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16、悪魔は廃城に突入する


「みんな!行くぞ!!」

門へ向かおうとするアルトクスをカルファーは慌てて止めた。

「アルトクス、待てって!危険過ぎる!」


「でも!今すぐ突入しないとリリナが餌食になるわ!」

「落ち着けウィズリー!突入したところでヴァンパイアロードなんて俺たちで倒せるわけないだろう!?」

ウィズリーも気が動転してアルトクスとともに向かおうとしていたのをカルファーはすかさず止めた。


やいのやいのと言い争っている横で、俺は考えていた。

今から突入すると、リリナを助けられる確率は高いがこれから夜になることを考えると助けた後にたくさんのグールとヴァンパイアとヴァンパイアロードを相手に戦えるか疑問だ。

かといって一旦山を下りて朝に突入して、リリナが無事な可能性は低いがグールとヴァンパイアはでないからヴァンパイアロードだけ相手すればいい。


だが、どちらにしてもヴァンパイアロードと戦う確率は高い。


今の"金の栄光"メンバーがあいつに勝てるとは能力差があり過ぎて思えないし、例えレベルを上げるとしても、10以上あるから今からでは無理だ。



・・・だがしかし、俺はどうだろう?



俺はまだポイント振り分けをしていない。

そしてもうちょっとでレベル20になるはずだ。


それをあの能力に注ぎ込んで・・・。

今俺の持ってる魔法でアレを組み合わせたら・・・。



・・・うん、倒せるかもしれない。


だが問題はレベル20にならないといけないことと、"金の栄光"メンバーに内緒にやらないといけないということだ。

ここは一旦山を下りて朝に突入するということにして、夜中に1人で山で魔物を倒してレベルアップするのがいいな。


「ユウジンはどう思う?」

カルファーが聞いてきたので俺の意見を述べた。

「俺は今すぐは危険と判断します。これから夜になるのでヴァンパイアとグールを相手にしつつ、ヴァンパイアロードを相手にできるとは思えません。ここは一旦山を下りて、朝になるのを待って城に忍び込んで、ヴァンパイアロードを相手せずにリリナを助け出してはどうかと思います。」

「で、でもそれじゃあ・・・リリナが血を吸われちゃってるかもしれないなじゃない?」

「それは・・・リリナを無事を願うだけです。」

"金の栄光"メンバーは黙りこんでしまい、俺は見守った。





「俺は・・・嫌だ!」



アルトクスは振り絞るように呟いた。


「俺は英雄になる男なんだ!こんなところで躓いてる場合じゃないんだよ!英雄の仲間は誰も死なない!だからリリナを助けに行くぞ!」



イラッ

なんだこいつ!今この状況でもそんなことを言うのかよ!?

こいつ仲間をなんだと思っているんだ?



・・・・・・後悔させてやるか。



「アルトクス、あなたの夢は否定するつもりはありませんが、今はそんなことよりちゃんと冷静に考えて下さい。」

「そんなことをじゃねぇ!俺は英雄になるために生まれてきたんだ!それ以外何を考えることがある!?」

「あるから言ってるんです。あなたは"金の栄光"のリーダーとしてリリナだけでなくカルファーとウィズリーの命を預かっている身ですよ?リリナを助けるために自分とカルファーとウィズリーの命を危機にさらしていいわけではないでしょう?」

「っ!・・・うるせえ!ごちゃごちゃ言いやがって!もういい!俺だけでも行く!!」

そう吐き捨てて、アルトクスは門を乱暴に開けて入っていってしまった。


「ちょっと!?アルトクス!?」

「あのバカ!!」

カルファーとウィズリーは慌てて追いかけ、俺もやれやれと後を追いかけた。




ちょっと煽ったらすぐムキになるなんてな。子供だあいつは。


そしてその幼稚な考えのせいで自分と仲間が危険にさらされるのを肌で感じたらいい。




城の中に入る頃には日が陰ってきていた。


玄関ホールは外壁同様に蔦が這い回りひび割れが所々あり、ホール中央の像もボロボロに崩れていた。

アルトクスは手当たり次第に部屋に入っていって、リリナを探しているようだが見つけられてないようだ。

俺はサーチで見てみると、リリナは最上階にいるようだった。

というか、俺のサーチは階数も関係なくわかるのか。

ん?地下があるのか?たくさんのグールが地下にいるな。

おそらく昼間は地下にいて、夜になったら地上階に出てくるんだろうか。


まあ、地下に案内してやるか。


俺は地下への出入り口をさりげなく探しだして"金の栄光"の皆を呼んだ。

「ここに地下への階段がありますよ。なにかの気配しませんか?」

俺の言葉にカルファーが地下への階段を覗き込んでううむと唸った。

「・・・なんかいる気配はするな。しかし、日の入らない地下ならもしかしたらグールかもしれないなあ。」

「でも!リリナがいるかもしれないだろう?」

アルトクスはそう言ってさっさと階段を下りていってしまった。


「ああ、もう!アルトクス!ちょっと待ちなさいよ!」

ウィズリーが慌てて追いかけて行き、ほどなく戦闘の音がしだした。

「やっぱりグールがいたか!?」

カルファーは急いで降りていき、俺も後に続いた。


階段を降りた先では、たくさんのグールがこちらに向かってきていた。

グールはゾンビの一種というそのままで体はあちこちに腐っていて服もボロボロのものを着ていて、足取りもおぼつかない。

「あ゛あああ゛ああ゛」とか「う゛あああ」とか唸り声をあげてこちらに向かってくる姿はまさにリアルなバ○オハザードだ。

そんなグールをアルトクスが闇雲に攻撃していて、ウィズリーが攻撃魔法でサポートしていた。

カルファーもサポートに入り、弓矢で次々とグールの頭を射ち抜いていった。

俺も皆が取りこぼしたのを初級雷魔法で攻撃して倒していった。

因みにグールにも合間に鑑定魔法を使った。



種族:グール

属性:闇

レベル:28

HP:580

MP:0

攻撃力:100

防御力:50

智力:0

速力:30

精神力:0

運:10



魔力・智力・精神力がない・・・。

まあ、死んでるんだから智力・精神力はなくて当たり前か?


しばらく倒して続け、30体くらい倒したところでようやく地下にいたグールを全部倒すことができた。

しかし、アルトクスは無駄に力を使って倒したのか息切れをしていて、ウィズリーも魔力をほとんど使ったようで、俺はアイテムからMPポーションを渡した。


地下は全面グールたちを収容するための地下牢になっていて、どこにもリリナはいなかった。

「リリナ!リリナ!・・・地下にはいない、か・・・。」

「上にあがりましょう、アルトクス。」

「あ、ああ・・・。」




すると突然、グールたちの死体の山が動いた。



そして潜んでいたグールが近くを通っていたウィズリーに飛びかかった。



「ウィズリー!!」

「きゃああああああっ!!!」


グールはウィズリーの首を食いちぎった。


アルトクスが即座にグールを切り裂き、カルファーがウィズリーを抱きかかえた。

ウィズリーはヒューヒューと、声にならない声を出して虚ろな目をして息絶えた。


「う、嘘だろ!?ウィズリー・・・!」

「お、おい!ウィズリー!目を開けてくれよ!?」

アルトクスとカルファーが必死に声をかけたが、ウィズリーは動かなかった。

「うあああああっ!!ウィズリー!ウィズリー!!」

「っ!くそっ!」

2人は泣いてしばらく動けなかった。


俺も魔法や野宿のことなどを教えてくれた、性格の素晴らしい人だったので悲しい気持ちはあるが、それ以上にアルトクスに対してざまあという気持ちもあった。

これで「英雄の仲間は死なない」という下らねえ概念は崩れたねえ?

これからどうするのかな?くくく。


俺は空気を読んで沈痛な顔をして2人が落ち着くのを待った。


そして2人が落ち着いたところで提案した。


「ウィズリーをアイテムに入れませんか?」

「「は?」」

2人は信じられないという顔でこちらを見てきた。

「ウィズリーの遺体をこのままというわけにはいかないでしょう?キチンと故郷に返してあげてはどうですか?」

「そ、そうだな・・・。村に立派な墓を建ててやりたい。」

アルトクスがそう言ったので、俺はウィズリーに歩み寄った。

ウィズリーの遺体は生物ではなくなったのでさっさとアイテムに入った。


「よし!こうなったら絶対にリリナを助けよう!地上に出て、上を探そう。」

「・・・ああ。」

「・・・はい。」

ここで引き返してくれたらと思ってはいたが・・・まあ、そうなるわなあ。

上にはヴァンパイアとヴァンパイアロードの2人しかいないから、どうなるか・・・。



それから玄関ホールに戻ってきて、上に続く階段を見つけて上り、部屋をしらみつぶしに見て、上に続く階段を上り、それほど大きくない城だったのであっという間に最上階に着いた。


「最上階は大部屋が1つだけか・・・。ここに、リリナとヴァンパイアロードがいるのは間違いないな。ユウジン、銀の杭をあるだけ全部出してくれ。」

「はい。」

俺は言われた通り、アイテムから銀の杭を全部出した。

アルトクスとカルファーはそれを持てるだけもって、気合いをいれていた。


俺も準備(・・)を開始した。



「よし!行くぞ!!」

アルトクスは明らかに、ウィズリーの仇をとるつもりのようで顔は怒りで満ちている。

「ああ!」

カルファーも頭にきているのか、いつもの気の抜けたしゃべり方ではなくはきはきした返事をしていた。

「・・・はい。」

俺は呆れて声もでないほどだったが、なんとか返事をした。


もう俺は付き合う義理はないんだよねえ。

だから傍観させてもらいますよ。



アルトクス・カルファーが突入するのに続いて、俺も準備(・・)を終えた。




部屋のなかは、リリナの血で真っ赤だった。



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