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悪魔は王城に行く

シェブーストに着いた翌日、俺たちは王城に向かった。



そういえばとじいさんとマスティフは昨日の自由時間に何をしていたのか聞いたら、王城で王に会った際に失礼のないように礼儀作法をじいさんはマスティフに叩き込んでいたらしい。


おかげで昨日からマスティフの頭からは煙が出ている。

「今日だけでもユウジンがわしの孫になってくれたらと思うてしもうたわ。」

じいさんは精神的に疲れた顔をしていた。

あんたの孫なんて1日でも嫌だよ。



王城に行くには行ったが、やはりじいさんとマスティフだけがグラエム王と会うことになり俺とアシュアとレフィは別室で待つこととなった。

案内される最中、何人もの兵士や騎士とすれ違いそれらは全員どうやら巡回中だったようで、厳戒体制は王城の中もそうだった。

部屋の一つ一つに警備兵が立っていて、その中の一つの別室へと入った。


別室はじいさんとマスティフがグラエム王と会う部屋の近くで、アンティークのテーブルやソファがあって、座るとビックリするくらいふかふかだった。

メイドが紅茶とお菓子を持ってきてくれて、適当に座ったが・・・。


うーん、話の内容が気になるし、グラエム王がどんな王か見たいなあ。



「ちょっとトイレに行ってきますので、クロ助をお願いします。」

俺はクロ助をアシュアとレフィに預けると出入り口にいた警備兵にトイレの場所を聞き、トイレに行くフリをして物陰に隠れて周りに誰もいないのを確認して隠蔽魔法を使って存在の隠蔽をした。

サーチでじいさんらのいる部屋はわかっていたので、そこへ向かうとちょうどメイドが飲み物を部屋を運んでいるところだったのでメイドの後ろについて一緒に部屋に入った。


部屋は俺らが通された別室よりさらに豪華なアンティークがそこらかしこにあって、部屋の中央にでっかいテーブルとでっかいソファがあり、そこにじいさんとマスティフがこちらを背にして座っており、向かいのソファにどかりと座る厳ついおっさんと談笑しているようだった。

あのおっさんがグラエム王か。


赤い短髪に王冠をかぶり、鋭い赤目で眉間にシワを寄せた厳しい表情で談笑しているので常にあんな厳つい表情なようだ。

きらびやかなきっちりした服を着て黒いマントを羽織った姿で、どう見てもオスロの言っていた「優しい王」には見えないんだが。

グラエム王の後ろには護衛の騎士が無表情で直立不動で立っていて、赤の全身鎧を着たゴリゴリのマッチョだ。


俺は会話も聞きたかったので、じいさんとマスティフの座るソファのすぐ後ろで立って会話を聞くことにした。




「マリルクロウ殿に数年前に指導した騎士はメキメキ強くなって、今では騎士長として頑張っておるぞ。」

「それは嬉しい限りですな。それならば次に来たときはその騎士長と模擬戦をしましょうか。」

「それは面白い!マリルクロウ殿の戦う姿をぜひ見たいものだ。」

じいさん、なに物騒な社交辞令やってんだよ。


「ところで・・・オスロから聞いておると思うが、今我が国は少々困ったことになっていてな。」

「そのようですな。」

「余としては国を豊かにしようという思いから様々な政策をうってはいるが、反対されてしまっての。果ては第三王子を担ぎ上げる始末。・・・オーランドはそんな、余に不満を持つような者ではなかったのだがな・・・。」

さも困ったような言い方だが、グラエム王は面倒くさげな顔で言っていた。


「とても・・・不躾ではあるが、マリルクロウ殿。また前のように騎士たちに指導してはどうだろう?希望するなら、戦場も用意しようではないか。」

つまりはこちらの味方になってくれ、アレなら第三王子を討つ戦闘に出てもいいよ、ということか。

「その、戦場というのは?」

「模擬戦の延長みたいなものだ。その時に例えば第三王子とかを討ってもらえば余は嬉しいのだがな。」

直接的だなぁ。

ていうか、息子を討ってくれって正気かよ。


じいさんはピクリと眉を動かしたが、にこやかに答えた。

「いやいや、もうわしは年をとってしまいまして、もう戦場を駆ける元気もありませんわい。今は魔物を狩っておる方が性に合っとります。」

「そうか。それは残念だ。」

やんわり断られてグラエム王はイラっとした顔をしたが、すんなり引き下がった。

じいさんは結構な実力者だからもっと口説いてくると思ったんだがな。

・・・もしかしてそこまでオーランド王子の勢力はないのか、もしくは強力な戦力がすでにグラエム王側にあるのか?


「・・・ところでグラエム王。お聞きしたいことがあるのですが。」

じいさんは少し考え事をして、グラエム王に口を開いた。

「わしが長年壊滅を目指していた、悪魔教についてなんですがの・・・。」

悪魔教のワードが出た途端、明らかにグラエム王が眉を潜めた。

ただでさえ眉間にシワが寄っているのに、殺人鬼バリに怖い表情になった。

「最近ある国で悪魔教信者が発見されましてのう。わしは壊滅に追い込んだんですが、どうやらまだ信者がいるようなんですじゃ。・・・心当たりとか、ありませんかのう?」

じいさんはニコニコ笑顔だが、ものすごい威圧をグラエム王にかけている。

グラエム王は殺人鬼のような怖い顔をして威圧を睨み返しているが、手がちょっと震えている。

まあ、鑑定魔法で見る限り、じいさんよりはるかにレベルが低いから内心ビビりまくっているようだな。

ていうか後ろの護衛が威圧に全身ガタガタ震えてる。


「な、なんのことだ?悪魔教など、マリルクロウ殿が壊滅しても信者などこの世にいないと思っていたのだが・・・。」

グラエム王はなんとか声を出してそう言った。

「・・・そうですか。失礼しましたのう。」

じいさんは威圧を止めて呑気に飲み物を飲み始めた。

後ろの護衛がめちゃくちゃホッとした表情をした。


まあ、なんとなくグラエム王の人となりはわかった気がするので、気を取り直したグラエム王とじいさんがたわいもない雑談を始めた段階で退散することにして、メイドが飲み物を変えに来るタイミングで一緒に部屋から出て、また物陰に隠れて隠蔽魔法を解いて別室に戻った。


「あ、遅かったわね。お菓子もらっちゃった。」

アシュアは部屋に入った俺を見て呑気にそう言ってきた。

「ちょっと迷ってしまいまして、ついでに探索してました。」

空いたソファに腰かけるとクロ助が寄ってきた。

・・・なんかじーっとジト目で見られている。

なにかを勘づかれている気がするが、気にしないことにしてクロ助を撫でながらなんでもない話をすることにした。


「この部屋もそうですが、アンティークがすごいありますね。絵なんかもすごそうなのがいくつもあって。」

「うんまあ、うちの城よりはすごいもの揃ってるわ。」

そういえばアシュアは姫だったな。

「さすがアシュア、価値とかわかるんですか?」

「はっきりした値段はわからないけどね。この部屋で暴れたらヤバいってのはわかるわよ。」

「え?暴れ・・・?」

「・・・アシュアは冒険者になるために毎日部屋で暴れて壺とかを割ってました。それを聞いた国王様が仕方なく冒険者になることを許可したのです。」

レフィが遠い目をして解説してくれたが、内容が物騒だな!

「アシュア・・・本当にあなた、姫ですか?破壊神ではなく?」

「ちょっと!?ユウジン!?」

アシュアが剣を抜いたので慌てて拘束魔法でロープで口までぐるぐる巻きにしたところに、じいさんとマスティフがやって来た。


「お待たせー!・・・って!?なにやってんだ?なんでアシュアがぐるぐる巻きに?」

マスティフは戸惑ってモガモガ言って怒っているアシュアを指差して聞いてきた。

「なんでもないですよ。ちょっと命の危険があっただけですから。」

「は?命の危険?」


「呑気に遊んどったようだのう。ほれ、帰るぞ。」

じいさんは皆を促して、王城を後にした。

アシュアは拘束魔法を解いてやるとしばらく不機嫌で、なぜか俺がソフトクリームを奢ることになった。

なぜだ?



宿屋に帰ってきて、じいさんとマスティフの部屋に集合した俺たちはじいさんからどんな話をしたか聞いた。

「悪魔教についてそれとなく聞いてみたが、シラを切られてしもうたわ。じゃが、グラエム王に鑑定魔法をかけたら面白いことがわかったぞ。」

じいさんはニヤリと笑って教えてくれた。

まあ、俺も鑑定魔法かけたから知ってるけどな。



名前:グラエム・ファーズ・ヴェネリーグ

種族:人間(ヴェネリーグ王国国王・元悪魔教信者)

年齢:54

レベル:48

HP:1610

MP:450

攻撃力:301

防御力:286

智力:170

速力:275

精神力:212

運:116


戦闘スキル:上級剣術・初級体術

魔法スキル:中級火魔法・初級土魔法・初級闇魔法・使役魔法(魔物)




グラエム王は元悪魔教信者だったのだ。





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