38、悪魔は遭遇してしまう
「んは――――――――!すげえユウジン!!」
俺はマスティフを助けるんじゃなかった、とげんなりしていた。
俺が『腐食の粉』と暴いて、鑑定魔法持ちと言ってからずっとマスティフは感心・絶賛してきた。
あんまりにも長いのでクロ助は俺の膝で寝ているし、ヒスランとカルドも最初は一緒に感心していたが今は落ち着いて色々と食べてる。
「・・・いい加減、落ち着いて下さい、マスティフ。話が進みません。」
「いやいや!これが落ち着いてられっか!鑑定魔法なんてそんなにレア魔法初めて見たぞ!・・・ん?話?話ってなんだ?」
「マスティフ・・・アホだと思っていましたが、本当にアホなんですね・・・。」
「あ、ユウジンあんまりアホって言っちゃだめよ。意外に傷つきやすいんだから。」
マッチョがメンタル弱いって、ここの世界でもか。
「なに言ってんだよ!俺はアホでも傷つきやすくもないぞ!」
「はいはい、マスティフ落ち着いて~。」
カルドはやれやれという感じでなだめていた。
「マスティフ、考えなさいよ。この小瓶は「武器に振りかけたら切れ味が上がる」って言って執事にもらってのよ?」
「あ、ああ。・・・待てよ?ということは、明日俺に振りかけさせて武器を腐らせようとしたってことか?・・・もしかして、俺がフレデリックの誘いを断り続けているからか?」
「その可能性は高いでしょうね。戦いの最前線に置くようにしたのもおそらくそういう意味があったんでしょう。」
やれやれ、やっと話が進む。
「な、なんてやつだよ!?ちくしょう、騙された!!」
マスティフは怒りでテーブルをダンッと叩いた。
「・・・ところで明日の戦いに関して、俺に思うところがあります。"黒の流星"に聞いていただけるとありがたいのですが。」
「え?なんかあるのか?」
「はい・・・。夕方までの自由時間を利用して魔物の大群の下見に行ってきたんですが・・・。」
「は!?下見に!?町よく出れたな。止められなかったのか?」
「止められませんでしたよ?」
隠蔽魔法で通ったからな。
俺はウエストポーチから出すフリをしてアイテムから地図を出して"黒の流星"に見えるように置いた。
「ここに大群が来ていました。明日の昼くらいに来るのは確かでしたが、やけに横に広がって進んでいました。・・・これの意味はわかりますね?」
「もしかして・・・町の南側だけじゃなく西側からも来るかもしれないってこと!?」
ヒスランは驚いて俺を見てきた。
「あくまで、来るかもという段階ですがね。ですが大きく横に広がって来ている意味を考えるならおそらく。もし俺が魔物のボスなら、南側を囮にして西側に攻め混みますね。魔物を率いる知能があるならそういう策を考える頭もあると思っています。」
「その可能性があるならこうしちゃいられねえ!フレデリックに知らせねえと!」
マスティフはガタッと勢いよく立ち上がったが、それを俺は制止した。
「待ってください、マスティフ。そこで俺に考えがあります。」
そして俺は考えている策を話した。
「ええっ!?・・・その策、大丈夫なのか!?・・・下手したらものすごい被害が出るぞ?」
「そうしないために"黒の流星"に乗っていただきたいんです。後は"火炎の翼"にも協力してもらうように話すつもりですし。」
「"火炎の翼"を?あの子らはランクDでしょ?戦力になるの?」
「・・・レフィはマスティフ並にレベル高いですし、アシュアもレベルはそこそこですが適性を持ってます。十分に戦力になります。」
「え!?そうなの!?・・・ていうか、ユウジン、マスティフや"火炎の翼"のレベル知ってるの!?」
「あ、すいません。」
レフィのレベルを分かりやすく説明するためについうっかりレベルを知ってる言い方をしてしまった。
とりあえず、"黒の流星"は話に乗ってくれることになった。
まあ、今からフレデリックに言いに行ったところで、冒険者の意見を聞く人間ではないというのがわかっているからだろう。
俺は"黒の流星"と別れると1人宿屋に向かって歩き出した。
「!?・・・お、お前、ユウジン!?」
声の方を見ると、ガンカーがこちらを見て驚いていた。
げっ!油断していた・・・。
見つかったのなら今さら隠蔽魔法もできないな。しくった・・・。
ガンカーはこちらを睨みながら歩み寄ってきた。
「お前・・・今までどこにいた?」
「こんばんわ、ガンカー。どこにいたのか、俺の勝手だと思うのですが?」
俺はいつものように微笑んでわざとイラつかせるような言い方をして返事した。
ガンカーは俺の返事にイラッとしたようで眉をひくつかせた。
「こんなときに現れやがって・・・なに企んでやがる?」
「・・・企むもなにも、俺はなにもやっていないのに変ないいががりはやめていただけますか?明日、町を守るために魔物と戦うつもりで町にいるんですよ。」
「!?明日の戦いに参加するのか!?」
「はい。一応この町は好きですし。」
「はっ、どうだか・・・。監視の目を抜けて逃げたくせに。」
「誰だって監視させるのはいい気がしませんから撒いただけです。そもそも監視されるようなことはしてませんし。」
俺の減らず口に、ガンカーはイライラして頭をかきむしった。
「くそっ、フレデリック様がいる間だけでもおとなしくしてろよ!」
ガンカーはそう言ってどこかへ去っていった。
うん?今の言い方は・・・。
まあ、いいか。
今は明日のためのことをしよう。
それから宿屋に戻って"火炎の翼"の泊まっている部屋を訪ねた。
部屋の中に入れてもらったが、女性の部屋に入るのは中々精神的に来そうだったので、部屋の出入り口のすぐそばで地図を出して、魔物が西側からも来る可能性の説明した。
2人は下見に行っていたことを驚いていたが、すぐに俺の話を信じてくれた。
「本当に西側に来る可能性があるならフレデリックに言って西側に兵士を集中させるとかした方がいいんだろうけど・・・たぶんフレデリックは人の話を聞きそうにないわよねえ。」
「俺もそう考えてます。しかも魔物の大群を利用して、マスティフが痛い目を見るように仕向けてましたしね。」
「え!?なにそれ!?」
俺は"黒の流星"が最前線に立たせる嫌がらせと、怪しげな粉を渡されたことを話した。
鑑定魔法で見破ったのは秘密にして、偶然発覚したことにした。
「・・・ということもあるので、俺に考えがあります。"黒の流星"が乗っていただけましたので、"火炎の翼"にも乗っていただけないかと思いまして。」
そして俺は考えた策を話した。
「・・・まあ、その策ならなんとかなりそうだけど・・・。本当に私たちだけでうまくいくかしら?」
「"黒の流星"がいるのですから、うまくいく可能性は高いでしょう。俺も魔法で頑張ってみますが、お2人も強いですから、乗っていただけると助かります。」
「・・・アシュア、どうする?」
アシュアはうーんと考えて、よしっと決めた。
「町を守れるなら、私は乗ってもいいと思う。レフィは?」
「・・・私もいいと思う。」
レフィは相変わらずの無表情で頷いた。
「ありがとうございます!」
俺はひとまずほっとした。
この策に乗ってくるかは五分五分だったが、乗ってきてくれて助かった。
これで魔物はなんとかなるかわからないが、西側の対策はできたし、ついでにフレデリックをぎゃふんと言わせられるな。
ぎゃふんですめばいいけどな、はははっ




