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240、悪魔は代表を手伝う

長くなってしまいました。

マスティフのせいでグリーンエルフに向かうこととなり、コルネリアスの手伝いをした後はそのままエルフ領を去ることにした俺たち。

なのでシルバーエルフを去る前にアレクサンディルスたちに挨拶することとなった。


そうして向かった城で俺はどうしてこうなった?と首を傾げることとなった。



「この案はこれで進める。その他は次の会議で代表たちに提案をする。」

『進むのが遅いわねえ。いくらエルフが長命だからってトロ過ぎるんじゃない?』

「黙れアホ鳥。勝手に決めては独裁になる。焼き鳥にするぞ。」

『やってみなさいよバカエルフ。こっちの案はブルーエルフ代表に手紙で確認すればすむことじゃない。鳥でも精霊でも飛ばして手紙で確認とったら?』

「だったらお前が行けマヌケ鳥。一応お前の早さだけは次期エルフ長の私が認めてやるからありがたく思え。」

『あなたに認められてもありがたくもなんともないわノロマエルフ。あんたこそ世界樹の住人ことフレースヴェルグの力を借りれることに涙しなさいよ。』

「そんな鳥は知らん。」

『あ゛!?』


・・・なんで次期エルフ長ロブレキュロスとフレースヴェルグが言い争いしてんだ?

しかもお互い罵り合いながらもロブレキュロスは仕事しながらフレースヴェルグはそれを手伝っている?

ここしばらくフレースヴェルグとラタトスクを見てないと思ったらなにやってんだ?

俺の戸惑いに答えたのは横で一緒に様子を見ていたマスティフだった。


「フレースヴェルグとラタトスク、シルバーエルフを観光しまって暇になったから城に行きてえって言い出してよ。んで俺が城に連れてったらふたりともめちゃくちゃ気に入ったみたいで『『ここにしばらくいる!』』って言い出して住み着いたんだよ。エルフ長に一応相談したけど、エルフ長は世界樹の時の恩があるから好きなだけいてくれていいって言ってたぞ。」

ええ・・・、いいのか?


・・・そういえば、フレースヴェルグはニーズヘッグと罵り合っていたからもしかしたらそういう相手がほしくてシルバーエルフに来てたのか?

そしてロブレキュロスに会った?

それにしても・・・ロブレキュロスってこういうことキャラだったのか。

エルフ長のアシスタント役でクールでちょっと影が薄い印象的だったんだが。

「なんでかフレースヴェルグはロブレキュロス見た瞬間にニヤッて笑ってあんな感じで喧嘩吹っ掛けて、ロブレキュロスの方は突然喧嘩売られて普通ちょっとくらい驚くとかするのに、すぐに応戦しだしたんだよ。それからはずーーっとあんな感じ。」

ようは・・・フレースヴェルグは一瞬でロブレキュロスが好敵手になるって勘みたいのが働いて、ロブレキュロスもなんか感じて応戦したってことか?


周りのエルフたち・・・護衛や使用人たちは1人と1匹の罵り合いをまったく気にせず仕事をしている。

ということは既に日常化したってことか。

まあ、罵り合いだけであって実質はロブレキュロスの仕事をフレースヴェルグが手伝っているのだからいいことではあるか?



・・・そして一方のラタトスクはというと・・・。



『キキキ!そこでオイラはこう言ってやったのさ!オイラはふたりとも好きだからふたりとも付き合おう!ってね。そしたらふたりから往復ビンタされたんだ。』

「え、往復ビンタ!?」

『そうだよ。だからオイラのほっぺたは腫れちまってふくれて・・・おかげでたくさんの木の実が入るようになったのさ!』

「ふふふっ!だからリスのほっぺたは大きいのね。」


・・・なんでラタトスクとベアトリーチェが仲良く談笑しているんだ?


俺が無言でマスティフを見るとマスティフは苦笑した。

「こっちもまあだいたい同じ感じだよ。どっかの誰かさんにフラれて落ち込んでたベアトリーチェにたまたまラタトスクが話しかけて励ましたら意気投合したみたいでよ。ラタトスクは煽り上手だから口がうまいだろ?それがベアトリーチェには面白く見えて、ラタトスクはベアトリーチェのリアクションが気に入ったみたいだぞ。今ではラタトスクはベアトリーチェにべったりでベアトリーチェの部屋にラタトスク用のちっせえベッドがあるくらいらしい。」

フって落ち込ませたのは悪いとは思うが、それをラタトスクがなぐさめたのがきっかけに仲良くなるとは・・・出会いとはわからないものだな。

まあ、話の内容はどうかと思うところもあるが仲良くなってベアトリーチェが落ち込んでないならいいか。


ベアトリーチェはラタトスクのおかけで本当に元気になったようで、じいさんとマスティフとで挨拶をした際に「すぐには諦められませんから、頑張ります!」と言われた。

え?なにを頑張るんだ?と思ったが隣のマスティフのニヨニヨ顔があまりにムカついたので雷魔法をぶつけるのに忙しくて聞きそびれてしまった。


アレクサンディルスは自分の息子の罪が決まったことで少し落ち込んでいるようだったが、いい意味でロブレキュロスらの罵り合いが周囲を賑やかにしているようだ。

さらにラタトスクはアレクサンディルスとも色んな話をしているようで、アレクサンディルスもしばらくしたら元気になるかもしれない。

じいさんがアレクサンディルスにエルフ領を出る挨拶をするととても残念がられたが、「また来てくれ」と笑顔で握手をしていた。




そうして俺たちはシルバーエルフを後にして、グリーンエルフに向かった。


グリーンエルフに着くと前回取った宿屋に泊まるように手配して、俺たちはコルネリアスのいる巨木へと向かった。

村の中心部に位置する巨木へと近づくと、コルネリアスが出入り口で待っていた。

コルネリアスの隣にはヘンリエッテもいて、俺たちに気づいたら大きく手を振ってきた。

「久しぶり~!」

「お久しぶりです。」

2人とも再会を喜んでくれているようだ。

「久しぶりだのう。ヘンリエッテは狩りはやっておるかの?」

「マリオンさん久しぶり!狩りはお兄ちゃんに禁止されちゃってとっても暇してるの!」

そういえばじいさんが世界樹を守るためにエルフ長と一緒に戦ったマリルクロウ・ブラックだと知っているのはエルフ長一家と代表だけということなのでコルネリアスはじいさんの正体を知っていてもヘンリエッテはじいさんが商人マリオンだと思ってるようだ。

まあ、エルフ長が代表以外に箝口令をしいていたからコルネリアスは当然ヘンリエッテに言わなかったのだろうが。

コルネリアスはヘンリエッテもいるのでマリオン一行として対応してくれるようだ。


「すいませんマリオンさん、帰路きつくところをわざわざこっちまで寄っていただいて。」

コルネリアスは申し訳なさそうに頭を下げてきた。

「いやいや、コルネリアス殿には家に招待していただくばかりか美味しいものもいただいからのう。ユウジンの知識であればいくらでも使ってくれ。」

一応俺は荷物持ちで商人マリオンに雇われているという設定なので代表してじいさんがそう言い、俺は微笑むだけにした。


そして巨木の中の前回通されたところと同じ応接室に通され、今回はテーブルを挟んでこちらにじいさんと俺がソファに座ってマスティフは後ろに立ち、コルネリアスとヘンリエッテが向かいのソファに並んで座った。

「すいません、早速なんですが・・・。」

コルネリアスはお茶が配られるとすぐにそう言うと書類をじいさんに差し出してきた。

じいさんは受け取ると一応ささっと目を通して俺に渡してきた。


書類は40枚ほどで、今までやってきた野菜の栽培方法から失敗した経緯や原因などが詳細に記されていた。

さすがエルフというか、人間より長命なため結構な数の方法を試している。

「・・・なるほど。色んな方法を試してらっしゃいますね。」

するとなぜか兄妹とマスティフがえ!?と驚いていた。

「ユウジンさん、もう全部目を通したんです?」

「え?ええ。」

信じられないという感じでコルネリアスが聞いてきて、俺は頷いて答えた。

まあ、俺もじいさん同様ささっと目を通したからだろうか。

なぜかヘンリエッテは本当に?という疑いの目で見てきている。

失礼な。


「コルネリアスさんの真面目な性格が出ていて失敗した原因など細かく書いていて読みやすかったです。その中でも俺が考える方法と似ていていいところまでいっていたのが、13ページの雪が積もらないように木の精霊に木を繁らせて畑を覆ったというものと、21ページのほったて小屋で雪対策をしたが雪の重みで潰れたというものですね。」

これらは俺の考える異世界版ビニールハウスに近くて惜しいな。

俺がそう言うとヘンリエッテは「え・・・?本当に全部目を通してる!?」と驚いていた。

そんなヘンリエッテは無視して俺はコルネリアスと話したいのだが。


「この書類を見て、俺の考える方法で間違いないと思えました。まあ、俺が考えたってもある・・・遠方の地で実際にそれで野菜を栽培しているのを聞いて参考に思いついただけですがね。」

「参考に思いつくことは誰でもできることではありません。遠方の地でやっている方法・・・恐らくそれは人間の国のことですよね?ここは情報がほとんど入らないので助かります。」

「情報が入らない中でここまで頑張れるあなたの方がすごいと思いますよ。」


すると、俺の言葉を聞いたコルネリアスはキラキラした目で俺を見てきた。

「すごいと言ってもらえるなんて!嬉しいです!・・・今まで「こんな寒いところで野菜なんて」って他の村人たちはあまり理解してくれなくて、失敗ばかりしていてとても不安だったんです。何度も諦めようと思って、でもなにか代表として成果を出さないとというプレッシャーもあって、その代わりのように代表の仕事や治療院の設置に力を入れていたのもあったんです。」

まあ・・・若くして代表になってしまったからか、すぐに見える結果を示さないといけないと思っていたようだ。

そうしなければ代表に推してくれた村人に悪いとか、村人たちに「大丈夫かこの代表?」と思われるのじゃないかとかネガティブに考えたんじゃないだろうか。

コルネリアスは書類を見ればわかる通り真面目だから余計に思ってそうだ。


ま、その不安は俺の考える方法で払拭できるだろう。

グリーンエルフに来る途中の馬車でじいさんに聞きたかったことも聞けたしな。


「あの、早速ですが、ユウジンさんの考えた方法を教えてもらえますか?」

コルネリアスがとても真剣な顔をした聞いてきた。


「そうですね・・・では・・・。」

俺はニコッと微笑むと立ち上がった。



「では手始めに・・・狩りに行きましょう。」


「「「は?」」」

全員が驚いた声をあげた。

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