罠魔法だと知られるのはアレかなと思って無詠唱で蓋をした。


「俺の声、聞こえるだろ?この蓋、見た目白っぽい透明だけど俺の魔法で、誰にも見えず誰も落ちず、中の音と匂いが外に漏れないようになってんの。だからどんだけ助けを呼んで叫んでも外に漏れない。でも登ったら蓋は開くようになってるからせいぜい頑張んなよ。んじゃあ、気が向いたら明日見に来るわ。」

そう一方的に言って森を後にした。

中でどんな怒号とかがあがったかも知れないが、聞こえないしね。


そういやあ、うまくいったときに口が悪くなる癖が出ちゃったな。

いけないいけない。

せっかく敬語で人畜無害になってんだから、敬語に戻さないとね。


とりあえず今日は、隠蔽魔法の応用を試せたから楽しかったな。

あいつらはどうなろうとどうでもいいけど、蓋がいつまで効力維持するか試してるだけだし、明日行かなくていいかなあ。



あー、お腹すいたなあ。






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