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41、悪魔は容赦なし

『我が前の敵を射て、ファイアアロー×20』



俺がそう唱えると空中から出現した火の矢は勢いよく飛んでいき、フレデリックに群がろうとしていた魔物を次々に命中して一気に火の海となった。




西側の爆発音で、俺の仕掛けた「魔物が通ったら火魔法の爆発魔法のエクスプロージョンが発動する」ようにした罠魔法が発動したことがわかったので、ちょうど近くにいた"黒の流星"に声をかけて途中で"火炎の翼"も見つけて彼らとこちらに駆けつけたのだ。


これが彼らに話した策は、ただ西側に魔物が出たら駆けつけて倒そうというものだ。

これは西側から魔物が来た場合に明らかに兵士だけの人数分で対応ができないだろうから、実力もレベルもある人間が駆けつけた方がいいと思ったのだ。

俺の予想では、南側を囮にして西側からボス率いる数十体の群れが来ると思い、それならばレベル50以上のボスにはレベル50以上の人間を相手させればいいと考えて、"黒の流星"と"火炎の翼"を誘った。


しかしそうなれば現在戦闘中の南側の戦力が落ちるという問題が出てくるが、ここは俺の罠魔法でなんとかすることにした。

これについては彼らには言ってないので気にしていたようだが、西側に魔物のボスが来る可能性と、そのボスを倒したら南側の魔物が引くだろうと言うと渋々納得してくれた。



「俺がフレデリックを救護しますので、その間みなさんは魔物が来ないようにして下さい。」

「了解!」

「オッケー!」

"黒の流星"と"火炎の翼"の面々はフレデリックを囲むような陣形をとり、魔物と戦いだした。

俺はフレデリックに近づくと、すぐさま異変に気づいた。


「フレデリック様?・・・これは毒にやられてますね。」

足に噛まれた傷があり、口から血を吐いて痙攣している。

まずい!早くしないと!


『この者の内に潜む毒を消し去れ、アンチドーテ』


光魔法に毒消しの魔法があってよかった。

続けて光魔法の回復魔法を唱えて、フレデリックの傷を治した。


「おお!治った!!治ったぞ!お前、よくやった!礼を言うぞ!」

「いえいえ、礼には及びません。日頃から俺たちフラヴィーナの町民を守ってくださっているフレデリック様のためならこれくらいなんでもありません。」

ある程度戦い終わった"黒の流星"と"火炎の翼"の面々は俺の言葉にぎょっとしていた。


「うん?よく見たら・・・"黒の流星"!?なぜお前たちがここにいる?」

フレデリックはマスティフを見つけて驚いていた。

「彼らはフレデリック様の危機に駆けつけたのですよ。」

「そ、そうかそうか!よく来てくれたな!」

フレデリックはマスティフの大剣が折れて違う大剣を持っているのにも気づいてないようだ。

それどころではなかったしな。

「ちょっと・・・ユウジン?」

アシュアが戸惑って俺に声をかけてきたが、俺は口に人差し指を当ててしーのポーズをした。


「フレデリック様、その剣では戦えないでしょう。よかったらこちらをお使い下さい。」

俺はフレデリックが持っていた剣がボロボロなのを見て、すぐそばの兵士の死体から剣をとるフリをしてアイテムからストックしていた鉄の剣を差し出した。

「俺たちフラヴィーナの町民にフレデリックの勇姿を見せてください。」

「うむ!私の戦う姿をよく見ておるがいい!!」

フレデリックは意気揚々と立ち上がり、ぞろぞろ来ていた魔物に切りかかっていった。


うわあ・・・、走るのめっちゃ遅いし切るタイミング違うし。

あ、ゴブリンに殴られてる。

よくそんな状態で意気揚々と戦場に出たなあ。


「・・・おいユウジン、なに考えてんだ?」

マスティフが険しい顔をして聞いてきた。

みんないぶかしい顔をして俺を見ている。

「まあ、みなさんは黙って見ていてください。面白いことになりますから。」



フレデリックはすぐにバテて魔物にまたやられだした。

俺はすかさず魔法で回復させると、フレデリックに声をかけた。

「フレデリック様かっこいいです!もっと勇姿を見せてください!」

「ふはは!そうか、かっこいいか!どれ、もうちょっと戦ってやろう!」

そうして魔物に切りかかっていった。


そうしてフレデリックがバテて傷を負ったらその都度回復して、あからさまな激励や称賛をしてフレデリックが調子に乗って魔物に突撃してを繰り返し。

そうしていく内に段々とフレデリックの様子が変わってきた。


「フレデリック様、この調子です。さ、回復しましたし、どんどん魔物を倒してください。」

俺がニコリと微笑むと、フレデリックは苦しそうな表情になった。

「いや、あのな。もう私はこれくらいで・・・。」

「フレデリック様の勇姿を町民が見るチャンスなのです。どうか美しい剣捌きを見せてください。」

「そ、そうか・・・?美しいと?な、ならばもうちょっと戦うとするか。」


そしてすぐにバテて攻撃を受けていた。

「ぐうぅ!?・・・い、痛い!も、もういいだろう!?」

俺はすかさず回復魔法を唱える。

「なにがもうなんですか?もっともっとフレデリック様の戦うお姿を見せてください。」

「も、もう十分だろう!?いい加減・・・勘弁してくれえ!?」

もうフレデリックは涙を流して俺に言ってきた。



その時、俺はサーチであいつ(・・・)がこちらに近づいていることがわかっていた。


俺はニコニコ笑って、フレデリックに返事をした。


「では・・・とても残念ですが、こちらに迫ってきているあの魔物と戦っていただく姿を最後に見たいです。」

俺がそう言って前方を指差すと、そこには遠くから一際大きな魔物がのそのそとやって来ていたのが見えた。


体長は3メートルほどで、目付きの悪い豚の頭に2本の大きな角とボロボロの王冠を被り口からは4本の牙を覗かせて涎を垂らしていて、首から下は人間の太った体にボロボロの鎧と赤いマントを付けて巨大なこん棒を両手に2本の持った姿だ。


なんの魔物かなと思っている俺以外は全員驚愕の表情を浮かべていた。


「オ、オークキング!?」


なるほど。確かにオークの特徴だし、王冠被ってるし。

俺は鑑定してみた。



種族:オークキング

属性:土

レベル:53

HP:2200

MP:150

攻撃力:368

防御力:293

智力:124

速力:110

精神力:136

運:86


戦闘スキル:上級こん棒術・双剣術

魔法スキル:中級土魔法



レベル53だったか。

強そう・・・に見えるけど、俺はレベル61のグリフォン倒してるからなんかどうしてもそこまで強く感じないと思ってしまう。


フレデリックは顔を青くしてワナワナと震えだした。

「オ、オークキングなんて・・・無理だ!あんな強い魔物となんて戦ったことがない!」

「おお!戦ったことがないのならその姿をますます見てみたいですね!きっと華麗に切りかかっていって下さいますよね!」

「そ、そんな!こ、殺されるぞ!?」

「傷ついても俺が回復しますのでご心配なく。思う存分、フレデリック様は戦って下さい。」

俺はニコニコ笑ってフレデリックの体をオークキングに向けた。


「ひい!?でかい!こんな・・・無理に決まっている!!」

俺は泣いてわめくフレデリックの後ろから両肩にポンッと手を置いて、耳元で囁いた。


「おやおや、フラヴィーナの町民の前で尻尾を巻いて逃げるおつもりですか?その姿を見た町民はなんて思うでしょうねえ?うちの領主はたいしたことない、魔物を前にして逃げた腰抜けって、思うでしょうねえ。」

「う、うぐ・・・。」

「そんな浅ましい姿を町民に見せられますか?失望されたいですか?失望されたくなかったら、ほら、剣を構えましょう。」

フレデリックはものすごい苦悶の表情で涙を流し震えながら、剣を構えた。


「くそ!くそぅっ!!」

そう叫んでオークキングに向かう姿を見て、心底おかしくてついニタアと笑ってしまった。

俺のその狂気の笑顔を見て"黒の流星"と"火炎の翼"の面々が戦慄しているのも見えた。


フレデリックはやけくそとオークキングに突っ込んで行ったが、オークキングは一睨みするとフレデリックの腹をこん棒で殴って吹っ飛ばした。

フレデリックはゴロゴロと転がって魔物の死体にぶつかって止まった。

俺が歩み寄ると、土と血で全身汚れたフレデリックはガタガタ震えて俺の足にすがり付いてきた。


「もう・・・いやだ!助けてくれ!なんでもする!なんでもするから許してくれぇっ!!」

その顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。




俺はニッコリ微笑んだ。

「・・・言いましたね?なんでもすると。その言葉、忘れないようにしてくださいよ。」




俺はすでに仕掛けていた罠魔法を発動した。



ジャラジャラジャラジャラ・・・!


オークキングの周囲の地面から真っ黒の鎖がのびてきて、オークキングに巻き付いた。

オークキングは動揺して激しく暴れて鎖を引きちぎろうとするが、鎖はびくともせずオークキングはあっという間に首から下は全く身動きがとれなくなった。


「マスティフ、レフィ!オークキングやっつけてください。」

「お、おお・・・。」

「・・・。」

少し顔色の悪いレフィは黙ってオークキングにかけていくと、ものすごい速さでオークキングの全身を切り刻んだ。

そしてマスティフは慌てて大剣を構えると続けてオークキングに向かっていき、鎖を足場に飛び上がると「オラアッ!」と声をあげてオークキングの首を勢いよく切断した。


俺はそれを確認すると罠魔法を解いた。

オークキングの体は仰向けにドスンと倒れ、ものすごい量の血が流れ出した。


「ありがとうございます、マスティフ、レフィ。」

「お、おお。」

「・・・。」

マスティフもレフィも俺から礼を言われて動揺して2人とも視線を外してきた。

他の皆も顔色を悪くしてうつむいていた。

まあ、ちらっと本性出したし、皆の中の俺のイメージがぶっ壊れて動揺してんだろうな。

これでも今回は絶望を見たいわけじゃなかったから、なるだけ本性おさえたんだけどなあ。



「さて。」

俺はすがって来ていたフレデリックに回復魔法を唱えた。

「あのオークキングはおそらくボスです。あれが倒されたことにより魔物の動きも悪くなるでしょう。現にほら、魔物が逃げ出してますね。」

今までこちらに向かってきていた魔物たちがちらほらと引き返しだした。

「この分では、南側の魔物らもボスが倒されたことを察知して引いていくでしょう。その後の行動はどうしますか?」

フレデリックはビクッとして、少し考えおずおずと答えた。


「とりあえず・・・今日1日は魔物がまた襲ってくる可能性があるから町の防衛をして、明日追加の兵士100人が来次第、兵士の死体回収と魔物の死体をどこかに埋めることになる。」

さすが領主をしているだけあってすぐにまとまったな。



「うん、それでいいでしょう。ちゃんとあなたも動いて下さいね?」

「あ、ああ・・・。」

「今後も、フラヴィーナのために知恵をふるって下さい。誰よりもフラヴィーナのことを考えて、領民を守りなさいね?それが貴族にできることです。なんでもするんですもんねえ?」

フレデリックはまた涙を流してコクコクと何度も頷いて返事をした。


「さて、皆さん。町に戻りましょう。」

"黒の流星"と"火炎の翼"に声をかけるとアシュアがおずおずと口を開いた。

「あ、あの、南側がまだ戦っているのでしょう?南側に行かないと・・・。」

「ああ、大丈夫ですよ。南側は今頃、冒険者たちは引き上げて来てるんじゃないですかねえ。」



全員首を傾げていた。





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