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52、悪魔は気になる

あれから本当に大変だった・・・。



倒れた警備兵を介抱することになるわ、サルフェーニアとエジテスと"黒の流星"に捕まって姫様とのことを根掘り葉掘り聞かれた。

・・・聞かれるほどの繋がりもないけれど。


悪魔教と誘拐計画のこと、そしてロベルドと悪魔教の側近の会話についてはたまたま会話を盗み聞きしてしまったということで、一応サルフェーニアとエジテスに話しておいた。


ロベルドは警備兵に捕まり取り調べを受けたが、完全黙秘を貫いていてある日独房の中で自殺していたのを発見されたそうだ。

屋敷を調べたが悪魔教に関するものは出てこず、通信に使っていた魔石は一瞬どこかに通じたが、相手に気付かれたか壊されてからは通じなくなったそうだ。

ロベルドの部下の3人はロベルドが悪魔教信者だとすら知らなかったようで、ただルナメイアを我がものにするためにロベルドは誘拐を計画していたと思っていたと話したらしい。

それでも犯罪に荷担し、しかも誘拐の相手は姫だったということで重罪となった。

その他の雇われていた者たちもお金に釣られただけと判断され、何人か魔石を割った実行犯として捕まり、その他の者たちは罰金刑で終わったようだ。


因みにサルフェーニアとエジテスを部屋に閉じ込めたのは、その他の雇われていた者たちにして罪を擦り付けた。



そして今1番の問題は・・・。





「よっ!男前!今日は姫様んとこに行かねえのか?」


マスティフがそう言ってニヤニヤしながらイジって来ることだ。

今日も朝イジってきたのに、昼過ぎてたまたま会ったギルド内でもイジってくる。



バチバチッ



「いてーっ!」

イジってくるたびに雷魔法を無詠唱で浴びせているのに、全然懲りずにあれから2週間経ったのにも関わらず、言ってきやがるんだが。

因みにあれから2週間の間にもちょこちょこ箱の依頼をやったおかげでランクCになった。

Cは試験がなくてAまで試験はないらしい。


「マスティフ、そういう関係じゃないと言ったはずですが?」

「なに言ってんだよ!あんなものすごい美人から惚れられて行かねえ方がどうかしてるわ!なんで行かねえんだよ。」

「どうせ助けられた一時的なものです。行く方がアホですよ。どうせ1ヶ月位したら忘れますから、マスティフもいい加減イジるのやめてくださいよ。」

「なんだよ冷めてんなあ。」

ちぇっとマスティフはつまんなそうに言ったが、俺はお前の暇潰しじゃないんでね。


俺とルナメイアのことは、あんな大勢の前でルナメイアに話しかけられたことで、俺に注目が集まり噂が一瞬で広まったが、あまりにも信じられない内容だったためか誰もがデマとして一瞬にして沈静化した。

今では「姫様の好きな人は冒険者らしい?」という都市伝説が流れているくらいで落ち着いている。



「あ、マスティフ。」

マスティフを無視して箱の依頼を見ていると、ヒスランとカルドがやって来た。

「ちょっと、話があるんだけど・・・。」

「んあ?真剣なやつか?」

「う、うん。」

「そうか、わかった。んじゃなユウジン。」

マスティフはそう言うと3人でギルドを出ていった。


なんか真剣な話?

・・・まあいいか。"黒の流星"内のことだろうし。


俺にはそれより気になることがあるからな。



俺は箱の依頼を片付けると、ギルドの受付へ向かった。

「すいません、ちょっと聞きたいことがあるんですが。」

話しかけると男性職員はにこやかに「なんでしょうか?」と言ってきた。

「前にオークの村を冒険者グループ数組で壊滅させたと聞いたのですが、オークの村はどこにあったかわかりますか?」

「オークの村・・・ですか?ちょっとお待ち下さい。」

男性職員はしばらく書類をガサガサめくって、何枚か取り出して見ていた。


「えーと・・・ここから南東の、鉱山の近くですね。」

南東の鉱山と言えば、俺が1人でグリフォンを倒したところだ。

そこの近くね、なるほど。

「そうですか、ありがとうございました。」




「おや、なにか気になることがあるのかしら?」



どこからかひょっこりとギルマスのサルフェーニアがやって来た。

「おや、お疲れ様です。サルフェーニアさん。」

「ほんとにお疲れよ。今だに誘拐事件の書類を大量に書かされて憂鬱よ。ちょっと誰か、コーヒーちょうだい。」

ギルド職員の1人がはい!と言うと、流れるような勢いでコーヒーを入れに向かった。

「休憩がてらにおしゃべりでもしましょう。ギルマスの部屋に案内するわ。」

「あ、はい。」



ギルマスの部屋は2階の奥にあり、フラヴィーナのギルマスの部屋と比べてちょっと広いくらいと家具が違うくらいで、ソファとテーブルにデスクは変わらなかった。


促されてソファに座り、向かいのソファにサルフェーニアが座ったところでギルド職員がコーヒーを持ってきてくれて、俺の分までいれてくれた。

クロ助が部屋の中を探検している中、サルフェーニアはコーヒーを一口飲み、俺に話しかけてきた。


「・・・で?なにか気になったことがあるの?姫様の彼氏さん?」

あんたまでまだイジってくるか!

「彼氏じゃないですって。・・・サルフェーニアさんも気付いてるかも知れませんが、最近、南からくる魔物が多くないですか?オークの村があったのは南東の鉱山の近く。フラヴィーナに来た魔物の大群は南から来ましたし。」

それに俺が1人で潰したゴブリンの村も南にあった。

「そしてロベルドと側近の会話で、南は荒れてるとか悪魔教が王を知っているような会話があったのも気になりますしね。・・・南になにか起きてると考えてます。その辺りの情報はサルフェーニアさんには入ってきてないのですか?」

サルフェーニアさんは意味ありげにニコリと笑った。


「ロベルドと側近が話していたのは南のヴェネリーグ王国のことでしょう。あの国はちょっと前からクーデターが起きて国内の各地で内紛が起きてると、南から来た冒険者が言ってたわ。」

「クーデターですか・・・。」

「国王は結構独裁的な振る舞いが多かったそうよ。それを見かねた第三王子が反旗を翻して、クーデターを起こしたらしいわ。」

なんかテンプレ展開にありそうなやつだなあ。

もしかして、そうなのか?


「実は私も気になっていたのよ。南からくる魔物が多いことが、もしかしたら国王と関係があるんじゃないかと思っていたの。」

「それはどういうことですか?」

「ヴェネリーグ王族は特異な能力を持っていて、それが有名なんだけど知らない?なんでも「使役魔法」が使えるそうで、特に国王は魔物を使役するので有名な人なのよ。」

使役魔法・・・!?

つまり魔物使いのような能力か?

あれ?王族特異な能力?

確か・・・俺が取得可能な魔法の一覧にあったような・・・?

ま、まあ、俺はテスターだからな。

もしかしたらテスターは取得可能なのかもな。


「・・・つまり、南からくる魔物は国王が仕向けている可能性があるということでしょうか?」

サルフェーニアは一口コーヒーをこくりと飲むと、またニコリと笑った。

「私の考えすぎでなかったら、だけどね。可能性があるだけで証拠もなにもないわ。」

だが、もし本当に国王が魔物をこの国に仕向けているとしたら、目的はなんだ?そしてあんな大勢の魔物をどうやって集めた?


うーん、興味はあるがなあ。

なんか変な流れできてないか?

これは俺にヴェネリーグ王国に行くような流れになってないか?

確かに気になる。

独裁政治にクーデターに内紛なんて、俺の好きな絶望がそこかしこにあるような状況だ。



「うふふ・・・気になる?」

「ああ、まあ。気になりますね。」

「私も、魔物が流れてくる可能性があるなら、その分冒険者たちが危険な依頼をしなければいけないから、心配なのよ。」

そしてこれまたニッコリ笑った。




「ヴェネリーグ王国に行かない?」



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