2、悪魔は確認する
気付いたら、森の中にいた。
小鳥のさえずりと風で揺れる木々の音だけが聞こえ、周りに誰もいないようだ。
ここが言ってた、異世界か。
よし、まずは状況確認だ。
服装は、村人風な布の服でTシャツに革のジャケットにズボンに革のブーツ。
鞄は腰のベルトにウエストポーチ1つに、ナイフを帯刀している。
ウエストポーチの中はポーションと思われる薬瓶が2つ入っていた。
身に付けているのはこんなとこで全部だ。
「ステータス。」
呟いてみたら、ステータスが目の前に透明のウインドウで出た。
名前:ユウジン・アクライ(阿久来優人)
種族:人間
年齢:24
レベル:1
HP:50
MP:60
攻撃力:10
防御力:8
智力:15
速力:9
精神力:7
運:3
超適性:罠魔法
戦闘スキル:初級短剣術
魔法スキル:初級罠魔法・初級鑑定魔法・アイテム収納魔法・初級火魔法・初級水魔法
ふむ、平均がわからないから、このステータスがいいのか悪いのかわからないな。
でもまあ、智力が高いから希望通りの魔法使い系統かな?
よしよし、俺が希望した特殊魔法の罠魔法がちゃんとある。
とりあえず、アイテム収納魔法というのは多分ラノベでいうアイテムボックスのことだろう。
何か入ってるものがあるのか、早速唱えてみよう。
なんと唱えたらいいか自然と言葉が出てくる。
『アイテム収納魔法:収納一覧』
収納しているものを見たい時はこう唱えるようだ。
ステータスの表示しているウインドウとは別にウインドウが現れた。
中はポーション8個と地図とお金と「神様監修:世界の歩き方」という本が入っていた。
この本はどういうことだ?あの神様ふざけてんの?
今夜、宿屋に泊まったときにでも読もう。
今は世界を歩く前に自分のことを把握したい。
アイテム収納魔法の詳しいことが知りたいな、と思ったら頭の中に入ってきた。
どうやらラノベのアイテムボックスと同じで生物は入れられないが、時間停止効果があるので、料理は出来立てを入れたらずっと出来立て状態で保存できるようだ。
そしてアイテムボックスとは違うところは、容量がレベルによって増えるみたいだ。
俺はレベル1だから、1m×1m×1mだ。
そして出し入れはウインドウから行うらしい。
試しにポーションを1つと思ってウインドウを押してみたら、ウインドウからポーションがぽーんと出てきた。
逆にウインドウに押し付ける感じでポーションを入れることができた。
アイテムのウインドウは俺が用がないと思ったら勝手に消えた。
因みに収納一覧のウインドウを出すのは魔力消費がないようで、出しっぱにしているステータスを見てもMPは減ってなかった。
さて、俺のことはこんなところかな。
次は今の状況確認だな。
再びアイテムウインドウを出して、地図を取り出して現在地を確認した。
地図には大きな菱形の大陸が2つ並んであって、俺がいるのは東大陸のさらに東の端の町のすぐ近くの森なようだ。
どういう理屈かわからないが紙の地図の、現在地と思われる所に赤い印が点滅してる。
これが魔法なのかな?
地図を頼りに森を歩いてみたら、石畳の道にすぐ出て、道の先に町があると思われる高い塀が見えた。
このまま、まずは町へ・・・と行きたいが、ちょっと準備がいるな。
あの神様がテンプレ展開を用意していると言っていたが、俺の予想が当たっているならこの準備は役に立つはず。
そう思って俺は再び森に入った。
人目につかないように奥の方に行くと、ちょっとひらけた場所に出た。
ここがいいかもな。
俺は魔法を試してみることにした。
魔力を具現化するから、魔力の流れとかを感じることで魔法が使えるようになる、とかラノベでよくあるが、そこんとこどうなんだろう?と思ってたら頭の中に魔法についてのことがうかんできた。
なんかそういうのはこっちの世界に来たときに無意識にできるようになってるらしい。
魔法を使うと自動的に魔力が流れてくれて具現化するらしい。
なんだろう、これも至れり尽くせりなのか?
まあいいや、出来るなら早速、初級火魔法をやってみようか。
すると頭の中に初級火魔法の情報と詠唱呪文がうかんできた。
『我が意のままに燃えろ、ファイア』
すると手のひらの上にぽっと拳大の火の玉が出た。
そういえばとステータスウインドウを見てみたらMPが2減っていた。
ふと、ラノベでよくある無詠唱ってのはできないのかな?と思った。
そうだなあ、例えば・・・。
『火魔法:ファイア』
お、同じ拳大の火の玉が出た。
ステータスウインドウは・・・MPが今ので4減ったようだ。
どうやら省略したらその分MPが消費するのか。多分倍消費かな?
では無詠唱ではどうだ?
これまでと同じ、拳大の火の玉を頭の中でイメージして・・・。
うーん・・・。
うお!イメージ通りの拳大の火の玉がぼっと出た。
ステータスウインドウ見たら、MPが6減ってた。
3倍消費したってことか?
続いて初級水魔法のウォーターで試したが、同じ結果で拳大の水の玉が出た。
さて、続いては俺が希望した魔法・・・罠魔法だ。
俺は一覧を見た時にこれが自分に合っていると直感したのだ。
頭の中に罠魔法についての情報が浮かんできた。
罠魔法はその名の通り、罠をかける魔法だ。
触れた所・物などに罠を仕掛けることができて、仕掛けたら仕掛けた者にしか見えない魔法陣が設置される。
罠の発動条件は仕掛けた者の自由に出来る。
罠魔法は他の魔法とリンクして使う魔法で、消費魔力が罠魔法分と他の魔法分の半分とを足した分が消費されることなど、ちょっとややこしくて罠魔法を使う者は神が「珍しい」というくらいほとんどいない。
それどころか今では知ってる人が少ないくらいマイナー魔法なようだ。
わざわざ罠魔法を使うより、普通に他の魔法だけ使える方が単純だし消費魔力が他の魔法の分だけだから、罠魔法が廃れたのは当然の流れだ。
俺がなんでこの罠魔法をわざわざ選んだかは、俺の性格に合ってる気がしただけで、こんなマイナー魔法とは予想外だったな。
ふむ、実際にやってみよう。
俺は足元の地面に手をついて詠唱してみた。
『この地の上を通る物に罠をはれ、トラップ。リンク:ファイア』
紫の光る魔法陣が地面に設置されたのを確認して、少し離れて様子を見て、魔法陣の上を通ってみたが発動はしなかった。
よしよし、ちゃんと発動しないな。
「者」ではなく「物」で発動するように、というこちらの意図がちゃんと反映されているようだ。
それを確認してそこら辺に転がっていた石ころを拾って魔法陣の中に転がしてみたら、発動して火の玉がぼっと出た。
因みにステータスを確認したらMPが2減っていた。
どうやら超適正効果で罠魔法が1だけ減って、火魔法がリンクのため消費が半分となり詠唱したので1だけ減ったという内訳のようだ。
さっきの火魔法のように罠魔法の省略と無詠唱もやってみたら、MPは2しか減らなかった。
おそらく超適正効果で罠魔法は省略しようが無詠唱だろうがMPは1しか減らないということだろう。
よし、これを確認したら準備できた。
これで、これから起こるであろうあのテンプレ展開に対応出来るはずだ。
俺は今度こそ、町へ向かうことにした。