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51、悪魔はつまらない

ちょっと長いです。

「俺は悪魔が見たくて協力してやっていたのに・・・がっかりですよ。」



「な、な、なんだ!?この声は!?ど、どこにいる!?」

ロベルドはものすごい勢いで周りを見回している。

「ああ、誰にも見えない魔法を使ってるので見えないですよ。」

「誰にも見えない魔法だと!?な、なんだその魔法は!?聞いたこともないぞ!?」

「まあ、それはどうでもいいじゃないですか。それより、悪魔教信者なら悪魔は呼ばないのですか?」

「あ、悪魔様を呼ぶのは最高指導者様のみの御技だ。お、お前は何者だ!?なぜ悪魔教のことを知っている?」

最高指導者様のみの御技ねえ・・・これはなんとも怪しいもんだ。

「悪魔教のことはこれっぽっちも知りませんが、悪魔がいるなら見たいと思いましてね。あなたの計画に協力してやっていたのですよ。」


ロベルドは顔色を悪くしてまだ周りを見回している。

「な、なぜ、け、計画を知っている!?きょ、協力とはどういうことだ!?」

「あなたの計画には色々と穴がありましたからね。あのままではあなたはルナメイア様を連れ出す前に見つかって捕まってましたよ。あの会場にギルマスと警備兵長がいることが頭にありましたか?」

「な、なに?ギルマスと警備兵長がいたのか!?」

「他の招待客のチェックくらいしてないのですか?その2人は招待客として会場にいたのですよ?」

俺が呆れたように言うと、ロベルドは苦い顔をして叫んだ。

「だ、だが、2人は私のところに現れなかったではないか!」

「それは俺が気付かれる前に部屋に閉じ込めといたからです。今頃部屋から出て、計画に気づいている頃でしょうね。その他にも、ルナメイア様があなたを疑っていたので信用させるために警備兵のフリして部屋に入って話を合わせてあげたし、目立つルナメイア様に外套を着せたし、一緒に城から連れ出したではないですか?」

ロベルドはその言葉にハッとして目を見開いた。


「お、お前!あ、あの・・・警備兵か!?」

「話を合わせてあげたら、あなたも自分の部下が集めた者だと勘違いしてくれたので滑稽でしたよ。でもまあ、過ぎたことなのでどうでもいいですよ。俺は悪魔が見たかったのですが、すぐ見れないなら興味が失せました。つまらないですね。」

俺は呆れた声で言って、出入り口のドアを開けた。


「ここ窓がないから外の状況わからないですよね?見えます?」

「は?・・・ん?なんだ?明るい?」


外は昼のように明るい光が辺り一面にさしていた。


「誘拐先がすぐにわかるように目印に、この小屋の上空に光魔法で光を出してます。」

「な・・・なに!?」

ロベルドの顔色はまたサッと悪くなった。

「ははは、もうすぐ警備兵が来るんじゃないですかねえ?」

「うああ・・・!い、いやだ!捕まってたまるか!?」

ロベルドは暴れるが、ロープはやっぱり全然解けない。

「ぐあああ!くそっ!なんで解けない!?いやだ!いやだあああ!!」



それからしばらくして警備兵と警備兵長、ギルマスや近衛騎士たちや"黒の流星"も駆けつけたが、その間ロベルドは悔しげに叫びなからのたうち回り、俺はその様を見て楽しく時間を潰した。



俺は一旦小屋から出て、警備兵たちの集団に紛れて隠蔽魔法を解くと、何食わぬ顔で小屋の中を眺めていた。

そうしていると、マスティフが俺に気が付いて"黒の流星"の3人が近づいてきた。


「あ!ユウジン、どこ行ってたんだよ!」

「え?俺はずっと城の中をウロウロしてましたよ?」

それを聞いてマスティフはジト目で見てきた。


「お前・・・ウソつくなよ。俺の勘がいってるぞ、お前色々と知ってるだろ?」

「色々とは?」

「そうだな・・・。あのロープでぐるぐる巻きの貴族が爆発音で気を反らして誘拐したみたいだが、これをお前はなんらかの方法で知ってたんじゃないか?だから自由に動き回れる警備兵の格好をするとか言い出したんじゃないのか?」

さすが勘の鋭い男だ。

さらにヒスランもそこに畳み掛けてきた。

「私も言わせてもらうと、あなた・・・鑑定魔法持ちでしょ?なにか引っかかるものがあったんじゃない?だから今回の警護の依頼を受けるなんて言いだしたんじゃないの?」

う、ヒスランもそこまで考えてたか。


「しかもこんな手紙までよこしたら、疑わない方がアホだろ?」

そう言ってカルドはマスティフは持っていたメモを指さした。

そのメモは俺の字で「ルナメイア様が誘拐されました。犯人はロベルド・サイファー。居場所は光魔法で照らした下にいます。」と書いていた。


俺はあらかじめそう書いたメモをアイテムに入れて罠魔法にアイテム収納魔法のメモをリンクしといて、その罠魔法をマスティフに張っといたのだ。

そして頃合いを見て光魔法を上空に放ち、罠魔法を発動させてマスティフに読ませて警備兵らをここに呼んだのだ。



「・・・はあ、まあいいですよ。ほぼその通りです。」


メモを託した俺もある程度バレることは予想していたし、こうして警備兵らをた連れ出してきてくれたんだ。話してもいいか。

俺はかいつまんでマスティフらに説明した。


怪しい依頼を受けて偽装工作した爆発魔法の魔石を作って計画を盗み聞きして、尾行したらロベルド・サイファーに行き着いて鑑定魔法使ったら悪魔教信者とわかって、計画を見るために警備兵に成りすましたことを話した。

計画の進行を手助けしたことや隠蔽魔法のことは話さず、ここまで尾行してきたことにして光魔法で光を出して、警備兵たちにここに集まるように仕向けたということにした。


「そうか・・・。本当は爆発するところをお前が魔法を弄って音だけ響くようにしたのか。すげえな!そうしたら被害はないもんな!ユウジン頭いいな。」

「別に城が爆発してもどうでもよかったですが、後々めんどくさいことになりそうでしたからね。」

「めんどくさいこと?よくわかんねえな・・・。それにしても、悪魔教か・・・。」

マスティフは悪魔教というワードにえらく考え込むような素振りをした。


「マスティフは知っているのですか?悪魔教について。」

「まあ・・・つっても、そこまで詳しくはないけどな。確か悪魔こそこの世界の神であり、悪魔が人々を苦しめるのは試練を与えているからだ、とかなんとかな考え方の宗教で、50年前に世界各地で村を襲撃して火の海にしたり町に疫病を撒き散らしたり、かなり悪魔への信仰って言って暴れてたらしいんだ。だけど俺のじいさんをリーダーにして"黒の一族"が各地で悪魔教信者を倒していって、悪魔教は20年前には事実上滅亡したとなったんだ。」

ほう、"黒の一族"が潰したのか。

「それがあって俺ら"黒の一族"が一気に有名になったんだよ。でもじいさんは今でも悪魔教は完全には滅亡してないと考えてて、一応目を光らせてたはずだったんだけどなあ。こりゃじいさんに手紙書いた方がいいかなあ。」

マスティフはそう言ってめんどくさげに頭を掻いた。


「・・・そういえばユウジン、なんでこんなギリギリまでロベルドを捕まえなかったの?あなたなら、もっと前に捕まえられたんじゃないの?」

ヒスランは首を傾げて聞いてきた。

「悪魔を見たかったんですよねえ。」

「は?悪魔を?」

「皆さんは興味ありませんか?悪魔がどんな姿か。俺はまあ、性格のおかげで悪魔と言われることが多いですから、悪魔は他の人より身近なものですから本物の悪魔はどんな姿か見てみたかったんですよ。しかし残念ですが悪魔召喚は最高指導者とかいうやつの御技だそうで、ここで見れなかったんです。つまんないと思いませんか?」

「おまっ、つまんないって!もし悪魔が召喚されたらどうしてたんだよ!?つか、もしかしたら姫様が召喚の犠牲になってたかもしれなかったじゃねえか!」

「悪魔を見るために犠牲が必要でしたら、しょうがなくないですか?」

俺がけろっと言うと、信じられないという顔をしてマスティフらは俺を見てきた。


「お前!姫様だぞ!?誘拐されて死んでもよかったってことかよ!?」

「それで悪魔が見れるなら。」

「お前!ふざけんな!」

マスティフは勢いよく胸ぐらをつかんできた。

間近でものすごい形相で睨んできているが、あいにく俺はそれくらいで怯んだり笑顔を崩したりしない。

「・・・悪魔に心臓を捧げるとか無意味な殺生でしたらもちろん止めますが、悪魔が召喚できるという"利益"に繋がるなら命も無駄ではないと思うのですが。」

「命に無駄なものはねえ。命は命だ。"利益"なんて関係ねえだろ。」

「では、誘拐されたのが犯罪者でしたらそんなこと言えましたか?何十人も殺した殺人鬼でも?女を何人も強姦した強姦魔でも?」

「そ、それは・・・。」

「きっと誘拐されても必死に探す人はいないでしょうねえ。犯罪者が悪魔教に殺されてもいいし、悪魔教が犯罪者に返り討ちにされても、どっちかが死んでくれるのですから。命は命、ですっけ?勝手に命に差をつけているのはどっちでしょうか?」

マスティフはつかんでいた手を離したが、苦い顔をしながらも俺をまだ睨んでいる。


「お前、悪魔と言われるっていうのわかるわ。」

「ええ、なんでかよく言われます。」

睨まれているのもものともせず、俺はニコリと微笑んだ。

「まあまあ、マスティフ。落ち着いて。」

ヒスランとカルドがなだめていると・・・。




「おお!姫様がお気付きになったぞ!!」




小屋の中からそんな声が響いた。


俺とマスティフがいざこざしてた間に、ルナメイアは小屋の中でギルマスのサルフェーニアの回復魔法で介抱されていたのだ。

まあ、結構強い睡眠薬だったようで、今まで時間がかかったのだろう。



少し足元をふらつかせて顔色の悪いルナメイアが、近衛騎士長の手をかりて小屋から出てきた。

城からすでに馬車が来ていて、小屋の前に横付けされていた馬車に乗るように近衛騎士長はルナメイアに促した。

しかしルナメイアは近衛騎士長の手を離すと、集まった警備兵らの前に出て頭を下げた。


「皆様のおかげで助かることができました。私のために集まっていただき、本当にありがとうございます。」

ルナメイアが体調が万全ではないなかでわざわざ挨拶してくれたので、警備兵らは全員魅了されていた。

ルナメイアが頭をあげて何気なく皆を見回してと・・・




ヤバい!目があった!!





途端にルナメイアは驚いた表情をしながらもポッ頬を染めた。




そしてしずしずとこちらに近づいてきた。


「ヤ、ヤバい!」

「あ?どうした?」

しまった!隣にマスティフたちがいる!

俺はうろたえるが、逃げ場がない。

隠蔽魔法は今さら使えないし!




「・・・またお会いしましたね、冒険者様。」


慌てるなか、ルナメイアは話しかけてきた。

頬を染めながら話しかけられた俺を警備兵やマスティフなどその場にいた全員が目を見開いて見てくる。


もう、答えないわけにはいかない。


「そ、そうですね・・・。」

「なぜ、今日は警備兵の格好をされているのですか?その・・・お似合いですけど。」

「あ、ありがとうございます。今日は警護の依頼で警備兵の格好をさせていただきました。ひ、姫様がご無事なようで何よりです。」

視線が痛い・・・!

俺は心でものすごく冷や汗をかいて笑顔で対応しているが、目立つのが苦手なため、刺すような視線に参っていた。


「お、おい、ユウジン。姫様と知り合いなのか?」

マスティフ黙ってろ!

「え、ええ。前に魔物に教われている馬車を助けたことがありまして、それに姫様が乗っていまして・・・。」


「ユウジン・・・というお名前なのですね?」




しまった!名前バレた!

くそっ!マスティフのアホが!


「は、はい。ユウジンといいますが、姫様の記憶にいれるほどの者ではありませんので忘れていただいて大丈夫です。」

「いいえ。・・・ユウジン様の素敵なお名前を聞けて嬉しく思います。」

そう言ってルナメイアは幸せそうにニッコリ微笑んできた。


うわっ、めちゃくちゃ美しい!直視できない!

ああ、俺の近くにたまたまいた警備兵がバタバタと倒れていく・・・!


「本当は・・・もうちょっとお話したいのですが、体調が優れないので今日はこれで失礼しますわ。またお会いしましょう、ユウジン様。」

ルナメイアは一礼するとしずしずと馬車に乗り込んだ。

近衛騎士長がなかばパニックになりながらも御者に出発の合図をだし、馬車と近衛騎士長と近衛騎士たちは去っていった。






・・・去っていった後、ものすごい空気になった・・・。



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