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165、悪魔は情報を渡す

前半ヴェリゴルート、後半ギアノートルートです。

クラリスと話した俺は次の日には、護衛の仕事の前に少し早めに総本部に行った。

執事に「メイドになりたい知り合いがいるのだが、メイドは募集していないか」と聞くと執事は「ちょうどメイドを募集しようとしていたところです」と二つ返事で雇ってくれることになった。

一応執事の勧めもあってクラウデンに知り合いをメイドに雇うことへの許可をとったが、クラウデンは俺の適当な知り合いの名前と履歴を口頭で聞くとあっさりといいと言った。

これは護衛である俺を信頼しているのか、それともメイドに興味がないかはたまたその両方かわからないがとにかく雇ってもらえることに一安心した。


翌日の休みに町に出て、ちょうど買い物中のクラリスをサーチで見つけて話しかけ、メイドに雇う許可をもらえたと伝えると飛び上がって喜んでいた。

クラリスは教会から通うようになり、クラリスはヴェリゴに知り合いの店の事務で働くと伝えているそうだ。

クラリスを溺愛しているヴェリゴなら、メイドで働くと言えば見初められるかもと反対して飲食店のホールで働くと言えば飲食店に通って来そうだったので、ということらしい。

母親のクリナさんには本当は通いでメイドとして働くのだが、ヴェリゴが反対するだろうから秘密にしてくれと頼んでいるそうだ。

俺のアドバイス通りにヴェリゴに内緒にしててくれて俺は安心した。


クラリスがメイドとして初出勤するのは数日後になり、その時は紹介者として俺と共に向かうこととなったので、その時に教会の近くで待ち合わせることを話して別れた。




時刻としては太陽の傾き等から午後2~3時頃だったので、ちょっとギアノートのところに行こうかとサーチすると初めて会った王城にはいないようだった。

ということは休みか?と思い、それなら屋敷に行ってみるかと思い立った。

俺の泊まっている宿屋の近くのアパートを訪ねてみると女性がいたので隠蔽魔法がかかっているか確認がてら屋敷の場所を聞いてみると、あっさり教えてくれた。

ただ、俺が紹介状を持たずアポを取らずに突然行ったら門前払いされるだろうと、女性が紹介状を書いてくれた。


王城にいないなら屋敷で仕事を持ち帰ってやっているかも、ということで屋敷にいるだろうとのことだった。

肩のクロ助と俺の顔に隠蔽魔法をかけて屋敷に向かった。


貴族の屋敷が集まる一角、教えられた場所に向かうとそこには大きな屋敷があった。

淡いベージュの壁に緑の屋根で、垣根は蔦が垂れていて木々が建物を囲うように生えていた。

宰相の屋敷なのだから趣がある家という感じだ。

門番が立っていたので紹介状を渡すとすぐに中に通された。


すぐに来た若い男性執事に案内されて応接室に通された。

俺の急な訪問に執事はそつなく対応してくれていたが、メイドたちは戸惑っているようだった。

応接室に入ってから隠蔽魔法を解いて、紅茶とドライフルーツを出してもらってクロ助がドライフルーツに興味を抱いて食べたそうにしていたので1つあげながら待っていると、15分位してギアノートがやって来た。


「すまない、ちょっと書類作業に手間取ってしまった。」

「こちらこそ、急に来てしまってすいません。」

ギアノートは少し疲れているような感じがした。

「すいません閣下、お疲れのような印象を受けるんですが、大丈夫ですか?」

「宰相としては若いから通常の執務に加えて色々と学ぶことが多くてね。」

そう言って紅茶を飲んだギアノートは深いため息をついた。

「これでも疲れからくる体調不良には気を付けてはいるんだがな。弱ったところを見せると面倒な貴族が多いもんだから。」

「俺には想像もできませんが、本当に貴族とは面倒な生き物ですね。」

ギアノートは俺の言葉に苦笑した。


「それで、本日の用件は?」

「少しですが、情報が手に入ったので。急に来てすいません。昼に用事をすませて時間ができたものでして。」

俺はそう言ってここ最近のクラウデンの様子を話した。

マデリーンとハスニーアに会ったのは伝えたが、親子の関係やメイドをクラウデンが殺したことは伝えなかった。

親子の関係は俺が彼女らを洗脳しているので邪魔してほしくなかったし、メイドが殺されたことについては機を見て伝えるつもりだからだ。

今ギアノートに伝えるのは早い。

計画はまだ始まったばかりだし、この後のことを考えてタイミングを調整していた。


「ふむ・・・、架空請求なんてしていたのか・・・。」

ギアノートはインパクトの強い架空請求の話に興味を向けたので、マデリーンらの話はまったくのスルーだった。

「これは資金集めとはいえ、正直盲点だったな。しかも近々「魔法真教」を対象にした基金も設立予定だ。これは国王陛下の信仰を利用した明らかな資金集めということか。」

「恐らくそうでしょう。そして陛下はそれに気付いてません。護衛で猊下についていって陛下に会う機会が何回かありましたが、なんというか・・・王様はお花畑の住人でしたから。」

ギアノートは乾いた笑いをして頭を抱えた。

「猊下のことは怪しい怪しいとは思っていたが、ここまでとは・・・。それに、教皇猊下に頼りきった国王陛下も比がある。・・・お優しい性格なのはわかっていたが、これでは王の素質に関わってくる。」

つまり、俺たちが協力してクラウデンを糾弾すると国王の責任問題にもなるということだ。

責任問題とは、「こんなに教皇を頼りきりでいいように使われた国王は王として相応しいのか、また、ここまで教皇をのさばらせた原因の一旦は国王にあるのではないか」という意見が出ることだ。

国王だからそれを突っぱねることはできるがそうなると国内外からの反発をかいそうな気がするが・・・。

・・・まあ、正直俺はお花畑国王にまったく興味はない。


「・・・まあ、申し訳ないですが俺はこの国の人間ではないですし、ただの冒険者なんでなにも意見はありません。俺は依頼で猊下を調べているだけですし。」

俺は国王に関しては無関係を貫くことにした。


「そちらはどうですか?姿の見えない令嬢を調べると言ってましたが。」

クラウデンが殺してヴェリゴが処理していると思うのだが、わからないフリをして聞いた。

正直、ヴェリゴの処理はそれなりにしているようなので、殺された令嬢やその家族からなにか情報が得られると思えないので聞いたところでいい返事は期待していない。

ではなぜ聞くのかと問われれば、俺から一方的に情報を渡してもいいのだが、俺がギアノートを利用していると疑われるとギアノートは頭がいいだけに誤魔化すのが面倒臭いからだ。

「・・・現在、アパートにいるスパイたちを使って姿が見えない令嬢たちの関係先を調べたり見張るようにしている。今のところまったく姿を見えないし見たという情報すらない。やはり何か(・・)あったと見て、近く秘密裏に家族に接触するつもりだ。父親の知り合いもいるから、なんとか話を聞き出すことができるかもしれない。」

ふうん。ギアノートなりに頑張っているんだろうな。



・・・そっちは任すとして、別の手でちょっと、協力してもいいかもな。


「忙しいようですが、いい情報が得られるといいですね。あ、そうそう。」

俺はアイテムから紙とペンを取り出してスラスラと書いた。

「こちらの方たちなんですが・・・。」

そう言いながら、書いた紙をギアノートに渡した。

書かれている内容を呼んだギアノートは首を傾げていた。

「うん?これは・・・この屋敷にいる、俺のメイドや使用人の名前だな?」


俺はニヤリと笑った。

「その人たちは猊下のスパイです。」


その言葉にギアノートは目を見開いて俺を見てきた。

「は!?そ、それは本当か!?な、なぜわかった!?」

俺は当たり前のように微笑んだ。

「俺は鑑定魔法持ちですから。この部屋に案内される間にすれ違ったメイドや使用人にかけてました。」

「な!?」

「あなたが送って相手が送らないとは限りませんからね?そのスパイたちをどうするのか(・・・・・・)はお任せします。」

俺が意味ありげに笑うとギアノートは察してニヤリと笑った。

「俺はいい味方を得た。・・・礼を言う。」




・・・まあ、別の(・・)スパイもいるけど、それは黙っておこうかな。




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