表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
216/350

213、悪魔は援軍を探す

大結界の中はしんと静まり返っていた。


サーチで見ると魔物や小動物は確かにいるのだが、木のウロや草むら・自ら掘った穴などに隠れて動いていないのだ。

恐らく本能的に異変を感じとっているのかもしれないが、俺たちにとっては進行を邪魔される心配はないので助かった。

悪路を進む馬車の音だけが辺りに響き、俺はまだ着かないかとガタガタ揺れる車内にうんざりしている。


「なあ、ユウジン。さっきぼそっと言った世界樹っていうのが、あの木のことなのか?」

マスティフは揺れるのを全く気にせずそう聞いてきた。

「そうですよ。相談の時に説明しましたよね、世界を支える超重要な巨大な木だと。それを守るのがエルフなのは俺のいた世界の話では定番でした。」

「まかさ本当とはのう。」

じいさんは感心しながら何度も馬車の外の世界樹を覗いている。

「・・・となると、やっぱりユウジンの知ってる神話の通りなのかな?」

「世界樹に眠れる邪竜、とたら確実でしょう。北欧神話に出てきます。」

そう。

世界樹が出てきて尚且つ世界樹に関係する邪竜が出てくるとなると有名なのは北欧神話だ。

俺のいた世界でラノベやゲーム、漫画に数知れず出てくるからもちろん俺も知っている。


さて、どこまで神様は参考にしているか。

今の状況には不謹慎かもしれないが、それがちょっと楽しみではあるな。



走り続けること数時間、やっと世界樹の近くに着いたようで、馬車は止まった。

馬車から出るとアレクサンディルスたちはすでに降りていて俺たちを待っていてくれた。

「巨大な大樹にさぞ驚かれただろう。ここからは歩いていくから、説明しながら進もう。」

アレクサンディルスとじいさんを先頭に俺たちは歩き出した。

アレクサンディルスとじいさんの後ろに俺とマスティフがついて、その後ろにロブレキュロスとベネディクティスがついてきて、その後ろに騎士たちがついてきてる。


「あの巨大な大樹は世界樹といって、この世界を支える大樹だ。世界が植物に溢れ枯れていないのは世界樹があるからで、我々エルフは神が世界をお造りした時に、世界樹を守る存在として生まれたのだ。」

「なるほど、そんなに重要なものとは知りませんでしたな。」

「人間たちが知らないのは無理もない。我々はエルフ以外の他の種族に言うことは避けていたからな。もし知られてしまったら強欲に求める者が出てきてしまうのはわかっていたからだ。特に人間の中にはそれが顕著な者がいるだろう?」

それは暗にエルフと人間の過去の対立のことを言っているのだろうか。

確かに、"エルフが守る聖域"というフレーズだけで暴こうとかつてのトリズデンは動いた過去があるから隠して当然だ。

「その気持ちはわかりますのう。同じ人間として恥ずかしいくらいに不躾な人間がおりますからのう。」

じいさんが苦笑するとアレクサンディルスも苦笑した。


少し細い道を歩くことしばらく。

開けた場所に着いてそこから世界樹の全貌が見えた。

といっても上の方は雲に隠れていて見えないが。

信じられないほど巨大な大樹はなだらかな丘の上に生えていて、丘の周りは広々とした草原と向こうの方に湖かと思うほどの泉が見える。


やはり、泉があるな。

あの泉にいる(・・)のだ。


アレクサンディルスは引き締めた顔をして、泉を指差した。

「あの泉に眠れる邪竜は眠っているのだ。」

俺たちは様子を見ながらゆっくり近づいた。


「!!??」

隣のマスティフからはぎょっとした雰囲気が伝わってきた。

それはそうだ。

湖ほど広大な泉の底には巨大な黒いドラゴンと見たことないほどおびただしいほどの黒い大蛇が眠っている。


巨大な黒いドラゴンはブラックドラゴンより遥かに大きくてゴツゴツした鱗に太い尻尾をしていて、羽根は生えていないが頭からはいくつも角が生えている。

今はまだ眠っているようで目を閉じて体を丸めている。


俺としてもなかなかの光景に、つい呟いた。


「あれがニーズヘッグですか。」

「ニーズヘッグ?」

隣のマスティフがすかさず聞き返してきた。

だが俺は無視して鑑定魔法をかけた結果を見つめていた。




種族:ニーズヘッグ(眠れる邪竜)

レベル:164

HP:9500

MP:7000

攻撃力:1525

防御力:930

智力:1380

速力:692

精神力:446

運:256


戦闘スキル:上級爪術・上級牙術・上級竜術

魔法スキル:上級水魔法・上級土魔法・最上級闇魔法・毒魔法・上級多重魔法



アレクサンディルスの上級風魔法ぐらいしか効かないということはレベルが相当高いと思っていたが、じいさん以上とは恐ろしい。

能力の数値がこれまでの魔物と比べ物にならないくらい高いのはドラゴンだからそれ故元々から高能力なのか、レベルの上昇率が高いのかはたまたその両方だろうか。

攻撃力もだが防御力もなかなか高いからなかなか倒すのに骨がいるだろう。

さらに魔法も上級ばかりか闇魔法は最上級が使えて多重魔法も使えるから魔法で攻撃された場合被害が出る可能性が高い。


今回、俺はじいさんがメインに戦ってもらってサポートにマスティフとアレクサンディルスがするようにしむけ、ニーズヘッグと共に眠っている蛇どもが目覚めた場合は騎士たちと息子2人に対応してもらって俺は全体的なサポートに回ろうと思っていた。

だが、ニーズヘッグの能力の高さを見るとじいさんら3人だけでは戦うことができても倒せるか怪しくなってきた。

といって俺が出るのは避けたい。

目立つことはしたくないし、じいさんの弟子となっているのに孫ならともかくしゃしゃり出る訳にはいかないからだ。


・・・ここはさらに援軍を呼ぶか。


アレクサンディルスはじいさんに周辺のことを説明しているようで、それらを横目にマスティフに話しかけた。

「ちょっと・・・周りの地形とか見ておきたいんで、離れます。」

「え、あ、じゃあ俺も!」

慌ててついてこようとしてきた。

「ついてこなくて大丈夫です。」

「いや、ついていく。なんかやろうとしてるだろ。」

「・・・それはあなたの恐ろしく優れた勘ですか?」

「それもあるけど・・・この状況で離れるって、明らかになんかあるなって思うぞ。」

んまあ、それはそうか。

まあ、マスティフがついてきたくらいで支障はでないはずだ。


アレクサンディルスとじいさんに話しかけて周辺を見てまわるというと、アレクサンディルスから「この開けた場所以外行かないでくれたら好きにしていい。」と言われた。

息子2人もそれぞれ周囲を見てまわるとことにしたようで、騎士たちも休憩がてら待機している。

そうして俺とマスティフは周辺を見て回ることとなった。




「そういやあ、エルフ長の説明を聞かなくていいのか?」


しばらく歩いて、皆から距離をとったところでマスティフはそう聞いてきた。

「ええ。だいたいの予想はしてますから。」

「そうなのか?」

本当に?という顔をされた。


俺は丘の上の世界樹に向かって歩き出した。

「世界樹の根は3本。ですがニーズヘッグ・・・邪竜が1000年前に1本をかじって500年前にもう1本をかじってしまったのではと考えてます。・・・あ、やっぱり、かじられてますね。」

近づくと世界樹の根がかじられた痕が見えてきた。

巨大な大樹の2本の根はものすごく太くて固そうなのに、かじられて引きちぎれたように傷口がガタガタになっていてその部分が腐ってきている。


北欧神話では世界樹の根は3本というのは同じだが、根はそれぞれの世界にのびていて、3本目の根がアースガルド・・・俺たちのいる世界にのびていて、ニーズヘッグは暇潰しで3本目の根をかじっているという。

そして普段は世界樹の根元にある泉に多くの蛇と一緒にすんでいて眠っている。

神様はこの神話をアレンジして世界樹3本ともを世界にのびていることにして、ニーズヘッグが暇潰しでかじる設定そのままにしたんだろう。

まあ、それがまさか500年ごとに1本ずつダメにするほどかじっているとは思ってないのかもしれないな。


「今回、必ず倒さないといけないというのは残り1本だから。・・・この1本をかじられたら、世界は枯れる。すなわち世界が終わるということです。」


じいさんとマスティフは俺が相談した時に話していたので、マスティフは今も冷静に聞いているし、アレクサンディルスの説明を聞いているじいさんも冷静に返事ができているはずだ。

「必ず倒さないといけないのは俺も賛成です。ですが、鑑定したら予想以上にニーズヘッグの能力が高い。じいさんとあなたとエルフ長に任せようと思っていたのですが、万が一にも負ける可能性があってはならないと思いましてね。援軍を頼むことにしたのです。」

「え、ユウジン戦わないのか!?」

「俺はじいさんの弟子としてついてきているんで、しゃしゃり出ることはできませんし目立つのは好きではありません。影ながらサポートはしますがサポートにも限界がありますからね。」


俺はサーチをすでにかけていて、援軍となる者を見つけていた。


世界樹にさらに近づいて、上の方を見上げる。

上の枝に目を向けてみると、青々とした葉が生い茂っているが下の方の枝にいくにつれて黄色がかった葉が茂っている。

根が1本しかないからその影響で下の方の葉が枯れてきているのだろう。


その葉の中に埋もれるように、()がいる。


俺は彼がこちらを見ているのをわかっていて、声をかけた。



「こんにちわ、ちょっと遊びませんか?」


するとガサガサと音をたてて、彼は枝から幹へと伝って降りてきてピョーンとジャンプするとクロ助の乗ってない方の俺の肩に着地した。


『キキキ!お前、面白そうな人間だな!』


茶色のリスはそう言って笑った。



クロ助のライバル登場か!?(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ