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48、悪魔はパーティーに行く

ロベルド視点でお送りします。

パーティー当日。




城は華やかな雰囲気に包まれ、城の使用人が花びらを風魔法で飛ばして楽団の軽快な音楽が吹き抜けのホールに響き渡っていた。

少し前から続々と貴族は城に到着し、2階と3階の控え室は満席に近い状態だ。

その中の一室に、私はソファに座って紅茶を飲んでいた。



そして私の対面には、私の友人の貴族が顔色を悪くして座っていた。


「・・・あなたが脅迫文を送っていたとはな、タムズ。」

タムズと言われた男貴族はビクッとさせてこちらを伺うように見てきた。

30代の背の低い痩せた男で、私より爵位は下の子爵だ。

「も、申し訳ありません・・・。ロベルド様。」

タムズは消え入るような声でそう言ってきた。


私はロベルド・サイファー、伯爵だ。

爵位が違うので接点は元々なかったが、ある共通点があったので私はタムズを目をかけてやっていた。

「なぜ、脅迫文なんてものを送った?」

「我ら悪魔教に、本当に例の者は必要か・・・疑問に思いまして・・・。」


そう、私とタムズは悪魔教という宗教の信者ということで仲良くなったのだ。


悪魔教は悪魔こそ神であり、我らを救うためにあえて苦難を突きつける存在であるとし、人類滅亡こそ人類を救うための唯一の方法としている素晴らしい宗教だ。

私たちはまだまだ末端に近い地位にあるが、今回の誘拐を見事果たしたらいい地位が約束されている。

これは最高指導者様が仰っていたから間違いはないのだ。


「なぜ疑問に思う?最高指導者様の指示なのだぞ?」

「・・・ロベルド様も聞いてますでしょう?最近の最高指導者様の噂を。宗教を私物化しているという・・・。」

「それは私も聞いたことがある・・・、ということは、例の者を誘拐するのは悪魔様の指示ではないと考えるのか?」

タムズは小さく頷いた。

「いくら最高指導者様でもそんなことはすまい。それこそ悪魔様がこの状況を試練として与えているのかもしれんぞ。」

「そ、そうでしょうか・・・?」


ふん、どうやらタムズは悪魔様への信仰が足りないようだ。

信仰心が低いから、いつまでもこんな地位で満足しているのか。


「そ、それに、例の者が誘拐するのは・・・どうも・・・。」

「なんだ?なぜ例の者を哀れむ?・・・まさか、例の者に心奪われたというのか?」

「・・・も、申し訳ありません!その・・・お姿があまりに美しくて・・・。」

「美しいからこそ、悪魔教に誘拐せよと指示が出たのにか。まったく・・・呆れたものだ。」

私ははあっとため息をついたものの、その気持ちはわからいでもなかった。

あんな美人はもう生涯見ることもないほど、世界的にも有名な姫だからな・・・ルナメイア様は。



そう、今回誘拐するのはルナメイア様だ。



「まあ、落ち着いて紅茶でも飲んでくれたまえ。」

「は、はい・・・。」

タムズはおどおどしながら紅茶に口をつけた。

「う、うん?・・・すいません、急に・・・眠気が・・・。」

途端にタムズはフラフラしだして、そう呟くとソファにバタンと寝そべった。


「ほう、さすがあいつが用意した睡眠薬だ。」

私はタムズの紅茶にだけ睡眠薬を数滴入れていたのだ。

どうせおどおどしているこいつは誘拐に役に立たないと思っていたからな。


私は胸ポケットから小型のナイフを取り出した。

「悪魔様の信仰が足りない者は、悪魔教に不要なのだよ。」


タムズの心臓めがけてナイフを突き立てた。

タムズは小さく「うぅっ」とうめくと血がじわりと溢れてきて、タムズは死んだ。

私はナイフを抜くとあらかじめ用意していた布で血を拭いて胸ポケットに戻し、布をタムズにかぶせた。

そして部屋のドアを開けて、部屋の外に立っていた警備兵ににこやかに声をかけた。


「タムズ殿が緊張で体調を崩されて横になっている。顔色も悪かったから、そのままにしてやってくれ。」

「わかりました!」

警備兵は疑うこともなく元気よく返事してきた。

警備兵のくせに部屋の中で人が殺されたのを気付かないなんてな、ははは。




国王主催のパーティーはそれはそれは華やかなものだった。

国1番の楽団のコンサートに手品師のショーがあったりと特設された舞台の上は常に誰かいて招待客をもてなし、国内で有名な飲食店のシェフたちが一同に会して様々な料理を振る舞って多くの者がそれらに舌鼓を打っていた。


国王主催のパーティーは2年に1回開催され、一説には国王が我が子らの結婚相手を探す場として催されているとも、人望獲得のためとも言われている。

そしてこれを機会にお近づきになりたいと王子と姫に群がる者は多く、今も王子と姫にはたくさんの貴族が群がっては、ある者は豪勢な貢ぎ物をし、ある者は自慢話をして自己アピールをして、ある者は媚びへつらい顔色を伺っていた。


ああ、なんと愚かな光景だ。

群がっている貴族は端から見たら大変滑稽なものだ。

だが、今回はこの愚か者たちに紛れなければならない。

時が来て、手筈通りに爆発が起きたときに近くにいて、まず先に安全なところへ案内すると会場から出さないといけないからな。


それとなく会場を見て回ったが、やはり脅迫文のことがあったからか警備兵がやけに多いな・・・。

まあ、想定はしていたから、こちらも警備兵に成りすます部下も増やしたから問題はないと思うがな。



・・・ふむ、時にはまだ時間があるか。

ちょっと暇潰しに挨拶しといてやるか。

悪魔教でない者とあまり話をしたくはないのだがな。


国王は大臣や格上の貴族と話し込んでて挨拶できそうにないので、誰かいないかなと周りを見回すと、ある集団に目が止まった。

・・・お、こいつらは挨拶しておこう。


「失礼。"黒の流星"殿。はじめまして、お噂は聞いていますよ。」

私がにこやかに声をかけると、"黒の流星"のリーダーのマスティフとかいう男が返事をした。

「ありがとうございます。リーダーのマスティフといいます。」

「先ほど国王に呼ばれてましたし、"黒の一族"で有名ですから、お名前は知ってますよ。私はロベルド・サイファーと申します。お仲間の方々も、以後お見知りおきをお願いいたします。」

「ありがとうございます。ヒスランと申します。」

「カルドと申します。」

リーダーのマスティフといい、ヒスランとカルドという仲間といい、なかなかの強者の雰囲気を感じる。

まあ、私が彼らを相手に戦おうとしても数秒で終わってしまうくらい、彼らは実力を持っていることがひしひしと伝わってくるな。

もちろん、相手をするつもりはないんだが。


「フラヴィーナの活躍ぶりを是非また、私の屋敷にでもお越しくださってお聞きしたいものです。」

「いやあ・・・聞かせるような話でもありません。ただ無我夢中で戦っただけのことで。」

「それが素晴らしいのです。無我夢中に戦う英雄殿の話を聞きたいのですよ。近いうちに使いのものを寄越しましょう。是非、我が家にお越しください。」

「は、はあ、そうですか。ありがとうございます。」

他の貴族が我も我もと"黒の流星"に群がりそうだったので、一礼してその場を離れた。


ふむ、実力は高いようだが、人としてはなかなか抜けてそうだな。

我が家に呼んで話を聞くフリして、じわじわ洗脳して悪魔教に入るようにできるかもしれないな。

ああいう人材が入ったら悪魔教のますますの躍進に繋がるだろう。

そうすれば、悪魔教に入れた私の地位も上がることだろう、ははは。



それからは適当に格上の貴族に挨拶して回ったり、知り合いの商人がいたので話したりして、時間を潰した。




・・・もうそろそろだな。


私はルナメイアのいる会場奥へ向かうと、ものすごい貴族が群がっているのを避けて押し退けて、なんとかルナメイアの斜め後ろの位置に辿り着いた。

うわ・・・こんなに近くで見たことがなかったが、本当にものすごく美しいな・・・。

透き通るような白い肌に白いロングドレスを着て、髪飾りやドレスに赤いバラが散りばめられその姿は女神かはたまた妖精のように神秘的であった。


ルナメイアは貴族たちが次々と話しかけているのをすべて無視して、睫毛の長い目を伏せて憂いを帯びたような表情で明後日の方を向いている。

それがまた絵画のように様になっていて、貴族たちは見惚れていた。




ドオオォォン!



その時、会場入り口の方から爆発音が響いた。





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