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36、悪魔は移動中

馬車での移動はやはり慣れない。



ものすごい・・・ケツが痛い!


俺は膝の上で寝ているクロ助を撫でながらすぐそばの馬車の窓から外を見た。

景色がどんどん変わっていって、たまにチラチラ動物や魔物の姿が見えた。


フラヴィーナへは馬車が行列となって向かっていた。

1番前はフレデリックが偉そうに白馬にまたがり進み、その後ろのド派手な馬車はフレデリックが馬に飽きたら乗る用だそうで、中には世話係のメイドと執事がいるらしい。

その後ろに兵士たちの馬車が3台ほど続き、その後ろに俺たち冒険者の乗った馬車が3台続いている。


今回は緊急時ということでいつもより馬車は早く進むようにしているそうで、フラヴィーナまでいつもなら1週間はかかるのだが、今回は4日位で着く予定だそうだ。

しかし、馬車を早く走らせらのはやはり馬に多大な負担になるので、こういった緊急時しかやらないようだ。


因みにこの間の食事はギルド持ちで3食出してくれたが、朝は固いパン1つ、昼は固いパンと常温のスープ、夜は固いパンと干し肉、というメニューでそこでまた俺はげんなりしてしまった。

"黒の流星"によるとこれが冒険者としては普通なんだそうだ。

"火炎の翼"の2人もショックを受けてげんなりしていたから、今まで俺と同じような食事をしていて、こんなとは思わなかったのだろう。


一応皆の前ではそれとなく食べ、休憩で馬車が止まった時にトイレに行くフリして近くの森に入って、アイテムの中に入れていたいつかの串焼きとかを食べた。

クロ助のミルクはさすがに出ないということで、アイテムの中に入れたままだったいつかの粉ミルクをあげている。


そして夜、寝るのは馬車で雑魚寝だ。

しかも夜の間の見張りは冒険者に押し付け、兵士はテントで寝てフレデリックはとんでもなく豪華なテントで毎日酒を飲んでいる。

見張り中に魔物が襲ってきても冒険者たちで対処しろと言われ、逆に魔物が襲ってこないように未然に防げと怒鳴るくらいだ。



移動中はとにかく暇だったから、皆おしゃべりに夢中で俺もしゃべっているので結構仲よくなった。

「へえ、ユウジンは前にフラヴィーナにいたことがあったんだ。ね!どんな町?」

アシュアは興味津々で俺に聞いてきた。

「とても賑やかでいい町でしたよ。露店の食べ物もどれも美味しかったのを覚えてます。」

「あ、それ私もそう思うわ。フラヴィーナは山と海に囲まれてるから食べ物が美味しいのよ。」

ヒスランがニコニコ笑って話に入ってきた。

「私がオススメなのは"金鶏の夜明け"亭の定食よ。あそこはめちゃくちゃおいしいわよ。」

「あれ、"金鶏の夜明け"亭行ったことがあるんですか?俺はそこに泊まっていたんですよ。」

「え!?あそこ結構高いわよ!?よく泊まれたわね!?」

「いやあ、値段を気にせず料理が美味しいという噂と外観のきれいさで決めたんで、びっくりしました。」

「ユウジンってお金に無頓着なところがあるわよね?お金本当に大丈夫なの?」

「だ、大丈夫ですよ。」

アシュアに心配されたが、本当に大丈夫だ。

腐るほどあるし。




・・・ん?



俺は話ながらも密かにサーチしていたのだが、この先の道に魔物がいるな。


「・・・マスティフ、そろそろ準備(・・)しといた方がいいですよ。」

「んえ?」

眠くてうつらうつらしていたマスティフは急に俺に話しかけられて、とぼけた声をあげた。

するとガタンと馬車が止まった。

そして急いだ様子で兵士がやって来た。


「ま、魔物が出たので"黒の流星"の皆さん、お願いします!」

「ふぁっ、はいはい。ちょっと行ってくらあ。」

マスティフはあくびをするとめんどくさげに立ち上がって馬車を降り、その後ろをヒスランとカルドが続いた。



フレデリックは誰に聞いたのか、冒険者の中に"黒の流星"がいることを聞きつけて、こうやって魔物が道に出たら"黒の流星"を指名して討伐させてくるようになった。

マスティフは普通に戦っているのだが、その強さを気に入ったようで魔物討伐後は必ず自分の部下になれと勧誘してくるのだそうだ。

マスティフはもちろん嫌なのでやんわり断り続けている。


しばらくしてマスティフらがげんなりしながら帰ってきた。

「はあぁぁっ、魔物倒すより疲れるぜ~。」

そう言ってマスティフは俺の隣にどかりと座った。

「なあー、ユウジン。次からお前行ってくれよ~!もう俺めんどくせえよ~!」

「"黒の流星"指名なんですからしょうがないでしょう?いっそのこと、部下になってはいかがですか?安定した収入は得られそうですが。」

「ぜっってーーやだ!"黒の一族"は自由がモットーだから、誰かの下になんかつきたくないね。」

マスティフは苦い顔をして否定した。


「・・・つうかさ、さっきユウジン、馬車が止まる前に声かけてこなかったか?魔物がいたことがなんでわかった?」

「・・・なんのことですか?マスティフが寝ぼけてたんじゃないですか?」

「んん?そうなんか?」

マスティフは俺があまりにあっけらかんと言ったので、そうかもしれないと頭を傾げていた。


・・・ものすごいレフィが俺を睨んでる・・・。

会話聞かれてたな・・・恐らく・・・。





明日はフラヴィーナに着くという夜。



フレデリックは"黒の流星"を呼びつけてきた。

俺はなんとなく隠蔽魔法で"黒の流星"についていって、フレデリックのテントとの中に入った。

豪華なテントの中にはなぜかベッドやソファなんかもあって、それが気にならないほど酒瓶が転がっていた。

ソファに真っ赤な顔のフレデリックがどかりと座っていて、その後ろに護衛とメイドと執事が何食わぬ顔をして立っていた。

こんな荷物や酒はどうやって持ち運びしているんだ?


「これはまた・・・フレデリック様はお酒をたくさん飲まれるんですね。」

マスティフはあまりの酒瓶にちょっと引いてフレデリックに声をかけた。

フレデリック赤い顔でふんっと鼻をならして笑った。

「私には大枚をはたいて買ったマジックバックがあるからな!」

え!?この世界にマジックバックがあるのか。

どうやらラノベと同じで相当高価なようだ。

「へえ、フレデリック様はマジックバックをお持ちで。どれくらい入るのですか?」

「よくぞ聞いてくれたな!10m×10m×10mだぞ!」

その言葉に"黒の流星"はとても驚いていた。

「え!?そんな大きいの聞いたことがないです!」

え?そうなのか俺はその4.5倍だぞ!?


マスティフらが驚いたのに気をよくしたフレデリックはマジックバックを見せて自慢してきた。



は!?なんで・・・ジュラルミンケースがここに!?


あれがマジックバック!?

絶対にテスター関わってるな!



俺が動揺している間に、フレデリックはまた部下になれと勧誘していた。


「申し訳ありませんが、"黒の一族"は自由がモットーですのでお受けできません。何回もお誘いいただいて申し訳ありません。」

マスティフはそう丁寧に言って断った。

フレデリックは途端に機嫌が悪くなった。

「この私が直々に誘ってやっているのに・・・。まあ、いい。明日フラヴィーナに着くが、そこで私の采配を見るといい。必ず私の部下になりたくなるぞ。ははは。」

フレデリックはがばっと酒をあおるとはははと笑った。


"黒の流星"は一礼するとテントを出ていった。

俺も出ていこうとすると、フレデリックと執事がなにやら話し始めた。


「あの態度、気に入らんなあ・・・。どう思う?ザール。」

「恐れながら・・・フレデリック様のお力もわからぬ愚か者ではないかと。」

ザールと言われた執事は一礼して言葉を発した。

60代くらいの白髪オールバックに燕尾服を着た、執事のイメージそのままの姿だ。


「お前もそう思うか。やはり冒険者などという下らない仕事をしているだけのことはある。"黒の一族"と聞いて期待したが、強いだけで大したことないようだなあ。」

「フレデリック様の部下にさせていただく栄誉もわからぬようですな。」

「ではザール、あの態度を改めさせる手だてはなにかないか?」

「それでしたら・・・わたくしめに妙案がございます。お任せください。」

ザールはそう言って一礼した。

フレデリックはふははと笑って酒をあおった。



マスティフになにかするつもりか?

まあ、マスティフはあのレベルだし強いから相当なことでない限り大丈夫と思うが。




まあ、面白そうだ。

マスティフには黙って様子を見ていよう。




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