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152、悪魔は総本部に向かう

暗殺の依頼はその場ですぐに受けた。


人を殺したいと悪魔教に入ったことになっているので、躊躇したら疑われると考えたからだ。

もちろん、俺の信条で人殺しはしない。

神父は「暗殺方法や暗殺後の処理は遺体が見つからなければ構いませんので、君に任せます。暗殺したら証拠として体の一部を持ってきて下さったら依頼達成とします。」と言っていた。


・・・俺の魔法を利用すれば、なんとかなるかもしれない。


その前に、暗殺する女性のことを調べるとするか。

暗殺依頼するということは、この女性は悪魔教にとってなんらかの障害なのだろう。

それを利用できるかもしれないからだ。



神父は簡単に所在地を教えてくれたので、そこへ向かった。

その場所は、貴族の屋敷が集まる一角の程近くにあったアパートだった。

庭を掃除していた大家さんと思われるじいさんに聞いてみると、ここは通いの使用人が利用するアパートで、メイドが多く住んでいるらしい。

名前と特徴を言ってみると、部屋を教えてくれた。

・・・といっても、部屋に行って「暗殺しに来ました。」と言うわけにもいかないので、隠蔽魔法で存在を隠して教えられた部屋をノックした。

「はーい。・・・あら?」

女性は出てきたが、辺りを見回して首を傾げてドアを閉めた。


その間に女性に鑑定魔法をかけた。


そして名前の項目をタッチして、ウィキのように詳しく出た女性の過去や現在を読んで、俺はニヤリと笑った。


・・・女性の暗殺依頼は明日までだから、まだ時間はある。



俺はその場を立ち去り、あるところに向かった。




アパートから俺は貴族の屋敷が集まる一角へと足を踏み入れていた。

アパートで女性の部屋へと行く前に唱えた隠蔽魔法はまだ発動中で、巡回している警備兵も俺の存在に気づいてない。


豪華な屋敷が立ち並ぶ一番奥。


そこが目的の場所だった。


「・・・ふむ、ここが「魔法真教」の総本部、ですか。」


俺の目の前には城と間違うくらい大きく高さのある建物が建っていた。

他の貴族の屋敷の軽く5倍はあるでかさで、庭も見たところ広い。

出入り口にはでかでかと「魔法真教総本部」と書いた看板がかかっていて、門番も王城並みの全身鎧で槍を持っている。

因みにこの場所から15分くらいの割と近くにあるのが王城だ。

国王が「魔法真教」の敬虔な信者でたびたび教皇に助言求めているというのは有名な話だそうだが、この距離だ。

そうだとあえてアピールしててもおかしくないな。


総本部の門の前でサーチをかけてみると・・・うん?

総本部の敷地内全体に結界が張ってあるようだ。

結界を鑑定してみると、侵入者を感知する結界のようだ。

まあ、総本部なんだしそれほど重要度の高い場所だからこんな結界があるのは不思議ではない。

建物内に何人もの人間が確認できるから、そのうちの誰かが張った結界魔法なんだろう。

俺は隠蔽魔法で存在を隠蔽しているのだが、結界が反応するかもしれない。


どうしようかと思っていると、建物の玄関扉が開いて中からたくさんの人たちが慌てて飛び出してきた。

神父の着ていたような服の人もいたり、使用人の格好をした人もいて皆きれいに両側に並びだした。

そして執事と思われる燕尾服の男が門の両開きの扉も開けた。

どうしたんだろう、思っていると後方から1台の馬車が来た。

とても豪華な真っ白な馬車で、馬車は門の前で横付けして止まった。

執事が馬車の扉を開けて一礼すると、中から男が降りてきた。


「皆、ご苦労だな。」

降りてきた男は並んだものたちに微笑んでそう声をかけた。

40代後半くらいで長い銀髪に金の目をしたイケオジで、とても豪華な貴族服を着ていた。

雰囲気な立ち振舞いから高貴さが滲み出ていて、並んだ人たちの中にいた女性はいずれも男に見惚れていた。


40代後半で銀髪に金の目。

クラリスが言っていた彼女の想い人クラウデン・バズテリアだ。


クラウデンは颯爽と門をくぐろうとしていたので、俺はその真後ろに素早く近づいて門をくぐった。

・・・よし、反応なし、だな。

近い距離でくぐったから同行者と判断してくれたようだ。


並んだ人たちが「クラウデン様!この間はありがとうございました」とか「クラウデン様のおかげで・・・」とか次から次に声をかけてきたのを、クラウデンは口元だけ緩めて会話に応じていた。

そうしてゆったりと建物の中に入っていくと、執事を後ろに伴って玄関ホール目の前の大階段を上って3階まで歩いて行く。

そして3階の奥の執務室に向かった。

その間にもすれ違った神父服を着た男女や使用人ににこやかに挨拶していった。


「きゃっ!」

ガシャンッ


と、イケオジを見て緊張したメイドが手を滑らせて持っていた花瓶を落としてしまった。

「も、申し訳・・・ございませ・・・」

メイドは顔面蒼白で震えた声で土下座した。

だがクラウデンは口元を緩めた表情のまま、メイドの肩に手をそっと置いた。

「謝らなくていい。花瓶なんていくらでもある。それより、君は怪我はないか?」

「は、はい・・・。」

メイドは見惚れるような戸惑ったような顔でクラウデンを見た。

「君が怪我ないのであればいい。気にするな、かわいらしい君には笑顔が似合う。」

「あ、ありがとう・・・ございます・・・!」

メイドは顔を真っ赤にして惚けた表情でクラウデンを見た。

慌てて飛んできたメイドを見てクラウデンは執務室に向かって歩き出した。


うわあ・・・あんな口説き文句をするする言う奴なのか、このクラウデンという男は。

だが、配下への優しい対応などを見る限り、このクラウデンという男は誰がどう見ても「誰にでも優しく人望のある男」だ。



・・・あくまでも、表面上は。




「クラウデン様、今日もお疲れ様でした。」


執務室に入ってデスクの椅子にどかりと座ったクラウデンに向かって、執事がそう言葉をかけた。

「陛下と謁見して来たのでしたね。いつものように、これからの政策を?」

「ああ。リュディンスは迷ったらいつもそうだ。今回は貿易している西大陸のアルバニカ王国の貿易量を増やした方がいいかと相談するために呼ばれたぞ。くだらない。」

クラウデンはそう言ってクククと笑った。

「仕方ありません。陛下は魔法真教の敬虔な信者でありますから。そしてあなた様の信者でもありますしね。」

「1つ年下のおっさんに好かれてもうれしくない。」

「ですが、そうしたのはクラウデン様でしょう?陛下があなた様を頼るように仕向けてらしたではないですか。」

「あいつはバカだからな。俺がちょっと助けてやったらすぐに信じて。今では国庫も自由に使えるほど信頼されてるぞ。」

「"さすが教皇猊下(ゲイカ)"が最近の陛下の口癖になってますからね。」




2人の会話を聞きつつ、俺はニヤリと笑った。


バカはどちらか、もう少ししたらわかるかもな。




クラウデンの鑑定魔法結果は、この通りだ。



名前:クラウデン・バズテリア

種族:人間(魔法剣士・魔法真教"教皇"・悪魔教幹部"ファースト")

年齢:47

レベル:71

HP:2610

MP:1775

攻撃力:441

防御力:385

智力:462

速力:260

精神力:230

運:139


適性:即死魔法

戦闘スキル:初級短剣術・上級剣術

魔法スキル:初級火魔法・初級雷魔法・上級光魔法・中級闇魔法・中級香魔法・即死魔法



「魔法真教」のトップがファーストだなんて、面白すぎだろ?





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