54、悪魔は特訓を頼まれる
ある日のこと。
「あ、あの!」
いつものように箱の依頼を見ていたら、声をかけられた。
声の方を見ると、20歳前後の男女4人がいた。
「あれ?君たちは・・・。」
その内男女2人には見覚えがあった。
確か・・・。
「ランクD試験で一緒に受けた方ですよね?」
「は、はい!そうです!」
男女2人はコクコクと頷いて男の方が答えた。
「あ、あの!・・・特訓に付き合ってもらえませんか!?」
男はものすごい勢いでそう言って頭を下げてきた。
「・・・はあ、同じパーティーの2人が明後日ランクD試験を受けると。」
俺はとりあえず、酒場に移動して皆でテーブルに座って話した。
「はい。僕らはこの間ユウジンさんと一緒に受けた試験で合格したんですけど、その後あった試験を2人が受けたら見事に落ちて。それで昨日あった試験に再挑戦させたらまた落ちたんです。」
あれを落ちたとは・・・2人の実力は大丈夫か?
一緒に受けた男女についてきたと思われる当の2人の男女はばつが悪そうな顔をして俯いている。
「それで来週ある試験にまた挑戦することにしてるんですけど、このままではまた落ちるかなと考えまして、特訓することにしたんです。で、その特訓の相手をしてもらえないかと思いまして。」
なるほど。
でも・・・俺は2ヶ月しか経ってない能力が豊富なだけの人間だしな。
果たしてそんな人間が参加したところで特訓になるのかどうか・・・。
「うーん、それ本当に俺で大丈夫ですか?俺はそこまでと思うのですが・・・。」
「そんな!そこまでどころじゃないですよ!」
一緒に受けた男女の女の方がそう声高らかに言って立ち上がった。
「マスティフさんとの戦い、感動しました!あんな動きや魔法、見たことないです!ぜひ、お願いします。」
「僕からもお願いします。依頼として出しますので、報酬も払います。夕方に1日数時間でいいので!」
ふむ、1日数時間ならいいか?
ここ最近は誘拐事件以外は箱の依頼をやってるくらいだし、箱の依頼もだいたい日帰りを選んでるから問題はないか。
「俺も勉強中の身ですから、細かいことはわからないこともあるのでアドバイスも出来るかどうかわかりませんし、相手を務められるかわかりません。それでもよろしいですか?」
「もちろんです!」
「・・・わかりました。お受けします。」
一緒に受けた男女はぱあっと顔を明るくして「ありがとうございます!」と何度も頭を下げてきた。
「すいません、紹介が遅れました。僕はランクDパーティー"夜の疾風"のリーダーのゼノアです。」
一緒に受けた男女の男の方で、長めのオレンジ髪で赤目で両手に頑丈そうなナックルを着けた、ハキハキして真面目さが雰囲気としても出てる好青年だ。
挨拶ついでに皆に鑑定魔法をかけた。
名前:ゼノア
種族:人間(武闘家)
年齢:21
レベル:24
HP:700
MP:200
攻撃力:97
防御力:126
智力:67
速力:106
精神力:82
運:49
戦闘スキル:中級武術・初級体術
魔法スキル:初級光魔法
「私はリタです。よろしくお願いします。」
一緒に受けた男女の女の方で、緑髪のショートボブで緑目の笑顔のかわいい凛としたタイプのようでレザーアーマーを着けて腰に剣をさして盾を腕に持っている。
名前:リタ
種族:人間(戦士)
年齢:19
レベル:22
HP:790
MP:90
攻撃力:136
防御力:109
智力:52
速力:42
精神力:61
運:36
戦闘スキル:中級剣術・初級盾術
魔法スキル:初級水魔法
「・・・シャルルです。よろしく。」
落ちている男女の女の方で、赤髪のツインテールで赤目でキツそうな目つきをしていて、勝ち気な感じを出している。
身軽そうな服装で、腰に2本の短剣をさしている。
名前:シャルル
種族:人間(盗賊)
年齢:17
レベル:22
HP:670
MP:120
攻撃力:68
防御力:78
智力:70
速力:133
精神力:59
運:55
戦闘スキル:初級短剣術・双剣術
魔法スキル:初級火魔法・初級水魔法
「ワルツって言います。よろしくです。」
落ちている男女の男の方で、短い茶髪に茶目の半目でちょっとのんびりした印象の、少しだけふくよかな体型に赤いローブを着て腰に短杖をさしている。
名前:ワルツ
種族:人間(魔法使い)
年齢:19
レベル:21
HP:590
MP:640
攻撃力:40
防御力:76
智力:130
速力:43
精神力:99
運:42
戦闘スキル:初級杖術
魔法スキル:中級風魔法・初級雷魔法
まあ、レベルも能力もランクDの上2人と大差ないから問題なさそうだな。
としたら、落ちたのは経験とかが原因かな?
そしてよく考えたら、シャルルは双剣の短剣を使うスタイルといい、ワルツは魔法を使うスタイルといい、両方とも俺が使ってるスタイルだ。
相手しながらなにかいいアドバイスができやすいかもしれない。
「よろしくお願いします。俺はユウジンといいます。そしてこいつはクロ助といいます。」
「ミャー」
俺の膝の上で様子を見ていたクロ助がよろしくという感じで鳴いた。
「・・・ねえ、ちょっとゼノアにリタ。本当にこの人強いの?」
シャルルはものすごく訝しげに俺を見てくる。
言葉に出してないだけで、ワルツも同じような目で見てきている。
「なに言ってんだよ。何回も説明しただろ?あのマスティフさんに勝ってんだぜ?」
秘密にしてくれと言ったはずだが?何回も言ってんの?
「ええ~、"黒の一族"の人に勝ったっていうからめちゃくちゃ強そうな人想像してたのに・・・。」
「うん・・・。ほんとにほんと?そのマスティフさんって人が体調悪かったとかじゃなく?」
「2人とも失礼よ!本当に本当よ!」
シャルルとワルツは相当疑っているようだ。
まあ、自分の見た目がまったく見えないのは自覚してるし、そう思って当然だと自分でも思うよ。
「ははっ、俺もそう思いますよ。」
「もう!ユウジンさん自身が言ってどうするんですか?」
リタに怒られてしまった。
「ユウジンさん、よかったらこの後ちょっと手合わせしてもらえますか?2人の実力をまずは見てもらいたいので。」
「わかりました。お2人にはその時、俺が強いかどうか判断してもらって、お気に召さないようならこの依頼はなかったことにしてかまいませんよ。」
「あら・・・。えらい余裕じゃない?」
シャルルはふんと鼻で笑った。
「試験はたまたま落ちただけなんだから。私の実力を見て驚くんじゃないわよ。」
「僕も、頑張ればなんとかなるってとこを見せますよ。」
シャルルに続き、ワルツも息巻いて言ってきた。
それから俺はゼノアとギルドの受付に行って、ゼノアが依頼として「1週間の稽古依頼」を出してそれを俺が受けると受付の職員に話して受理された。
因みに報酬は俺のごり押しで安めの2000インにした。
ゼノアは強い人に教えてもらえるのだからと何万インも出そうとしていたが、そこまでもらうのも申し訳ないので「そんなお金は仲間のポーション代とか装備品とかに使ってあげたらいい」と言って無理矢理納得してもらった。
「あ、依頼を受ける条件付けていいですか?」
「じょ、条件ですか?どういったものです?」
「俺は詮索されるのと目立つのが好きではないので、"俺の魔法についてはできる限りの説明はしますが、それ以外は詮索しないでそういう訳のわからない魔法を使うんだと思っといてほしいこと"と"俺の強さついては他言しないこと"。この2つです。」
「わ、わかりました・・・。」
ゼノアはコクコクと頷いて返事をした。
本当に大丈夫か?
パーティーの仲間に何回も言うくらいだから心配だなあ・・・。
特に俺が強いことは広まってほしくはない。
目立てば必ずめんどくさいことになるからな。
・・・んまあ、猫を肩に乗っけてる時点で目立ってるらしいけど。
そうしてゼノアと再び仲間たちと合流すると、首都のすぐ南の原っぱに向かった。




