47、悪魔は受けることにする
俺は朝、いつものように突撃してきたマスティフに朝食を食べながら話しかけた。
「マスティフ、昨日言っていた依頼なんですが、協力はまだ間に合いますか?」
俺の言葉にマスティフはびっくりして俺を凝視してきた。
「え?え?昨日自分にはメリットないって言ってたじゃねえか。どういう風の吹きまわしだ?」
「ちょっと・・・思うところがありましてね。面白そうなんでぜひ近くで見たいなってなりまして。」
「面白そう?警護なんて面白くもなんともないぞ?まあ、まだ全然間に合うし、ユウジンに協力してくれたら安心だけど・・・あ、安心でもねえか。」
「安心でもないかとは?」
「お前・・・性格めちゃくちゃ悪いじゃねえか。ぜってぇなにか企んでるだろう?」
マスティフはジト目で俺を睨んできたが、残念。
企んでるのは俺ではないのだよ。
「性格が悪いのは自覚してますが、めちゃくちゃと付くほどではないですよ。これでもなにがあっても殺人はしませんし、人命は可能な限り助けたいですし。」
「いやあ、そう言ったら一見いい奴みたいなんだが、なんか裏があるとしか思えなくなったんだよな。あん時のあの顔見たら。」
どうやら先週のフラヴィーナでの戦いで俺がニタリと笑った狂気の笑顔が相当インパクトがあったようだ。
そんなにアレな顔だっのかなあ?
「・・・まあ、協力してくれるのには感謝するよ。明日、ギルマスから依頼の詳細についての説明があるから、朝飯食ったら俺とギルド行くようにしようか?」
「ヒスランとカルドはどうするんです?」
「2人はいっつもギルドの酒場で朝飯食ってんだよ。」
え、あそこ朝食が出るのか!
よくよく聞いたら、あの酒場は24時間営業で食べるものもものすごい充実しているし、冒険者ギルドの中にあるため冒険者割引があるらしく、結構朝食・昼食・夕食がわりにしてる冒険者が多いらしい。
知らなかった!今度利用してみよう。
朝食を食べたマスティフはギルドに俺が協力者として参加することを伝えるために、さっさと去っていった。
そして翌日。
朝食を食べた俺とマスティフは冒険者ギルドに向かった。
マスティフはフラヴィーナの戦いでますます人気者なったので、歩いていても度々声をかけられたり握手を求められたりが多くなった。
なので今向かう道中も次々と人が寄ってきてマスティフは苦笑しながらもすべてに対応をしていた。
その時の俺はというと、一緒にいると目立つのでちょっと離れている。
あんなに群がられてよく対応できるもんだ。
まあ、マスティフの性格からして全部にちゃんと対応したいのかな?
マスティフの人気っぷりは冒険者ギルドに入ってもだった。
次々と冒険者が寄ってきて、若い冒険者はキラキラした目でマスティフを見ていて、もう若い冒険者にとっては憧れの対象になっているようだ。
さすがの人気っぷりにちょっと引いて酒場に視線を移すと、ヒスランとカルドが朝食を食べていたのが見えた。
「あ!ユウジン、おはよう。」
ヒスランがこちらに気付いて声をかけてきた。
俺は群がられているマスティフを放っておいてヒスランらに近づいた。
「おはようございます。ヒスラン、カルド。マスティフってすごい人気なんですね。」
「そうよー。誰かさんのおかげで英雄になったからね。ここんとこ毎日あんな感じよ。」
「おはよう、ユウジン。かなり女性にも大人気みたいだよ。」
そういえばマスティフに群がってるのは女性がやけに多かったな。
「ずっと独り身だったからこれを機会に彼女でも作ってくれたらいいのになって、私たちは思ってるんだけどね。」
「そういうお2人はどうなんですか?お2人も"黒の流星"としてかなり人気ではないですか?」
「私とカルドは言っても"黒の流星"のメンバーであって"黒の一族"ではなもの。たまにあの群れの一部が流れてくるくらいよ。」
ヒスランはそう言って苦笑した。
そうかなあ?2人とも若いし顔も悪くないから来そうなものだけど。
とか話をしていたらようやく群れが散って、マスティフがこちらにやって来た。
「すまん、お待たせ。」
「私たちもちょうど朝食食べ終わったところよ。さ、行きましょうか。」
ヒスランとカルドは立ち上がり、4人してカウンターへ向かった。
マスティフが受付と話してしばらくして、職員がやって来て2階へと案内された。
2階は会議室な個室などがあるだけの階のようで、俺たちは会議室へ案内された。
会議室は白い壁に窓があって大きめのテーブルとイスが10脚あるだけの殺風景な部屋で、俺らは適当に固まって座った。
職員が麦茶を持ってきてくれてしばらくして、男女が入ってきた。
俺は男を見て思わず驚いて固まった。
な、なんで警備兵長がくるんだ!?
そう、前に人身売買で貴族が捕まったときに俺の気配に唯一気付いた男だ。
そして一緒に会議室に入ってきた女性はダークエルフだった。
20代後半くらいの青い長髪に青いの目で長い耳に褐色の肌でものすごくスタイルのいい巨乳で露出度の高いドレスのような服を着ていた。
手には今回のことに関係すると思われる書類をいくつも持っていた。
テンプレ来た――!
ダークエルフは絶対ギルマスだ!
「お待たせしたかしら?私はここの冒険者ギルドのギルドマスターのサルフェーニア・リィよ。」
サルフェーニアはそう言って優しく微笑んできた。
名前:サルフェーニア・リィ
種族:ダークエルフ(魔法使い)
年齢:542
レベル:100
HP:3860
MP:5000
攻撃力:246
防御力:381
智力:950
速力:419
精神力:698
運:204
適性:四大魔法
戦闘スキル:中級細剣術
魔法スキル:上級火魔法・上級水魔法・上級風魔法・上級土魔法・中級木魔法・初級雷魔法・中級光魔法・初級闇魔法・精霊魔法
レベル100!?
まあ、年齢が年齢だから、レベル100でもおかしくないか。
ていうかさすがダークエルフだけあって適性が四大魔法とは、えげつないな。
続けてサルフェーニアの隣の警備兵長が自己紹介してきた。
「スクリュスク警備兵長のエジテス・カリスティだ。よろしく頼む。」
エジテスはサルフェーニアと違って無表情でそう言った。
名前:エジテス・カリスティ
種族:人間(魔法剣士・スクリュスク警備兵長)
年齢:36
レベル:68
HP:2590
MP:1520
攻撃力:430
防御力:391
智力:321
速力:253
精神力:202
運:119
戦闘スキル:上級剣術・上級体術
魔法スキル:上級水魔法・上級闇魔法・拘束魔法
あの時鑑定できなかったから、やっとできた。
・・・うん?カリスティ?
どこかで見た名字だな・・・?どこだったか?
まあ、そのうち思い出すだろう。
2人は俺らと対面する位置のイスにそれぞれ座った。
それから今度はこちらが自己紹介した。
「ランクB"黒の流星"リーダーのマスティフです。」
「"黒の流星"のヒスランです。」
「"黒の流星"のカルドです。」
「ランクDのユウジンです。」
俺が自己紹介すると、サルフェーニアとエジテスがそれぞれ反応した。
「・・・あなたがマスティフの推薦で加わることになったユウジンね。噂は聞いてるわ。」
「噂?なんかやらかしましたか?」
「いいえ。箱の依頼をわざわざやってる冒険者ってことで職員の中ではなかなか有名よ、あなた。」
本当に箱の依頼をやる冒険者はいない上に箱の依頼しかやってないのは俺しかいないからな。
まあ、変わったやつと噂されてもしょうがないか。
「だが・・・この者はランクDなんだろう?大丈夫なのか?」
エジテスは訝しい表情で俺を見てきた。
「大丈夫です、兵長様。」
答えたのはマスティフだった。
「こいつはランクが追い付いてないだけなんで。頭もいいですし、強いですし。」
「そうか・・・。英雄殿が言うなら間違いないのだろうな。」
そうは言いながら大丈夫か?みたいな感じは出しつつ、エジテスはそれ以上言ってこなかった。
まあ、しょうがないよな。ランクDだもんな。
・・・ていうか、貴族の屋敷で俺の気配に気付いていたのに、俺には気付いていない・・・?
もしかして、感覚的なものでなんかいると思ったくらいだったのか?
バレてないならひとまず安心だ。
それから状況説明が始まった。
脅迫文を送りつけてきた人物の特定は未だできていないが、パーティーの中止は考えてないそうだ。
その代わり、警備兵は2倍に増やして招待客以外会場へ入れない・パーティー開催中は城の出入り口を閉じて警備兵をしくなどの対策はするとのことだった。
「明日は私もエジテス殿も招待されているから、私たちも警護につけられるわ。それでもなにがあるかわからないから、同じく招待されている"黒の流星"にも警護してほしくて依頼をしたの。」
サルフェーニアは持っていた書類の中から城の見取り図を出してテーブルに広げた。
パーティーは城の中央にある1~3階の吹き抜けのホールで行われるそうで、2階と3階は招待客の待機や休憩などにと用意された部屋が多くあるそうで、その部屋の全ての出入り口に警備兵を配置するそうだ。
そしてそれ以上の階は王族とメイド数人しか通行禁止にして王族の安全は確保するらしい。
ふむ、結構対策はちゃんとしていると思うが、あの男たちは本当にこの状況から誰かを拐うことができるんだろうか?
・・・まあ、警備兵に紛れ込んでるらしいから、それをうまく利用したら・・・あれをあれして・・・。
「すいません、ギルマス。質問いいですか?」
マスティフがサルフェーニアに声をかけた。
「パーティーの流れを一応聞いときたいんですけど。」
「最初以外は一般的なパーティーと変わらないそうよ。最初に国王から挨拶があって、そこで"黒の流星"は呼ばれて国王からのお褒めの言葉をもらうことになると思うわ。それからは自由な立食形式だそうで、王族や貴族に挨拶に行ったりされたりして話して、一角でダンスしたりして数時間で解散の流れになるでしょうね。」
ふうん。俺のラノベとかでのイメージそのままなパーティーなようだ。
あ、でも俺はそういうパーティー初めてだからマナーがわからないな。
マスティフ・・・じゃなくてヒスランに聞くか。
「ヒスラン、すいません。あとでパーティーでのマナーを教えていただけますか?パーティー出たことないのでわからないもので。」
「いいわよ、ユウジン。といっても簡単だし、立食だからそこまでかまえるほどのマナーはないわよ。」
「・・・おいユウジン、なんで俺に聞かないんだ?」
マスティフはジト目で俺を見てきた。
「え、だって・・・ねえ?」
俺が目線をすっと逸らすとヒスランとカルドが俺の考えがわかって、うんうんと頷いていた。
「お前ら!」
マスティフは怒って怒鳴ってきたが、サルフェーニアに止められた。
「ちょっとマスティフ、真剣に聞きなさいね。」
「え!?なんで俺だけ怒られるんだ!?」
マスティフは腑に落ちない!と怒っていたが、アホだからだよ。
「・・・すいません、お願いがあるのですが。」
俺はちょっと考えて、あるお願いをした。
サルフェーニアのステータスの魔法スキルについて。
レベルが5の倍数でスキル1つずつ取れるようになっているのですが、サルフェーニアのスキル数が21になっていて計算がおかしくなります。
でも精霊魔法はエルフ固有の能力としてエルフなら全員が産まれた時から持っているものとして設定していますので、計算にいれません。
ということでスキル20で合っております。
あしからずです。




