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174、悪魔は断罪する

クラウデン・ギアノート混線ルートです。

ギアノートと俺に全員の視線が集中した。


クラウデンはは!?という困惑の表情でギアノートと俺を見比べている。

「お前っ!?なに手を上げている!?」

つい声を荒げるクラウデンを無視して俺は素知らぬ顔をしていると、そんな俺を周りの大臣や貴族たちはこいつなにしてんの?という訝しげな表情で見てきた。

「教皇猊下、お静かに。彼は護衛ではありますが、立派な出席者の1人です。護衛が意見してはいけないという決まりはないと思いますが。」

ギアノートはクラウデンに注意しながらニヤリと笑った。

そしてギアノートは俺を見る。

俺もニヤッと笑った。

このタイミングで断罪すると、打ち合わせで決まっていたからだ。


お互いに意味ありげに笑いあったそれだけでクラウデンはなにかを感づいたようで、バッと俺を睨んできた。

「ユウジン!?お前、まさか・・・!!」

俺はいつもの笑顔を張り付けてクラウデンに微笑んだ。

「はて、なんのことでしょう?」


「・・・基金の設立の話ですが私は反対意見がありますが、彼も反対なようですね。私から意見を述べさせていただいてよろしいでしょうか?」

ギアノートは俺とクラウデンのやり取りを聞きながらリュディンスに向かって問いかけた。

「う、うむ・・・。」

リュディンスはまさか反対意見が出るとは思ってない感じで戸惑いながら小さく頷いた。


「国で基金を設立するメリットがありません。今のままで十分国民の信頼度は得ていると考えているのに、それ以上得たところで具体的になにか影響があるのでしょうか?むしろ運営に人員や運営費がかかるだけで、寄付金は月々とはいえ全部「魔法真教」に入るのならば、デメリットしかないように思うのですが。」

そして俺が思うに、例えば月100万イン入るようになっても寄付が50万インしか集まらなかったら残りはどうするのか。

まあ、残りは多めの寄付が来るまで国の金で補填しよう、とリュディンスは考えそうだな。

そう考えるのを見越してクラウデンは設立が決まった後でそっちに話をもっていこうと考えたかもしれないけどね。

・・・それに国で寄付を集めるとなっても、教会が寄付を受け付けないとはなってない。

つまり、教会への寄付と同時に国から月いくらかもらえるようになる、ということだ。

お花畑国王には気付かれない金のむしり取り方だが、さすがに大臣や貴族には騙せないだろう。


「・・・だ、だが、「魔法真教」はなにかとお金がかかると・・・。」

リュディンスは負けじとそう言った言葉に、俺が反応し上げていた手をさらに少し上げた。

「陛下、それについて、よろしいでしょうか?」

「う、うむ、許す。」


「前に教皇猊下は陛下にオークたちが増えていて、親を殺され母を拐われた子供が多いとか、オークと人間の間にできた子供を保護しているとか、冒険者たちがオークをたくさん狩っているけど追い付いてないとか、拐われた女性たちの支援施設がどうとか言って基金設立の必要性を説いていたのを覚えてらっしゃるでしょうか?俺はその場にいたので覚えてますが。」

「あ、ああ。・・・覚えている。」

リュディンスはちゃんと覚えていたようで、戸惑いながらも答えた。

「その話、全部陛下を欺くための嘘です。そもそも孤児が少ないですから孤児院は少ないですし余裕も全然ありますし、オークは増えているそうですがある冒険者が乱獲しているのでむしろ減って価格破壊が起きそうなほどになってます。オークに拐われた女性は乱暴されていなければ家に帰さますが、乱暴された女性は必ず気が触れているそうなのでその場で処分(・・)してオークに殺されたことになっているのは冒険者の間では常識ですし、オークと人間の子供は成長すると必ずオークになるので発見されれば赤ん坊でも処分するのはこれも常識です。調べてもらったすぐにわかることです。」

俺の言葉に大臣や貴族はざわつき出した。

近くの者とひそひそ話出して、クラウデンに視線が集まり出した。

クラウデンは苦い顔をして俺を睨み、リュディンスに声をかけた。

「陛下!この男の発言に騙されないでください!」

「だ、だが、その者は調べるとわかると。」


「陛下、よろしいでしょうか?」

と、下位貴族の1人の男性が恐る恐る手をあげた。

「わ、私の妹の夫が冒険者で、冒険者の友人も何人もいるのですが、冒険者の常識としてその者と同じ話を聞いたことがあります。」

「・・・私もよろしいでしょうか?」

別の下位貴族の女性が手を上げた。

「私は個人的によく孤児院を回ったりしているのですが、その方の言うように孤児院は余裕があると思います。20人保護できるのに3~4人しかいないところもあるくらいです。」

「なっ!?・・・クラウデン、ど、どういうことだ・・・?」

リュディンスは驚いてクラウデンにそう問いかけた。


「ち、違う!これは・・・「猊下は真実を知っているのですが、陛下にはそう嘘をついたのではないでしょうか。基金の設立をして金をもらうために。」

クラウデンが慌ててなにか言おうとしているところにギアノートは遮ってそう言った。

そしてリュディンスに体ごと振り向くと、深く一礼した。


「これより、陛下の御前でクラウデン・バズテリア猊下の罪を明らかにしたいと存じます。」


「な、に?つ、罪・・・?」

リュディンスは唖然としてそう呟いた。

ギアノートはスッと頭を上げると力強く頷いた。

「そうです。クラウデン・バズテリア猊下が稀代の大罪人であることをここに断言いたします!」

「な!?なにをばかな!?」

クラウデンは怒って立ち上がった。

「俺がなんの罪を犯したというのだ!?適当なことを抜かすな若僧!」

「なんの罪を犯したかはご自身がよく御存じのはずでは?自らおっしゃって下さいましたら手間が省けて助かるのですが。」

「俺はなにもやってはいない!」

青筋をたて怒鳴るクラウデンに対してギアノートはさすが宰相というべきか、冷静に返答している。


「なにもやっていない、ですか。でしたら護衛の彼ならわかるのではないですかね?」

ギアノートは俺に話を振ってきて、皆の視線は俺に集中した。

あまり目立つのは好きじゃないが、断罪はしないと俺の計画にも支障が出るのでさっさと行動に移すことにした。

俺はアイテムから数えきれない程の書類の束を出した。


「あ、俺はアイテム収納魔法持ちでして、猊下の指示の元作られた架空請求や数字の改竄された書類を集めときました。いやあ、ちょうど披露する場があってよかったです。」

わざとらしくそう言って書類の1番上のものをひょいと摘まんだ。

「これは1番最近のもので、アルバニカ王国の国王陛下の誕生日のお祝いという名目で財務に請求された架空請求の書類です。実際に未だにお祝いは送られてませんし、金はあるところに納められました。こんな感じで陛下に信頼されているのを利用して国のお金をちょこちょこちょろまかしていたみたいですね。」

「ばかな!?そ、そんな書類知るか!」

「猊下のサインや印が入っているのに?」

クラウデンはサッと書類を奪い取ろうとしたが、俺はクラウデンより断然素早いので余裕で避けて近づいてきたギアノートの秘書に素早く渡した。


秘書はギアノートに渡して、ギアノートは内容をパラパラ見て顔をしかめた。

「確かにどれもに教皇猊下のサインも印もありますし、財務の印もありますね。のちほど財務にも確認をとるとしましょう。」

その書類はリュディンスの元にも運ばれて、リュディンスはそれらを見て青ざめていた。

「そんな・・・クラウデン。」



「・・・ですが陛下、教皇猊下の罪はこれだけではありません。」

「な、なに・・・!?」

ギアノートはくるりと大臣や貴族たちの方を向いた。


「皆様は貴族の間で怪しいパーティがちょくちょく開催されているという話を聞いたことがありませんか?そのパーティを主催しているのが教皇猊下だという噂や、数年前まで猊下はそのパーティに来た女性で気に入った子をお持ち帰りしていて、その女性はそれ以来社交界に現れなくなって行方不明になった・・・という噂を耳にしたことはございませんか?」

ひそひそ話をしていた大臣や貴族たちは周りを見回しながらちらほら頷いていた。

「私の調査で、ある貴族に話を聞けました。そのパーティは実際にあって、貴族の令嬢はそのパーティに行った日から本当に行方不明になったそうです。そしてその令嬢は猊下の大ファンだったそうで、たまたまパーティの招待券を2枚手に入れることができたそうで、1枚を記念にと部屋に保管していたそうです。」

ギアノートはそう言うと、自身の胸ポケットからなにかを取り出した。

それは真っ赤な封筒だった。


「パーティの招待券は会場に入る際に受付に渡してしまうので手元に証拠が残らない仕組みにしていたようですね。貴族が私に協力してくれましてね、実物を託して下さいました。行方不明の噂がある貴族の方々全員に話を聞きましたが、今までは怪しいパーティに行った娘がふしだらと誤解を受け、不名誉な噂が流れるのを恐れて行方不明であることも公表できなかったと言ってました。」

ギアノートは封筒を開けると招待券を取り出し、皆に見えるように掲げた。

そこにはクラウデン主催のパーティであることを書いていて他言無用などパーティルールを書いていて隅にクラウデンのサインと印があった。


「パーティに参加して行方不明になってない令嬢にも話を聞きましたが、猊下にパーティ中に声をかけられた令嬢がパーティ後に猊下に誘われたと、猊下の執事に連れられてどこかに消えてったのを見てたそうです。そして翌日から令嬢を見かけなくなって怖くなったと言ってましたよ。」

「し、知るか!」

クラウデンは苦虫を噛み潰したような顔でギアノートの睨みながらそう吐き捨てた。





断罪は続く。

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