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59、悪魔は討伐に付き合う

昼に冒険者ギルドに行くと、既に"夜の疾風"は来ていた。



「こんにちわ。あれ、もしかして待たせてしまいましたか?」

「あ、お疲れ様です!僕らは昼をここで食べてそのまま待ってましたから、大丈夫です!」

ゼノアが元気よくそう言って席から立ち上がった。

そういえばギルドの酒場でも昼食やってたな。

興味があったので利用したことがあったが、味が薄かった・・・。

まあ、値段が破格の安さだからしょうがないが。


「先に日帰りで行ける討伐依頼で私たちでできそうなものを何枚か選びました。ユウジンさんにその中から選んでもらおうと思って。」

リタはそう言って手に持っていた依頼書を渡してきた。

「ほう、素早いですね。どれどれ・・・。」


依頼書は3枚で、いずれもランクDならできそうなものばかりで近場だった。

俺は3枚を見比べて1枚選んだ。


「この「西の道に出るブルーパンサー5頭」はどうでしょう?」

見たことない魔物だが、青い豹なんて目立つからすぐに見つけられらだろうから、どうかな?

4人はコクコクと頷いて了承してくれた。


それからギルドの受付に行って討伐依頼を受理してもらい、4人と早速西の道に向かった。




首都から出て1時間ほど歩いた道にブルーパンサーは出るそうで、道行く旅人が襲われたり商人の馬車を襲ったりと被害が出ているらしい。

ブルーパンサーはランクDの魔物だそうで体長2~3メートルだそうだ。

「ブルーパンサー見たことないのですが、やはり名前からして青い豹ですよね?」

「え、違いますよ。」

ゼノアがなんでもないように返事してきた。え、違う?

「全身茶色で斑点が水色なんです。水属性だからブルーと付いたらしいですよ。」

「そうなんですか!?」

で、でも茶色に水色の斑点でも十分目立ちそうだが?



とか思ってたら、サーチに魔物の気配が。

これがブルーパンサーか。

そろそろ俺らの前に現れそうな感じだな。



そしてしばらく歩いていると、道の脇の茂みから魔物が飛び出してきた。


「「シャアアァッ!」」


全身茶色に水色の斑点のブルーパンサーが2頭、こちらを威嚇した鳴き声をあげてきた。

口元の牙は長く尖っていて、涎を垂らしていた。


俺はすかさず1頭に鑑定魔法を唱えた。



種族:ブルーパンサー

属性:水

レベル:22

HP:480

MP:50

攻撃力:78

防御力:55

智力:20

速力:100

精神力:36

運:21


戦闘スキル:中級爪術・中級牙術

魔法スキル:初級水魔法



やはりパンサーだからか素早さが高い。

でもまあ、"夜の疾風"なら問題はないな。


事実、"夜の疾風"はすぐさま4人ともが武器を構え、格闘家のゼノアと戦士のリタが前に出てシャルルがその後ろに続きワルツが1番後方で杖を構えていたからだ。

俺はちょっと後退して見守ることにした。


「行くぞ、皆!」

「「「はい!」」」

ゼノアの呼び掛けに全員が答え、ゼノア・リタ・シャルルが駆け出した。

左右に並んだパンサーの内、左にリタ・シャルルが向かい、右にゼノアが向かった。


「シャアアッ!」

「はっ!」

パンサーが噛みつこうとするのをリタが盾で防ぎ、シャルルが横から2本の短剣で連撃して体に切りつけた。

「グウウゥッ」

パンサーが痛そうに身を引いたが、リタが盾を構えたまま突進して盾の脇から剣で前足を切りつけた。

「シャルル!行って!」

「ええ!」

シャルルはふらついたパンサーの首に2本の短剣を同時に突き刺した。

「グウウゥッ・・・!」

パンサーは悔しげに唸るとばたりと倒れて動かなくなった。


一方、ゼノアはパンサーの前足の爪を使った攻撃を横に回転して避けるとその勢いのまま、横から蹴りを入れた。

「シャアアッ!」

パンサーは噛みつこうと牙を剥いてゼノアに迫ってきた。


『我が前の敵を射て、ウインドカッター』


ワルツがすかさず風の刃を出してパンサーの前足を切り裂いた。

「グウウゥッ!」

「はあっ!」

ゼノアはパンサーの頭を拳で振り下ろす形で殴り付けると、パンサーは地面に顎をめり込ませた。

「ワルツ!止め!」

「はい!」


『我が前の敵を打て、サンダー』


雷はパンサーに命中して、パンサーは動かなくなった。



俺はその様子を見て感心して拍手した。

俺はソロということもあって、これまで他人が戦ってるところはあまり見れてないのだが、かつてのランクBパーティー"金の栄光"くらい連携はちゃんと出来ていたように見えた。

個人の動きもそれぞれ良かったと思う。

クロ助も俺の肩の上でおつかれ!という感じで鳴いた。

「お疲れ様です。皆さんきれいに連携がとれてていい動きでしたよ。」

「へへっ、ありがとうございます。」

ゼノアは照れて笑った。

「ふふん!当然よ!」

シャルルはドヤ顔でそう言った。

うん、言うと思った。


それからパンサーの討伐証明部位の尾の先を切り取ると、俺の土魔法で道の脇に穴を掘ってそこにパンサーの死体を埋めた。

パンサーの肉は一応食用ではあるが流通はしてないらしい。

俺もアイテム収納魔法は言ってないから収納するわけにもいかず、埋めたというわけだ。



しばらくそこら辺をウロウロしてみたが、パンサーが見当たらないし俺が密かにやっているサーチにもかかってない。


おかしいなあ?

サーチをもうちょっと広げてみるか?

俺は少しサーチを広げてみた。

するとおかしな反応があった。


ん?この先にパンサー3頭がいるが、誰かと戦っている?

だが、戦っている誰かがわからない。

全体的にもやがかかっているような・・・。


「・・・ここら辺りにいないようですし、先に行ってみますか?」

俺はなんでもないように先を促した。

「そうですね・・・。行ってみましょうか。」

ゼノアが合意して皆で先に進んだ。



先に進むと次第にキンキンカンカンと戦闘音が聞こえてきた。

「!?この音!戦闘音じゃないですか!?」

「ホントだわ!」

「そのようですね。誰が戦っているか確認して、苦戦しているようなら加勢しましょう。」

「はい!」

俺の指示にゼノアは元気よく同意して、戦闘音の方に近づいて行った。





「ハッハッハッ!ほれ頑張って攻撃せんか。」


そこには笑顔でブルーパンサー3頭の攻撃をかわしまくっている老人の姿があった。

老人はきれいな長い白髪で黒い目のすごくイケメンじいさんで、黒の鎧の上に黒のローブを着た姿で、腰に剣をさしていた。

俺も"夜の疾風"もその異様な光景にしばらくぽかんと見ていたが、俺はハッと気を取り直して鑑定魔法を使った。



名前:##########

種族:#######

年齢:##

レベル:###

HP:#####

MP:####

攻撃力:###

防御力:###

智力:###

速力:###

精神力:###

運:###


戦闘スキル:##########

魔法スキル:##########



!!??

表示出来てない!?

慌ててゼノアたちを鑑定魔法を密かにかけてみるが、ちゃんと表示された。



まさか・・・・・・俺と同じで隠蔽魔法持ちか!?


だからサーチも、もやのようなものがかかって見えなかったのか?



「むう、もう駄目か。それくらいでわしを狙うでないわ。」

ブルーパンサー3頭は老人の動きについて行けずにヘトヘトになって伏せたのを見て、老人はつまらないという風に言うと、腰にさしていた剣を抜いて構えた。

剣は赤黒い片刃の、刀のような形状で波紋が炎のように波打っていた。

剣からはただならぬオーラが出ていて、ただの刀とは明らかに違っていた。

「ほっ」

老人はその刀をいとも簡単に何回か振り抜くと、ブルーパンサー3頭の首がスパンスパンと切れて地面に転がった。


うわっ!早い!

しかも一撃って、どんだけ強いんだよ・・・!?

この老人はマジで強いな。


老人は刀を腰に納めると、こちらに向いた。



「覗きとは趣味が悪いのう。もうパンサーは倒したから大丈夫じゃぞ。」


そう言ってこちらに微笑んできたが、"夜の疾風"は信じられない剣撃に今だぽかんとしていた。

こちらがバレてるならしょうがない。

何者かわからないから用心にこしたことはないが。


「すいません、戦いの邪魔だったようなので見学させていただきました。」

俺は代表して前に出て、微笑んで対応した。

「討伐依頼でここら辺をウロウロしていたら戦闘音が聞こえたので、もし様子を見て加勢しようかと思っていたのですが、その心配はないほど素晴らしい剣捌きを見させていただきました。」

「素晴らしいとは嬉しいことを言ってくれるのう。年寄りが長いだけの経験では培ったものじゃ。たいしたものではないわ。」

「いえいえ。才能や能力は真似できても経験は誰も真似できないものです。さぞ面白い人生を送ってこられたことでしょう。」

これはお世辞ではなく本音だ。

さぞ、この老人は数々の修羅場を切り抜けてきたからこそのあの剣撃だったのだろう。

ただ者じゃないオーラも半端なく出てるしな。



「わしの剣を見て面白いとな。面白いことを言うのう。どれ、戦ってみるか?」


途端に老人からものすごい殺気のこもった威圧をぶつけられた。


うーわっ、これは結構キツい。

空気がビリビリして耳鳴りや背中に冷や汗が出る。

からだ全体を圧迫されたようで、心臓がぎゅうぎゅう掴まれてるようで苦しい。



だが、残念。



俺はあちらの世界でたくさんの殺意を向けられたから、得意の笑顔は崩れない。

俺はニコニコ微笑んでなんでもないように威圧を浴びていたが、クロ助がたまらず「ミュー・・・」と苦しそうに鳴いて肩の上で縮こまってしまった。

おっといけない。

俺はクロ助を撫でて、落ち着かせた。


「じいさん、威圧ぶつけるの止めていただけますか?ペットが怖がってますので。」

「・・・むう?おぬしに効かぬとはおかしいのう。」

老人は首を傾げながらも威圧を止めた。


「一応これでも効いてますよ。あなたの威圧は半端ないのでもうちょっと抑えられた方がいいです。それからわざと(・・・)度胸試しに威圧飛ばすのはどうかと思いますよ。」

それを聞いて老人はぶほっと吹き出して笑いだした。

「ハッハッハッ!なんと!気付いておったか。」

「話のもって行き方が急なんです。はあっ、変な汗かきました。」

「おぬし、面白いのう。名はなんという?」

「名前ですか?・・・ユウジンといいます。ランクD冒険者です。あ、それから・・・」

俺は"夜の疾風"も紹介しようと後ろを振り返ると、4人は後ろでガタガタと震えて老人を見ていた。

あ・・・もしかして、さっきの老人の威圧がそっちまで行ってたか?



「大丈夫ですか?4人とも。」

「ユ、ユウジンさん・・・。」

ゼノアはパクパク口を開けてやっと声を絞り出した。

他の皆も声を振り絞ってしゃべりだした。


「ユ、ユウジンさん、もしかして・・・その人・・・。」

「え?知ってる人なんですか?」

「知ってるもなにも・・・超有名人よ・・・。」

「有名人?」

「マリルクロウ・ブラックっていって・・・"黒の一族"元当主です。」

「・・・・・・は?」

「マスティフの・・・おじいさんですよ!」

「はあぁっ!?」





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