236、悪魔はシラをきる
シルバーエルフに帰り着いたのは夜に差し掛かった頃で、ベアトリーチェは迎えに来た護衛と城に帰っていった。
去り際もずっと暗い顔をして一礼して帰っていく姿はなんだか申し訳なくなってしまったが声をかけるわけにもいかず宿屋に帰った。
クロ助はなぜか告白前くらいからものすごい機嫌が悪かったが、ベアトリーチェを振ったくらいからなぜか機嫌はなおっていた。
「お、ユウジンおかえり!」
「おお、帰ったか。」
「・・・どうも、戻りました。」
宿屋の部屋に入ると床で腕立て伏せをしていて背中にじいさんが乗っていた。
変な出迎えに白い目をして対応してクロ助をベッドにおろすとマスティフはニマニマしながら俺に声をかけてきた。
「で、どうだった!?」
「どうだった、とは?」
「いやいや、告白されたか!?付き合うことになったのか!?」
やはりこいつは勘づいていたか。
これだから勘の鋭い奴は面倒臭い。
俺ははあっと深いため息をついた。
「・・・お断りしました。」
「はああっ!?どうして!?」
マスティフはすっとんきょうな声をあげて、腕立て伏せをしていた体勢を崩してじいさんを退けて立ち上がり、俺に詰め寄ってきた。
「めちゃくちゃ美人でいい子じゃねえか!なんでだよ!?」
「あなたには関係ないと思うんですが・・・。まあ、そういう対象には見れませんし、俺は恋愛には興味がないもので。」
「ええええええー!」
マスティフは信じられない、馬鹿じゃねえの?という顔をして見てきた。
なんだろう、ちょっと腹立つな。
「お前・・・、ルナメイア様も振ったのに、あの子も振ったって・・・神経どうかしてんのか?」
バチバチッ
「いてー!?」
神経を疑われて腹立ったので強めの雷魔法をくらわした。
それでも気絶をせずいてー!?だけで終わっているマスティフの体はどうなってるんだ?
「俺のことはいいんです。それより、施設にいた際に村が魔物の群れに襲われました。」
「ほう、それは災難だったのう。魔物の群れは大丈夫だったのか?」
じいさんはテーブルセットのイスへと移動してゆったりと座りながら聞いてきた。
「村人たちで対処が難しかったようなので俺とクロ助でさっさと終わらせました。」
「ええ、いいなあ。俺もついていけばよかったぜ。」
悔しそうにマスティフはそう言って腹筋を始めた。
「じいさんとマスティフはなにをしていたんです?」
「俺は筋トレと特訓ばっかはアレかなって思って魔物と戦いたくてここら辺の森に魔物を探してウロウロしてた。一応サーベルタイガー4体とイエティ3体とフォックス5体倒したぜ!」
魔物と戦いたくてウロウロ・・・。
完全に不審者扱いされてもおかしくないのだが。
「わしは森をウロウロする不審者がいると町人たちが騒いでいたのをなだめて騎士たちに説明したりしてたわい。その後は不審者が倒した魔物を埋めるのを手伝っていたのう。」
やはり不審者扱いされてた。
マスティフは呑気にあははと笑っていた。
「あ、そういえば俺、レベル見たんだけどさあ。」
マスティフは首を傾げながら言った。
「邪竜を倒したのに俺、全然レベル上がってなかったんだよ。あんな強い奴に止めさしたのに。なんでだろう?」
マスティフは不思議そうに言ってきたが、俺に聞いてくる辺り勘は働いているのだろう。
俺はいつもの笑顔を張り付けて「さあ、なんででしょうね。」となんでもないように言った。
魔物を倒した際に最後に攻撃した者だけ経験値がもらえるのはクロ助をレベルアップさせる時に知っていたことだ。
そして俺はマスティフがニーズヘッグに大打撃を与え、ニーズヘッグが意識を失う瞬間に無詠唱で全員の死角となる位置に地面から土の槍を出してニーズヘッグに傷をつけたのだ。
そう。ニーズヘッグの経験値は俺がもらったのだ。
おかげで俺はレベルがものすごく上がった。
名前:ユウジン・アクライ(阿久来優人)
種族:人間(魔法使い)
年齢:25
レベル:78→113
HP:2870(×4)→4370(×4)
MP:4640(×8)→6640(×8)
攻撃力:580→780
防御力:713(×4)→863(×4)
智力:1213→2223
速力:778→1075
精神力:351→401
運:235→280
超適性:罠魔法・多重魔法・鑑定魔法
戦闘スキル:上級短剣術・上級剣術・(取得)中級こん棒術・(取得)上級体術・双剣術
魔法スキル:最上級罠魔法・最上級鑑定魔法・アイテム収納魔法・上級火魔法・上級水魔法・中級風魔法・上級土魔法・(取得)中級木魔法・中級雷魔法・上級光魔法・初級熱魔法・(取得)上級結界魔法・(取得)上級召喚魔法・(取得)付与魔法・拘束魔法・隠蔽魔法・探索魔法・中級移動魔法・死霊魔法・剣魔法・操剣魔法・最上級多重魔法
取得可能スキル:5
レベルが一気に35も上がって100を越えた。
智力も一気に2000超えだし、速力も1000超えしたし、MPなんて×8のおかげで4万ととんでもないことになっている。
取得可能スキルも大量にもらったので5だけなんとなく残して後は一覧から気になるものを取得していった。
戦闘スキルのこん棒術は短杖を使った攻撃に応用できるので取得して、体術は接近戦を俺の気分ですることもあるので取得しといた方がいいかと取った。
結界魔法はアレクサンディルスがかけているのを見て使えたら役に立つかもと取得したもので、召喚魔法はなんとなくラノベ好きでファンタジー好きならおさえときたいと思って一気に上級まで取った。
付与魔法もなんとなく自分で武器防具に付与できるなら役に立つかもと取った。
まあ、まだ一覧には気になる魔法が色々とあったがそれは追い追いでいいかな。
急いで取りたいものもないし。
じいさんはそろそろ自分ではなくマスティフに目がいってもいい頃と止めをマスティフにさせることを言ってきたが、レベルについては特に言ってはなかったので俺がもらったのだ。
バレたら屁理屈とかなんとか言われて面倒なのでシラをきることにした。
・・・まあ、マスティフの勘が働いているようだし、じいさんはなんとなく俺を睨んできてるからバレてるような気がするが。
俺は内心慌てて話題を変えることにした。
「そういえば、ベネディクティスの処分は決まりそうですか?もうゆっくりし過ぎて暇なんですが・・・。」
「そうそう。なんでも明日代表が集まってまた話し合いが再開するようじゃぞ。明日の夜か明後日には決まるんではないかのう。」
「明日の夜か明後日・・・。では俺たちは明後日か明明後日くらいにはシルバーエルフを出てエルフ領から出るようにしますか?」
「そうじゃのう。わしもマスティフもいい加減やることもないからのう。」
「わかりました。では、明日ちょっと出掛けてきます。」
「え?どっか行くのか?」
俺はなんでもないように言った。
「ええ。ちょっとトリズデン王国に行ってきます。」
こちらの小説が落ち着いたのでここで一旦しばらくお休みしてもうひとつの小説に集中することにします。
一応1ヶ月後に再開できる予定です。
楽しみに待っていただけると嬉しいです。
ちょっとした?小話をひとつ。
実はベネディクティス、当初の設定と違うキャラでした。
当初の設定ではプライドがエベレスト級に高くエルフこそ世界の支配者で人間は奴隷かしゃべる家畜としか思ってない奴で気分で人間を殺す鬼畜野郎でした。
鬼畜はエルフがエルフ領に追いやられているという状況がプライド的に許せなくてどうにかできないかと思っていたところ、悪魔教最高指導者に通信の魔石を託されて次々と鬼畜な御告げをして幹部を使って人間を殺して回るところに主人公により暴かれてエルフ長に断罪されるか主人公と戦う流れを考えてました。
人間との貿易を許可した父親であるエルフ長を許せない鬼畜はエルフ長に毒を盛ったりと色々と考えていたのですが、鬼畜の弱点としてベアトリーチェを生み出してから設定が段々変わって、気づいたらただの復讐野郎になってました。恐ろしい子ベアトリーチェ。
神様の「エルフはプライドがものすごく高い」という発言やエルフ長が最近食が細いというのは元々の設定の名残です。
神様の発言は別のことに生かすアイデアが出たのでまあ追い追い役立つ・・・かも?




