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57、悪魔は特訓に付き合う2

なんでマスティフのアホがいるのか。



「いや、若い冒険者相手に戦闘訓練してるって、噂を聞いてさ。誰がやってんだろうって若い冒険者に聞こうと声をかけたらそれが"夜の疾風"で事情を聞いてさあ。んで、教えてるのがユウジンって聞いて面白そうだから俺も参加しに来たんだよ。」

「いやいやいや。あなたは毎朝突撃してくるでしょう?それで我慢して下さい。むしろあなたはアドバイスする側に回って下さいよ。」

マスティフはそれを聞いてえーという顔をしたが、君は確かこの首都の英雄サマじゃなかったのか?


「ユウジンさん、本当にすいません!」

打って変わってゼノアは俺にものすごく頭を下げてきた。

「皆噂を聞いて来たみたいで・・・。」

「その噂というのはどこからわいて来るのやら。心当たりはありますか?」

「あの・・・夕食の時とかに僕ら話すときに、結構大きな声で、シャルルが「私、訓練して強くなったんだからー」って言ったりしてるんで・・・もしかしたらそれを聞いた人が噂してるのかも・・・。」

あのお転婆なら言ってそう。しかも悪意なく。


バチバチッ


「いっ・・・たーい!」

悪意がなくてもなんか癪なので、他の冒険者と話していたシャルルに罠魔法で雷魔法を打っといた。

「ちょっ!今のあんたでしょ!?なにもやってないのになんのつもりよ!?」

「なにもやってないのなら噂にならないし、こんなに冒険者は集まりません。しゃべるときは周りに気をつけてしゃべるんですね。」

「え?周り?」

わかってないシャルルにゼノアは慌てて説明をしていた。



集まったのならしょうがない。

どうせ後2日だけだし、そこまでしっかり教えないといけないようなやつも見た感じいないし(全員に鑑定魔法かけた)、手合わせしてちょっとアドバイスしたらいいかな。

そこで俺はハッとした。

約20人と手合わせ・・・。

うわあ、しんどい。

やっぱりマスティフに半分やらせよう。



「マスティフ、ちょっとあそこに立ってもらっていいですか?」

「んあ?ここか?」

マスティフは俺の指さした少し離れた位置に立った。

そして俺は冒険者たちに向かって声をあげた。

「皆さん聞いて下さーい。今日は人数が多いので、英雄マスティフが駆けつけてくれました。マスティフと手合わせしたい人はマスティフの方へ行ってくださーい。」

「!?てめっ、ユウジン!」

マスティフは驚いて俺を見てきたが、多くの冒険者が押し寄せてそれどころではなくなった。

その結果、マスティフの圧倒的な知名度のおかげで18人中12人がマスティフに行って、残り6人(内"夜の疾風"4人いる)が俺が受け持つこととなった。


「マスティフ、頑張って手合わせしてあげてくださいね。手合わせできたら面白い魔法を見せてあげます。」

「おまっ!?12人なんてっ・・・でもユウジンの魔法見てえし・・・!くそぅ!やってやるぜ~!」

マスティフは迷っていたようだが、俺の魔法が見たいがためにやってくれるようだ。

よしよし。

うまくマスティフに押し付けられた。

でもめんどくさいことをやらせるんだから、ご褒美をあげないとな。

どんだけ俺の魔法が見たいんだよ。



それから数時間、俺はシャルルとワルツの指導をしながらゼノアとリタにアドバイスしつつ、残り2人の冒険者と手合わせしながらアドバイスした。


マスティフは本当に1人ずつちゃんと手合わせして、しっかりと真面目にアドバイスをしていた。

俺も横目に見ながら気が付いたことがあったら俺からもアドバイスしてみたりした。

因みにその間クロ助は邪魔にならないところを歩き回ったり、休憩中の冒険者たちに撫でられていた。



そして夕方をとっくに過ぎて夜になった辺りでやっとマスティフの受け持っていた手合わせは終了した。

俺の手合わせはとっくに終わったので、終わった者から帰っていいと話して冒険者たちは続々と帰っていっていた。

やがて最後の冒険者も終わるとマスティフと俺に一礼して帰っていった。


「はあ~!疲れた!流石に12人はキツいぜ。」

マスティフが汗まみれでその場に座り込んだので、俺はウエストポーチから出すフリをしてアイテムから水の入った水筒とタオルを出してマスティフに渡した。

「お疲れ様です。ありがとうございました。代わりに手合わせしてもらって。」

「ホントだぜ。しかも急だし、アドバイスしないといけないから普通に戦うよりしんどかった。・・・って、あれ?"夜の疾風"は?」

「最後まで見ていくと言ってましたが、帰らせましたよ。」

「ふーん、あっそ。・・・よし、じゃあ面白い魔法っての、見せてくれよ。」

マスティフは水をガブ飲みしてタオルでガシガシ顔を拭いたらキラキラした目で見てきた。

「え、もういいのですか?」

「おう!十分休めたわ。」

「はあ、そうですか。・・・では、ちょっと待ってて下さい。クロ助はちょっと離れて見てて下さい。」

「ミャー」


俺は手合わせの時に使っていた木の剣を1本"夜の疾風"から譲ってもらった物を地面に刺した。

そしてちょっと距離を置いてしばらくイメージをまとめるために剣を見つめた。

そして魔力をサーチの要領で剣までのばして魔力で覆う。




「・・・・・・よし、できた。」

「え?」


剣はふわりと浮き上がった。

そして空中を滑るように俺の周りでくるくる回りだした。


「どうですか?面白いと思いませんか?」


俺がドヤ顔で言うとマスティフは目の玉が飛び出すかと思うほど、ものすごい形相でぽかんとしていた。



「す、すげえ―――!!!ど、どうなってんだよ!?魔法なんだよな!?見たことないぞ!?」

マスティフは初めて会ったときのようにめちゃくちゃ食いついてきた。

「前から浮く剣なんて面白いなと思ってたのですが、そういった魔法がなかったので剣魔法を応用してこの間ちょっと開発してみたんですよね。」

「すげえな!浮く剣なんて考えたこともなかったし、ないなら開発しちまおうなんて普通考えねえよ!しかも開発なんてちょっとやそっとじゃできることじゃねえぞ、本当の開発は数年かけるもんなんだぜ。」

まあ、俺はあちらの世界の知識が入ってるからイメージが固まってるからね。

こちらの世界の人が手探りで開発するならそら何年もかかるだろう。


「で、マスティフに見せたのには訳があるんです。この剣で攻撃したとして、通常の攻撃ができるかわからないのでちょっと戦ってみてほしいんです。」

「なるほど、自分が操ってるから自分で戦えないからか。面白そうだからいいぜ!」

マスティフは勢いよく立ち上がり、大剣を構えた。

「わかっていただけてありがとうございます。では、行きます。」


俺は剣がマスティフに向かっていくイメージをすると、剣はイメージそのままにまっすぐマスティフに向かって飛んでいった。

「よっ」

マスティフは向かってきた剣を大剣の腹で受け止めた。

剣はくるりと横に回転するとそのまま横からマスティフに向かって切りかかった。

向かってくる剣を後退することで避けたマスティフは大剣で剣を叩き落とした。

剣は地面に落ちると動かなくなった。


「・・・ふむ、強い衝撃を受けたら魔力が途切れて動かせなくなりました。マスティフは戦ってみてどうでしたか?」

「うーん、ちょっと攻撃が軽かったかな。その分素早く動いてた気がする。」

「・・・もう一戦いいですか?今度は魔力を多めに注いでみます。」

「おう!りょーかい!」

俺はまた木の剣に魔力で覆って、俺の周りでくるくる回るようにした。


「・・・よし、魔力を倍にしました。」

すると木の剣がちょっと光だした。

剣魔法を剣にかけた時の光かたに近いかもしれない。

「行きます。」


先程と同じイメージをしたら、今度は先程より速いスピードでマスティフに向かっていった。

「うおっ!」

先程と同じように大剣の腹で受け止めたが、明らかに衝撃が違っていてマスティフが驚いていた。

結局、大剣で叩き落としたら魔力が途切れて動かなくなったが。

「すげえな!さっきより1.5倍くらい重かったぜ。速さも半端ねえし。」


魔力が回復する『回復の指輪』を外してステータス確認したら普通に剣を操る場合は魔力を覆うのでMPを10使い、剣が動かせる間は剣魔法と同じでMPを10秒に1消費するようだ。

そしてMPを20使い10秒に2消費する、倍にしたら効果は1.5倍になるようだ。


「面白え魔法だな。問題があるとすると、剣に魔力を覆うのにちょっと時間がかかるってとこか。」

そう。剣に魔力をのばして覆うイメージするのに3分ほどかかる。

「このままでは戦闘の時は不利になりますからね。もうちょっと改良するつもりです。」

その構想は実は少しだけあったりする。

それを試すのは明日にしよう。


「マスティフ、付き合ってもらってすいませんでした。早く帰らないとヒスランとカルドが心配するでしょう?」

「いや、ああ、まあ大丈夫。結構自由だから。」

なぜだかマスティフは微妙な顔をして言った。

なんだ?

なんかパーティー内でなんかあるのか?

・・・まあ、パーティー内のことに口出しするのは違うから、詮索はしないけど。

・・・結構自由なのは納得。

じゃなかったら毎朝宿屋に突撃してこないからな。




それからすぐにマスティフと別れて俺は宿屋に帰った。





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