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176、悪魔は断罪する3

クラウデン・ギアノート・ヴェリゴ混線ルートです。

ここでギアノートとヴェリゴのルートは終わりです。

そしてちょっと長くて残酷表現があります。 ご注意を。

リズさんの死体は黒いもやに包まれ、それが中に入ったかと思うと土色の肌は異常なまでの青白い肌になり、瞼が震えてパチリと目を開けた。


ゆっくりと周りを見渡し、俺を見つけると口を開いた。

『あ・・・。私・・・、生き返ったのね。』

「はい。俺の死霊魔法で一時的に蘇っていただきました。今は教皇猊下の断罪中で、あなたに証言していただきたいのですが。」

『あなたが死霊魔法で私を使役しているのなら、それに従うわ。』

リズさんは一度死んだからか、感情が少し抜け落ちたようなしゃべり方だ。

表情も無表情だ。


気がつくと、辺りはシーンと静まり返っていた。

どうしたんだと横たわるリズさんから視線をあげて見回すと、全員がぽかんとした表情で俺とリズさんを見ていた。

うん?この光景は前にヴェネリーグ王国でブラックドラゴンらを生き返らせた時と同じだな。


・・・あ、死霊魔法ってとても珍しいし俺みたいな若者ができるのがあり得ないことだったっけ確か。


「ユ、ユウジン・・・!?君、今!?」

いち早く気がついたギアノートがそう声をかけてきた。

「ああ、びっくりさせてすいません。俺は死霊魔法が使えまして、被害者の死体を見つけましたから生き返らせたら立派な証人になるなと思ってアイテムに入れてました。」

あっけらかんと言う俺にギアノートは呆れた目をしてきたのを気づかないフリをする。

絶対に「死霊魔法が使えるということをするっと言うとは・・・」と思ってる気がするからだ。


「な、な、なぜ・・・リズの死体を、お前が・・・!?」

ギアノートと話しているうちに気がついたヴェリゴが、リズさんを真っ青な顔で震えながら呟いたのが聞こえた。

俺はヴェリゴの方を向いてニコッと笑う。

「あなたがリズさんの死体を回収して教会に帰る時、遺棄する場所を確認したくてあなたを尾けていました。死体を遺棄してあなたが去った後すぐに土魔法で掘り起こしてアイテムに入れました。」

「な、な、なんということだ・・・!?」

ヴェリゴは俺の返事を聞いて顔色が真っ白になるほど動揺しだした。

顔色が悪かったがそれでも落ち着いていた先程とはうって変わって不自然に様子がおかしい。

「ま、まさか・・・遺棄する前に(・・・・・・)私がしたこと(・・・・・・)を、み、見たのか・・・!?」

俺はニコニコ笑顔で答える。

「ええ。」

ヴェリゴはガタガタ震えて俯いた。


俺とヴェリゴが話しているその間に貴族たちはやっと気がついたようで、謁見の間はざわつきだした。

皆恐ろしいのか遠巻きにリズさんを見て気分を悪くしている人もいるようだ。

それでもどういうことを言うのか興味があるようで、俺とリズさんの様子を見ていた。

クラウデンはヴェリゴと同じくらい顔色を悪くして呆然とリズさんを見ていた。


「・・・さて、皆さん気になっているでしょうから、リズさんに話していただきましょうか。リズさん、あなたが殺された日になにがあったか話して下さい。あ、死者なので嘘は言わないと思いますが、嘘は言わないようなお願いしますね。」

死者は嘘を言わないと俺のいた世界で聞いたことがあるが、こっちの世界ではどうかわからないから一応そう念押しといた。

『ええ。真実を話すわ。・・・私は総本部のメイドでその日は猊下の給仕をしたら、猊下は気に入って下さって後から猊下の執事が夜に私室に向かうようにと言ってきたわ。夜に私室に呼ばれることの意味がわからない訳ではなかったし、あの猊下に呼ばれたということに正直とても喜ばしいと思ったの。』

リズさんはそこで少し口元が緩んだ表情をした。

まあ、クラウデンは誰にでも優しいイケオジと誰もが思っていたし、地位もあるからな。

誘われたらだいたいの女性は喜ぶだろうし、実際リズさんは喜んで私室に行ったようだ。


『私室に入るととても甘い匂いがしたわ。その匂いを嗅いだらなんだかそういう(・・・・)気分になって頭がポーッとしていたら、猊下がベッドに私を押し倒してきたの。今考えたら、あの甘い匂いは香魔法の魅了の匂いだと思うわ。・・・猊下に触られてとても幸せな気分だったんだけど、徐々に猊下は殴ってきた。幸せな気分から段々と苦しくなってきたのは、顔を殴られ過ぎて血が出て歯が折れた時ぐらいだったわ。痛くて苦しかったから、やめて助けてと叫んだけどそんな私の苦しむ姿を見て猊下は狂ったように笑って腕を折ったわ。』

貴族の中には悲鳴をあげて倒れる女性も出て、騎士が別室に運んでいた。


『両手も両足も折られて腹を殴りながら乱暴されて、私は痛くて苦しくて惨めで・・・、そんな目にあわしてくる猊下に対する恐怖と憎しみを抱えたまま死んだわ。・・・これが、私が死んだ真実よ。』

謁見の間はしんと静まり返った。

多くの貴族は気分を悪くして俯くか、クラウデンを睨み付けている。

リュディンスはあまりのことに呆然とクラウデンを見ていた。


「ありがとうございます、リズさん。」

俺が話しかけるとリズさんはちょっとだけ微笑んで、リュディンスの方を視線だけ向けた。

『陛下、起き上がることすらできない状態で申し訳ありません。教皇猊下に・・・いえ、クラウデン・バズテリアに重い裁きをお願いします。これ以上、彼の犠牲者を増やさないためにも、罪を身に刻んでほしいのです。』

「・・・・・・。」

リュディンスは向けられた視線に呆けた顔を真面目な顔にして口を結んで、頷いた。

『ユウジン、生き返らせてくれてありがとう。・・・もう、眠らせて・・・。』

「わかりました。・・・ありがとうございました。」


『この者に天への道導(みちしるべ)となる光を、ソウルピュラファイ』


謁見の間の天井から光が差し込み、リズさんの体から光の玉がふわりと出て浮き上がって、降り注ぐ光の中に吸い込まれていった。

それを確認して、俺はリズさんの顔をまた布で覆った。


「・・・クラウデン、なにか申し開きはあるか?」

「リュディンス・・・。」

リュディンスの言葉にクラウデンは一瞬言い訳を言おうとするかのようにリュディンスを見たが、リュディンスの真面目な顔を見て口をつぐんだ。

あんなに言い訳を言っていたクラウデンもさすがにもうなにも言えなかったのだろう。

周りのクラウデンをみる目も犯罪者に向ける蔑むものに変わっていた。


「・・・残念だ、クラウデン。今この時をもってクラウデン・バズテリアを「魔法真教」教皇の地位を罷免(ひめん)する。裁きは書類と被害者の数などを改めて調べて追って下す。騎士たち!連れていけ!」

ケーキを1ホール食べるお花畑国王とは思えないくらい真面目な顔をしたリュディンスはそう声を張って隅に控えていた騎士たちに命令した。

騎士2人が慌ててクラウデンに近づいて来て両側から腕を取って拘束した。

「くっ!離せ!離せー!」

クラウデンが引きずられながら謁見の間から出されるのを見ながら、ギアノートはリュディンスに声をかけた。


「陛下、証人はいかがいたしますか?」

「死体を遺棄していたとはいえ、証人になってくれたのだからな。裁きは追って下すことになるが、罪は軽くしよう。」

俺はそれを聞いて待ってましたとリュディンスに声をかけた。


「陛下、よろしいでしょうか。この黒ずくめの男はそれでいいと思いますが、神父ヴェリゴの方はそれではよろしくないかと。」

「うん?・・・なにかあるのか?」

俺はそのままにしてあったリズさんの死体を覆っていた布の別のところをめくった。

「「「ひっ!?」」」

貴族たちはそれを見て何人も同時に悲鳴をあげた。

リズさんの太もものは付け根辺りから切り落とされて(・・・・・・・)そこから先がなかった。

「先ほどの証言で、リズさんは殴られ折られて亡くなっています。ですがこの死体はなぜか刃物で切り落とされている。足だけではありません。腕も肩から先は切り落とされています。・・・これはクラウデンが殺した後、死体を埋める前に切り落とされたということです。」


俺は震えているヴェリゴに向かってニヤッと笑った。


「神父様、リズさんは美味しかった(・・・・・・)ですか?」


「きゃあああぁぁっ!?」

また貴族が何人も倒れて運ばれていった。

さすがにほとんどの者がうっと顔色を悪くしてドン引きしていた。

ヴェリゴが誰にも秘密にしていたことはこれだった。

俺はリズさんの遺棄場所を確認したくて尾行して偶然知った。

恐らく、クラウデンはヴェリゴのこの秘密を知っていて、だから死体の処理を任せていたのだ。


ヴェリゴは秘密が公にされたことに呆然としてまだ震えていた。


「な、なんということだ・・・!死者に対してなんたることを!騎士たち!この神父も連れていけ!」

リュディンスは吐きそうなのか片手で口を覆いながらも騎士に命じて、騎士たちも顔色を悪くしながらヴェリゴを連れていった。

それから俺はやっとリズさんの死体をアイテムに入れた。

そしてギアノートに話しかける。


「・・・すいませんが、元雇い主が連れていかれたんでこれで退席させていただきます。彼女を墓を作ってあげないといけませんし。あ、この黒ずくめの男は城の牢に連れていってもいいですが、精神魔法で操られていたことを考慮してあげてください。」

「あ、ああ。わかった。」

「では皆さん、お騒がせして申し訳ありませんでした。」

俺は一礼するとさっさと謁見の間から出た。

すぐ後に騎士に連れられた黒ずくめの男も出てきた。

黒ずくめの男は俺に一礼すると騎士に急かされるように牢に向かっていった。


よし、これで断罪は終わった!

とりあえず今のところ俺の計画は順調だな、とほくそ笑んでいると足元の影からクロ助が出てきてお疲れ!という感じで鳴いた。



ヴェリゴがなぜそういう秘密をもったかというきっかけは考えてはいたのですが、さらっとも書けそうになかったので書きませんでした。

皆様のご想像におまかせします。


だってヴェリゴは悪魔教幹部ですからね、そしてクラウデンがとんでもない悪癖持ちだったのでそれぐらいのインパクトあるやつっつったら・・・ねえ?

主人公が暗殺依頼達成の証拠で渡していた心臓はどうなったでしょうね?

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