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53、悪魔はのんびり過ごす

ちょっと短いです。

「おお・・・だいぶ輪郭とかはっきりしてきましたね。」




俺は錬金術師のモメントの店の奥のホムンクルスをまた見に来ていた。

ホムンクルスはこのフラスコに入って1ヶ月半ほどになる。

もう1ヶ月半したら、意思を持ってしゃべり出すと言われている。

ホムンクルスはフラスコの中で小さく丸まっているのがわかるほどになっていて、顔のパーツもぼんやりわかるようになっていた。


「あ、これよかったらどうぞ。差し入れです。」

俺は持っていた紙の箱をモメントに渡した。

中は街の西側で老舗の和菓子屋の名物豆大福だ。

「お、あそこの豆大福じゃねえか、ありがとよ。」

「ホムンクルスも意思を持ったらなんか差し入れ持ってきましょうか?」

「食いもん食うかわからないしなあ。それにフラスコに入れたら液体でべしょべしょになるからあげていいもんかなあ?」

確かにホムンクルスは食事を必要としないみたいだしなあ。

だから食べ物あげたところで消化器官がないかもしれないのか。

「なんだ、残念ですね。人外はこんにゃくをどう思うか試したいところでしたが。」

「なにになんてもん食わそうとしてんだよ。」




ん?え?

ヴェネリーグ王国に行くんじゃなかったのかって?



あの時は完全に行く流れだったのだが、なんとなく今ではないと勘が働いて断ったのだ。

正直なところ、とても興味はあったけどまだ情報がほしいような気がしたし、行ったところでなにをするような策も思いつかなかったし。


サルフェーニアは俺に断られはしたが、あっそうみたいな反応だったのでもしかしたら誰か別の人間に様子を探らせに行かせるような気がする。

俺じゃなくてもそういうのが得意な冒険者いそうだしな。

俺は相変わらず箱の依頼をやったりこうして遊びに行ったりしているというわけだ。


「そういえばおめえ、最近噂になってるの知ってるか?」

モメントは差し入れの豆大福を食べながら聞いてきた。

「う、噂ですか?」

俺は思わずモメントの出してくれたお茶をこぼしそうになった。

もしかしてルナメイアとのことか?

「おめえ冒険者にしては珍しく討伐以外のばっかりやってるじゃねえか。しかも解決も早い。だからおめえのおかげで問題が解決したってもんが増えて、おめえの評判が上がってるんだよ。」

「え、そうなんですか?」

「現に討伐以外の依頼、最近増えてないか?」

そういえば、掲示板はチラッと見るくらいしか見てないが冒険者たちが「最近討伐以外も結構あるな」と話していたのを聞いたな。


「そういえば。・・・え、アレ俺のせいなんですか?」

「せいというかおかげだな。討伐依頼以外はあんまり受けてもらえなかったから、出すのためらってたやつも多いと思うんだが、おめえのおかげで出したら受けてもらえるかもって出すやつが出てきたんだろう。いい傾向だと思うぜ。」

確かに討伐依頼以外はほとんど受けられないって状況だったからなあ。

俺としては、面白そうな依頼が増えたってことでいいのかな?


「ついでに言うと、猫を肩に乗っけてる冒険者なんて他にいねえしな。しかもその猫が「神の使い」とか、おめえ目立ちまくってるぞ。」

「え!?目立つの嫌いなんですが・・・。」

「目立つの嫌いなやつは肩に「神の使い」乗せねえよ。ははっ」

モメントはちょっとからかうように言ってきたが、やっぱり肩に猫を乗せるのは目立つよなあ。

しかも本当は「悪魔の使い」なのに「神の使い」にしてるしなあ。


「どうしましょう?肩に乗せるのやめましょうか?」

「ミ、ミ、ミャー!」

店の中を探検していたクロ助がすっ飛んできて足にしがみついてきた。

いやいやという感じで鳴いている。

「はははっ、こりゃあやめれねぇな!」

モメントは笑っていたが、ほんとどうしよう・・・。





*********




ある、どこかの国のお屋敷。


様々な調度品が並ぶ豪華な室内に壁一面に本が並んでいる棚を背に、1人の老人が本を読んでいた。

70代であるが背筋もぴんと整っており、長い白髪を後ろで緩く束ね、黒い鋭い目をした端正な顔立ちの老人で、身なりもキチンとした品のある姿をしていた。



「おーい、親父。手紙だぜ。」


そう言いながら、老人の部屋に中年の男が入ってきた。

50代くらいの紫の短い髪に黒い目の、老人によく似た端正な顔立ちで黒の全身鎧を着ていた。

「手紙じゃと?誰からじゃ?」

老人は読んでいた本を閉じると、訝しげに男の持ってきた手紙を見てきた。

「マスティフからだぜ。あの野郎、父親の俺には手紙の1つも寄越さねえくせによ。」

「お前は厳しく育て過ぎじゃ。それに男がちまちま手紙を書くのもどうかと思うがの。」

老人は呆れたようにそう言うと、手紙を受け取り封を開けた。


「ん~、なになに?・・・ん!?そうか・・・やはりな。」

「親父、どうした?」

「・・・わしの読み通り、悪魔教は滅亡してなかった。マスティフのいるトリズデンで悪魔教信者による誘拐事件があったそうじゃ。」

「!?な、なんだって!?」

「しかも誘拐されそうになったのはルナメイア姫じゃったそうじゃ。」

「ルナメイア姫って・・・あの、トリズデン国王の娘でえらい美人で有名な姫だよな!?まさかその姫を誘拐だなんて、悪魔教にしては大胆なことするなあ。」

「・・・しかも南のヴェネリーグ王国の国王のことも知っているような会話をマスティフの友人が盗み聞きしたそうじゃ。ヴェネリーグ王国は今は内紛中じゃ。なにかあったかもしれんな。」

「親父、どうすんだ?」


老人はしばらく手紙を読み進め、すっくと立ち上がった。


「・・・トリズデンに行ってくわしいことを聞くとしよう。孫の顔も見ときたいしのう。それになんでも、孫の友人がとんでもなく強くて面白いそうじゃ。」



老人はニヤリと笑った。







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