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214、悪魔は開始をすすめる

しばらくして俺とマスティフがじいさんらのところに戻ると、じいさんがこちらに近づいてきた。

そしてこそっと俺に教えてくれた。


「おぬしの予想通りの説明だったぞ。邪竜に3本目の根をかじられたら世界樹は枯れて世界も枯れるそうじゃ。」

やっぱりそうか。

「あと、あの邪竜のことを聞いてみたが、1000年前に突然泉の底から蛇と共に現れたそうで、それ以上のことはわからんそうじゃ。1000年前も500年前もエルフたちが攻撃してもまったく体は傷つかずエルフたちを無視して根をかじったそうで、蛇どもが襲いかかってきて応戦していたら根を噛みちぎられて、邪竜が泉の中で寝始めたら蛇どもも泉の中に引いて寝たそうじゃ。エルフ長殿は勝手に眠れる邪竜と呼んでいるだけで名前も能力も知らんようじゃぞ。」

ふむ、ならエルフたちの前でニーズヘッグと呼ぶのは避けておかないとな。

エルフたちでさえ知らない名前を俺が知っているとなったら変な誤解が生まれる可能性があるからだ。

話の中でニーズヘッグが無視するのは、恐らくまったくもって相手にならないと判断して、それでも攻撃するから蛇たちが反応したのだろうか。

共に寝ていることから、蛇たちはニーズヘッグに従っている可能性が高いからな。


「なあ、何で今攻撃しねえの?」

マスティフは泉をチラチラ見ながらそう聞いてきた。

確かに、俺たちの目の前の泉には寝ているニーズヘッグと蛇たちが見える。

水の中とはいえ、攻撃できないわけではないようだし。

「わしもそれは提案したんじゃ。じゃが、前に攻撃したことがあったが蛇だけが目を覚まして襲ってきたそうで、そしてその次の日に蛇が倍になったそうじゃ。」

「うええ・・・。」

マスティフが引いて蛇たちを見た。

「それは・・・エルフたちにとって面倒でしょう。あの蛇たち、レベル50台ですから。」

俺はニーズヘッグの鑑定をした時についでに蛇たちも鑑定していた。

全部の蛇がいずれもレベル50台で、エルフたちにとっては手こずる相手だろう。

なにせ余裕で倒せるのはレベル70台のアレクサンディルスだけで、息子2人はレベル50台と蛇たちと同じレベルだし、騎士たちはレベル40台だからだ。


「じいさん、マスティフ、邪竜と戦うにあたって鑑定した内容を教えときます。」

そして俺は2人にニーズヘッグのレベル、能力数値、スキルを話した。

「ふむ・・・レベル164とは、なかなか骨のある戦いができそうじゃのう。」

じいさんは腰にさした『黒焔』を撫でながらニヤリと笑った。

「やる気なのは結構なことです。・・・じいさんが倒してくれることは期待していますが、万が一にもなにかあった時用に一応、援軍も途中から参加予定ですので。」

「援軍?」

「まあ、それは来てからのお楽しみということで。」

俺は意地悪な笑みを浮かべてチラリと世界樹を見た。


そういえば、と思うことがあったのでじいさんとマスティフに聞いてみた。

「そういえばお2人、黒の鎧は着けないのですか?」

実はじいさんもマスティフも商人と護衛に変装した格好のままだ。

"黒の一族"がエルフ領にいるのがバレるのはまずいので(許可されていないのにいることになるので)シルバーエルフを出てから黒の鎧に着替える予定たったのだけど馬車は狭くてものすごい揺れていたから着替えられなかったのだ。

「まだ時間があるようですし、着替えては?」

「そうじゃのう。」

「あ、俺も。」

俺がアイテムから出すと2人とも着慣れているのであっという間に着けた。


よし、これで一応こっちの準備はできたんじゃないだろうか。

じいさんたちが鎧に着替えている間にニーズヘッグのウィキを見てみたが、起きるのはもう少し後なようだ。

だが、行儀よく起きるのを待っているというのはどうなんだろうか。

「じいさん。」

俺はじいさんに提案した。

「エルフたちは起こすことができなかったのでしたら、もしかしたらじいさんなら起こすことができるんじゃないですか?」

俺が思うに、エルフたちのレベルが低すぎて起こせなかったのではないかと考えた。

ニーズヘッグが無視して根をかじるほど気にならないのなら眠っているときに攻撃されても気にならないのではないだろうか。

「起きるのは時間の問題とはいえ、起きるまで待つのもなんですからね。ここはじいさんが一発攻撃して寝首をかいたほうがこっちに気を向けざる得ないんじゃないでしょうか。」

じいさんは少し考える素振りをして頷いた。

「ふむ・・・。おぬしがそういうなら、やってみてもええかもしれんなあ。」


じいさんはすぐにアレクサンディルスに提案して、攻撃の許可をもらっていた。



「よし、ではやってみようかのう。・・・皆のもの、準備はいいかのう?」

休憩していた騎士たちも切り上げてすぐに戦闘に入れるようにそれぞれ武器を持っているし、息子2人もロブレキュロスが短杖をベネディクディスが弓矢を持っていて、アレクサンディルスも杖を構えて戦闘態勢だ。

マスティフも大剣を肩に担いでいて、俺はサポートに回るつもりなので短杖1本だけ手にとっている。


じいさんは皆が準備できていると確認して、『黒焔』を抜いた。


そして気合いを入れるようにものすごい殺気のこもった威圧を出した。


うわっ・・・、じいさんの威圧に慣れてはいるが、それでも圧迫したなにかは感じる。

初めての会った時にぶつけられた威圧と同じものを出しているんだろうが、あの時に比べて全然余裕だ。

マスティフは慣れているので平気な顔をしているし、クロ助もちょっと苦い顔をしているけど問題なさそうだ。

・・・まあ、エルフたちは見るからに冷や汗を固まっているが。

アレクサンディルスでさえ顔色が悪い。

じいさん、早くしないとエルフたちの戦意が喪失しそうだぞ?


すると泉の表面がザワザワと震えだして、中では水泡がいくつも発生して眠っている蛇たちがビクビクしだした。


そして・・・


ニーズヘッグの眼が開いた。


じいさんはニヤリと笑って『黒焔』に魔力を通した。

『黒焔』から黒い炎が吹き出して、宙を舞う。

そして両手に持ちなおして、頭上にかかげた。


「『黒焔(コクエン)紅蓮血走(グレンチバシリ)』!」


ズバアアアアァァァァンッ!!


じいさんが勢いよく振り下ろした『黒焔』から黒い炎の衝撃波が前方広範囲に吹き出し、泉に到達すると蛇が水ごと吹き飛んでそれでも衝撃波は進み、なにかにぶつかる音と共にものすごい水蒸気が発生した。


「う、わっ!?」

こっちにまで水蒸気が飛んできて思わず片腕で顔をかばった。

マスティフもビックリした声をあげて顔をかばったようだが、エルフたちはあまりの光景にぽかんとしている。

「やったか!?」

マスティフがお決まりのネタフリを叫んだ。

ということは・・・。


水蒸気が去った後、水のなくなった泉にほとんど吹き飛んだ蛇にニーズヘッグがいた。

ニーズヘッグは赤い目を爛々とさせ無傷でこちらを睨み付けていた。






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