60、悪魔は討伐に付き合う2
その後はちょっとめんどくさいことになった。
俺はめちゃくちゃ動揺している隙に、落ち着きを取り戻した"夜の疾風"4人が老人に群がって1人ずつ握手をして老人はニコニコ笑って快く応じていた。
そして改めて"夜の疾風"の紹介をして、この4人と俺が一緒に討伐依頼を受けた事情について話すとなぜか老人は感心して「普通はここまで面倒見んぞ。おぬし面倒見がいいのう。」と褒められた。
「むう、ということはこのブルーパンサーはわしが倒さず戦いを譲った方がよかったようじゃのう。すまん、若者たち。」
老人はペコリと頭を下げてきたのをゼノアは慌てて止めた。
「だ、大丈夫です、マリルクロウさん!探せば3頭くらいならいるでしょうし。それより、かっこいい戦いを見れたのでとても勉強になりました!」
「そうかそうか、ありがとう。真面目ないい子たちじゃ。」
「彼らは真面目で成長具合も素晴らしいですよ。1人、性格に難がある子もいますが。」
「ちょっと、ユウジン!?誰のことよ!?」
「誰もあなたとは言ってませんよ?」
「じゃあなんで私を見て言ったのよ!?」
シャルルはムキー!とプンスカ怒りだしたが、無視だ無視。
「ハッハッハッ!面白い子たちじゃ。面白いから、討伐依頼にわしも協力しよう。」
「「「はっ!?」」」
ということでブルーパンサー討伐依頼を一緒にすることになったのだ。
"夜の疾風"を先頭に道を往来してみたりして、今は後方でついていきながら老人と話をしている。
「首都に向かう途中だったのではないですか?大丈夫です?」
「大丈夫大丈夫。孫が元気にやってるか会いとうなっただけじゃしな。馬車移動に飽きてしもうて、ちょっと前の町から呑気に歩いて首都に向かってただけじゃしのう。」
老人はニコニコしながら"夜の疾風"がキョロキョロ探しているのを微笑ましく見ていた。
確かマスティフが「じいさんに手紙を書く」とか言ってたからな。
その手紙を読んで来たということだろうか。
「・・・もしかして、悪魔教についてお孫さんに聞くつもりでですか?」
老人は途端に鋭い目で俺を見てきた。
「・・・なぜおぬしそれを知っておる?」
「またちょっと威圧出てますよ。俺は縁あってあの誘拐事件でお孫さんと一緒に依頼を受けたんです。」
「うん?・・・おぬし、もしかして!手紙で面白くて強い友人ができたとマスティフが書いていたが、おぬしのことか!?」
え?マスティフなに書いてんの!?
途端に老人の目がキラキラしだした。
うわあっ、そういうところは孫とそっくりだな。
「俺はマスティフとは友人になった覚えはありません。なんか気に入られて毎朝突撃されている被害者です。」
「ユウジンさんとマスティフさん、ものすごく仲いいですよ。」
いつの間にか話を聞いていたリタが話に割り込んできた。
「ユウジンさん、ものすごく鬱陶しがってますけど毎朝の模擬戦ちゃんと相手してますし、なんだかんだでマスティフさんの意見聞いてますし。」
「ほう!そうかそうか。マスティフと仲良くしてくれてありがとうのう。」
ものすごい誤解だ。
模擬戦は朝からわーわーうるさいから付き合っているだけだし。
そんな微笑ましく俺を見てくるな、じじい。
と、俺のサーチにブルーパンサーの反応が。
誤解を解きたいが、今はそれより依頼だ。
向いている方から右の、道をちょっとそれた草むらにブルーパンサーが3頭いた。
100メートル離れているが、ブルーパンサーはこちらに気付いていて身を屈めてこちらに近づいてきていた。
・・・ちょっと手前で気付いたフリをするか。
そして数分後。
「右の方の草むらの中になにかいませんか!?」
頃合いを見て俺が叫ぶと、皆は草むらに目を向け、ブルーパンサーを発見した。
「いた!ブルーパンサー!3頭いるわ!」
「「「シャアアァッ!」」」
ブルーパンサー3頭は草むらからガサガサッと道に出てくると横一列に並んで威嚇してきた。
「俺が1番左を相手しますので、真ん中と右をお願いします!先程とは違うペアで戦ってください!」
「「「「はい!」」」」
4人はそれぞれ武器を構えて元気よく返事してきた。
「じいさんは一応彼らを見ててください。後、クロ助をお願いします。」
「ほいほい。」
老人は頷いてクロ助を預かってくれた。
"夜の疾風"はゼノア・シャルルとリタ・ワルツに別れて駆け出していた。
俺もローブの奥から出すフリしてアイテムからごく普通の鉄のナイフを2本出して逆手に構えてブルーパンサーに駆け出した。
魔法剣は"夜の疾風"にも見せてないからここでやったら説明がめんどくさい。
それに魔法より体を動かしたい気分だったからナイフにしたのだ。
「シャアアァッ!」
パンサーは前足を振り下ろして爪で攻撃してきたが、素早くすれ違うようにすり抜けるとガラ空きの脇と腹をナイフで切り裂いた。
「グウゥゥッ」
苦しげな唸り声をあげながらもこちらに体を向けてきたパンサーの横から喉に突き立てると、パンサーは血を吐いてバタリと倒れた。
よし、ちょっとは体を動かせられたな。
ナイフをしまって"夜の疾風"の皆を見ると、ちょうど倒し終えたところだった。
「皆さんお疲れ様です。」
俺が声をかけると少し驚いたような表情をされた。
「あれ!?もう終わったんですか!?」
そういえば彼らがペアになって戦い始めてから俺はナイフを用意して戦い始めたんだっけ。
「ええ、はい。ちょっとだけいい運動になりました。」
「討伐が運動って・・・、やっぱり魔法は使わなかったのね・・・。」
「体を動かしたくて討伐依頼を受けたんですから。魔法使ったら動かないで終わっちゃいますからねえ。」
呆れるシャルルにそう言うと、更に呆れられた。
リタがさっさとブルーパンサーの討伐証明部位を切り取って、先程と同様に俺の土魔法で埋めた。
うっかりいつものつもりで無詠唱でやったら老人に感心した目で見られた。
「ほう!無詠唱を使うとは珍しい。」
やたら褒めてくるところも似てるなあ。
「戦うときに無詠唱だと奇襲ができますし、どんな魔法を使うか相手にわからない方がいいことが圧倒的に多いですからね。魔力消費が3倍かかりますがこれくらいの魔法ならたいした減りではありませんし。」
「うむうむ、ちゃんと考えておるのう。」
討伐依頼の数も揃ったことだしと、首都に帰ることにした。
首都に帰る道すがら、何体かの魔物が出たが、その都度"夜の疾風"と戦って動きを見たりした。
そうして夕方前には首都に着いた。
冒険者ギルドに行く道すがら、老人にものすごい人が群がって握手ぜめにあっていた。
・・・ホントに有名人だったんだ・・・。
まあ、俺は知らなくて当然だけど。
冒険者ギルドに入っても老人は握手ぜめにあい、ゼノアが受付で報告して報酬をもらう間もずっと老人は嫌な顔一つせずに握手に応じていた。
「わしはここのギルマスと知り合いじゃから、挨拶していこうかのう。ここで別れよう。楽しかったぞ、若者たち。立派に冒険者になるんじゃぞ。」
「はい!ありがとうございます!」
4人は頭を下げた。
「ユウジンも、立派な冒険者になるんじゃぞ。」
「ありがとうございます。」
立派な冒険者になるつもりはないけど、社交辞令だからと笑顔で流した。
老人はギルド職員に声をかけて奥に行ってしまった。
「はあ~~!かっこいい人でしたねえ。」
ゼノアはため息をついてそう言った。
「確かに戦いはかっこよかったです。他はマスティフに似てるなと思っただけですが。」
「ふふふ。あ、そういえばユウジンさん、明日の試験大丈夫そうですよね?シャルルとワルツ。」
リタが心配そうに聞いてきたが、俺はまったく心配なんてしていない。
「大丈夫です。今日の戦いぶりを見ても今までとは違ったのではないですか?お2人とも、実感できているでしょう?」
「ええ、絶対明日は大丈夫って、自信もって言えるわ。」
「僕も。なんか今日で頑張れる自信がついた。」
なかなか頼もしい発言をするようになったな。
これなら本当に大丈夫だろう。
「もうこれで最後ですね。ユウジンさん、1週間付き合っていただいてありがとうございました。」
そう言ってゼノアは依頼の報酬を渡してきた。
さっきの討伐依頼の報告のついでにこちらの依頼の報告もしていたようだ。
「ありがとうございます。こちらこそ、なかなか楽しい1週間でした。明日の試験を合格して、更なる上のランクを目指して下さい。」
「はい!ありがとうございます!」
なんだか寂しいような気もするが、彼らならもっと上に行けると本当に思ってるから頑張ってほしいな。
これでまた明日から気ままな箱の依頼をやる生活に戻るのか。
俺は足取り軽く、宿屋に帰った。
因みに翌日の試験は2人ともあっさり合格したそうだ。




