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243、悪魔は代表を手伝う4

俺はアイテムから次々と食料を出していった。


取り出した食料はそのまま植えたら芽が出るじゃがいもを始め、種を持つピーマン、パプリカ、きゅうりやトマト、リンゴや梨などだ。

こうして見ると案外種のある食料は多いんだな。

まあ、種のことを考えながら食料を買うことなんてないもんな。


さっそくコルネリアスは結界の中に入って土魔法で土を耕して、結界の外では俺たちが食料から種を取り出す作業を行った。

ビニールハウス・・・ビニールではないから結界ハウスと呼ぼうか、その結界のハウスは横に5メートル、高さ15メートル、奥行き30メートルで俺の世界での一般的なビニールハウスより高さを多く取った。

まあ、だいたいなので実際はわからないが。


しばらくしてコルネリアスはニコニコしながら結界ハウスから出てきた。

「結界内はさっそく暖かいですよ!無事耕せました!」

「それはよかった。こっちもおおかたの種は取り出せました。」


結界ハウスの中に入ってみると本当に少し暖かかった。

もちろん、コルネリアスが許可したので俺たちは普通に結界の中に入れた。

コルネリアスによるとハウス内は奥の10メートルを果樹栽培にして、手前20メートルを野菜を植えてみるとのことでそれぞれに分かりやすく畝ができていた。

「では野菜スペースに種を植えていきましょう。」

マスティフが種を撒いて俺が水魔法で水を撒いていき、じいさんはコルネリアスと果樹となるリンゴや桃の種を植えていた。

野菜はともかく、リンゴや桃は果たしていつになったら収穫できるのやら・・・。

まあ、長命のエルフから見たらあっという間だろうけど。


ドサドサッ


そんな音がして、見ると結界ハウスの側面に雪が積もっていた。

どうやらハウスの上に積もった雪が上が丸いので滑って側面に落ちてきたようだ。

雪が積もらないように上を丸くしているが、ビニールハウスと違うのはもし滑り落ちずに積もったままでも雪の重みでハウスが潰れることがないことだ。

さらに、高さを普通のビニールハウスより高くしたのは万が一上に積もっても高さがあるから日の光が遮られることが少ないと考えたかからだ。

ビニールハウスだったら支柱や重さの関係で無理かもしれないが、結界魔法は支柱や重さなど関係ない。

そう考えると本当に、魔法は便利だ・・・。


だが・・・、ふむ。

側面に積もった雪の対処をしないとな。

確か積雪量は50センチからなぜか増えないと言っていたな。

それを利用するか・・・。


「コルネリアス、ちょっと来てもらえます?」

「あ、はい!」

俺はコルネリアスと結界ハウスの外へと移動した。

「結界の左側と右側の側面に雪が積もっていますのがわかりますね?あのままにしておくとせっかくの風が遮られたり野菜に風が当たらないようになってしまいます。なので側面に溝を作ってはどうかと思います。」

「え?溝、ですか?」

「ええ、こんな風に。」

俺は30メートルの両側面に土魔法でピットフォールを唱えた。

落とし穴といっても幅も深さも30センチほどの溝と言えるものだ。

ズザザザ、と音をたてて側面に積もっていた雪は溝に落ちて周囲より少し低く積もった。

「こうしたら風通しもよくなるし、側面に雪が滑り落ちてきても積雪量は溝の底から50センチより増えないから、多く積もった分は溶けるか風で舞うかするでしょう。」

「な、なるほど!ここに溝があれば不用意に近づいてくる魔物や動物も警戒するでしょうね。すごいですねユウジンさん!」

コルネリアスはキラキラした目で俺を見てきた。

こっちの世界でのこの目を何度も見るが(主にマスティフ)、いまだに慣れない・・・。


そうしている間に夕方となり、ヘンリエッテがサーベルタイガーの解体が終わったとこっちに合流してきて村に帰ることとなった。


兄妹はまた家に呼んでくれて夕食をご馳走になり、宿屋に戻って俺は寝る前に一息ついた。


因みに今回泊まっている宿屋は1人一部屋で俺はやっとじいさんとマスティフの相部屋から解放されて部屋でのんびりすることができた。

クロ助は相部屋だろうが関係なく俺のベッドで丸くなって寝ているが。



・・・うん?

なにかの気配がする?



そう思ったら椅子に座って寛ぐ俺の目の前のテーブルに小人が現れた。

『じゃまするぞい。』

この小人は確か、土の精霊ノーム?

「あなたはノームですよね?」

『ほっほっ、やっと話しかけてくれたのう。』

「ここには誰もいませんからね。」

精霊を見ること自体は珍しいくらいですむらしいが、話せる人間というのはいないらしいからな。

そう聞けば隠すに決まってる。目立ちたくない。

『変わった小僧よのう。神に守られているのに、隠れたがるとは。』

精霊たちは俺が神に守られている・・・テスターだとわかるようだ。

「俺は目立つのが好きではないだけです。・・・それで?俺の元に現れるとは、なにかご用ですか?」

『うむ、そうじゃ。わしは用事を預かったのじゃ。』

用事を預かった?誰からどんな用事をだ?

『小僧、世界樹の根を治しただろう?』

「え、ええ、確かに蜜酒をかけて治しましたが。」

『治してくれたことに世界樹がとても感謝しておるのだ。そして世界樹は小僧に礼をしたいと言っておるのだ。』

「・・・・・・は?せ、世界樹が?」

俺は予想外のことを言われてぽかんとしてしまった。

ていうか、世界樹って意思があるのか?

そして精霊は世界樹と会話ができるということか?


ハッとして慌ててノームに聞いてみる。

「ちょっと待ってください。そもそも世界樹に意思があるんですか?」

そう聞いたらノームは思いっきり「なに当たり前のこと聞いてんのこいつ」という顔をした。

『人間でもさすがに植物が生きておるのを知っておろう?世界樹も同様生きておるから意思があって当然じゃ。人間やエルフが意志疎通ができんだけじゃ。』

「なるほど、精霊は意志疎通ができると?」

『うむ。そして世界樹は小僧に礼がしたいと意志疎通ができるわしら精霊に頼んできたのだ。わしは小僧の要望を聞きにきたのじゃ。』

礼、か・・・。


「礼というのを期待して助けた訳ではなかったのですが。その代わりに枝と葉を少々いただきました。それは礼になりませんか?」

『世界樹にとったら毛先を数ミリ切られたようなもんだ。たいした礼にはなっとらんと思っとる。』

勝手に枝や葉を採ってアイテムにたくさん入れたのに、毛先を数ミリ切られたくらいなんだ・・・。

まあ、世界樹の大きさからしたらそうなのかもしれないが。

ううむ・・・枝と葉以外で世界樹に頼むことは・・・思い当たらないなあ。


『人間じゃから礼といえば金と言いそうに思ったが、金はいらんのか?』

「さすがノームというか、人間のことをわかってますね。でも俺は色々あって大金をもらってまして全く困ってないんですよ。」

『むう・・・それは残念。』

考え込む俺と共にノームまでも考え込んでしまった。


『・・・話は変わって、そういえばこの地で野菜を育てようとしておるのう?』

「あなたはなぜそれを知ってるんです?」

『わしは土の精霊じゃぞ?全ての土と繋がっておるからのう。』

そういえばそうか、愚問だったな。

「・・・まだ始めたばかりですからね。大丈夫とは思いますが、まずは発芽を目指そうかと。それを見届けてからエルフ領を出ようかと思ってますから。」

さすがに野菜がなるまで数ヶ月、ここにいて付き合うほど暇ではないからな。

エルフ領の滞在期間も越えているから、どっちにしてもエルフ領から出ていかないといかないし。

とりあえず発芽するだろう数日間だけ滞在してエルフ領を出ようと考えた。

俺なら移動魔法でいつでもグリーンエルフに来れるからたまに様子見で来たらいいだけだし。


『ふむふむ、あいわかった。・・・まあ、世界樹の礼は小僧の要望がないなら適当に考えとくぞ。』

「はあ・・・、適当といっても本当にたいしたことないものでいいですからね。」

ノームは頷くと音もなくスッと消えた。


・・・世界樹が礼をとは思わなかったな。

まあ、世界樹を救うことはエルフ長に恩を売る手段であったから全く世界樹のことなんて気にしてなかったんだが。

ノームは適当って言ったが、果たしてどうなるか・・・。

とにかく大袈裟じゃなく俺が目立たなかったらいいんだが。

・・・なんだか嫌な予感がするが・・・考えてもわからないものはしょうがない。


俺はほどなくしてクロ助がスヤスヤ寝るベッドに転がって寝た。




その床下のはるか地下深くでなにかがうごめいているなど、もちろん気づく訳もなかった。






その翌日。



宿屋でじいさんらと朝食を食べていると、バタバタと慌ててコルネリアスがやって来た。

「ユ、ユウジンさん!大変です!・・・発芽しています!!」

「・・・・・・は?」

「昨日植えて発芽なんておかしいと土壌を調べたら!とんでもなく栄養に富んだ土になってて!魔力も結界内に充満してて・・・恐らく数日で野菜は実がなりそうなんです!!」


・・・・・・はあ!?



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