172、悪魔は神父を脅す
ヴェリゴルートです。
主人公が胸クソ鬼畜野郎なので注意!
「は、話・・・?」
ヴェリゴは驚きながらも戸惑うように俺を見てきた。
サーチで確認すると、クリナさんは少し離れた自室にいるのようだ。
これなら話しても内容を聞かれないな。
「俺がなんでクラリスの死を知っているか、知りたくないですか?」
「それは・・・調べたと、クリナが言っていたが・・・。」
「総本部にいる者に結構、悪魔教信者がいますけど、神父様が人選したんじゃないですか?そんな簡単にしゃべる者がいるように思いますか?」
「そこは、わたしも疑問に思ったが・・・。」
これまでのやり取りから思ったが、やっぱり人選はヴェリゴがやってたか。
うーん、それにしても、ここまでヒント出したのに、ちょっと感が鈍いかな?
まあ、今は心神耗弱状態で思考力も下がってるだろうし、隠蔽魔法の使い方はステータスにしか使わないと思っている世界だから、考えが及ばないのかな。
「俺はクラリスが死んだあの晩、側にいたんですよ。」
「・・・は?」
ヴェリゴは何を言ってんだという顔で見てきた。
「俺は姿が見えなくする魔法が使えましてね。それで気づかれなかったんです。・・・あなたにもかけたんですよ。」
「え?」
「まあ、その魔法より拘束魔法の方がインパクトありましたから、そっちにあなたは気をとられてましたね。」
ふふっと笑いながら言うとヴェリゴはまだ理解できてない顔をした。
「これに見覚えないですか?」
ジャラジャラジャラ・・・!
俺はヴェリゴの足元に罠魔法で拘束魔法を張ってすぐに発動させた。
ヴェリゴの足元からは1本の黒い鎖が飛び出してきてヴェリゴの足に絡まった。
「うわっっ!?こ、この鎖は!?」
驚いて慌てて足を振り鎖をほどこうともがくが全く鎖はほどけない。
慌てながらも見たことある鎖だと気付いて、鎖をじっと見てそしてなにかに感づいたようにばっと俺を見てきた。
その顔はまさか、という言葉を顔で現したような驚愕のそれのようだった。
「・・・ま、まさか・・・!動けないようにしていたのはお前か!?・・・だが、なんのため・・・はっ!?猊下がクラリスを殺したのは・・・・・・いや、それに・・・まさか!・・・クラリスが働いていたのは・・・!」
ヴェリゴは言いながら、あの時ヴェリゴの動きを封じたことやクラウデンにクラリスを殺されたと気付き、クラリスが総本部で働いたのは俺の仕業であると感づいたようだ。
だが、あえて俺は素知らぬフリをする。
「さあ?なんのことでしょうか。」
ニヤニヤ笑いながらそう返事するとヴェリゴの顔は怒りの表情になった。
「お前がクラリスをあそこにやったのか!?なぜだ!?なぜ!?」
「俺は仕事先を探しているってクラリスに聞いてまして、そういえば誰かさんのおかげで総本部のメイドが不足してるなって思って話しただけですよ?」
「なにを、白々しい・・・!」
「リズさんが殺された現場をたまたま見て、あなた方のやってことを知りましたが、あくまでも状況を作っただけで教皇猊下が殺されなければ、こういったことは起こらなかったことではないでしょうか?」
俺の屁理屈を無視してヴェリゴはキッと睨んでくる。
まあ、今はクラリスがなぜ死ななければならなかったのかは置いといてもらって、これからの話をしたんだ。
「今まで何人の方を猊下は殺したのか俺は知りませんが、猊下の犯行と悪魔教であることを公表すべきと考えてます。これ以上無駄に猊下が女性を殺さないために。だからあなたに、証人となってほしいのです。」
「証人だと?・・・それは悪魔教を裏切ることになる。それはできなる訳がない。そもそも、お前だって悪魔教ではないか。」
忌々しく睨むヴェリゴに俺はにこやかな笑顔で返す。
「俺は悪魔教を潰すつもりで入っただけですよ。」
「な!?」
その一言にヴェリゴは信じられないという顔をした。
「俺は悪魔教の天敵の方の仲間でしてね。悪魔教を探るためにあなた方に接触して悪魔教に入ったフリをしたんですよ。俺が殺したとされている方たちは俺の魔法で姿を隠してますが皆生きてますし、あなたに渡したあの心臓は全部ハイオークの心臓です。」
「な、なに!?て、天敵とは・・・マリルクロウ・ブラックか!?」
「最近彼の噂を聞きませんでした?」
「そういえば・・・あと2~3週間したら帰ってくるとか・・・。」
「彼が来るのは俺と合流するためです。俺の話を聞いたマリルクロウはどうするでしょうか?」
くくくと笑った俺に対してヴェリゴは冷や汗をかいた。
脳裏にじいさんの威圧がよみがえったのか、今までじいさんのせいで去った悪魔教の仲間のことが思い浮かんだのかもしれない。
じいさんは威圧だけでもえげつなかったからな。
敵対する悪魔教に対して容赦なかったのがヴェリゴの様子でわかる。
「マリルクロウの威圧にやられてむざむざ恥を晒しますか?それともなにも言わず殺されますか?マリルクロウを相手にするなんて、蟻がゾウに挑むくらいマリルクロウはとんでもなく強いですもんね。」
「・・・。」
ヴェリゴは顔色を真っ白にしてガタガタ震えだした。
「俺はマリルクロウが来るまで多分まだ2~3週間あります。ですが、それまでに猊下の犯行と悪魔教であることを国で裁いてもらおうと考えてます。猊下はこの国の政策にも王族にも関わってますから、マリルクロウが対応しては国として面目ないでしょう。マリルクロウが来る頃に終えるくらいがいいかと考えてます。だらだら長引かせず、さっさと断罪を終わらすためにも幹部であるあなたに証人になってほしいのです。」
「国で裁くなど・・・。む、無理だ。わたしは・・・。」
震えているのにそれでもまだヴェリゴは首を縦にしてくれない。
・・・しょうがない。脅すか。
「でしたらコレを見ても気が変わりませんか?」
アイテムからずるりと出てきたソレの頭を掴んで上半身まで出した。
ソレを見たヴェリゴは悲鳴のような声をあげた。
「ク、クラリス!!??」
俺が出したソレは、アイテムに入れておいたクラリスの死体だった。
俺の配慮で苦悶の表情はなおして目を閉じて眠っているかのような顔にしたが、涙の痕と殴られた痕はそのままだ。
複雑に折れた両腕はアイテムから出るとだらりと垂れ下がっているし、全身に殴られた痕がある、何度見ても痛々しい姿だ。
「な、なぜ、ここに・・・!?」
「死体を埋める際はちゃんと見とかないといけませんよ。俺はアイテム収納魔法持ちだったのでずっと入れてました。」
「な、あ、そんな・・・。」
ヴェリゴは声を震わせ自分の影を見た。
「ど、どういうことだ!?お、おい!出てこい!おい!!」
あの黒ずくめの男を呼んでいるようで影に向かって叫んだ。
「黒ずくめの彼はこっちで回収してます。見張りもいますから逃げられないと思いますよ。」
あの黒ずくめの男は俺の影の中にいる。
勝手に逃げたりしないように拘束魔法でぐるぐる巻きだし、クロ助が側で見張ってる。
だから今、クロ助は肩にはいないのだ。
「か、返してくれ!クラリスは、わたしの大切な孫なんだ!」
ヴェリゴは椅子から崩れるように落ちて地面に膝をつけながら必死に俺にすがってきた。
「なんで返さないといけないんですか?」
俺はニタニタ笑う。
「神父様が言うことを聞いてくれないんじゃあ、しょうがないですね。汚れて事切れてますが、若い女性の体ですもんね。スラム辺りに持っていったら男たちが群がって来るかもしれませんねえ?」
「や、やめてくれ!!お願いだ!」
ヴェリゴはガタガタ震えてそう叫んできた。
「おや、悪魔教では死体をそういうのに使うのは善行っぽいですけど、そうではないんですか?あなたの大事な孫がそうなるなら、泣いて喜ばないといけないんじゃないんですかねえ。」
「そ、そんなこと!クラリスにそんなむごたらしいことさせるわけないだろう!!」
「他の女性ならよくて孫ならダメって意味わからないですねえ。それこそあなた方が崇拝する悪魔様なら他の女性より孫をそういうのに差し出した方が嬉しいと思いそうなんですけど。」
「うっ・・・。」
悪魔教幹部のヴェリゴなら俺の言い分もわかるようで、グッと喉をならして苦い顔をした。
「お願いだ!クラリスを返してくれ!お願いだ!なんでもするから!!」
「・・・では、証人の件、引き受けてくれますね?」
ヴェリゴはそれを聞いてあることに気付いた。
「!?・・・ま、まさかお前!・・・わたしを脅すためだけに、猊下のところにクラリスを・・・!?」
「さあ、なんのことでしょう?」
そう。俺はヴェリゴがクラウデンを裏切らせるために、クラリスを脅しの材料に利用することを考えつき、クラリスにヴェリゴの目の前で死んでもらって、死体を脅しの材料にするために奪ったのだ。
かわいい孫が目の前で死んだら相当ショックであるし、死体を使って脅せばより大きな精神的ショックを与えることができる。
そうすればよりいい絶望が見れると思ったのだ。
俺が狂気の笑顔で受け流すと、ヴェリゴは頭を抱えて深く項垂れ、しばらく目を閉じて悔しげに首を縦に振った。
「・・・わかった。お前に従う。だから・・・クラリスを返してくれ・・・。」
信仰する悪魔教を裏切るのだ。
溺愛していたクラリスに、悪魔教。
この2つがヴェリゴの心の拠り所だった。
だが、クラリスは目の前で殺され、悪魔教を裏切る。
心の拠り所を失ったヴェリゴに目にうつるものは・・・絶望だ。
「くくくくくくっ!あはははははっ!!」
俺はしばらくヴェリゴの絶望を見ながら笑った。
なんでこんなに主人公った性格極悪なんだろう。
すいません、こんな主人公で・・・。ペコペコ
フォローになってないフォローすると、主人公はクラリスの死体を本当にスラムに持っていくつもりはなかったし、ヴェリゴの前に出した後は丁重に供養するつもりです。
因みに死体はもう1体アイテムにあります。




