237、悪魔はトリズデン王国へ寄る
しばらくのお休みすいませんでした。
もうひとつのが落ち着いたので再開させていただきます。
といってもしばらくはダラダラした展開になる予定。
いつものように数日に1話ペースになると思いますがよろしくお願いします。
「こんにちわ、お久しぶりです。」
「おお!ユウジン!久しぶりじゃねえか!!」
そう言ってにこやかに挨拶してきたのはトリズデン王国の首都スクリュスクの鍛冶屋のドワーフの親父だ。
親父は鍛冶屋に入ってきた俺を見ると鍛冶作業の手を止めてにこやかに見てきたが、俺の装備をすぐ見て一瞬固まるとみるみるうちに目を見張って持っていた鍛冶道具を放り投げてこっちに突進してきた。
「おおおおお、おま!その!ローブどうした!?」
すごいな、すぐにわかったのか。
感心しながらも親父の驚く顔を見れたと満足しながら俺は親父に笑いかけた。
「やはりわかりましたか、さすがご兄弟ですね。」
「お前マジか!!」
親父は俺の一言で察したようでものすごい声を張り上げた。
俺は移動魔法でトリズデン王国の首都スクリュスクにやって来た。
中級移動魔法で今まで行ったことのあるところになら行けるというのがわかっていたので用事もかねてスクリュスクに来たのだ。
まあ、シルバーエルフにいても暇だったからというのが大きいが。
ついでなので装備が改良されたのを親父に見せてみることにしたのだ。
兄の職人にも見せびらかすように言われたしな。
親父はめちゃくちゃ興奮して俺から強引にローブセットを脱がせてまじまじと見るとはーー!と感嘆のため息を吐いた。
「こりゃあすげえ・・・!さすが兄貴だ!改良内容は!?材料はなんだ?教えろ!」
「ええ、ああ、はいはい。」
ものすごい興奮して迫ってきたのでちょっと引きつつ『不滅の外套』とオーバーロードのマントを使っていることを話した。
「んは―――――――!?なんじゃそりゃ!?それで、効果は!?」
「え、ええと・・・」
さらに興奮した親父にしっかり引きつつMPがさらに上がったこととHP・防御力も上がってローブに魔力を込めると魔法の威力が上がることも話した。
「なんてこった!!すげえな兄貴!」
めちゃくちゃ兄を称賛していて穴が開くほどローブセットを観察していた。
「こんなすげえもんにされたらこっちだって負けてらんねえ!・・・ユウジン、次にローブセットを改良する時は俺がやるからここに持ってこいよ。」
しばらくは改良の予定などないのだが・・・親父の目が燃えているので水をさすのはやめておこう。
「兄貴はエルフ領にいるから珍しい素材が集まりやすいだろうが、こっちだって色んな国と貿易している首都にいるからよ。世界中の珍しい素材を集めといてやる!んで兄貴をビックリさせてやろうぜ!」
「は、はあ。」
驚く顔を見たかっただけだが、なぜかやる気に火をつけてしまった。
まあいいか、俺の装備が高性能になるだけだから。
俺としては見た目が派手とか目立たなければいいしな。
ついでにとお土産の蜜酒の樽をあげるとやはりとても喜んで飛びついていた。
「そういやあ、モメントのところには行ったか?」
そういえば親父は錬金術師モメント古い友人だったな。
「いえ、これから行こうかと思っていたところです。」
「お、そうか。モメントとこにかわいい嬢ちゃんがいるぞ。」
「は?」
かわいい嬢ちゃん?
もしかして・・・ホムンクルス?
「なんでも親戚の子供らしいぞ。身寄りがないとかでモメントが引き取ったそうだ。よくおつかいとか行ってるみたいだぞ。」
おつかい?
ホムンクルスはあの丸いフラスコにいるからおつかいなど不可能だ。
となると本当に親戚の子を引き取ったのだろう。
俺は親父の鍛冶屋を後にして、錬金術の店にむかった。
そして店に着いて、出入り口のドアを開けようとしたタイミングでバンッとドアが開いた。
「ゆうぢ~~~ん!」
店の中から勢いよく幼女が出てきて俺の太ももに抱きついてきた。
ピンクの長い髪をツインテールにしてピンクの大きな目のとてもかわいらしい5歳くらいの女の子で、赤くこれまたかわいらしいデザインのワンピースを着ている。
俺は思わずぽかんと太ももに抱きついてきた幼女を見た。
クロ助も俺と同じくぽかんとして幼女を見ている。
「は・・・!?も、もしかして・・・ホムンクルス、ですか?」
幼女はニコッ!と満面の笑みで見上げてきて、コクンと頷いた。
「そうよ!あたち、ククルってなまえもらったの!」
「んお?おお!久しぶりだなユウジン!」
ホムンクルス・・・ククルを追ってかモメントが店のドアを開けてひょっこり顔をだして俺を見つけてそう声をかけてきた。
「お、お久しぶりです・・・。えらいことになってますね。」
俺が苦笑しながらククルのことを暗に指してみると、モメントも苦笑した。
「えらいことどころじゃない。まあ、中に入れ。うちに用だったんだろ?」
「まあ、ホムンクルスの様子を見に来たんですが・・・お邪魔します。・・・それにしてもモメント。」
「ああ?なんだ?」
「もうちょっと名前捻ってもよかったのでは?」
「なに言ってんだ!?似合ってるだろ!?」
「しょうがないの。おぢいちゃん、さいしょはホムンとかクルスとかいっててククルがいちばんマシだったのよ。」
「・・・。」
「おいなんだその残念なものを見るような目は!?」
俺も名付けのセンスはないほうだがモメントよりはマシだ。
それから店の中に招き入れてもらって、奥の部屋でお茶をごちそうになることにした。
奥の部屋はホムンクルスのいたフラスコなどがいまだにあって、なにかの液で満たされている。
「一応もしもの時のためにククルをすぐに入れられるようにはしてんだよ。」
モメントは苦笑しながら俺に椅子をすすめて、俺はクロ助を床におろして椅子に座った。
モメントは適当な椅子に座り、俺が座ったそばにあったテーブルにククルがお茶を持ってきてくれてククルも適当な椅子に座った。
ククルの座った椅子は他の椅子より低く、ククル用にモメントが買ったのが思いっきりわかるものだった。
「それで、なんでこうなったんです?」
「お前が旅に出てしばらく経った頃にククルという名前を付けてな、色んな話をククルに俺は聞かせたんだ。この部屋から・・・というか、このフラスコからは出られないと思っていたから可哀想に思っちまってな。毎日色んな国の話や昔話なんかをしたせいもあんのか、ククルが興味を持ちはじめてな。んで、ある日このフラスコから出ると言い出したんだ。」
本来、ホムンクルスはフラスコから出られない。
ホムンクルスはフラスコの中の液の中でしか息ができないんじゃなかったかな、確か。
「もちろん俺は大反対した。死んじまうってな。でもククルは「だいぢょうぶ!」の一点張りで自分から出てきたんだ。出てきても苦しむ様子もなく普通に息してて、俺はめちゃくちゃ驚いたんだぞ。だが出た途端に倒れてな。そりゃそうだよ液の中にずっといたから立ったことがなかったんだからな。」
えへへっとククルが照れる。
「それからあたち、いっぱいれんしゅーしてあるけるようになったの!もっとれんしゅーしてはしれるようになって、おかいものにいけるようになったのよ!」
「ものの数ヶ月で走れるまでになって、マジでこの子は天才だと思ったな。」
モメントがどや顔で言ってきた。
本当に孫を溺愛するおじいちゃんそのものである。
「んで、それからは買い物とかで外に出歩くようになってな。そうなるとこの子がホムンクルスだなんて説明したところで誰も信じねえだろうと思って、親戚の子を育ててることにしたんだ。」
まあ、確かに今のククルを見てホムンクルスとわかる方がどうかしているほど人間の子供と変わらないように見える。
「あのフラスコにいたときよりちょっと大きくなっている気がするのですが。」
「3食くっておやつももりもり食ってるし、それを100%吸収してるんだから成長したんじゃねえかと思う。本当にトイレに行かない以外は子供と変わんねえよ。」
「まちのひとともいっぱいおともだちになったの。だからいまたのしい!」
舌足らずも大分改善しているようだし、そのお友達とおしゃべりしまくったから舌が鍛えられたんだろう。
「楽しいのなら何よりです。」
俺はお茶うけのお菓子をニコニコしながら食べるククルに微笑んだ。
ククルの口調はめちゃくちゃ書きにくかったし読みにくかったので改善させていただきました。
 




