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336、悪魔は2回目の襲撃を受ける

前半ヘルマン視点、後半三人称視点です。

そして短いです。

俺はレックスと相部屋となっている宿屋の一室の中で意識を集中する。


勇者様に教えてもらった魔力を伸ばす(勇者様はサーチと呼んでいた)のをたまにやって宿屋の下の階となる1階の様子を探りつつ、サーチをしていない時は一室の外の気配に気を配りつつ待機している。

3時間ずつの交代で見張っていて、今は俺が見張る時間でレックスはベッドで仮眠をとっている。


勇者様の指導のおかげでサーチはやりやすくなったが、やはり少し意識を集中しないと広範囲に広げられない。

密かに個人的にも訓練しているので少しずつ意識を集中する時間が短くなってきているような気がするが、あくまでも気がするので本当に短くなってきているのかはわからない。


ドアの内側すぐのところにイスを置いて座り、不審者が廊下を通ればすぐに一室から飛び出して行けるようにして鎧は脱いでいるが剣は側に置いている。

前回の旅で宿屋に侵入者の襲撃があったが俺とレックスが気づいて相手をしたため侵入者たちは逃げた。

勇者様はなにか目的があって侵入したのなら、それが達成されていないのならまた侵入者たちは再び来る可能性があると言っていた。

なのでこうして警戒しているのだ。

相手は相当な手練れなのはわかったが、護衛なのだからどんな相手でも勇者様を守らなければならない。


そう思い、再びサーチをかけたところ・・・。


ん?宿屋の階下から階段を目指して来ている人間が複数人いる?

人数は・・・4人!

侵入者と同じ人数・・・!それに、なんとなくサーチから感じる雰囲気が侵入者たちのものに似ている気がする。



「・・・レックス」


俺はつとめて冷静になれと己に言いつつ、レックスの名を口にした。


ベッドで仮眠をとっていたレックスはその一言だけでパチリと目が覚める。

スッと音もなく起き上がると側に置いていた剣を掴んで真剣な顔をしてこっちを見てくる。

レックスは名を呼ばれただけで異変があったとすぐに察したようで、俺が無言でドアの外を指差し、続けて指を4本立てて人数を知らせるとレックスも前回の侵入者のことを思い出したのかわずかに目を見開いて頷いてきた。


そしてサーチしていたのを止めてしばらくすると一室の外の廊下から気配がしてきて、目の前まで来るまで待ってから一気にドアを開けた。


「「「!?」」」


やはりそこには全身黒ずくめの侵入者たちがいた。

雰囲気や背格好からして同じ人物4人だと思いつつ、俺は腰を低くして侵入者たちに近づいて剣を素早く抜いてそのまま切りかかった。

が、侵入者たちは素早い身のこなしで避けて後退りそれぞれ短剣を構えた。


それからはレックスも剣を抜いて一室から飛び出してきて、2人で4人をそれぞれ相手した。

狭い廊下でお互いの味方の邪魔にならないようにするにはどうしても突きか払うくらいしか出来ず、その突きの剣撃は侵入者たちにいなされ隙をついて短剣を振りかぶってくる。

さすがに魔法は使うと大事になるとわかっているのか使ってこないのはよかったが、それはこちらも言えることで俺は魔法にあまり頼らず戦うスタイルなのでそれほど苦ではないがレックスは明らかにやりにくそうにしていた。


お互い攻防を繰り返していると戦闘音の騒ぎを聞き付けて他の宿泊客や宿屋の従業員が来てしまった。

それを見た侵入者たちはお互いになにか目配せをして、またしても近くの窓を突き破った。

そしてこっちにウインドカッターを放って次々と侵入者たちはそこから出ていっている。


「くっ!また前回と同じか!待て!!」

俺はウインドカッターを避けて急いで突き破られた窓から追って飛び出した。

前回はこうして追って行ったが途中で撒かれたのだ。

今度こそは!と窓の外は宿屋の庭に位置していて侵入者たちは庭から出て道に逃げているのがチラッと見えた。


2階から飛び降りて侵入者たちが逃げたルートを走って侵入者たちを追う。

今度は逃がすまいと町の建物をぬうように走る。

必死に追いかけると侵入者たちの背中が見えてきた。

途中、低めの塀や生け垣に阻まれながらもしたがなんとか追い付いたと思った。


・・・が、やはり侵入者たちは途中で忽然と姿を消してしまい、やはり撒かれてしまった。

だが、今回はこれで終われない!


俺は立ち止まって急いでサーチをした。

前回はサーチをやることすら頭から抜けていたが、2回目となると冷静になれたのでサーチという考えが思い付けた。

ただ、まだまだ完全に慣れていないサーチは立ち止まってでしか使えず、勇者様のようになにかをやりながらというのは難しい。


「・・・いた!」


サーチをすると夜の町中で4人がどこを走っているのかすぐにわかった。

サーチを止めてその方向に走る。


向かった先は町の出入り口にある馬車置き場だった。


「・・・まさか!」


まずいと全力で向かったが、馬車置き場に着いた時には1台の馬車が町の外にまさに出て行くところだった。


「・・・くそっ!」

さすがに馬車に追い付く脚力も気力もないし、だいぶ体力も使ってしまった。

俺はしばらくその場に立ち止まり、悔しくて歯を食い縛った。



・・・だが、こうしていてもなににもならない。

宿屋に戻って勇者様に報告しなければ・・・。

そして城に戻ったら騎士団長にも報告だ。


それでもなにか手がかりがないかと途中の塀や生け垣に寄って周辺を見て回る。

すると・・・生け垣の側になにかが引っかかっていた。


「これは・・・侵入者が使っていた短剣か!」

短剣が抜き身で引っかかっていて、恐らく生け垣に突っ込んだ時に引っかかったのだろう。

その短剣を手にとってまじまじと見ると、柄頭のところになにやら紋章が彫られていた。

「こ、これは!?」



それはグラスタッズ王国の国章だった。









その頃、馬車置き場では。



「・・・行ったか。」


馬車置き場のすぐ側の建物の影に隠れていた黒ずくめの4人が姿を現した。


さっきの町を出ていった馬車は偶然出ていった馬車で、4人はまさかここまでヘルマンが追ってくるとは思わず建物の影に隠れていたところ、ヘルマンが町を出ていった馬車を見て勘違いしただけだった。


ヘルマンは馬車置き場でサーチしていたら気づいたかもしれなかったが悔しさでサーチどころではなかった。


「まさかここまで追ってくるとは・・・」

「確かに撒いたのだろう?」

「ああ。なぜここがわかったんだ?」

「わからん。だが、あのヘルマン・アロンソだ。運も味方しかのかもしれん。」

「まあ、その運もここまでだったがな。」


アレ(・・)は引っかけてきたか?」

「ああ。ちゃんと生け垣にそれっぽく引っかけておいた。」

「それならいい。今回はそれが目的だったからな。」

「この後はどうする?」

「首都に戻ってあの方(・・・)の指示を待つだけだ。」


黒ずくめたちはヒソヒソ話して移動しようとした。

が、4人の行く手は阻まれた。



「いやあ、ここまでご苦労様でした。」


ジャラジャラジャラジャラ・・・


「「「!?」」」


4人は一瞬で黒い鎖でぐるぐる巻きになって地面に転がった。


「これからあなた方にはぜひ協力してほしいことがあるんですよ。」



虫も殺せぬような顔で青年はニコニコ笑っていた。





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