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198、悪魔はグリーンエルフに行く

「おらあぁっ!」


白いサーベルタイガーが地面に腰を下ろしているエルフの少女を襲っているのが見えた瞬間、マスティフは素早く大剣を抜きサーベルタイガーの横腹に切りかかった。

「グオオォッ!?」

サーベルタイガーの横腹は大きく切れて血がブシャッと吹き出た。

サーベルタイガーは突然の攻撃に驚きながらも前足でマスティフを振り払うような動作をするとマスティフの方を向いてグルルと唸り声をあげた。


俺はサーベルタイガーの方はマスティフに任せてエルフの少女を助けることにした。

エルフの少女は10代前半くらいの幼い顔立ちで、黄緑色の長いツインテールに緑の大きな目の美少女だ。

毛皮の外套を羽織ってはいるがその中は比較的薄着で茶色のベストに黄色の短いワンピースでレギンスのようなものを履いている。

片手に弓矢を持っていることから、もしかしたら狩りをしていたのかもしれない。


スタスタとなにも気にすることなく少女に近づいてしゃがむ。

「怪我はありませんか?」

「えっ!?あ、ちょ・・・!」

少女は俺とサーベルタイガーとを交互に見比べながら困惑した表情を浮かべた。

それはそうだ。

俺はサーベルタイガーのすぐ横を歩いてきて、サーベルタイガーはまったく俺に気づいてないのだから。

「この魔物にだけ姿が見えないようにしているだけですから、お気になさらず。」

「ええ!?なにその魔法!?っていうか魔法なの?」

「魔法ですよ。おっと、膝と手を擦りむいてますね。」

回復魔法を詠唱してかけて治してあげた。

「あなたにも同じ姿が見えなくなる魔法をかけましたのでそのまま休んでて下さい。そろそろあのアホマッチョが倒してくれますから。」

「アホマッチョ・・・。」

少女は俺のアホマッチョという言葉に微妙な顔をしていた。


「グウウゥゥゥッ・・・」

そんな声が聞こえたのでサーベルタイガーとマスティフの方を見ると、マスティフはサーベルタイガーの喉に大剣を突き刺して倒したところだった。

「よっしゃ!終わったぜ。『翔突』出す前に倒せた!」

んまあ、マスティフのレベルだったら問題ない魔物だからな。



種族:アイスサーベルタイガー

属性:氷

レベル:40

HP:1200

MP:100

攻撃力:205

防御力:180

智力:90

速力:180

精神力:110

運:40


戦闘スキル:中級爪術・上級牙術

魔法スキル:中級氷魔法



出来れば中級氷魔法がどんなものか見たかったがしょうがない。

「お疲れさまでした。こちらも保護できました。」

「すごい!!あの魔物倒したなんて!」

少女は驚きながらも慌てて起き上がった。

「ありがとう!おかげで助かったわ。あなたは回復魔法かけてくれてありがとう!」

少女は俺とマスティフそれぞれに頭を下げてお礼を言ってきてくれた。

なかなかちゃんとした少女のようだ。

・・・いや、見た目が少女だがエルフなんだから年上の可能性があるな。


「私はこの近くのグリーンエルフに住んでるヘンリエッテ・クゥよ!因みに150歳よ!よろしくね!」

年上だった。




ヘンリエッテは狩りをしようとひとりで森に入って獲物のウサギを追いかけていたらうっかり先ほどのサーベルタイガーに出くわしたそうだ。

そして逃げていたのだが、転んで慌てて起き上がろうとしていたところで襲いかかられて、そこを俺とマスティフが発見したということらしい。

「本当は200歳を越えないと狩りはダメなんだけど、忙しいお兄ちゃんの代わりに私が狩ってきたらいいかなって思って何回か狩りに行ったりしてたの。あんな大きな魔物に出会ったことがなかったから油断してたわ。」

馬車の荷台に座り足をブラブラさせながらヘンリエッテは反省したようにそう言った。

「そうじゃったか。ユウジンとマスティフが早くに気付いて本当によかったのう。」

ヘンリエッテの正面に座るじいさんはニコニコ笑っていた。

「本当にありがとう!私のいる村はグリーンエルフなんだけど、そこに着いたらお礼をぜひさせてね!」


ヘンリエッテから狩りをしていた事情を聞くと、それでは俺たちの馬車で一緒にグリーンエルフに向かわないかとマスティフが提案した。

少女ひとりで狩りをするのはこれ以上は危険だろうということで提案したのだろうが、ヘンリエッテの方も思っていたようで「そうさせてもらえるかしら。」とすぐに快く応じてくれて一緒に向かうこととなった。

馬車に戻ってじいさんに事情を話してじいさんもヘンリエッテと一緒にグリーンエルフに向かうことを了承してもらった。

もちろんじいさんは金持ちの商人マリオンと名乗り、俺も荷物持ちでクロ助は俺のペットのただの黒猫で、マスティフも護衛と自己紹介した。

そうなると荷物持ちが御者をすると不自然に思われるかもと思い、護衛のマスティフに御者を代わった。

因みにサーベルタイガーの死体は俺がアイテムに入れといた。

多分肉も毛皮も売れそうな感じがしたからだ。


馬車で揺られること15分ほど進んだところで、ヘンリエッテが前方を見ながら叫んだ。

「アレがグリーンエルフよ!」



ほとんど雪を被った木々が生い茂る山脈の麓の森の一角に、グリーンエルフはあった。

イエローエルフでは建物は石を積み重ねた壁だったのが、グリーンエルフは巨大な大木がいくつも生えているのをそのまま木をくり貫いて家にしていた。

木の幹に白や茶色のドアや窓があり、木々の間に吊り橋がかかっているところがあったり枝の重なったところは通路となっていてちらほらエルフたちが通りすぎて行くのが見える。

枝のあちこちに街灯がわりのランプが引っかけられていて淡い光を放ち、なんとも幻想的できれいな光景となっていた。

「うわあ・・・、すげえな!」

「イエローエルフとは違いすぎですね。」

俺もマスティフもクロ助も、初めて見る光景に周りをキョロキョロしてしまう。


そして不思議に思ったのは、このグリーンエルフではあまりジロジロ見られないことだ。

もちろん通りすがりのエルフたちから見られることは見られるのだが、チラッとこちらを見て「あ、人間か」と言うくらいで、イエローエルフで味わった睨まれたりヒソヒソ話されたりというのがないのだ。

「ふむ・・・。わしが前に来たときと違うのう。前はもっと興味深げにジロジロ見られておったのじゃが・・・。」

じいさんはそう呟いていた。

「それは最近人間たちがグリーンエルフに来ることもちょこちょこ増えたからよ。」

じいさんの呟きに答えたのはヘンリエッテだった。

「ここの木の家とかランプとか見て、ユウジンたちみたいに感動してくれる商人さんが多くて、わざわざ遠回りしてでも来てくれる商人さんもいるくらいなの。それのついでにここでたくさん商売もしてってくれるから、私たちグリーンエルフは人間に好意的だしね。」

なるほど。だからイエローエルフの村人たちと違ってヘンリエッテは俺たちを睨んだりしてこなかったということか。


「・・・ということは、やっぱりイエローエルフはあまり人間にいい感情を持ってないってことですね?」

「残念ながらね。・・・イエローエルフたちにも考えがあるから間違ってるとも言えないけどね。」

俺の問いにヘンリエッテはそう言って悲しそうな顔をした。

まあ、商人たちから商売の場所と思われているグリーンエルフで商人たちがいい顔をしてグリーンエルフは人間に好意的になり、商人たちから通過点としか思われてないイエローエルフで商人たちは腐ったものや売れ残りを買わせたりしただろうからイエローエルフは人間に好意的でなくなったのだろう。

加えてその状況にイエローエルフの代表が人間嫌いらしいから余計に拍車がかかったのかもしれないな。

そう考えると、イエローエルフで睨まれていたのはしょうがないのかもしれない。


「あ、マスティフ、この道の1番奥まで行ってくれる?とても大きな木の前まで続いてるから。」

「おう、わかった。」

幻想的な光景を眺めながら奥へ進んでいくと、一際大きな大木が見えてきた。

大きな大木はなにかの施設なのか、ひっきりなしにエルフたちが出入りしているのが見える。

大木の前に馬車をつけるとヘンリエッテは軽やかにぴょーんと馬車から降り俺たちも続いた。


「ヘンリエッテ!!」


その大木の施設からエルフの青年が飛び出してきた。

青年はヘンリエッテに向かってものすごい勢いで走ってきた。

見た目は18歳くらいで黄緑色の短めの髪を後ろでまとめていて、緑の切れ長の目というどことなくヘンリエッテに似たイケメンの好青年だ。

青年はヘンリエッテの元まで走ってくるとひしっ!と抱きついた。

「ヘンリエッテ!また無断で狩りに行ってたのか!心配したじゃないか!」

「お、お兄ちゃん!ご、ごめん・・・。」

どうやらこの青年がヘンリエッテの兄のようだ。


「あのね、この人たちが私を助けてくれて一緒にここまで来たの。」

「え?この人たち・・・?・・・!?」

その言葉にようやく俺たちに気づいたのか、青年はばっとヘンリエッテから離れた。

「す、すいません!ヘンリエッテを助けていただいたんですか!?ありがとうございます!妹がすいませんでした!!」

青年はものすごい勢いで頭をペコペコ下げてきた。

「ちょっとお兄ちゃん!その低姿勢なんとかしなよ!そんなんじゃ他の村から舐められるよ!」

他の村から舐められる?

「それはしょうがないよ・・・。僕の性格なんだから。」

青年は苦笑していた。


「あ!すいません、ご挨拶がまだでしたね。僕はこのグリーンエルフ代表のコルネリアス・クゥです。」


は!?兄がこの村の代表!?




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