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1、悪魔は異世界に行くことにする

目覚めたら、いわゆる雲の上だった。



俺は確か・・・普通の日常を送って、普通に寝たはず。

これは夢か?


ものっっすごいふわふわの雲の絨毯にしばらく触り心地を堪能して、周りを見回すが、空ばかり。

下を覗こうにも見渡す限り雲の絨毯で、切れ間がない。


さて、どうしようと思っていたら、声をかけられた。


「こんにちは、阿久来(アクライ) 優人(ユウジン)さん!」


そう言って、どこからともなく小さな男の子がふわりと降りてきた。


「僕はあなたのいた世界と異なる世界の管理している神です。」

「異世界の神!?・・・もしかして、今ものすごい増えてる異世界転移とか言う奴ですか!?」


俺は漫画やアニメが好きで、ラノベもたくさん読んでいる。

ラノベで最近流行りまくっている異世界転生・転移に興味があったが、まさか自分が体験することになるなんて・・・!?


「あはは!話が早くて助かるよ。そうそう、その異世界転移してみないかなって、誘いに来たんだよ。」


そして神様はくわしいことを教えてくれた。


ある時、他の世界の管理している神様同士が雑談していて、異世界転生・転移の話になって興味が出てきた神様同士が試しにお互いの世界の人間を転生・転移しあったことがあったそうだ。

そしたら意外や意外、文明が発展したなどのいい効果が出たそうで、それを聞き付けた他の神様がこぞって転生・転移しあって、自分の世界に他の世界の人間を異世界転生・転移させるのが一大ブームになったそうだ。

この男の子の神様もそのブームに便乗して仲のよかった俺の世界の神様に持ちかけて、異世界転生・転移することにしたんだそうだ。


男の子の神様の世界は剣と魔法のファンタジーの世界で、魔物がいて中世ヨーロッパくらいの文化レベルと、ラノベの世界そのままのようだ。


「僕の世界に行ってもらったら、何をしてもいいよ。村人になって農業してもいいし、冒険者になって全世界を旅してもいいし。君には世界を体験して、改善点とかあったら教えてほしいんだ。言わばテスターだね。」


そして実は俺の他にテスターは何人かいるらしい。

何人かは俺の後も誘う予定なのではっきりとしてないとか。

色んな人種を誘ってるそうで、俺は名前からして『善人そうな人』ということで、優しい人はどういう体験をしてどういう感想・改善点を言ってくれるかな、というので誘ったそうだ。

因みにテスターに禁止されているのは世界を滅ぼすのと、テスターを殺すの2点だけだそうだ。

世界を滅ぼそうと行動を起こした瞬間と、テスターを殺した瞬間にテスターは世界から消滅するらしい。


「もしそれ以外の事故とかで死んだらどうなります?」

「死んだらここに戻ってきて、君の世界に帰るか天に召されるか決められるよ。」

「もし帰りたいなってなったら帰れます?」

「3ヶ月に1回、君の夢に僕が出る時に体験した報告をしてもらいたいんだけど、帰りたかったらその時言ってくれたら帰れるよ。」

「でも、帰ったとしても俺は行方不明扱いとかになってません?」

「それも大丈夫。時間を操作して君が寝た瞬間に帰ることができるよ。」

結構な好条件だな。

不味いことになったら帰ったらいいんだし。


「わかりました。俺、異世界転生・転移したいです。」

「ホント!?わーい!ありがとう!!」

男の子神様はぴょんぴょん跳ねて喜んだ。


「早速だけど、転生・転移どっちがいい?」

「転移で、この姿のままでお願いします。」

「オッケー!」


「あ、そう言えば、ラノベでよくあるチートはもらえるんですか?」

「もちろん!やりたいこととかなりたい職業とかあったらそれに沿ったチートがあげられるけど、希望はある?」

「やりたいこととか職業は思いつかないですけど、俺の世界には魔法がなかったので魔法をメインに使えるようになりたいですね。」

「なるほど。魔法をメインね。具体的にこんなチートほしいってのはある?僕の世界に存在するものならつけられるよ。」

存在するものなら?つまりファンタジーにない銃やスマホはダメってことか。

「もしステータスがあるなら、レベルカンストはどうですか?」

「ステータスはあるけど、レベルカンストは存在しないからできないね。」

レベルカンストがない!?つまりどこまでも強くなれるってことかよ。

「最強の武器と防具はどうですか?」

「あ、ごめん。武器と防具はそれぞれ先のテスターがほしいって言ったからあげちゃって在庫ないんだ。」

在庫・・・?え、作れねえの?

「えーと、後は魔法は全習得かな?」

「全習得も先のテスターにあげたなあ。」

くそっ、先のテスターめ。

「ことごとくなくて申し訳ないなあ。せめてものお詫びに希望する魔法に適正より強力な超適正をつけてあげるよ。」

「適正というのは得意とかいう意味であってます?」

「そうそう。適正がついた魔法は習得しやすく発動時間も短縮されて消費魔力も少なくてすむんだ。君にあげる超適正はそれのさらに上で、習得しやすく発動にかかる時間はなし、消費魔力はほぼなしだよ。」

「へえ!すごい・・・!」

「どの魔法にしようか?属性魔法はもちろん、特殊魔法もオーケーだよ。」

「特殊魔法?」

「僕の世界にはオーソドックスな火魔法とか水魔法の他に毒魔法とか通信魔法とかいう特殊魔法があるんだ。魔法一覧見せるとざっとこんな感じ。」

男の子神様が指をパチンと鳴らすと俺の目の前に透明のウインドウが出てきて、全魔法一覧が表示された。

ほうほう・・・。いろいろあるなあ。



あ、これいいな。


「この魔法を1番得意な魔法にしてもらえます?」

「これ?・・・ずいぶん珍しい魔法だねえ。なんか、君のイメージに合わない気がするけど・・・まあ、君の希望だし、いいよー。その魔法の使い方は行ったらわかるようにしとくからね。」

「ありがとうございます。」

「ある程度の装備とある程度のお金は世界に着いたら持ってることにするよ。あ、最低限の魔法スキルとして鑑定魔法とアイテム収納魔法と火魔法と水魔法と戦闘スキルで初級短剣術はできるようになってるからね。」

なんとも至れり尽くせりだ。


「他に希望はある?」

「・・・特にはないですね。」

「まあ、なんか希望があったら3ヶ月に1回会ったときに言ってくれたら大体はできると思うし。」


「じゃあ、そろそろ出発してくれるかな。世界に行ったら少しずつラノベのテンプレ展開が起こるようになってるから、それも是非体験をして感想を教えてね。」


男の子がそう言うと、途端になんだかものすごい睡魔が・・・。


「ああ、ありがとう・・・神様。・・・元々、ラノベ読んでて、生ぬるいと思っていたから・・・思いっきり・・・やれる・・・。」


一気に意識は闇に溶けていった・・・。



そうだ。


俺はラノベを読んでて、常々生ぬるい世界だなって思ってたんだ。


もしそういう世界に行けたなら、自分ならどうするとか思ってた。

それをやっていいってことだよな?


気に入らない奴らをたくさん地獄に落としてやるんだ。

地球の奴らの絶望は色々見たから、異世界の絶望も見てみたいな。

絶望に狂う人間とか、是非見てみたいなあ・・・。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇





阿久来優人が世界に行ってからすぐ、地球の神である女の子がふわりと降りてきた。



「行った?」

「うん!今行ったとこだよ!楽しみだなあ。善人そうだしたくさん人を救いそうだよね。」


「ご機嫌なところ申し訳ないけど、それは絶対ないわよ。」

「え?」

「あんた、とんでもないのを世界に向かわせたのよ。」

「は?え?」

「あの子がこっちの世界でなんてあだ名で呼ばれているか、教えてあげる・・・・・・。













――――――――――――――――悪魔よ。」


「・・・・・・・・・え?」


「親・親戚・友人とかあの子に関わる全ての人間はそう言ってあの子を恐れているのよ。気に入らない人間はあらゆる手段で絶望させて自殺に追い込むなんて当たり前にできる子なのよ。」


「そ、そんな!?あんな善人そうなのに!?」


「全部計算よ。ニコニコ笑って人畜無害そうな顔して息をするようにモラハラしてるのよ。その見た目のギャップに被害者は余計に堪えるみたいよ。それをわかってやってるの。・・・そっちの世界に行ったらそっちの世界を滅ばない程度に蹂躙するでしょうね。わたしには笑顔で大虐殺してる未来しか見えないわ。」




男の子は顔を真っ青にした。





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