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215、悪魔はサポートし始める

ニーズヘッグは12~3メートル以上ある巨体に岩のようなゴツゴツした黒い鱗に覆われている。

手足は短くて太く、尾も太い。

巨大な頭にいくつもの黒い角が生えていて、巨大な口には赤い牙がいくつもはみ出ていて今その口からは唸り声のようなものが出ている。

赤く鋭い目は突然起こされたため機嫌が悪くギロリとじいさんを睨んでいる。


『・・・ふん。我を起こす不届きものがいると思ったら、人間ではないか。』


ニーズヘッグから低く地鳴りのような声が聞こえてきた。

『人間がなんの用だ?』

「なんの用と言われたら・・・攻撃したことから察せぬかのう?」

じいさんは相変わらずニコニコ笑顔で普通に受け答えをしている。

ブラックドラゴンの時の人間を下に見た言動をすでに経験済みということもあってしゃべったことなど驚きもないようだ。

逆にとても驚いていたのはアレクサンディルスたちエルフの面々で、その驚きようから恐らく今までニーズヘッグが話したことがなかったのかもしれない。

エルフたちを無視して根をかじっていたということだし、あり得そうだ。


『この地には長生きしか取り柄のない種族どもがいたはずだが。』

その言葉にピキッとしたのはアレクサンディルスだ。

穏やかに見えるアレクサンディルスも一応エルフ長としてエルフの誇りがあるのだ。

「そんな種族などいたかな?自然と精霊を敬い長い間世界樹を守ってきたエルフ族ならいるが?」

アレクサンディルスがずいっとじいさんの隣に立ち胸を張ってそう言うと、ニーズヘッグは鼻を鳴らした。

『その世界樹を2度もかじられている愚かな種族の間違いではないか?』

「・・・っ!?」

ニーズヘッグの言っていることは当たっているし、今まで2度もまったく相手にされていなかったのだ。

それを言われているのがわかっていて、アレクサンディルスは反論できずに悔しげな顔をした。


「まあ、アレクサンディルス殿。今回はわしが力を貸しますから、安心してくだされ。」

「あ、ああ、マリルクロウ殿、よろしく頼む。」

じいさんになだめられてアレクサンディルスは落ち着いた。

『ふん、その人間はなかなかやるようだが、我より強いとは言えんな。事実、人間の攻撃は我を起こしたが傷はついていない。』

そうだ。ニーズヘッグの体は想像以上に硬かったのか、じいさんが泉と蛇を吹っ飛ばしたあの攻撃はニーズヘッグを傷つけることはできなかったようなのだ。

だが、こんなことで焦るじいさんでもない。


「おや?おぬしはあれしきがわしの全力じゃと思っておるのか?そう考えるのは早計過ぎではないかのう?もしや、その図体のわりに単細胞かのう?」

『単細胞、だと?人間などより圧倒的強者であるドラゴン種の我に向かっての言葉とは思えんが?』

「なんじゃ、言われたことがなかったのか?ドラゴン種というのは語彙力が乏しいとみた。嘆かわしいことじゃのう。わしが前に戦ったドラゴンも今のおぬしのように尊大な態度であった。じゃが、わしの攻撃で頭が骨となったぞ。それが滑稽でたまらんかった。」

『な、に!?』

じいさんはわざとくくくと笑いながら言って、それを聞いたニーズヘッグは見るからに怒りの表情が増した。

『人間の分際で我だけでなくドラゴン種を愚弄するとは!我の怒りに触れるとどうなるか、思い知らせてやる!』

「はっはっはっ!どんなもんか楽しみじゃのう!」


じいさんは高らかに笑って俺たちに目配せして、ニーズヘッグへと走り出した。

その後を慌ててマスティフとアレクサンディルスがついていき、この場には息子2人と騎士たちも俺が残った。


じいさんはニーズヘッグをわざと挑発した。

そうすることでニーズヘッグの関心を世界樹より目の前のじいさんに向けたかったのがあるのと、じいさんらに集中させてじいさんら3人とニーズヘッグとの戦いと、息子2人と騎士たちと蛇との戦いをハッキリと分けるためだ。

レベルの違いがはっきりしているので、同じ場所で戦い混戦となるのは避けた方がよかった。

この作戦はじいさんが提案したもので、予想以上にニーズヘッグの食い付きがよかったのですぐに分かれて戦うことになれたな。

泉の跡の対岸側の世界樹に近いところをじいさんらとニーズヘッグが、こちら側の世界樹から1番遠いところに俺たちがいる。


「!?見てください!泉の底のところ!」

エルフの騎士の誰かがそう言って指差す方を見ると、泉の底の右側隅の方に地割れのような亀裂が入っているのが見えた。

長さは20メートル以上あり、水があった時は反射やうじゃうじゃいた蛇で見えなかったのだが確かに亀裂がある。

するとその亀裂の中がウゾウゾとなにかが蠢く感じがして、えっと見つめているとおびただしいほどの数の大きな蛇がうじゃうじゃとわき出てきた。

「へ、蛇だ!」

2メートルほどの蛇が次々と亀裂から溢れてきている。


その光景に若干の気持ち悪く思ったが、さっき聞いた「泉で寝ている状態の邪竜に攻撃したら蛇が起きて、翌日蛇が倍になった」というのがよぎった。

恐らく増えた蛇は亀裂から出てきていたということか。

それに亀裂はニーズヘッグより大きいことを考えると、もしかしてこの亀裂からニーズヘッグは現れた可能性はあるな。

亀裂の中はどうなっているのか・・・うじゃうじゃ出てくる蛇を見ていると見たいような見たくないような。

蛇はモゾモゾと全部がこちらに向かってきた。


「蛇がこっちに向かってきている!」

「ひいいっ!気持ち悪い!」

騎士たちはあまりの数に顔色を悪くしている。

まあ、サーチをかけてみたが全部で1000匹以上いてこうしている間にも次々と亀裂から出てきている。

どの蛇もレベル50台で、息子2人もレベル50台だが騎士たち全員で戦ってもあまりに蛇の数が多すぎて全部を相手できる訳がない。


・・・とりあえず、亀裂からくる蛇は塞ぐか。


蛇たちは泉の跡から這い出てきて、俺たちに次々と威嚇してきた。

「騎士たち!エルフ長が"黒の一族"たちと邪竜と戦っているのだ!我々もできることをやるぞ!蛇を倒すために訓練をしてきた成果をみせろ!」

ロブレキュロスはそう騎士たちに向かって叫んだ。

「長生きしか取り柄のない種族の俺たちだってやれるというところを見せてやろう!」

ベネディクティスもそう叫び、騎士たちは狼狽えていたのが見る間に凛々しい顔になった。

「そうだ!やってやろう!」

「ああ!」

騎士たちは襲ってきた蛇たちと応戦しだした。

そのどさくさに紛れて俺は蛇を魔法で蹴散らしながら亀裂に罠魔法を張ってすぐに発動した。


ズズズズズズズ・・・


とりあえず亀裂の表面は俺が認識(・・)しているのでそこを土魔法で埋めたのだ。

蓋をされた亀裂がどうなるか、亀裂から出てきてない蛇たちが土を掘り返して出てくるかわからないのでとりあえず様子見をすることにしよう。

「な、なんだ!?亀裂が埋まったぞ!」

「ひとりでに!?なんでだ!?」

「でもこれで蛇はもう増えないってことか!?」

騎士たちはそう言いながらも蛇たちと戦っていた。


だが、しばらくしたら亀裂の埋まった部分がボコボコと土が盛り上がってそこから蛇が出てきた。

やはり表面上だけ塞いだところであまり意味はないということか。



「ゴォォアアアアァァァァッッ!!」


その時、地鳴りのような声が響き渡った。



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