247、悪魔は暇潰しをする
ヒスランとカルドに結界ハウスの詳細を説明して中に入る。
・・・すると数時間前まで双葉の状態だったはずなのにすでに若葉にまで成長していた。
そうなるとちょうど間引きのタイミングだったようでさっそくヒスランとカルドがやりながらコルネリアスに教えて、俺たちも見よう見まねで手伝った。
なんとなくわかってきたら手分けしてやったので間引きはすぐに終わった。
少し休憩となったので、そのタイミングで俺はコルネリアスに話しかけた。
「コルネリアス、他の野菜などの種いりませんか?」
「え?もしかしてあるんですか!?」
「ええ。ヒスランたちの村でマスティフに言って買ってきてもらったんです。」
そう言って俺はアイテムから複数の袋を次々と出した。
これはヒスランたちが荷造りなどをしている時にマスティフに頼んだものだ。
中は色んな野菜などの種で、マスティフにある程度の金を渡して村の商店か農家の家を訪ねて種を買い集めるように頼んどいたものだ。
マスティフは結構色々な種類の種を集めてくれたようで、キャベツやレタス、ホウレン草などの葉物野菜が特に多かった。
「うわあ・・・!こんなにたくさん!?ほしいです!いくらですか!?」
「全部で1万インですが・・・半分の5000インと数日後にできる作物の半分をもらえますか?」
本当ならタダでもいいんだが、結界ハウスの提案に農業経験者の移住と俺はすでにコルネリアスに恩を売りすぎているのでタダであげるのはコルネリアスが萎縮し過ぎてしまう。
かといって金はたくさんあるからそこまでほしいものではない。
ということで半分金で半分作物と提案した。
作物なら使い道は色々とあるからだ。
「え!?作物の半分を?まだできるかはっきりと実るかどうかも味も量もわからないのにいいんですか?」
「これだけの環境でこれだけの土壌と魔力でならできると思ってます。」
危険のない結界内で世界樹の恩恵を受けるなら間違いなく味や量、大きさともにいいのができるに違いない。
「それほどユウジンさんはこれに期待してくださってるんですね・・・!ありがとうございます!!」
コルネリアスはキラキラした目で見てきた。
なんか・・・ちょっと誤解されているなこれは・・・。
だがまあ、いいか。
それからはヒスランとカルドがコルネリアスに教えながら進めることになり、数日間は暇になることになった。
一応様子見に毎日結界ハウスには行くつもりだが、素人が手伝うのも邪魔になるだろうからずっといるつもりもない。
元々俺は興味があったわけではないからな。
ということで手持ち無沙汰になったので、ここで取得した魔法を隠れてやってみることにしよう。
レベルが上がった時に取得した結界魔法はわかっているとして、上級召喚魔法と付与魔法はまだやってなかったからな。
というのも俺はレベルが上がったことをシラをきったのでじいさんとマスティフの前でできないからずっとできずにいたのだ。
今はじいさんは農業に興味があるのか結界ハウスにいることが多いし、マスティフはヘンリエッテと狩りに行ったり森に行って筋トレしたりしているのでやっとできるのだ。
それでもマスティフがいつ「模擬戦しようぜ!」と現れるかわからないのでクロ助のドラゴンでグリーンエルフから離れたところに移動してきた。
いい場所がないか探していると森の中の開けたところを見つけたので、ここなら誰にも見られず色々できるだろう。
「・・・って誰にも見られずにできると思ってここに来たんですが。」
俺ははあっとため息をついた。
『いいじゃねえか。見てるだけなんだからよお。』
『そうよ~、面白そうだもの。』
『どうせ私たちも暇なんだもの。』
『ほっほっほっ、どれそんなに言うなら他の精霊も呼ぼうかのう。』
「止めてください。」
俺は呑気なサラマンダー・ウンディーネ・シルフの言葉を流しつつ、どこかに行こうとしていたノームを止めた。
クロ助のドラゴンから降りたら急にこの四大精霊がどこからともなく現れたのだ。
そして楽しげにしてそんなことをのたまって俺の周りの空中をふよふよと浮いている。
「こうも俺の前に何度も現れたらあなた方が暇なのはわかります。ですが、見てても面白いとは思えませんが。」
『これから取得した魔法を試してみるんでしょう?あなたがどんな魔法をやるか見てみたいのよ!』
シルフはくるくる回りながらそんなことを言った。
「え?確かに取得した魔法を試してみるつもりでしたが・・・なんで知ってるんですか?」
『その猫ちゃんに話してるのを聞いたわ。風の噂って知ってる?』
なるほど。今朝、クロ助に今日はなにをしようか話したのだが、それを風に乗って聞いたということか。
『その風の噂を俺たちも聞いて集まったって訳だ。』
サラマンダーは舌をチロチロさせて言った。
『私たちはあくまでもあなたがなにをするのか見学するだけだから、気にしないで。ふふふ』
ウンディーネはニコニコしながら言ってきたが、いくら見学とはいえこうも集まられたら正直気が散る・・・。
だがこの数日間くらいしか試す機会はないだろうから、できるときにやっておきたい。
「わかりました・・・。が、本当に見学でお願いしますよ?」
四大精霊たちは嬉しそうにコクコクと頷いた。
さて・・・気持ちを入れ換えて。
俺がまず今からやるのは召喚魔法だ。
召喚魔法はその名の通り召喚する魔法なのだが、実は2種類ある。
1つが契約召喚というもので、召喚者の魔力の相性と魔力量によってランダムに呼ばれた者と話し合いか戦うことで呼ばれた者が契約するか決めるというものだ。
契約召喚で呼ばれる者は召喚者が初級か中級か上級かを取得しているかによって変わって、上級になれば強力な者を呼べる確率は高くなるが、その分魔力量は多く必要になるという。
そして契約に応じてくれれば名前をつけることで契約成立となり、次からは少ない魔力量で呼ぶことができるが、契約を断られたらまた1から契約召喚をしないといけないことになり、一度断られたら者は二度と現れないことになる。
そしてもう1つが特定召喚というもので、特定の者を召喚する時はこちらだ。
例えば勇者召喚や聖女召喚がこれで、悪魔教の悪魔召喚は本来この特定召喚だと思われる。
こちらの特定召喚は呼び出して契約というのはなく、還すときも送還魔法で還すようだ。
特定するので契約召喚よりはるかに魔力を使うようで、国に仕える才能ある魔法使い10人が命を捨てて全魔力を注いでできるかどうかというほどだ。
計算したら今の俺のMP半分でできることがわかったのだが・・・やらないぞ。
勇者や聖女なんて面倒臭いもの召喚したくないし、悪魔召喚は悪魔がいないならやっても意味がないからな。
因みに特定召喚は上級召喚魔法を取得した者だけが使えるようだ。
以上が「神様監修:世界の歩き方」に載っていた召喚魔法についてだ。
ということで、俺は契約召喚をやってみる。
「はいはい、では契約召喚をしてみますからクロ助も精霊たちもちょっと離れていてください。」
もし召喚された者が好戦的だったらすぐに攻撃されても対応できるようにしておかねばな。
クロ助は肩から地面に下ろしたらとてとてと下がって、精霊たちも素直に下がった。
俺は離れたことを確認して手を前にかざして詠唱した。
『我は契約を望み召喚す、我が魔力に呼応し姿を現せ、コンタクトサモン!』
詠唱しながら手から地面に魔力を注ぐ。
どうせなら珍しい者を召喚できたらいいかな、と多めの魔力を注いだ。
手をかざした地面に大きく魔方陣が広がる。
そして魔方陣の中央が光輝き、その光が輪郭をとりだした。
輪郭は・・・人に似ているか?
『『『『あ、あれは!?』』』』
なぜかなにかを感じとった四大精霊たちが騒ぎだした。
光が止むと・・・そこには人間に似た老人が1人立っていた。
見た目は80代後半の老人で長い銀髪に地面まで届くほど長い銀の髭、穏やかに垂れた目に鷲鼻で長く垂れた耳。
大きな襟のついた銀のマントを着ていて大きくひん曲がった杖をついている。
エルフに似ているがどう見てもエルフ長アレクサンディルスより年上だとわかる。
だが、最初のエルフの生き残りであるアレクサンディルスより年上のエルフなど存在しない。
それにエルフとは明らかに違う魔力のような圧のようなものを感じる。
「ほう、余を呼んだのは人間とは珍しいのう。」
老人はニコニコ笑いながらそう口を開いた。
「余は妖精王オベロン、あらゆる妖精の王である。」
・・・は?妖精王・・・!?




