61、悪魔は神と再会する
ちょっと会話多めです。
気がつくと、目の前には真っ青な空が広がっていて、白い雲に寝転がっていた。
う~ん?
・・・あ!ここは!
俺は慌てて起き上がると、周りを見回した。
間違いない!神様と会ういつもの雲の上だ。
立ち上がってしばらくキョロキョロしていると、どこからか声が聞こえてきた。
「やあ!優人、久しぶり~!」
そう言って小さな男の子の神様がどこからかふわりと降りてきた。
「お久しぶりです。・・・そうか、もう3ヶ月も経ったんですね。」
俺がそう言って微笑むと、神様もニヘラと笑った。
「ふふふ、その様子じゃあ世界を満喫してくれてるようだね。」
「はい。たまにめんどくさいこともありますが、とても楽しいですよ。」
「君の場合はそのめんどくさいことというのが気になるけど、まあ、早速これまでのこと報告してくれるかな?ちゃんと事細かに教えてね。」
そういえば前回に事細かに報告すること、と言われていたな。
「わかりました。ええと、"金の栄光"の荷物持ちになったところからですよね?・・・―――――――」
それから俺は今までのことを本当に事細かに報告した。
こうして話すと、3ヶ月で色々あったんだな。
話終えたら神様は頭を捻っていた。
「うーん、"金の栄光"は危険に陥れたとはいえ実際に殺したのはヴァンパイア達だし、その後の人身売買の貴族やフラヴィーナの領主は因果応報みたいになってるし、その後もなんだかんだで誘拐事件を解決してるし、どう判断するべきなんだろう?貴族の子供の心を壊してるから悪いっちゃ悪いんだけど。」
「なにをブツブツ言ってるんですか?」
「ああ、いや、なんでもないよ。それで、ここまでなんか改善点とかあるかな?」
改善点か・・・。
そういえば貴族がどうとかで思い出した。
「貴族がクソしかいないんですが、いい貴族はいないんですか?もしくは今からでもいい貴族にできないんですか?」
「いやあ、テンプレ展開にはクソ貴族は必須でしょ?それを考えて設定したら貴族の7割がクソになっちゃったんだ。君が知り合ってないだけでいい貴族もいるから。」
え、7割もクソなのか?
ていうかテンプレ展開ありきで貴族をクソにしたって、どんだけテンプレ展開にこだわってんだよ。
そしてどんだけテンプレ展開ちりばめてんだよ。
「僕としては気になるのは・・・恋愛フラグを避けまくってることかなあ?ルナメイアってもう完全に君に惚れてるじゃん。なんで行かないんだい?」
「やっぱりフラグでしたか・・・。俺は昔から恋愛にまったく興味がないんです。」
「絶食系かい?・・・まあ、君の場合はもしかしたら絶望を見ることでそういった欲望が満たされているのかもしれないね。」
「そうかもしれませんね。これからもそういったフラグはへし折るつもりですし。」
「僕としては恋愛してそっちで欲求を満たして、あんまり絶望させないようにしてほしいなあ。」
神様は呆れたような顔をしたが、こればっかりは譲れない。
「後は悪魔教かなあ。僕としても"黒の一族"が壊滅したと思ってたから、今も教徒がいることに驚きだよ。」
「俺も気になります。こちらの世界の悪魔というのはどんなものか。最高指導者とかいう人しかできない御技?らしいですからね。」
できたら最高指導者に会って悪魔を見せてほしいな。
そのためにも最高指導者がどこの誰なのか、探すか調べないといけない。
「そんなに気になるなら教えようか?最高指導者が誰で御技というのがどんなものか、こちらの世界の悪魔はどんなものか。」
「えっ!?・・・あ、そうか。神様だからそこら辺簡単にわかりますよね。・・・でもお断りします。それを調べるのも面白いかなって思ってますから。」
神様はなんだつまんないという顔をした。
どうもこの神様は頼る気にならない。
性格的に。
「・・・ということは次は南のヴェネリーグ王国に行くということかい?」
「なんか流れがそこに向かってるような気がするんで、行きたくなくても行くことになるかなと思ってます。マスティフのじいさんも来たし。」
あのじいさん、マスティフに似て"思い立ったが吉日"タイプな気がする。
そしてなんか気に入られたような実に嫌な予感もする。
「あはは。いいねえ内紛地だから、大規模な戦いがあるかもね。テンプレ展開の「大規模な戦いに主人公が特殊能力で倒しまくって目立ちまくる」が出来るねえ。」
俺は途端に嫌な顔をした。
「俺は目立ちたくないので大暴れしません。」
「いや、フラヴィーナの時に大暴れしてたじゃないか。」
うっ、そこは痛いとこだ。
確かにマスティフに全部擦り付けることはできたが、正直あんなに魔法を使いまくったのはどうかなと思ってたし。
「大暴れと言えば、面白い魔法を開発したね。剣を遠隔操作するなんてね。」
「ゲームやラノベでありましたから、面白いかと思いまして。なかなか時間がかかったり難しいところもありますがあれこれ考えるの楽しいです。」
「あはは。じゃあ、それを正式に魔法として採用してあげるよ。」
そう言って神様が小さな手をなにやら振り回すと、光の粒が舞った。
「よし、これで君が完成させたら魔法の一種になるから。君が完成だと思ったら、頭にその魔法用の呪文が浮かぶようにしたよ。その魔法はなんて名前にする?」
「えーと、単純に操剣魔法がいいかなと。」
「了解~。魔法取得に条件を付けれるけど、どうする?付けない?」
「そうですね・・・。剣魔法を持っててサーチができたら取得可能にしてください。・・・あ、そういえばサーチも魔法じゃなかったですね。」
「魔法未満みたいなものだったんだけどね。でも君が多用してくれたおかげで完成してるみたいだね。ちょうどいいや、それも探索魔法として採用しよう。」
そしてまた手を振り回して光の粒が舞った。
これでサーチが広まってくれたら、俺も秘密裏にやらなくても気付かないフリとかしなくてよくなる。
「それがいいと思います。どうしてもこちらの世界の人たちには魔力と感覚を繋げて広げるなんてイメージしづらいようで、そのまで浸透してないようですからね。魔法にしたら繋げ方とか広げ方とか分かりやすいかもしれませんね。」
と、どこからともなくホワホワした黒い光がこちらに飛んできた。
「ん?なんですか?あれ。」
「あれは・・・誰かの意識だね。」
意識?と首を傾げていると黒い光はゆっくりと俺の方に近づいてきて、俺の周りをゆっくりと回った。
「これは・・・ふむ。」
神様が手を出すと、黒い光はふわりと手の上に乗った。
「この光は・・・クロ助の意識だねえ。」
「は?クロ助?」
「君にいつもくっついているから、ここに繋がりやすくなっているのかもね。ん?なになに?」
神様は黒い光に耳を当ててなにかを聞いているようだ。
「・・・なるほど。クロ助は君が激しく戦う時とか預けられるのが寂しいんだって。付いていきたいって思ってるみたいでどうにかできないかって。」
確かに誰かに預けるときは付いていきたいという感じで鳴いてたから、やはり寂しいようだ。
「しかしそうは言っても激しく動くので振り落とすことは間違いないですし、俺もそこまで気を使えません。そして何より危険ですし。」
「う~ん、困った。・・・・・・あ、そういえば、クロ助の適性は「闇」だったね。」
神様は手をポンと叩く古典的なポーズで俺に聞いてきた。
そういえばステータスを見た時、そうあったな。
「それ気になっていたんです。闇魔法ならわかるのになぜ闇としか表示されてないのかと。」
「とても珍しい適性なんだけど、「闇」は魔法なども含めて全ての闇に適性があるということなんだ。」
「全ての闇?」
「闇に関するものならなんでもさ。例えば暗闇や影や夜、アンデッドなんかもそうだね。暗闇に紛れやすいとか夜の間だけ能力が上がったりとか。」
へえ、クロ助は全身黒いからますます暗闇に紛れそうだ。
「クロ助のレベルは・・・1か。クロ助のレベルを上げてみたらいいよ。クロ助が寂しい思いをしなくてよくなるよ。」
クロ助のレベルを上げる?
そんなので解決するんだろうか?
「あ、因みにレベルを上げる経験値は魔物を倒した時に最後に攻撃した者が獲得できるよ。」
なるほど。
だったら俺が魔物を瀕死にして死ぬ直前にクロ助に引っ掻かせたらいいということか。
「わかりました。よくわかりませんがとにかくレベルを上げてみます。」
クロ助は安心したのかまたどっかに飛び去っていった。
「あ!レベルを上げるで思い出したけど、スキルはどうなってる?上級までとったものもあるんじゃない?」
「あ、はい。ちょこちょこ上級まで上げました。」
「実は・・・上級の上があるんだ!」
神様ドヤア。
「はあ!?」
「僕の世界の人間もほとんど知らないことなんだけど、上級まで上げてそれぞれの魔法に設定されている、ある条件を満たすことによって「最上級」を取得可能にすることができるんだ。」
それはなかなか興味が引かれることだ。
でも条件が難しそうだな。
「取得条件は上級の魔法を一定の数使うと頭に浮かんでくるようになってるから、ぜひ最上級に挑戦してみてよ。」
「それは面白そうですね。やってみたいです。」
「・・・よし、話はこんなもんかな。なんか他に聞きたいこととかあるかい?」
「・・・いえ、大丈夫だと思います。」
まあ、あったとしても次の3ヶ月後に聞けばいいことだし。
「じゃあ!また3ヶ月後にここに呼ぶから、報告よろしくね!」
そう言って神様はこちらにバイバイと手を振った。
俺は一応、色々と話せて楽しかったし、魔法を採用してもらったり情報をもらったりしたから感謝を込めて頭を下げた。
そして俺は急速に眠くなって、意識を手放した。




