46、悪魔は怪しい依頼を受ける
朝食を終えた俺はいつものようにギルドに行った。
ギルドは相変わらず酒場に多くの冒険者がいて、掲示板に貼られている依頼は討伐依頼ばかりだ。
俺はいつものように箱の依頼をめくっていく。
箱の依頼なんてよっぽど暇な冒険者がやる以外はほとんど誰も見向きもされないので、最初俺がめくっているのをものすごく珍しく見られたものだ。
今ではいつものこととして、誰も見向きもしなくなったけど。
箱の依頼依頼をチェックしていると、気になる依頼があった。
「ん?・・・「魔石に爆発魔法を込める依頼」?」
持っている魔石に爆発魔法を込めてほしいというもので、5つ込めて報酬は1万インと高めだ。
なんで爆発魔法を5つもいるんだ?
しかも依頼人の住所は・・・ここはスラムにあたるところだな。
爆発魔法なんて物騒なものに、スラムに高い報酬・・・。
明らかにヤバいことに使う可能性があるな。
・・・受けない方がいいと思うが、なんとなく気になる。
・・・よし、受けてみるか。
依頼書によると、依頼人は東側の治安の悪い方のスラムだった。
前のことがあるので、クロ助に隠蔽魔法をかけて存在を隠蔽した。
住所を頼りにスラムに入って、道に座り込む浮浪者がジロジロ見てきたが何食わぬ顔をして無視してある家にたどり着いた。
ものすごく外観がボロボロで廃墟と言われてもおかしくないくらい壁にヒビが入っていたりしている2階建ての家だ。
ドアを叩くと、ガリガリに痩せて汚れた服を着た、顔色の悪い男が出てきた。
「あ、あの、依頼を見て来たんですが・・・。」
「!?お、おお!そうか!よく来てくれたな。さ、入ってくれ。」
男はヘラヘラ笑って中に入れてくれた。
家の中は外観よりはボロボロではないが、ところどころすきま風が入ってくるし床はたゆんでいる。
家具もカビだらけの物が多く、カーテンも破けまくってて部屋も暗いし生活しにくそうなところだ。
1階の奥に案内され、そこはガタガタのテーブルとイスがあるだけの殺風景の部屋で、テーブルの上に小石ほどの大きさの魔石が5つ無造作に置かれていた。
「こ、この魔石に爆発魔法を入れてくれ。爆発魔法できるんだよな?」
「はい。こんなに爆発魔法、なにに使われるんですか?」
「え、ああ、えーと、この近くの廃墟を取り壊すのに、いるんだよ。ほら、スラムの家はボロボロだからな、ヘヘヘ。」
男は明らかに目を泳がしながらそう答えた。
思いっきり「今思いつきました」感のある答えだが、俺は返事を期待してなかったので俺も適当に「そうですか、大変ですね。」と信じたフリをしてイスに座った。
魔石に魔法を込める作業はクロ助の首輪のチャームの魔石に魔法を込めたことがあるので、手順はわかっている。
とても簡単で、魔石を持って込める魔法をイメージしながら魔力を石に入れるだけだ。
火魔法なら魔石は赤く、水魔法なら青く、という風に属性によって色が出て、込めた魔石は持つとどんな魔法が入っているか頭にイメージが浮かんでくる。
そして石が割れたら込めていた魔法が発動する、というものだ。
「では、爆発魔法を込めます。爆発範囲はどうしますか?」
「え、えーと・・・、とりあえず2~3メートルでできるか?」
「わかりました。」
俺は言われた通りに爆発魔法を込めて、罠魔法を2つずつある魔法でリンクさせて石自体に張った。
罠は俺にしかわからないから、込めた爆発魔法しか他人にはわからないはずだ。
「ふう、終わりました。」
男は1つを手に取り確認して、またヘラヘラ笑ってきた。
「確かに。ありがとうよ、へへへ。あ、そうだ。・・・よかったらコレもらってくれ。」
差し出してきたのは酒で、ラベルのない瓶に入っていた。
見るからに怪しいが、気付かないフリをすることにした。
「え、いいんですか?」
「いいんだいいんだ。いっぱいもらったからよ。」
「ありがとうございます。では、いただいて行きます。」
俺はにこやかにもらって、家を出た。
俺が出てすぐにドアが閉められたのですぐさま瓶の中身を鑑定した。
『毒入りの酒』
毒の入った酒。
結構強めの毒のおかげで超辛口。一口であの世にレッツ&ゴー。
通販のような説明文じゃないのかよ!レッツ&ゴーて!
説明文でふざけないといけないルールでもあんのか?
・・・い、いや、そんなことより。
やっぱり毒入りかよ。
用済みで口封じってとこか?
ということはやっぱりなんかヤバいことの可能性があるってことか。
俺は周りを見回し、酒をアイテムに入れて隠蔽魔法で俺の存在を隠蔽して目の前のドアに手をかけた。
・・・ん、開かない。
当たり前か、鍵かかってるか。
俺は短杖を取り出すと多めの魔力でものすごい短くて細い魔法剣にして、ドアの隙間に差し込んだ。
スパッと切れた感触がして、鍵を切ってドアを開けることに成功した。
すばやく中に入って、あの男を探してみるとどうやら2階にいるようで2階に通じる階段の上の方から話し声が聞こえてきた。
静かに2階に上がると、上がってすぐの部屋のドアが開いていて、覗くと先程の男と別に2人の男がイスに座ってテーブルを囲んで話をしているようだった。
男2人のうち1人は痩せた男と同じ汚れた服を着たボサボサ頭の男で、もう1人はガタイのいい普通の服にレザーアーマーを着た男だった。
「おい、それで魔石は準備できたか?」
「ああ。今やっと依頼を受けた冒険者が来て、込めてった。ほら。」
痩せた男はそう言ってバラバラとテーブルに魔石を置いた。
ボサボサ頭の男やガタイのいい男はそれらを持って確認して、うんうんと頷いていた。
「これで我々の計画ができる。半年待った計画だ、必ず完遂させようぜ。」
ガタイのいい男がそう言うと2人はうんうんと頷いた。
「実行は3日後だ。あの方によると3日後に国王主催のパーティーがあるそうだ。その時が絶好の機会だとあの方も仰っている。」
どうやら3人のリーダーはガタイのいい男で、その男の上に「あの方」というのがいるようだ。
「城の警備兵にツテはできてる。これでパーティー当日に我々が警備兵に紛れて中に入れるようになるぞ。」
ボサボサ頭の男はニヤリと笑ってそう言った。
「城を爆発させる位置はわかっているな?時間になるまで近くに待機して、時間になったら爆発させて待避だ。そうして爆発に注意が向いてる隙に、あの方が例の者を拐う手はずになっている。」
なるほど。
爆発は誰かを誘拐するための囮か。
だが、誰が誰を誘拐するんだ?
そしてなぜ誘拐する?
それからは雑談になって、なんとなく解散の流れになった。
ガタイのいい男がさっさと出ていこうとしていたので、俺はその男を尾行することにした。
この男についていったら、「あの方」に会う可能性があると思ったからだ。
ガタイのいい男は周りを見回しながら家から出て、武器防具屋が建ち並ぶ東側を北へまっすぐ進み、貴族の住む北側にまで来た。
そして1つの屋敷へと入っていった。
ここに来たということは、「あの方」は貴族か?
俺は真後ろにぴったりくっつく形で一緒に中に入り、男は屋敷の奥へ奥へと進んでいって、屋敷の主人の書斎へとやって来た。
前に忍び込んだ貴族の屋敷といい、ここもものすごい高そうな調度品があちこちにある。
メイドもせわしなく動き回り、警備をしている鎧姿の男らもチラチラいる。
前に忍び込んだ貴族の屋敷には警備をしている奴なんて数人だったのに、この屋敷はやけに多い気がするな。
気のせい・・・か?
書斎に入ったガタイのいい男を待っていたのは、この屋敷の主人だった。
「む、お前か。・・・計画はどうだ?間に合いそうか?」
屋敷の主人は40代の水色の長い髪を後ろで三つ編みにしたメガネをかけた神経質そうな顔で痩せ型の貴族服を着た姿だ。
デスクで書き物をしていた手を止めて、男に視線を向けていた。
「爆発魔法の魔石がやっと揃いまして、パーティーには間に合いました。」
「そうか。よくやった。」
男の返事に主人はニヤリと笑って頷いた。
「爆発魔法が発動する少し前から例の者のそばにいることにしよう。なに、安全な場所に逃げようと言えば疑わずについてくるだろう。」
「もしもの時のために、睡眠薬はどうされます?」
「・・・一応持っておくか。即効性があるものを用意できるか?」
「明日にはお渡しできるかと。」
「ふむ、そうか。頼むぞ。」
男は一礼すると書斎を後にした。
俺も一緒に出て、屋敷の外まで出ると男の後ろからすっと離れた。
「・・・ふむ、なかなか面白い展開ですね。ですが、腑に落ちないこともありますが・・・。」
それは朝にマスティフから聞いた脅迫文のことだ。
この男たちの仕業かと思ったが、おそらく違う。
脅迫文はパーティーを中止しろという内容だとマスティフは言っていた。
もし脅迫文を重んじて中止となってしまったら、男たちは計画ができなくなり困るはずだ。
・・・つまり、計画を知って中止しろと脅迫文を送った者が別にいるということか。
どうなるか、気になるな・・・。
あの貴族も気になるし。
俺は鑑定魔法を全員にかけていたので、貴族の名前もわかったのだ。
名前:ロバルド・サイファー
種族:人間(伯爵貴族・悪魔教信者)
年齢:24
レベル:28
HP:750
MP:280
攻撃力:78
防御力:63
智力:69
速力:41
精神力:39
運:26
戦闘スキル:中級剣術
魔法スキル:初級風魔法・中級闇魔法
悪魔教信者、ねえ・・・。




