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256、悪魔はエキスに来る

前半主人公視点で、後に三人称視点になります。

そしてちょっと短いです。

港町エキスは落ち着いたのんびりした雰囲気の町だった。

町の西から南側が港になっていて、海のすぐ側まで建物がきれいに並んで建っていて、恐らくこの町の特徴と思われる白い壁に尖った赤い屋根ばかりだった。

港町なので当然魚屋が多く、酒場も多かった。

露店もあったりしてそれなりに活気はあるが、散歩してゆったり寛いで世間話している者を多く見かけるので落ち着いたのんびりした雰囲気に見えた。


「ここは結構大きめの町のようですね。」


俺は馬車の中から町の様子を眺めてそう呟いた。

クロ助も俺が支えてやると窓に手をかけて興味深げに外の様子を見ている。

町の規模でいったらさすがに首都レクシフォンよりは小さいが、これまで旅してきた普通の町よりは1.5倍くらい大きかった。

「ここは首都レクシフォンからも、もうひとつの港町からも近いからのう。」

同じく馬車の中にいて別の窓から外を眺めていたじいさんが俺の言葉に答えた。

もうひとつの港町、というのはクレントスという港町だ。

首都レクシフォンからは馬車で西に7日、ここ港町エキスからは馬車で北西に4日のところにあり、クレントスは東大陸最大の玄関口の言われている。

「クレントスは日夜様々な航行が行われていて、港に入れない船というのが出てくるんじゃが、そういった船が次に目指すのがここエキスじゃ。だから普通の町より大きいんじゃよ。」

「へえ、なるほど。ですがそれにしては田舎のようにのんびりした落ち着いた雰囲気というものがありますが、これは?」

「恐らくここのマフィアの影響じゃろう。」

え!?マフィアなんているのかこの世界!?


「マフィアは主に港を取り仕切っている組織での、この町の自治や治安にも関わっておるそうじゃ。しっかりした組織じゃから町民ものんびりと暮らしておれるんじゃろう。」

「そうですか・・・。俺のいた世界ではマフィアというのは犯罪集団ですが義理や人情やマフィア内の人間を大事にするという感じだったのですが。」

「おぬしの世界ではそんな集団じゃったのか。こちらのマフィアとは犯罪以外は合っておるのう。まあ、一部のマフィアは危険な薬物の売買をしているとか拉致誘拐恐喝殺人は当たり前とは聞くがのう。」

じいさんは普通に殺人を入れたが、この世界で殺人は俺のいた世界より身近だ。

が、あくまで殺人が許されるのは盗賊や犯罪者に対してであって普通の町民などを殺したら当たり前に犯罪者となって兵士に捕まる。

因みに正当防衛は俺のいた世界より認められているので、ちょっと脅されたからと殺してしまっても、証拠さえあれば「殺されてもしょうがない」となって犯罪者とはならない。


「マフィアたちは普段は冒険者をしている者もおるらしくて自警団の要素ももっているようじゃ。じゃから町民たちにとってはマフィアたちはこちらが裏切らねばしっかり守ってくれる身近な存在のように信頼しておるようじゃ。」

「なるほど、冒険者がいるなら普段から依頼で知り合っているでしょうから信頼できるわけですね。ですが、自警団の要素をもっているというですがこの町にも兵士はいるのでしょう?」

「おるぞ。マフィアとうまく連携しておってマフィアが捕まえた犯罪者を兵士に引き渡して、兵士はマフィアの功績として上に報告しておるそうじゃ。」

そうすることでマフィアは領主からの信頼を得られてマフィアとして活動しやすくしているのだろうし、領主は信頼できる部下が兵士の他にいるということで統治しやすいのだろう。

なかなかうまくやっているようだ。


「・・・ていうかよく知ってますね。ここには来たことがあるんですか?」

「わしは元冒険者じゃぞ?世界中の町や村に行っておる。エキスにも依頼で2~3回来たことがあるぞ。」

エルフ領には1回、しかもグリーンエルフしか行ったことがなかったのに?と言いたかったが睨まれそうでやめた。




「おーい、それよりさあ、どこに馬車止めんだ?」


御者席から呑気なマスティフの声が聞こえてきた。

「もうちょっと進んだところの左に大きめの宿屋が見えてくるから、そこにしよう。前に利用したことがあるが、いい宿じゃったぞ。」

「りょーかい。」

じいさんは前に利用した宿屋を指示するとマスティフが返事した。


・・・というか、なぜ当たり前のようにマスティフがいるのか。



あの手紙を受け取ってエキスに行くことになったその日の夜には当たり前のようにマスティフの耳に入っていて、「エキスってどんな町だろうな。討伐依頼いっぱいやりてえな。」と当たり前のように言ってきた。

「は?あなた、ついてくるつもりなんですか?」

「え?ついてく以外に選択肢あんの?」

マスティフは本気でキョトンとしてそう言った。

そしてエキスに来る5日間は毎日「模擬戦しようぜ!」と言ってきてげんなりしながら無視してたまに気が向いて模擬戦してやってボコボコにしたら今度はじいさんが「わしともやるか?」と言われて無理矢理模擬戦させられた。

じいさんはレベルが高過ぎて模擬戦もまともにできる相手がいなかったというのもあって割と本気で向かって来られて死ぬかと思った。

レベルを上げて装備品に付与魔法をかけていて本当によかった・・・。

特に言われなかったけどじいさんは俺の能力が上がっているのを確実にわかって本気っぽく仕掛けてきたんじゃないだろうか。

さすがに付与魔法とか見破られたら引くところだった。



じいさんのオススメの宿屋に着くと個室3部屋が空いていたのでとった。

部屋にそれぞれ荷物を置くと玄関に集合した。

因みにじいさんは隠蔽魔法を顔をかけているようで、この町に来てから一切騒がれてない。

手紙の内容が悪魔教の男性に関わる内容なだけに、できるだけ目立つことは避けようというじいさんの提案でそうなったのだ。


「まだ日は高いですが、どうしましょうか?」

時刻は太陽の位置からだいたい午後3時頃だ。

「手紙の送り主を調べたいが、それを始めるには微妙な時間帯じゃ。今日は夕食時までこの町の情報を集めようかのう。」

俺とマスティフは異論はなかったのでこの町の情報を集めることにした。









「アニキ、この町に来たようですぜ。」


ある建物の中。

両頬に傷のある人相の悪い男がニヤニヤしながら部屋に入ってきた。

部屋のソファにどかりと座り、アニキと呼ばれた男は傷の男を見てそうかと呟く。

アニキと呼ばれた男は30代中盤ほどの黒の短髪に左目が黒で右目が金の、信じられないほどの極悪顔だ。

「確かに奴らだったか?」

「ええ。仲間がしっかりと確認したそうでさあ。馬車の中から町の様子を見ていた茶髪の虫も殺せねえような優男に黒猫、それに黒い鎧を着た顔がぼやけた男に、御者席に"黒の一族"のマスティフがいたそうですぜ。」

「奴らにはその仲間の存在はバレねえようにして確認したんだろうな?」

「アニキに言われてましたからそれはちゃーんとしましたぜ。仲間は通行人に紛れて確認した後、すぐにその場を離れてわざといくつか店で買い物してからここに来ましたから。」

「・・・サーチでどこまで見られているかわからんからな、これから接触しても、本当に気を付けろよ。」

「気を付けろと言われましても・・・。アニキが気にしている優男って本当にそんな注意を払うような奴なんですか?仲間も首を傾げてましたぜ?」

「ふ、お前らは見えない(・・・・)からそんな悠長なことを言ってられんだぞ。」

極悪顔がニタッと笑う姿は悲鳴をあげそうなほど凶悪なのだが、傷の男は見慣れているのか怖がりもしていない。


「あの、アニキ、もし奴らがここ(・・)に接触してきたら、本当に俺が担当していいんですよね?」

「ああ。お前はちゃんと人を見れる奴だと思うからな。お前が奴らを見てこい。いいか、"黒の一族"ではなく優男にあの依頼を受けさせろよ。頼りにしているからな。」

「わかりました!!」


傷の男は頼りにしているとか言われて嬉しかったようでニッと笑った。




極悪顔男と傷の男は果たして何者か!?(笑)

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