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65、悪魔は姫の夢に賛成する

首都を出てしばらく、じいさんは今回行くルートについて説明してくれた。



この国、トリズデン王国から南に位置するヴェネリーグ王国は、トリズデンから見て南西から南東にかけて大きな山脈が広がっているため、ヴェネリーグに向かうとすると西から大きく迂回する形で行くことになるそうだ。

東のフラヴィーナからヴェネリーグの港町に行く航路の船もあるにはあるが、内紛のため船の便も激減しているし場合によっては入国できないこともあるので、今回は西から馬車で行くことになったそうだ。

南の山脈のせいもあって、隣国なのにそこまで親交はないそうで2国間で行き来するのは行商人か旅人くらいだそうで、そのため隣国なのに国の情報や内紛の状況などがわからないらしい。


しかしじいさんは行動派なので全国を旅した経験から、ヴェネリーグはかなり内紛が激化しているという情報などを聞いているそうだ。



道中はじいさんとマスティフとレフィが御者ができるということで、その3人のローテーションで御者するのが決まり、俺は御者をやったことがないのでぜひこの機会に学びたいと申し出て、御者席の隣に座って学ばせてもらうことにした。


「あれ?そういえばマスティフ、アシュアが姫だといつ気づいたんです?」

馬車の休憩中にアイテムから水筒を出して皆に配りながら俺はふと、聞いてみた。

「夕べじいさんから聞いた。めちゃくちゃびっくりしたぜ!しかも今回ついてくるって言うからすげえ行動派だなって思った。」

そうだな。このじいさんレベルの行動派だな。

「アシュアのこういう姫っぽくない性格だからなんか逆に恐縮しないというか。だから再会しても普通にしゃべれるんだよなあ。」

「あー、それわかります。こうしてお会いしていると、姫の面影が微塵もないですし。」

「え、ちょっと待って。今ディスられてるの!?」

俺がついでにアイテムから出したお菓子をもりもり食べていたアシュアは慌てて俺を睨んできたが、知らんぷりした。


「ユウジンはなんで知ってるんだ?・・・あ、もしかして鑑定魔法使ったのか!」



バチバチッ


「いってー!!」


「人の魔法をホイホイ言うなと言ったはずですが?」

「あ、ごめん。つい。」

ごめんごめんと軽く言いながらマスティフもお菓子を食いだした。

「え、ちょっと待って。今マスティフ、雷に打たれたわよね?大丈夫なの?」

「んあ?いつものことだぜ?」

なにかおかしいか?みたいななんでもない顔をしてマスティフはお菓子を食っているが、普通は結構なダメージのはずだ。

俺も最近は気にしてなかったが、もしかして打たれ過ぎて耐性ついたか?


「・・・ふむ、ユウジンは鑑定魔法持ちか。」

あ、じいさんに言ってなかったな。

「そうです。・・・そういうじいさんは隠蔽魔法持ちですね?」

じいさんはピクッと眉を潜ませた。

「隠蔽魔法?何それ?」

「鑑定魔法でステータスを見られなくすることが出来る魔法です。」

「・・・もしかして前に、鑑定魔法持ちのガンカーから私たちのステータスを見えないようにしてくれたのって、その魔法ですか?」

レフィがそう聞いてきて、俺はしまった!と心の中で呟いた。

あーあ、俺も隠蔽魔法持ちだとバレた。


「・・・そうです。」

「・・・ふむ、本当じゃ。おぬしのステータスが隠蔽されておる。」

「は!?じいさん、あなたも鑑定魔法持ちなんですか!?」

「うむ。といっても初級だがの。じゃが、初級でも悪魔教かすぐわかるから持っとるんじゃ。」

なるほど、ということは隠蔽魔法は悪魔教に鑑定魔法持ちがいても正体を隠して探れるからか。

でもあんた有名人だから意味なくないか?



「ねえ、お昼に昼食取るためにまた馬車停めるでしょ?この際だからさ、その時に1人ずつなにができるか発表し合わない?」

アシュアが突然、そんなことを言い出した。

「マリルクロウ様の話では、これからものすごい内紛地に行くっぽいじゃない?なのに仲間がなにができるかわからないって、まずくないかなって。何かあったときにわからなかったら手を打つこともできないでしょ?」

言ってることは最もだ。

しかし・・・色々魔法を持ってるだけに、面倒なことになりそうだから嫌だなあ。


「お!それいいな!俺は賛成!」

アホが嬉しそうに声を上げた。

「・・・アシュアはそうしたいのなら。」

レフィも賛成かよ。護衛だもんな。

「わしも別によいぞ。」

じいさん、いいのかよ!?

「ミャー」

賛成っとクロ助まで鳴いた。

お前はこの間取得した影魔法を自慢したいだけだろ。

ていうか賛成してないの俺だけかよ・・・。


「・・・俺はパスします。俺のことは戦力に入れなくて結構ですので。」

「なーに言ってんだよ!ユウジンがじいさんの次に頼りになんだから、賛成な。」

「は!?マスティフは全部知ってるからいいでしょう?さっきの隠蔽魔法であなたに言ってないものはありませんから。」

「ちゃんと一つ一つ解説されてないからこの際解説してくれよ。」

そういえば罠魔法や魔法剣と拘束魔法についてはざっくりとしか説明してなかったな。試験中だったし。

クロ助も賛成しようっと頬にスリスリしてくるし。



はあっ・・・。



「チッ、・・・わかりましたよ。賛成します。」


「舌打ちがものすごい気になるけど、やったー!皆で戦いのお披露目会なんて夢だったのよー!」

なんちゅう夢だよ!?

本当に姫だろうな、あんた?

実はバーサーカーの娘じゃないよな?


「ん!?ユウジン、なんか失礼なこと考えてなかった!?」

「チッ、・・・いいえ?考えてないですよ?」

「なんで舌打ち!?」



それから休憩は終わって馬車を走らせ、数時間。



憂鬱なお昼時になった。



広々とした原っぱにちょうど来たのでそこで停め、馬たちに餌をあげて人間どもには適当にカレーライスを出した。




アシュアは相当嬉しいようで、カレーをものすごい勢いで掻き込んで水で流し込んでガバッと立ち上がり、空の皿とスプーンとコップをこちらに投げてきて原っぱに駆け出した。行儀わりーぞ。

「じゃあ、食べながらでいいから見ててね!トップバッターは言い出しっぺの私がお披露目しまーっす!」

なにが嬉しくてわざわざこんなことするのか。

はあ、憂鬱だ。

俺はさっさと食べると桶と洗剤ときれいな布をアイテムから出して、桶の中で洗剤と水魔法で空の食器を洗ってきれいな布の上で乾かす作業をしながら一応見学することにした。

他の面々はゆっくり食べながら見ることにしたり、食休みをしながら見ることにしたり様々だ。

クロ助はなんか草をハムハムしながら見るようだ。


因みにアシュアのステータスは現在こんな感じだ。



名前:アシュリート・カレラ・トリズデン

種族:人間(魔法剣士・トリズデン王国第二姫)

年齢:18

レベル:30

HP:1180

MP:670

攻撃力:155

防御力:121

智力:97

速力:90

精神力:61

運:49


適性:火魔法

戦闘スキル:中級剣術

魔法スキル:上級火魔法・初級光魔法



思えば知り合った時はレベル12だったもんな。

成長したもんだ。


「私はレベル30で中級剣術と上級火魔法と初級光魔法が使えるわ。火魔法に適性があるから、こういうことが出来るの!」

そう言うとアシュアは腰にさしていた剣を抜くと剣に火を纏わせて踊るように剣捌きを見せてきた。

ふうん、最近動きを教える依頼を受けたせいで動きを見ていたが、なかなかいい動きだったな。

素早く動けて判断も早いようだ。


「っていう感じ!へへっ照れる~!」

アシュアは剣を納めるとチョケてきた。

照れるならやらなかったらいいのにな・・・。


「んじゃ、次は最初に賛成した俺、行こうか。」

ちょうど食い終わったマスティフが立ち上がってこちらに空の食器を渡しながらそう言った。

ていうかカレー3杯も食い過ぎだ。



こうしてお披露目会は続く・・・。



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